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第二章 塚本千沙・お仕置きと躾
「調べがついたぞ」
相談した翌日、俺を呼び出した友人は、開口一番そう言った。
「調べ？」
「ああ」
力強く頷き、そいつ――八王子大器（はちおうじ・たいき）は、待ち合わせの喫茶店のテーブルに分厚いファイルを載せた。それをめくりながら、解説を始める。
「まず、最初に貴様が行った印刷屋、つかもと印刷の娘は、塚本千沙、１６歳、高二だ」
写真を取り出してテーブルに置く。確かに千沙ちゃんだ。
…待て。今、聞き捨てならない台詞を聞いたような。
「……１６？ 高二って言ったか！？」
「うむ。信じがたいが事実だ。どう見ても中学生だがな。ちなみに学業成績は優秀。校内でもトップクラスだそうだ。通っている学校は基本的にバイト禁止だが、家計を助けるためという理由で特別に許可され、代々森駅前の喫茶店で週に３日、ウエイトレスのバイトをしている」
大器はファイルのページをめくりながらよどみなく話し続けた。
「次に貴様が公園でぶつかった女だが……これについては後で話す。その次、こみパスタッフの牧村という女」
またも写真を出した。間違いない、この人だ。
「牧村南、２４歳。温厚な人柄と極めて有能な手腕で知られる才媛だ。彼女はボランティアではなく、正式なこみパ職員として働いている。故に、大抵はこみパ事務局に常駐している。同人活動をこよなく愛し、すべてを温かく見守る慈母のような女性と言うことだが、怒らせると大変に怖いらしい」
俺は同意を示して頷いた。…ん？ だが、待てよ…？
「俺には非寛容だったが」
「それには理由がある。それも後で述べる。次、ハリセン女こと、老舗の同人作家、猪名川由宇」
丸眼鏡の小柄な女の写真。そう、コイツだよ。
「１９歳。実家は神戸の老舗温泉旅館である『猪ノ坊旅館』。高校卒業後は同人活動に専念しているため、無職。学生時代から個人サークル『辛味亭』を立ち上げ、ソロで同人活動を続けている。学生時代は主に関西方面の即売会で活動していたが、この４月からは東京に進出、こみパに本格参入を始める。以前にもこみパに何度か参加はしているが、一時期を境に、以後しばらく不参加。その当時から牧村女史とは親交があったらしい。性格は直情的で、のめり込むと止まらないタイプ。そのせいでトラブルも多いが、同人に対する情熱と真摯な態度は本物のようだ」
「なるほど。しかし何故この女が俺をはたく？」
「それも後で言う。次、謎の武術女こと、御影すばる。１７歳」
何も考えてなさそうな笑顔を浮かべる女の写真。
「同人初心者で、ごく最近同人活動を始める。サークル名は『新住所確定』。本人は大影流合気柔術とか言う、何やら派手な武術の達人らしい。流派の詳細は、意外に門派のガードが固くて、１日では調べられなかった。同人のジャンルは特撮ヒーロー系メインだが…まだまだヘタで、同人の知り合いにマンガのあれこれを教えてもらいながら、現在修行中」
大器は一旦言葉を切り、間を置いた。
「さて、これらの女達を調査する過程で、ある人物の存在が浮かび上がった。その人物に関する調査をしたところ、出てきたのが、この女だ」
「あ……これ」
赤っぽいサイドポニーの巨乳美人。忘れもしない、俺の原稿を噴水に叩き込んでくれたあの女だ。
「高瀬瑞希、１９歳。都内の私立大学に通う一回生。大学ではテニスサークルに所属、高校時代もテニス部で、実力はかなりのものらしい。特技は料理。腕前はなかなかのものだということだ。気が強く、体育会系のさっぱりきっぱりした性格」
「…………」
問題はこの女が何故あんな過剰反応を示したかということだが…。さっきから大器がもったいぶった言い方をするところを見ると、何か期するところがあるようだ。「ある人物」とやらがキモか。
「これらの女達と、貴様への仕打ちを結びつけるものがある。――これだ」
「？」
テーブルの上に写真を滑らせてくる。
「――？ 何だ、俺の写真じゃないか」
困惑して大器を見ると、ヤツは無言のままアゴ先で写真を示した。もっとよく見ろということらしい。手にとってしげしげと眺める。
「あれ…？ 何か変だな……。いつ撮ったんだろ、こんな写真」
そこに写っているのは確かに俺の顔だが、着ている服や背景に見覚えがない。
何だか、顔だけ俺の写真を貼り付けたコラージュ写真でも見ている気分だ。
――唐突に俺は気付いた。
「えっ！？ これ……！？」
愕然と大器を見遣ると、ヤツはゆっくりと頷いて見せた。
「そう。それは、貴様ではない」
「千堂和樹、１８歳。大学一回生。さきほどの、高瀬瑞希と同じ学校だな。高校時代は美術を志し、いくつか賞も取っている。が、美大の受験に失敗し、滑り止めに受けた今の学校に通うことになって、絵筆を置いた。――代わりに取ったのが、ペンだ」
大器の解説を、俺は痺れたような気分で聞いていた。これほど俺とそっくりな顔の人間が、世の中にいるとは…。それも同じ都内に。
「彼はこの春からマンガを描き始め、こみパに参加。見る見る実力をつけ、現在急速に大手同人へと成長しつつある。『ブラザー２』というサークル名に聞き覚えはないか？」
「――ああ。そう言えば聞いたな。何か急に行列ができるようになって、あっという間に島中から島角へ行ったサークルだとか…」
「そのブラザー２の作家が千堂和樹だ。ちなみに、彼がもっぱら使っているのがつかもと印刷、一時合体スペースを取っていた相手にさきほどの猪名川由宇や御影すばるがいる。無論、牧村南女史とも懇意だ。高瀬瑞希とは高校時代からの付き合いで、高瀬は当初、絵を辞めてマンガを描き始めた千堂を非難していたが、最近では徐々に理解を示し、時々はサークルの売り子を手伝ってくれるまでになったとか」
「ああ……わかった。わかったよ。つまり俺は、その千堂和樹と」
「間違えられた、と言うことだ」
――すべてが繋がった。
何てこった。つまり、あのコ達は、千堂がいつも描いている本を落とし、間に合わせで激エロに走ったと思って怒った――と、そう言うことかよ。…あのコ達が示していた好意と親愛は、千堂に向けられていたものだったわけだ。
ちきしょう……ふざけやがって。
ふつふつと、怒りが湧き上がってくる。
テーブルの上で拳を握り、肩を震わせている俺を見て、大器は頷いた。
「貴様の怒りと悔しさ、拙者にはよくわかるぞ。偏見の目で見るくらいならまだしも、『間に合わせでエロを描いた』などと思い込むとは！ 貴様のエロに賭けた熱き情熱、間近で見ていたこの第一の友人たる拙者には深く理解できている。貴様の魂の表現を、よりにもよって単なる逃げと解釈するとは――許しがたい、罪」
