(16)


 ――もし王子が檻の戸をくぐっていたならば、驚きの声を抑えられなかったことだろう。そして二人の美姫を襲った淫虐も終わりを告げていたはずである。
 中にいたのは牝馬ではなく、木台に四つん這いの格好に拘束された二人の美少女だった。まっすぐな黒髪の清楚な少女と、波打つ赤毛の気の強そうな少女。二人はほとんど全裸で、日に焼けていない白磁の肌をさらしている。首に革の首輪を巻き、口に馬のように轡(くつわ)を噛まされ、あちこちに拘束用の革ベルトを巻いているだけの姿。
 アリシエル王女とティアリス王女だった。
 牝獣の姿勢を強いられる姫君達は、轡によって言葉を封じられた口から、絶え間なく涎と悲痛な媚声を洩らしている。二人とも、背後から杭打ちのような強烈な突き込みを、蕩けきった膣孔に繰り返し叩き込まれているのだ。
「ひぅううううっ! くぅううううんっ!」
「うぶっ! くふぅううっ! きゅぅううっ!」
 王女達の美貌は、強烈な羞恥と快楽がせめぎ合う表情を浮かべていた。
 彼女達を犯しているのは、牡馬でこそなかったが、それと見劣りしない巨根を備えた馬頭人身の怪物である。魔獣達がいななきを上げながら肉槍を突き立てるたびに、少女達の下腹がぼこりと膨らむ。壮絶に過ぎる凌辱を受けながら、美姫達は突き込みのたびに愛蜜をしぶかせ、被虐の愉悦に身を震わせる。
 二人は容赦のない、だが高度に効率的な調教で、無垢なその身を淫らな牝奴隷の肉体へとすっかり変造されてしまっていた。ティアリス姫の方はいくぶん苦しげではあるが、見事な釣鐘形の美巨乳の先端の乳首は張り詰めて起ち上がり、妖馬人の暴虐から強い官能を得ているのは明らかである。
 檻の外から、人々のざわめきと好奇の視線が肌に突き刺さる。言葉の内容までは聞き取れない。そのくせ、傍らを歩く調教師の声だけは明瞭に聞こえた。
『ヒッヒ。お前達の浅ましい姿を、皆見ておるぞ。ケダモノに犯されてよがっておる淫乱な奴隷に呆れているのがわかるだろう? ヒヒヒヒッ』
「んおおおっ!」
「んっ、んんんっ!」
 気が狂いそうな羞恥に身悶える美少女達。だが理性と感情の苦悶に関わりなく、体は男の言葉通り快楽に燃え狂っていた。しかし、その身に受けているのは、本来ならば死に至ってもおかしくないほどの暴虐である。腕ほどもありそうな凶悪な逸物が暴力的に抜き差しされるたびに、彼女達の下腹がぼこぼこと変形する。腹の皮越しに野太い獣根の形状がはっきり見て取れた。そしてこれほどの虐待を受けながら、二人が味わわされているのはまぎれもなく快楽――普通の女性であれば一生知らずに済む、被虐の魔悦である。
 ごりごりと牝肉を掘削され、内臓全てを揺さぶられて、高貴な少女達は正常な思考力を破壊する黒い快楽に喘ぎ泣いた。体内で荒れ狂う抗い難い性悦の高波に揉まれるうちに、身を焼く羞恥さえ何故かいっそう淫欲を引き立たせていくように感じられる。
 マゾ奴隷の精神性を植え付けられつつある王女達の檻の前に、二人が会いたくてたまらない、だが同時に今はもっとも会いたくなかった人物が現れた。
 金髪の美青年。彼女達の婚約者候補の王子、その人である。
「んんっ!?」
「おうぅうっ! うぅうんっ!」
 アリシエルは『見ないで』と身をよじり、ティアリスは『助けて』と目顔で訴えた。想い人に痴態をさらす羞辱は、見知らぬ人々の注視よりもはるかにつらかったが、同時に、これで助かるのだと言う安堵感が、苛烈な奴隷調教で萎縮しかけていた矜持を揺り起こす。
