(8)


 それは一言で言えば「狼男」だった。人の体に狼の頭――と言うよりは、狼を無理矢理人に近い形に変形させたような、やや歪な人型をした……怪物である。その怪物が6体、脅え上がる美少女を半包囲して左右からじわじわと近付いて来る。
「んひぃ…!」
 拘束された王女は、迫る獣人達の股間に猛り立つ牡器官を見出してしまい、鎖を鳴らして暴れた。哀れな姫君にとって「それ」は、身を裂く苦痛と汚辱の記憶に直結する恐怖の対象だった。
 じゃららららっ……!
「……!?」
 不意に拘束が緩んだ。意表を突かれて一瞬硬直するが、すぐに我に返って逃げ出そうとするアリシエル。人狼達は特に遮る動きを見せない。だが――。
「――ぉぐぁっ!」
 がしゃんっ! と鎖に引き止められる。鎖は長さを伸ばしただけで、決して少女を解放したわけではなかった。
 部屋の中央で動きを止めたアリシエルを、6体の魔獣が完全に包囲する。もはや逃げ場は無かった。
 ぅるるるる……
 グルルル……
 ハッ、ハッ、ハッ――
 獣の唸りと発情した呼吸に周囲を取り巻かれ、アリシエルは蒼白になった。今から何が始まるのかなど考えるまでもない。
(嫌ぁ! もうあんなことは嫌ぁあっ! しかも、しかもこんな魔物達に……!)
 だが、姫君の想いとは関わりなく、再びの凌辱劇の幕は開いた。
「……ん――――ッ!!」
 美しく無力な獲物が、獣の群に貪られていた。いきり立つ肉の牙は膣孔に留まらず菊口と口腔をも貫いている。暴力的な抽送に華奢な肢体を振り回され、黒髪を振り乱しながら、アリシエルは混乱の極致にあった。
 これほどの暴虐をその身に受けながら痛みも苦しさも一切なく、それどころか信じ難い、信じたくない感覚――まぎれもない快感が、王女の体内を吹き荒れていた。

(ひぃああああっ! 何故、こんな……どうしてぇっ!?)
 濃密な獣臭と牡臭、吐き気を催す腐肉の味……すべてがおぞましいはずなのに、それらの味が、香りが、たまらなく甘美にも感じられてくる。
 姫君は既に何度も、これまでに知ることのなかった快楽の頂点に導かれていた。人ですらない半獣人共に初めての絶頂を極めさせられる屈辱は筆舌に尽くしがたい。何故自分が狂ってしまわないのか、高貴な少女はもう何度目とも知れない疑問を脳裡に浮かべる。
 人狼が一声吠えて口の中に射精した。生臭い汚液の味が口いっぱいに広がる。吐きたくてたまらないのに、体が勝手に嚥下していた。おぞましい味が何故かこの上なく美味に感じられ、感覚を変調させる肉体の裏切りに、アリシエルは絶叫しそうになった。
 精を放った獣人はすぐに離れ、別の狼男が直ちに取って代わる。
「うぶぅうっ! ひぅうううっ…!」
 哀れな美姫の見開かれた瞳からとめどなく涙が溢れる。異常に過ぎる肉の狂宴は、いつ果てるともなく続いた。


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