そうだ。俺は――パロディに逃げず、エロスの極限を目指して求道してきた。
あいつらはそれを、頭から否定してのけたんだ。
あんなメールを送ってよこすほどに――。
「…ん？ 何か変だな。そいつらは俺が千堂和樹だと思い込んでたわけだろ？ じゃあ、あのメールを送ってきたのは誰なんだ…？」
後で誤解に気付き、俺を逆恨みして送ってきたのか？ だとしたら最有力候補は、申込書の情報を悪用できる牧村南か？ しかし、脅迫メールを送ってよこすような陰湿なタイプには見えなかった気がするが……。
大器は黙って、写真をもう一枚取り出した。
写っているのは、ツインテールを結わえた大きなリボンが特徴的な可愛い女の子だ。見覚えはまったくない。
「――立川郁美、１４歳。心臓病で入院中の中学生だ。以前、賞を取って展示された千堂和樹の絵を見て感動して以来、彼の熱心なファンになった。実家は資産家で、病気の娘を思いやるあまり、親は彼女の言うことならほぼ無条件で聞き届けている。同じように妹にぞっこんの兄が一人いる。彼女は匿名で、千堂に高価な絵の具を贈ったり、手に入りにくい資料を探してやったりと、影ながら援助しつつ、メールで彼とやり取りするのをほとんど唯一の楽しみにしていたようだ。千堂が絵をやめて同人誌を描くようになっても、彼女は失望したりせず、千堂の味方でい続けた。入退院を繰り返して友人や知人の少ない多感な少女のこと、彼女はいつからか、千堂に恋していたものと思える。ほとんどストーカー並みに千堂の情報を集めていた彼女は、今回の騒動で貴様の存在を知り、千堂と同じ顔でいながらひたすらハードエロ志向の貴様の存在が許せなくなったのだろう」
とうとうと大器はまくし立てた。
「……いや…立場には同情できるし、気持ちもまあわからなくはないが……だからって、俺が同人をやめなきゃならない筋合いはないだろ？」
歯切れの悪い口調で俺がそう絞り出すと、大器は真剣そのものの表情で頷く。
「当然だ。千堂を肯定するあまり貴様を否定することなど、許しておけるわけがない。何度も言うが、拙者は貴様の妥協しないエロ志向を高く買っているのだ。常に前回よりもハードに、工夫を凝らしたエロに取り組む真摯なその姿勢。そんな貴様を、今こんなところで終わらせるわけには行かん。大体この小娘、思い込みだけで脅迫メールを送りつけるなど、不届きにもほどがある。協力は惜しまん、厳罰を加えてやれ」
「…っつっても、心臓病で入院してるコにひどい真似はさすがに…」
「ああ、それなら安心しろ。６日後に心臓手術の予定だ。その後経過を見て、良好なら１０日から２週間で退院の運びになっている。これまで何度か入院していたが、今度の手術が成功すれば完治らしい。成功率は９０パーセント。まあ、まず成功するだろう」
「………。お前…どっからそこまで調べてくるんだ…？ そう言えば、あれから１日しか経ってないのに……ほとんど情報がない女のプロフィールを調べ上げてくるのはまだしも、匿名のメールの送り主を突き止めてその詳細な情報まで集めてくるとは。一体どうやったんだ」
「ふん。一応追跡を考慮して、草の根サーバーや海外サーバーまで経由して貴様にメールを送りつけていたようだが、なに、しょせんは子供の浅知恵。こみパが終わってから貴様が帰宅するまでの間に貴様のメールアドレスにアクセスしたＩＰアドレスを辿って行けば、個人の特定は不可能ではない。一応目くらましに何人か影武者を立てていたが、貴様に悪意を持つ相手としてプロファイルすれば、この通り、犯人は自然に浮かび上がってくる」
「お前……時々すげえな…」
「ふ。言ったろう、協力は惜しまん。――そうだな、一番危険なこの小娘は、半月から２０日の間は手が出せんわけだから…貴様はそれまでに、他の連中への復讐を兼ねて予行演習でもしていろ。……この小娘などは手軽でお薦めだぞ」
そう言って大器が示したのは、千沙ちゃんの写真だった。
「つかもと印刷は経営状態が思わしくないようだ。あまりに良心的過ぎる価格設定のために、仕事をしても大して利益が出ず、いつも汲々としているらしいな。タチの悪いところから借金もしていて、時々乱暴な取り立てに遭っている。この辺からアプローチすれば、この小娘、貴様には逆らえまい。――そうだな、裏から話をつけて、借金のいくつかをこちらで肩代わりしておこう。後は――わかるな？」
「ああ。わかりすぎるほどな」
八王子家は結構な資産家と聞くし、大器自身相当な金持ちだ。別に親から金をもらっているわけではなく、最初の資金だけ親から借りて、自分で運用して殖やしたと言うんだから恐れ入る。将来は親父さんの会社の跡を継ぐんだろうか。
それにしても……本当に協力を惜しんでないな、コイツ。まさかそこまでしてくれるとは思ってもいなかった。
「大器。――ありがとう」
素直にそう言えた。
「ふん。礼なら、見事復讐を果たして創作意欲を取り戻してからにしてもらおう」
そっぽを向いて鼻を掻く大器。…照れているらしい。普段傲岸不遜なこの男が。珍しいものを見た…。
――そう、大器の言う通りだ。俺は、脅迫して来ている立川郁美を排除しなければ、同人活動ができない立場に立たされているんだった。
よし。まずは、千沙ちゃんからだ――。
ちょっと罪悪感が湧いた。飾りのない笑顔が思い出される。
――だが、あの笑顔は俺に向けられたものではない。千堂和樹に向けられていたのだ――。
そう思い直すと、悔しさと怒りが湧いてきた。会ったこともない千堂和樹に、無性に対抗心が込み上げる。
見ていろ、千堂和樹。千沙ちゃんは、俺がもらう――。
まずは千沙ちゃんに狙いを定めた俺だったが、いくらケチのつき始めを作ったとは言え、あの素直そうなコ相手に余り酷いことをするのも気が引ける。鬼畜凌辱エロ漫画描きとは言っても、良心も良識もあるのだ。いやむしろ、自分で描いているからこそ、幻想と現実の区分はきっちりついている方だった。
当面の目標、立川郁美を堕とすときまでに、まずはこの強固な心の壁をぶち壊しておく必要がある。
とりあえず心理的抵抗の少ない方法を採択することで、心の負担を減らすことにした。――合意の上での行為――少なくとも、相手が嫌がらない状態での行為にまで、状況を持っていけばいいのだ。
俺は大器に頼み事をしておいて、とある日曜日、つかもと印刷へ向かった。大器の調査ファイルによれば、休日は、基本的に千沙ちゃんは一日印刷所の手伝いと言うことになっている。……不憫だ。
印刷所の近くまで行くと、ガラの悪いだみ声ががなり立てるのが聞こえてきた。
「いるのはわかってんだよ！ 借りたものは期日通りきっちり返すのが社会のルールだろうが！ 手前ェら盗人か？ ああ！？」
がんがんがん、とやかましい音もする。