 囚われの姫君達は思考力を曇らせる淫悦の靄を一時振り払い、不自由な体を揺すって盛んに呻き、王子に存在をアピールした。騒ぐ虜囚達の瞳と王子の碧眼が、一瞬確かに交錯する。期待に胸を高鳴らせる美姫達。
 ――だが、次の瞬間、少女達の希望は無残にも打ち砕かれた。
 王子は端正な容貌を微かにしかめ、無造作に視線を外してしまったのだ。汚らわしいものを見たとでも言わんばかりの仕草だった。
「ん〜〜っ!? んむぅううううっ!!」
「ふぅううっ! ふぐっ! むぐぅうううっ!!」
 呼び戻そうと上げる呻き声は、王子を振り返らせることもできない。調教師と二、三言葉を交わしてから、彼はこちらを一顧だにせず立ち去った。蒼然と凍りつく王女達に、入れ替わりに近付いたローブの調教師が話しかける。
『ヒヒヒ。王子殿下も、化け物の極太ペニスに腰を振って悦ぶ卑しい牝奴隷が、実は大切な婚約者だなどということはありえないとお思いになったと見える』
 残酷なセリフが王女達を打ちのめした。蒼白になった美少女達に、さらに言葉で痛撃が加えられる。
『あの方を薄情とは思わないことだ。婚約者の気概と貞節を信じる殿下が、今のお前達を見分けられる道理がないだろう? ヒッヒ。恨むなら、己の淫乱さを恨むのだな』
 檻にかけられた巧妙な幻術の存在など夢にも思わない囚われの王女達にしてみれば、婚約者に見捨てられた理由は他に思いつかない。王子の姿を目にして一時持ち直しかけていた気力が打ち砕かれ、より深い絶望に叩き落された。
(己の淫乱さを恨むのだな……)
 弱った心を、注ぎかけられた言葉の毒が蝕む。檻を載せた台車が動き出し、城門の下に入ると、王子の後ろ姿が視界から消える。二人を犯す馬頭魔人が暴力的な抽送をさらに強めると、今まで無理矢理意識から押しのけていた反動で凶悪なまでに濃縮された快楽が押し寄せた。心の支えを失った王女達に、もはやその愉悦に逆らう術はない。
「おおおっ! ひぉおおおおっ!」
「ふひぃいいいいっ! ひぅううううっ!」
 拘束された体をよじって悦楽の悲鳴を上げる家畜少女達は、かつての高貴な姫君とあまりにかけ離れた淫乱な奴隷の自分を嫌と言うほど思い知らされて、悲嘆の涙に暮れた。

 膣奥をゴスゴスと突かれるたび、目の奥に散る火花とともに、無力感が諦念に、諦念が自己憐憫へと突き動かされていく。
 魔獣が高くいなないて、少女達の胎内に濁った欲望を解き放った。どぷどぷと流れ込んだねっとりと濃い牡汁が子宮を満たしていく。二人の下腹が目に見えて膨れ上がった。
「くひぃいいいいッ!!」
「おぁあああああッ!!」
 信じられない膨満感を味わいながら、魂まで砕けそうな破滅的な絶頂に襲われる。本来なら一生知ることのなかった――普通の女性は一生知るべきではない魔性の淫楽。
 放出の余韻に身を震わせていた馬頭魔獣達は、いきり立ったままの獣根ですぐにまた姫処を抉り回し始めた。王女達は哀しげな、だが甘く蕩けた嬌声を上げてよがり泣き、連続絶頂に陥っていくティアリスとアリシエル。
 終わりのない魔辱の檻に囚われた美姫達は、都を後に、二度と戻れない牝奴隷への道を家畜のように運ばれていくのだった。


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