……見ると、見るからに暴力団員風の男が二人、つかもと印刷の前に立ってガラス戸の枠を蹴りつけている。ガラスを割らないのは器物破損を避けるため、ガラス戸を開けないのは住居不法侵入を避けるため、だろう。多分。そこそこ頭を使っている。
おそらくは中にいて、恐怖に身を縮めて震えているだろう千沙ちゃんの姿が容易に想像できる。俺は、たまらずと言った風に男達に声をかけていた。
「ちょっと、あんた達」
じろりと睨まれる。思わず腰が引けるが……ここでびびったら何にもならない。
「あまり騒がないでくれ。周囲に迷惑だろう」
「迷惑だぁ！？ 迷惑なのはここのウチの奴等だぜ。金借りて返さねぇのは泥棒と一緒だ。そうだろ？ 兄ちゃん」
「だからって、あんた達が周りに迷惑をかけていいことにはならないだろ。それは別の話だ」
「おう兄ちゃん。こいつは俺達とこのウチの奴等の間の話なんだよ。関係ねぇ奴は引っ込んでてもらおうか」
「……その過程で周囲に迷惑がかかってる、って言ってるんだ。もっと穏やかにやってくれよ」
精一杯虚勢を張って言ってやる。……内心、すげぇ怖い。
連中の目が据わった。
「兄ちゃん……いい度胸だねぇ。俺等が手を出せば傷害罪になる、とか思ってねぇかい？」「傷の残らねぇ痛め方なんざいくらでもあるんだぜ。今回はその度胸に免じて引き上げてやってもいいが……二度と生意気言えねぇよう、ちっと体に教えとくぜ」
どぶっ！ と男の膝が俺の腹に突き刺さった。
「ぐはっ！」
前屈みになった俺のこめかみにもう一人の掌底が入る。立っていられず横転した横腹を爪先で蹴られた。
「がっ！」
後は、骨が折れない程度に、二人分の靴裏でどかどか背中を蹴られる。着ていた白いジャケットはあっという間に靴跡まみれになった。
ひとしきり蹴り終わると、男の一人はつかもと印刷のガラス戸を一度蹴りつけ、声を張り上げた。
「おう！ 今日はこれで勘弁してやらあ！ この兄ちゃんに感謝しとけや！」
言い残して立ち去る。
静かになってから少しして、かららら…と小さな音を立ててガラス戸が開き、恐る恐る千沙ちゃんが顔をのぞかせた。
「！？ にゃあああ！！ お、お兄さん！？ しっかりするですよ」
悲鳴を上げて、千沙ちゃんは必死に俺の体を家の中に引きずり込んだのだった。
幸い（？）ほとんど怪我はしていなかった。一番被害が大きかったのは脇腹の打ち身だろうか。しかし今、俺の外見は立派に重傷者だった。
俺がいいといっても聞かず、懸命に手当てする千沙ちゃんの手で、包帯でぐるぐる巻きにされてしまったからだ。
「――つまり、千沙ちゃんのお父さんがよくない連中から借金をしていて、あいつらはその取り立てに来ているわけなんだね」
口の重い千沙ちゃんを促して既に知っている事実を聞き出すと、俺は念を押すように確認した。浮かない表情で頷く千沙ちゃん。
「はいです。でも、本当は払い終わっているはずの借金も、利子が膨れて払い終わってないことになってるです。お父さんとお母さんは、お金を貸してくれそうな知り合いに会いに行っているです」
「そうだったのか。一人で怖かっただろう。頑張ったね、千沙ちゃん」
そう言って頭を撫でてやると、千沙ちゃんは堰が切れたようにぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「う……うわぁ〜〜ん！ ホントは…ホントは千沙、とっても怖かったです〜〜！！」
俺の胸に飛び込んで泣く千沙ちゃんの肩を、黙って抱いてやる。ずっと誰かに縋りたかったに違いない。本当に縋りたい相手は、千堂和樹だっただろうが……。無論千沙ちゃんは今の俺を千堂だと思っているんだろう。
俺は千堂に、逆恨みではない深い怒りを覚えた。
――何やってやがる。こんな健気なコが心細い思いをして、内心お前を頼ってるんだ。ちゃんと支えてやれよ！
……千堂になりすましている俺が言うべきことではないかも知れんが。俺は先日の決意を新たにした。
千堂。お前には任せておけない。千沙ちゃんは、この俺がもらうからな。
思いっきり泣いて少し落ち着いた千沙ちゃんは、まだ少しぐずったまま笑顔を浮かべた。
「えへへ…でも千沙、今日はとっても嬉しかったですよ。お兄さんが怖い人達を追い払って、千沙を助けてくれたですから……千沙のせいでケガしたのは哀しいですけど」
健気なセリフにジンと来ると同時に、唐突に胸の奥に黒いものが湧き上がるのを俺は感じた。純粋無垢なものを踏みにじり、汚してみたいと言う嗜虐の欲望。その強烈さに俺自身驚いた。
「なあに。千沙ちゃんのためなら、これくらい何でもないよ」
ぽん、と淡い色の髪に手を置いて、微笑んで見せる。千沙ちゃんはすっかり泣きやみ、ぽおっとした目で俺を見上げた。
「お兄さん……」
――そう。千沙ちゃんを泣かしていいのは、俺だけだ。
強固な独占欲と嗜虐心が俺を満たしていく。
最初はやや気が進まなかったはずなのに、今や俺は、千沙ちゃんを俺のものにすることにいささかも迷いを持たなかった。
「いつまでも千沙ちゃんに怖い思いをさせておけないからね。俺の方でも色々手を尽くしてみる。千沙ちゃん、悪いけど、あと何日か我慢できるかい？」
「え……？ でも…お兄さんに、そんなことまでさせられないですよ」
「いいから。俺がやりたくてやるんだからさ。千沙ちゃんは心配しないで」
千沙ちゃんは嬉しいような悲しいような複雑な表情を見せる。
「お兄さん、あの……あまり危ないことはしないでくださいね。またお兄さんがケガしたりしたら、千沙、泣いちゃうですから…」
恥ずかしそうに俯く。――可愛い。俺は自分を抑えきれず、ちょっとだけ千沙ちゃんを抱きしめた。
「――わかった、気をつけるよ。ありがとう、千沙ちゃん」
「お兄…さん……」
千沙ちゃんは嫌がらないどころか、安心したように俺の肩に頭を預けてくる。
「それじゃ、今日はこれで行くよ」
短い抱擁を解いて、俺はつかもと印刷を後にした。名残惜しげに見送ってくれる千沙ちゃんが印象的だ。
――さっきの『借金取り』が、俺の頼みで大器が手配したもので――先日の『原稿』の記憶をぶっ飛ばして無条件で千沙ちゃんに『味方』だと思わせるための小細工だと知ったら、千沙ちゃんはどんな顔をするだろうか？
捨てられた仔犬のような千沙ちゃんの泣き顔を想像して、俺は口元に歪んだ微笑を浮かべた。
もう一つ――その想像に、会ったこともない少女の泣き叫ぶ顔が重なる。あっちは、そう言えば、今日手術のはずだ。俺は手術の無事成功を真剣に祈った。
俺自身の、復讐のために――。
そして、数日後の夕刻。俺はまたつかもと印刷を訪れていた。
今日は千沙ちゃんのバイトの日ではないことはわかっているし――塚本夫妻は大器に呼び出してもらっているので、いるのは千沙ちゃん一人のはずだ。大器には融資と経営指導を申し入れてもらっている。ご両親が断れるはずもない。と言うより、呼び出しが成功した報告を受けて動いているわけだが。
「こんにちは、千沙ちゃん」
「あ、お兄さん！ こんにちはです」
目論見通り、千沙ちゃんは一人で店番をしていた。
「先日は、何のお構いもできなくて、ごめんなさいです」
笑顔でお茶を淹れてくれる。お礼を言って受け取り、しばらく当り障りのない世間話をした。
「――今日は、お父さん達は？」
「ちょっと、ご用があって出掛けたです。千沙はお留守番です」
「そうか……。ご両親にも聞いて欲しかったんだけど」
白々しくそう言って、俺は鞄から何枚かの書類を取り出した。千沙ちゃんに手渡す。
「お兄さん……これ……！？」
愕然と目を上げる千沙ちゃん。そう、それはつかもと印刷が借りたお金の借用書だった。
「さすがに全部手に入れるのは無理だったけどね。一番悪質なところからは、何とか取り返したよ。実際借入金自体はとっくに返済済みだったし。ちょっと……と言うか、正直かなり苦労したけど」
「お、兄さ…ん」
「こっちは、未返済の分の一部。一応、俺が債権を買い取った形になってるから…そうだな、印刷代を値引きして、ちょっとずつ返してよ。ね。ははっ」
「お兄さん……お兄さん」
見ると、千沙ちゃんはぽろぽろと泣いていた。
「千沙ちゃん……」
「どうして？ どうして、お兄さんは千沙を助けてくれるですか？ 千沙、失敗ばっかりで、お兄さんを困らせてばかりなのに…。千沙には、お兄さんにそこまでしてもらう値打ちはないですよ……」
「あるさ」
「えっ？」
自責の念に駆られていた千沙ちゃんは、俺がきっぱり断言すると驚いて顔を上げた。
「千沙ちゃんには、とても価値がある。だって、俺は千沙ちゃんが欲しいと思うし――千沙ちゃんを、俺だけのものにしたいと思う。その……ごめん。不純な言い方で、がっかりしたかな？」
びっくりしたままの千沙ちゃんの顔は、やがて俺の言葉の意味を理解したのか、だんだん真っ赤に染まっていった。
「あの、あの…。それは……。い、妹としてではなく……ですか……？」
「ああ。嫌かい？」
千沙ちゃんは真っ赤な顔のまま、ぶんぶん首を振った。
「嫌じゃ……嫌じゃないですっ！ 千沙は――千沙が、お兄さんのものになれば、お兄さんは嬉しいですか？ 千沙は、そうなればいいなって、思ってたですけど、でも千沙、ドジだし、子供っぽいし、胸も小さいですから――んむっ」
混乱してまくし立てるのをそれ以上聞かずに、俺は千沙ちゃんを黙らせた。
突然唇を奪われて、千沙ちゃんは固まっている。そのままただ唇を合わせるだけのキスを続けていると、やがてふにゃりと力が抜けた。
「にゃああ……お兄さぁん……」
腕の中の、潤んだ瞳の千沙ちゃんに囁きかける。
「千沙ちゃん。俺のものに、なってくれる？」
「――はい。千沙を――お兄さんのものに、してください――」
恥ずかしげに頷いた。それが、『奴隷として』だと言うことには気付かず――。
ちくりと胸が痛んだが、もう引き返すことはできない。俺はもう一度、千沙ちゃんに唇を重ねていった。
キスと愛撫を繰り返しながら、千沙ちゃんの服を脱がせていく。千沙ちゃんは軽くて扱いやすい。すぐにその幼い裸身が露わになった。今千沙ちゃんが身につけているのは、青白横ストライプの可愛いパンツと白いソックスだけだ。
「は、恥ずかしいです……千沙、胸、小さいですからぁ…あんまり、見ないでください…」
胸元を隠そうと動かす腕を押さえ付け、なだらかな傾斜を描く双丘を露わにする。俺はしばしほっそりと肉付きの薄い中性的な裸身を鑑賞してから、恥ずかしげに身悶える千沙ちゃんの乳房に口付け、そっと囁いた。
「可愛いよ。千沙ちゃん」
ぞくっと白い肌が粟立つのがわかった。俺はそのまま、疵一つない肌に舌を這わせ始める。
「あ…あ、お兄さぁん……」
切なげに吐息をつき、千沙ちゃんはすべてを俺に委ねるように体の力を抜いた。乳首を舐めるとびくっと反応する。感度は極めて良好だ。
胸を攻めながら、俺は千沙ちゃんの体を頑丈なテーブルに横たえた。ちょっと硬いかもしれないけど……我慢してもらおう。それでも、せめてものクッションにと思い直し、俺の上着を下に敷く。
千沙ちゃんは体中敏感だった。胸から腹へと舐め下り、膝から内股へと手を滑らせると、そのどれもにぴくっぴくっと反応し、「あっ、あっ」と小さく喘ぐ。
指先が股間を覆う布切れに触れると――そこは、既にしっとりと湿っていた。外見はコドモだが、中身はしっかりオトナに成熟しているようだ。その内外のギャップに、俺の興奮がいっそう高まる。
指先でくにくにと布越しに揉み込む。
「ひゃぁん！」
可愛く鳴いて、千沙ちゃんは身をよじった。
「にゃああ…お兄さん……そこはぁ……」
「まだ触ってないうちからぐっしょりだよ？ エッチだね、千沙ちゃんは」
「やああぁぁ…」
言葉で苛めてみると、千沙ちゃんは真っ赤になって体を縮める。それでいながら、俺が脚をそっと開かせても、逆らうことなくなすがままになっている。
可愛いなあ。
淫裂に沿って優しく撫でると、どうやらもう充血した肉果が内側から綻んでいるようだった。早熟な蕾からはあとからあとから蜜が溢れ出し、下着の染みを広げていく。濡れた布越しに、千沙ちゃんの可愛い肉の割れ目の形がくっきりと浮き出ている。
俺は千沙ちゃんの膝を揃えて抱え上げ、もはや用をなさなくなったパンツをお尻から剥き上げ、脱がし取った。
改めて脚を開かせると、千沙ちゃんの秘密の部分はそのすべてを俺の前に曝した。陰毛は申し訳程度に生えていたが、密度も色合いも淡く、肝心の部分を隠す役にはまったく立っていない。陰唇は内圧に負けてつつましく開き、内部の粘膜が顔をのぞかせている。乳首もそうだが、色素はほとんどなく、ごく淡いピンクに色付いて、かろうじて皮膚の色に埋もれず自己主張している。一線を画すのはその質感で、ぬらぬらとぬめ光る様は、千沙ちゃんの秘められた欲望が剥き出しになったかのようだ。
俺はしばし千沙ちゃんの可憐な秘部に見入った後、吸い寄せられるように唇を寄せていった。
――ちろっ。
「ひうっ！？ お、お兄さ…な、何…を……ひゃぁうんっ！」
秘唇を指でくつろげ、ぱっくり開かれた粘膜をそっと舐め上げると、千沙ちゃんは悲鳴を上げて腰を跳ねさせた。逃がさないよう捕まえ、襞の隙間まで舌先でなぞるようにする。
「あっあ！ ダメ、凄い…怖いです！」
粘膜と粘膜を触れ合わせる未知の刺激に、快感の許容量のゲージを振り切ったのだろう、千沙ちゃんが脅えた声を上げた。
「大丈夫。怖くないから。力を抜いて……俺に任せて」
適当に優しく囁き、愛撫を続ける。千沙ちゃんの愛蜜は塩気が少なく、粘度もないさらさらの液で、ほとんど水のようだ。だが、分泌量は一人前以上で、いくら舐め取っても絶えず溢れてくる。
「んん…あっ…」
次第に刺激に慣れて来たようで、体からも声からも固さが抜け始めた。あまり性急にしても千沙ちゃんを怖がらせるだけだと判断して、俺はしばらく膣口をくすぐるように舐めほぐすことに専念する。ぷりぷりと固い感触がしていた淫肉も、執拗な愛撫を加えると柔軟さを増し、とろりと蕩けたようになってきた。
千沙ちゃんはぼおっと宙に視線を泳がせ、はぁはぁとどこか甘い吐息を洩らしている。
そろそろ次に移ってもよさそうだ。
俺は千沙ちゃんの入り口に舌ではなく指先を当て、くにくにといじり始めた。舌先はやや上に愛撫のポイントを移す。狙いは小さな肉の芽だ。
「にゃっ！？」
また、びくんと跳ねた。千沙ちゃんの反応は、実に素直で――面白い。
可愛い女の子を抱きしめて愛撫する性的興奮は無論大いに――ありすぎるほどあったが、それとは別に、『楽しいおもちゃを手に入れた』気分にも駆られ、俺は心楽しく、千沙ちゃんの一番敏感な突起を舌先で転がした。
「ひ――――！！」
もはや声も出ず、のけぞるだけの千沙ちゃん。
包皮に覆われていたまだまだ未発達の陰核をそっと剥き上げ、直接舐め始めると、千沙ちゃんは壊れた機械のようにがくがくと震えた。
「かはっ――かっ、ひん……そ、れ――何――ダ…メ……」
「ちょっときつかった？ これならどう？」
あまりに強烈な刺激に、呼吸まで阻害されているみたいだったので、俺はちょっと攻めを緩め、直接の接触を避けて、包皮を被せたり戻したりして微妙な感触を与えてみる。
「ふぁん…ひあ…まだ…すご、すぎ、る、けど…何とかぁ…いいですぅ…」
千沙ちゃんが肉の芽に注意を奪われている間に、俺は指先を千沙ちゃんの膣口に差し入れていた。処女膜らしき障害はあるが、意外にも指一本すっぽり収まってしまう。執拗な愛撫と大量の蜜とで、千沙ちゃんの膣襞はすっかり柔らかく蕩けているようだった。同時にそれは、千沙ちゃんの幼い外見とは裏腹に「女」の部分がかなり成熟しているためだと思われる。中学生のようにしか見えなくとも、やはり高校２年生だと言うのは本当のようだ。
いまだに信じられんが。
千沙ちゃんが痛がらないように指をそおっと動かし、くねらせて千沙ちゃんの体の内部を探る。エロ漫画を描き続けてきたせいでそっち系の知識は豊富な俺だが、実際は女の子の中を触るのなんて初めてだ。俺は探究心を満たすべく、さんざん千沙ちゃんの感触を味わい、内部の構造を手探り（指探りか）で確かめる。
ゆっくりやっているせいもあるだろうが、膣内感覚はまだ鈍いようで、あちこち探っても千沙ちゃんはあまり反応しなかった。――だが、それも弱点を探り出すまでのことだった。
何だか感触が他と違う部分を見つけ、そこを擦り立てると――。
「ひゃああああ！？」
ぎゅうっ、と膣肉が指を食い締め、動かせないほどきつくなった。
「わっ…何だ」
様子を見てみるが、痛いわけではないらしい。刺激が強すぎたのか。膣の上側のちょっとざらざらしたところ、クリトリスのちょうど裏辺りか。……そうか、ここがＧスポットってヤツ？
得心した俺は、再び陰核に口を寄せ、また包皮を剥いて直接そこを舐めた。同時に裏側を優しく指の腹で掻いてみる。
「んにゃっ！ にゃあああああっ！ お兄さ……それ、それダメですぅ―――！！」
がくがくがくっ、と激しく震え、千沙ちゃんはくたっと脱力した。
――どうやら、イってしまったらしい。
「はぁあ……ふにゃあ……」
虚ろな目で荒い息をつく千沙ちゃんを改めて抱え直し、優しくキスした。
――いよいよ、いいだろう。
俺も服を脱いで机の上に上がり、千沙ちゃんを膝の上に抱き上げた。そっと髪を撫でながら囁く。
「可愛いよ、千沙ちゃん。……今から、千沙ちゃんを俺のものにするからね。やめるなら、今が最後だよ。……いいかい？」
千沙ちゃんはまだぼおっとした顔で俺を見上げ――だが、こくん、と頷いた。
俺はもう一度千沙ちゃんと唇を重ねた。舌先を千沙ちゃんの口の中に送り込むと、千沙ちゃんはびっくりしたように目を見開いたが、拒まず受け入れてくれる。俺は千沙ちゃんの舌を絡め取り、お互いの口内を舐め合い唾液を交換し合うディープなキスを千沙ちゃんに教えた。
無垢な少女は唾液も甘い気がした。
唇を離すと、唾液の糸がつっと伸びた。千沙ちゃんはさらに陶然と潤んだ瞳で俺を見つめている。俺は千沙ちゃんを抱え直し、正面から向き合う形にした。
――もうこれ以上ないほどいきり立った俺の欲棒が、千沙ちゃんの可憐な秘裂に押し当てられる。
息を飲む気配。それでも、確認するように目を見ると、恥じらい緊張しながらも受け入れるように見返してくる。
俺はゆっくり、千沙ちゃんの体を下ろしていった。俺の先端が柔らかい感触に包まれる。千沙ちゃんの中に入っていく――。
「んんっ」
異物感のためだろう、千沙ちゃんがきゅっと目を瞑って小さく喘いだ。
「大丈夫。力を抜いて」
呪文のように囁く。
「俺を、信じて」
我ながら、どの面下げてこんなセリフを言っているのかと思うが、千沙ちゃんは素直に頷き、精一杯体の力を抜こうと努力しているようだった。
ホントに素直だなあ。……イジメたくなっちゃうじゃないか。
だが、もうちょっとだけ我慢だ。ちょっとだけ、な。
やがて――みちみちと肉が引き裂ける感触と共に、俺の分身は千沙ちゃんの体内に埋まっていった。
「――――！！」
痛かっただろうに、唇を噛んで震えただけで、千沙ちゃんはそれを口にしない。
とりあえず入るところまで押し込んで、俺は一旦動きを止めた。まだ４分の１くらい余っているが……無理に押し込んでも可哀想だ。と言うより、痛みのあまりだろう、ぎゅうぎゅう締め付けてきていて、ここで動いたら俺の方が我慢できそうにない。気持ちよすぎて。
必死にしがみついてくる千沙ちゃんを支えながら、俺は湧き上がる感慨に浸った。
やった。千沙ちゃんの処女を奪った。俺の女にした――。
……だが、まだだ。
俺はしばらくそのままでいて、千沙ちゃんの破瓜の痛みが少し治まるのを待った。同時に暴発しそうな俺の欲望が落ち着くのを。
しがみつく力が少し弱まると、俺は千沙ちゃんに声をかけてみる。
「……大丈夫かい？ 少し、動いてもいい？」
喋るのもつらいのだろう、千沙ちゃんはゆっくり一度だけ頷く。
だがこのままだとまだ痛いだけかも。俺はまず苦痛から意識を逸らしてやるべく、千沙ちゃんの胸に手を添え、円を描くようにマッサージしてやる。敏感な乳首を掌で押し揉まれ、千沙ちゃんはすぐに反応を見せた。やっぱり、基本的に感度良好なんだよな。
鼻声を出し始めた千沙ちゃんに気をよくして、俺は剛直が埋まっている部分のすぐ上、いつの間にかすっかり膨張して包皮からちょこんと顔をのぞかせている可愛い肉豆に指を伸ばした。ちょんちょんとつつき、くりくり転がしてやると、千沙ちゃんはびくんと跳ね、甘い響きのある喘ぎを洩らした。
「あっ、ん、あっ、ふあっ」
少しすると逸物を絞り上げるようだった食い締めも緩み、蜜の量も増しているのを直に感じて、俺はゆっくりと下から突き上げるように腰を動かし始めた。
「んあっ、はっ…そ、そんな…はぁうっ」
元々感度抜群な千沙ちゃんだけあって、破られたばかりの傷を擦り上げられながらも、声からは甘い音色が消えていない。
ちょっとは緩んだとは言えまだまだ締め付けはきついし、元々狭い肉道なので、俺自身への圧搾感は相当なものだ。気を抜くとすぐにでも出てしまいそうなのを必死で堪える。
そう言えば膣内感覚もまだ鈍かったことを思い出し、俺は挿し込みを浅めにして角度を変え、先刻の愛撫で唯一反応があった部分へ亀頭や雁首を擦りつけるようにしてみた。――反応は迅速だった。
「あっ！？ ふぁあああああっ！！」
嬌声を上げ、ぎゅうっとしがみついてくる。今度のは苦痛を堪えるためでないのは明白だ。
千沙ちゃんのよがり声に力を得て、俺は指先と肉棒とで、内外から千沙ちゃんのクリトリスを挟み潰すように捏ね、擦り、抉った。
「ひゃっ！ にゃあああっ！ ああっ、何か……何かヘンですっ！ 千沙、千沙、どうにかなっちゃいそうですぅっ！」
「……イきそうなんだね」
「ああ、ああっ……。イ、イきそうって…？」
「ふわふわして、どっかにイっちゃいそうな気分だろう？」
「あああっ、はっ、はいっ…。千沙、どっかにイっちゃいそう…ですぅ……はっ、ああぅっ」
鮮やかに上気した顔で、千沙ちゃんは頷いて見せた。…可愛いってば、チキショー。
「イくときには、ちゃんと『イく』って言うんだよ」
「はっ、はいぃ……。あっ、あっ、あっ、何か、何か来ます……来ちゃう…」
いつの間にか、突き上げられるに任せていた千沙ちゃんの腰は、より気持ちいい場所を刺激してもらおうとするかのように自らくねっていた。それが、突き込む俺の先端に絡みつき、鮮烈な刺激を与えていく。
俺の方もそろそろ限界だった。突き上げる勢いを強め、より強烈に千沙ちゃんの弱点を抉っていく。
「くぁあああっ！ 千沙、もう、もうダメ……来る、来ちゃう！ ああああっ、イ、イく！ イきますぅうううううっ！！」
俺にぎゅっと抱きつきながら、千沙ちゃんは俺の言いつけ通りに絶頂を告げた。同時に俺も、先端から溜まりに溜まった白濁を弾けさせていた。熱い汚液が精道を駆け上がり、千沙ちゃんの胎内に解き放たれていく。俺は千沙ちゃんの腰をぐっと抱き寄せ、最奥部に先端を押し込んで射精を続けた。
「にゃああ……熱い…奥……お腹の中…いっぱい……千沙の…中……」
千沙ちゃんは精を注がれるたびにぴくっぴくっと震えながら、うわ言のように呟いていた。
俺の射精は、自分でも驚くほど長く、大量に続いた。…考えてみると、エロ漫画描いてはいたが、ここんとこ自分でしてなかったような……。相当溜まっていたようだ。
千沙ちゃんが魅力的だったせいもあるだろうが。
それにしても……初めてでイくとは思ってなかった。千沙ちゃん、素質あるかも…。
主観的には、しばらく俺と千沙ちゃんの時間は止まっていた。
固く抱き合ったまま、絶頂の余韻に浸る。
やがて、白く溶け合っていた意識が戻り始める。
千沙ちゃんは抱きつく力を緩め、はぁ――――っ、と長い吐息をついた。
「千沙ちゃん……気持ちよかった？」
自ら絶頂を告げているのだから改めて聞く必要もないのだが、俺は白々しく訊ねた。
「あ……はい。すっごくよかったです。千沙、溶けちゃったかと思いました……」
頬を染めて心情を吐露する千沙ちゃんは、大変可愛かった。目尻には苦痛のではなく、愉悦のためだろう涙が光っている。
だが――そろそろ、ギロチンの刃を落とす頃合だ。
「俺も気持ちよかったよ。――これで千沙ちゃんは俺のものだよ。いいね？」
「はい。千沙は、お兄さんのものです」
恥ずかしそうに微笑む。
可憐な微笑。
俺は、その笑顔を破壊する一言を告げた。
「そうだよ。千沙ちゃんは、俺――四堂和巳のものだ」
数瞬の間――千沙ちゃんは、俺の言葉が理解できないようだった。
次第にその表情に混乱が広がる。
「――え？ お兄さん、今、何て……？」
聞き違いか、と言う風にあいまいな笑みを浮かべる千沙ちゃんに、俺はとどめの言葉を囁く。
「わからないかい？ ――俺は、千堂和樹じゃない、って言ってるんだよ」
千沙ちゃんの笑顔が強張る。氷点下の空気に曝され、急速に凍り付いていくかのようだ。同時に、甘く火照っていた心が冷えていくのが手に取るようにわかった。
それでも、最後の可能性に縋るように、千沙ちゃんは震える声で呟いた。
「お、お兄さん――何の、冗談、ですか……」
冗談、ですよね……？
泣きそうに引きつる表情がそう訴えている。
「冗談なんかじゃないさ。ほら――覚えてないかい？ この間の入稿のとき、盛大に俺の原稿を落っことして踏みつけて行ってくれたじゃないか」
ぎしり、と千沙ちゃんの表情が強張る。言われて思い出したのだろう。あの『千堂和樹らしからぬ』俺の原稿を……。
よくよく考えれば、あんな漫画を『千堂和樹』が描くわけがない。それじゃ、まさか本当に――？
と言う千沙ちゃんの思考の流れを追うのはいとも容易かった。…表情の読みやすいコだ。
ようやく事態が腑に落ちたのだろう。血の気が引いた千沙ちゃんの顔が、悲痛に歪み、絶望に塗り潰されていく。対照的に俺の顔には、我知らず会心の笑みが浮かんでいた。
そうだ千沙ちゃん、俺は、キミのその顔が見たかったんだ――。
「あ……あ、ああ……ひっ――ひゃ、にゃあああああっ！ イヤぁああああああああ――――――っ！！」
絶叫。
頭を激しく左右に振るたびに、涙の滴が舞い散る。――綺麗だ。
千沙ちゃんは泣き叫びながら俺を押しのけようとするが、果たせない。
俺の肉槍は早くも復活し、未だに千沙ちゃんを貫いていたからだ。千沙ちゃんを踏みにじる黒い欲望に力を得て、それはむしろ先程よりも固く大きく膨張を遂げたような感覚があった。…実際はどうだか、自分ではわからないが。
千沙ちゃんはそこに自分から座り込んだ格好で、全体重で俺を飲み込んでいた。この状態で、俺を突き放せるわけがない。そこに気付いてまだ定まらない腰を上げようとする千沙ちゃんだが、それは俺が許さない。その細すぎる腰を押さえ、腕の重さだけ乗せる感じにすると、それだけで千沙ちゃんは身動き取れなくなった。
「ああ……ああああ………」
泣きながら腰をよじるが、それがかえって俺のモノにしゃぶりつき、快感を与えるような動きになっているのには気付いていない。俺は千沙ちゃんの肉襞が絡みつき左右にくねるのを楽しみつつ、耳元に唇を寄せた。
「どうして嫌がるんだい？ 千沙ちゃん。今さら暴れたって――千沙ちゃんが、俺のものになったのは、変わらないよ」
びくっ、と動きが止まる。大きな目をさらに見開いて、脅えたように俺を注視した。
「だってそうだろ？ 千沙ちゃんの処女は俺がもらっちゃったし、千沙ちゃんだってそれで気持ちよくなって、俺の精液たっぷり注がれてイっちゃったじゃないか」
それは、俺の刻印を刻まれたと言うこと。
膣射しされてしまった事実とその意味が頭に染み込むにつれて、千沙ちゃんの顔に浮かんでいた絶望の色が濃くなっていく。
「あああ…千沙、千沙ぁ……そんなぁ…」
不意に表情が虚ろになった。堰が切れたように涙があとから溢れている。泣くことしかできない人形のようだ。気を失ったわけではないようだが、察するに、あまりに過酷な状況に耐え切れず、心が過負荷を起こしてしまったのだろう。これが現実だと認めるのをやめてしまったのかもしれない。
心を壊してしまっては元も子もない。俺は千沙ちゃんの背をそっと抱き、精一杯優しい声で囁いた。
「大丈夫だ。大丈夫。俺が千堂和樹じゃないからと言って、そんなに嘆く必要がどこにあるんだい？ だって、千堂は千沙ちゃんが困っているときに助けてくれなかったじゃないか。怖い目に遭っているときに、そばにいてくれなかったじゃないか。千沙ちゃんのそばにいて、助けてあげられたのは、千堂じゃなくて俺だ。そうだろう？」
繰り返し言い聞かせると、表情が少し動いた。まだ半分心のブレーカーが落ちた状態のようだが……。さらにしつこく続けるうちに、千沙ちゃんは困ったような顔で小さく頭を振り始めた。
「でも…でも、千沙…」
だいぶ自失から立ち直ったようだが、まだまともな思考力は回復し切っていない。この場合好都合でもあるが。今のうちに、しつこく引きずっている千堂への想いを断ち切った上で、千沙ちゃんに対する俺の権威ってのも印象付けられれば理想的だ。
「千沙ちゃん。そう言えば、俺の原稿を台無しにしてくれたお仕置きがまだだったよね」
優しく言い聞かせる口調は変えずに、俺は今までと正反対の事を言い出した。
「え……？」
不安げな表情で見上げてくる千沙ちゃんの片足を捉まえて、頭より高く差し上げた。
「にゃあ…っ？」
困惑の声。千沙ちゃんの関節は柔らかく、苦しそうな姿勢も無理なく受け入れる。そのまま両足を束ねるように倒した。自然に横向きになる。千沙ちゃんの脇腹を支えながら、今度は反対側の足を掴んで、ぐるっと外回しに開いた。
「ひああっ！」
快美の声。千沙ちゃんは俺に貫かれたまま、１８０度向きを変えていた。正面で向き合っていたものが、千沙ちゃんを背中から抱き込む感じになる。当然、千沙ちゃんは体内を俺の怒張で激しく抉られる格好になった。俺はそのまま掴んだ足を俺の背中の方へ流し、千沙ちゃんの上体を俯せに倒した。無論、繋がったまま。
「くぅんっ…にゃぁあん…」
明らかに感じていた。…もう膣内感覚を目覚めさせたのか？ 半ば無意識状態だから、余計に反応が直截的に現れているみたいではあるが。
千沙ちゃんは腰だけを俺の腰に乗せた格好で、手をついて起き上がることもせずにくにゃりと伸びている。…ノビをする猫のような姿に見えなくもない。
反り上がろうとする俺の肉根が、千沙ちゃんの膣道を腸側へ向けてぐいぐい押し上げている。相変わらずきつめだし――俺の方がたまらない。
「お仕置き――いくよ」
「にゃ……？」
これから、千沙ちゃんにまた『俺の印』を刻むのだ。俺の背筋をぞくぞくと黒い期待が走った。襞を抉られて腰を揺らす千沙ちゃんは、何が起こるのかまったく理解していない。小刻みに揺れる小さなお尻をめがけて――俺は、音高く掌を打ち付けていった。
ぱぁん――！
景気のいい音がした。
「ひぁ――！ な、何……！？」
一気に覚醒した千沙ちゃんが状況を掴めずにいるうちに、俺は二度三度と続けて尻を叩いた。
「ああっ…くぁ…ひん！」
可愛い悲鳴を上げてのたうつものの、俺の肉串に深く刺し貫かれているため、逃れることはできない。俺は容赦なく尻打ちを続けた。
「やっ…ああ…ひゃん…」
尻を叩くたびにその衝撃が俺自身に伝わり、半瞬遅れて千沙ちゃんの膣肉がぎゅっと引き締まり、俺を絞り上げる。正直、たまらなく気持ちよかった。俺はその間接的な衝撃と締め上げの快感を味わうため、何度も千沙ちゃんのお尻に掌をぶつけていった。
「あっ！ やっ、くぁっ！ にゃぁん！」
やがて、千沙ちゃんの悲鳴が明瞭になり始める。どうやら本格的に意識が戻ったらしい。身をよじって痛がるが、実のところ、そんなに力を入れて叩いてはいない。そもそも体勢的に思いっきりぶてる位置にはないのだ。だが、『悪いことをしてお尻を叩かれている』と言う図式そのものが、千沙ちゃんの精神的な苦痛を増幅しているようだった。
大して力を込めなくとも、何度も何度も叩いていれば、当然のように千沙ちゃんのお尻は真っ赤に染まった。太鼓のように叩き続けていた手を休め、真っ赤に腫れ上がった千沙ちゃんのお尻を優しく撫でてやる。
「はふぅ……」
神経が剥き出しになった心地だろう肌を癒すように撫でられ、千沙ちゃんは安堵の吐息を洩らした。緊張していた肢体から力が抜けるのを見計らって、俺はさらに力を強めた一撃を見舞った。
ぱぁあん――！
「ひゃあああっ！？」
「――どう？ 反省してる？」
尻打ちを続けながら訊ねると、千沙ちゃんは必死で頭を上下に揺らした。
「しっ、してます。反省してますぅ！ ごめんなさいっ、ごめんなさいでしたぁ！」
おそらく何を咎められているのかもわかってはいないだろう千沙ちゃんは、痛みから逃れるためにほぼ反射的に俺に迎合してみせた。
「そうか。なら、悪いことをした罰は、大人しく受けなくちゃいけないね」
「あああっ！ そんなぁ……許してぇ、許してくださぁい……！ あっ、あぅ！」
時々休んでお尻を撫でたりしながら叩き続けていると、千沙ちゃんの声色が変化し始めた。
「あっ……あぅんっ……ふわっ……ゃん…くんっ！」
背中に汗をにじませながらくねくねと身をよじる様は、痛みを逃がすためと言うよりはむしろ、刺激に耐えかねてと言う風に見える。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
腰を捏ねる動きは徐々に大きくなり、俺を襲う締め付けもそれと共に律動的になってくる。
……ええと、これは――もしかして――？
俺は「まさか」と思いつつも、右手を頭の上まで振りかぶって――それまでの穏やかな打擲とは一線を画する、強い一撃を思い切り叩きつけてみた。
ばしぃん！
今までとは違う重い打撃音。
途端――ぎゅうっ…と激しい収縮が俺の肉柱を締め上げ、千沙ちゃんの背をびくびくっと痙攣が走った。
「……ふわぁあああああ―――ッ！！」
一拍置いて、千沙ちゃんは甲高い「よがり声」を上げ――ぱたりと脱力した。
え、嘘。
イっちゃったの？ 今？
自分で試しておいて何だけど、俺はびっくりして机に頬をつけた千沙ちゃんの横顔を見つめた。頬は上気し、あえかに開いた唇からはせわしない息と共に一筋唾液が零れ落ちる。瞳はとろんと蕩けて、明らかに絶頂を味わった表情に見えた。
千沙ちゃんって――マゾっ気あったんだ……。
さっき初めてでもイっちゃったのは、そのせいでもあったんだろう。思わず納得する。
だが、そうとわかれば遠慮はいらない。
一応懐柔してからだが……。
俺は手を伸ばし、千沙ちゃんの頬を撫でながら言い聞かせた。
「千沙ちゃん。俺の言うことが聞けなかったら、またお仕置きするからね。だって千沙ちゃんは俺のものなんだから。そうだろう？」
もう何が何だかわからなくなったらしい千沙ちゃんは、喘ぎながら小さく、だが確かに頷いた。
「ふぁい……千沙……お兄さんの言いつけには…逆らわないですぅ……」
「よしよし。そうやっていいコにしてれば、可愛がってあげるからね。とりあえず、またイかせてあげるよ」
そう言って、俺は千沙ちゃんの腰を抱え上げるように膝立ちになった。
「ひぁ…っ」
姿勢が変わったことでまた膣襞を抉られ、千沙ちゃんが甘い悲鳴を上げる。やっぱり膣内感覚にも目覚めかけているように思える。
俺は後背位の態勢で、いきなり激しい腰使いで千沙ちゃんの中を突き上げ始めた。
「あっ！ にゃああっ！ はっ！ はげしっ――！」
――まあ「イかせてあげる」などとは言ったが、実のところ俺の方がもう我慢できない状態なのだった。
ぱんぱん、と音を立てて俺の腰が千沙ちゃんのお尻にぶつかる。それは尻打ちの続きのようで、今マゾの絶頂を極めたばかりの千沙ちゃんは、すぐにもまた快楽に打ち震えてきた。それを見越して乱暴にしているわけだが。
きゅうきゅうと絡み付いてくる襞を引き剥がすようにして肉棒を抽送していると、力ずくで女の子を犯している実感が湧く。そう、俺は今千沙ちゃんを犯しているんだ――。
もともと興奮し切っていた俺は、すぐにも頂点に達してしまいそうだった。が、必死で堪え、千沙ちゃんを先に絶頂に追い上げるべく腰を振る。角度を変えて先端が当たる位置を変えたり、押し込んだまま腰をよじって中を抉り回したりと色々変化もつけてみる。
「はうっ……あうっ」
工夫した甲斐があったのかどうか、千沙ちゃんは次第に反応を強め、締め付けもまたきつくなってきた。だんだん高まってきたようだ。
千沙ちゃんの弱点を思い出し、俺は千沙ちゃんにのしかかるようにして、先端で千沙ちゃんの膣の体正面側を擦り上げるようにしてみた。
「あああっ……あああああ―――っ！！」
それがとどめになり、千沙ちゃんはびくん！ と強くのけぞると、ぎゅうっと俺を絞り上げつつ絶頂に達した。
「…くぁっ！」
たまらず苦鳴を発し、俺も堪えに堪えていた欲望を解き放った。千沙ちゃんの一番奥まで叩きつけて精を放出する。締め付けてくるのを無理やり動かして、射精しながらも何度も先端で膣奥を突く。かなりの衝撃に襲われているらしく、千沙ちゃんはその度ごとにびくんびくんと大きく跳ねた。
動かすうちに奥の方で先端が何かコリコリした部分に触れ、それが気持ちよくて俺はことさらそこに擦りつけた。
「――――っ！！！」
千沙ちゃんはエビのように背を逸らし、びくびく痙攣した。そこを責められ、またイったらしい。
――二度目とは思えないほどたっぷりと精液を注ぎ込み、俺は荒い息をつきながら千沙ちゃんに覆い被さっていった――。
まだまだヤれそうな気はしたものの、俺は千沙ちゃんの中から逸物を抜き取った。考えてみれば、処女を破ってからずーっと入れっぱなしだったっけ。
お尻だけ上げて俯せに潰れている千沙ちゃんの内股は、千沙ちゃん自身の愛液でぐっしょり濡れ、テーブルまで垂れ落ちている。…こんなに溢れさせてたんだ。濡れやすいんだな、千沙ちゃん。
千沙ちゃんのつつましかった蕾は俺の手で無理やり開かされた形をまだ保っていて、痛々しく充血している。見るうちに、肉孔の奥からどろっと白く濁った液が溢れ出し、ゆっくりと内股を伝い落ちていった。一部に、ほのかに朱が混じっている。多分これが純潔の証だろう。
圧倒的な征服感が込み上げる。俺は改めて、千沙ちゃんを俺のものにした感慨に耽った。
テーブルを降り、千沙ちゃんの上体を起こして胸に抱く。
「…気持ちよかっただろ？ 千沙ちゃん」
訊くと、こくりと頷いた。何だか普段よりもさらに幼い動作だ。
「千沙ちゃんは俺のものだ。千沙ちゃんを守ってあげられるのは、千堂じゃなくて俺なんだから。――いいね？」
「…ふぁい。千沙は、お兄さんの、ものです…」
俺が顔を寄せると、千沙ちゃんはそっと目を閉じる。俺はそっと唇を重ねた。
千沙ちゃんと、『俺』――四堂和巳との、最初のキス。千沙ちゃんが俺を俺と知って受け入れた、その証だった――。
代々森駅前。
連れ立って歩く制服姿の数人の少女達の中に、ひときわ小柄な後ろ姿を見つけ、俺は愛用のボロい軽自動車を歩道に寄せた。車を買い換える友人から３万で譲ってもらった格安の車で、あちこちガタは来ているのだがそれなりに走る。生意気にパワーウインドウで、助手席側の窓も運転席の操作で開けることができた。
助手席の窓を開け、俺は声をかけた。
「千沙ちゃん」
ぴくっと反応し、振り返る。
「あ、お兄さん」
おずおずと微笑んだ。
「え、何？ ダレ？ 千沙のカレシ？」
「うそー、千沙が！？」
「え、マジ？ ……しょっくぅー、まさかこのコに先を越されるとは……」
「お兄さんって言ったよ？」
「でも千沙、兄弟はいなかったはずだから」
「やっぱカレシ！？ 年上の？」
「車乗ってるってことは１８歳以上でしょ？」
「車見る限りカネはなさそーだけど、カオはそこそこいいんじゃない？」
すぐ横の女の子達が騒ぎ始めた。…本人を目の前にして品定めしないで欲しいんだが…。
「あ、ごめん。友達と一緒だった？」
「いえ…後は帰るだけだったですから…」
家の借金が軽くなったとは言え、真面目な千沙ちゃんはだからと言って友達と寄り道をすることもないらしい。今日はバイトもない日のはずだ。
「でも邪魔しちゃ悪いか」
女の子達に視線を向けると、彼女達は満面の作り笑顔で千沙ちゃんを押し出してきた。
「いえいえ〜。こちらこそ、お邪魔でしょうから〜」
「どーぞどーぞ、持ってってください、おにーさん」
「後で話聞かせろよ、チサぁ〜」
「…オトコ……千沙にオトコ……」
「こらミヤ！ いつまでも呆けてんな、行くよ！」
「千沙〜、がんば〜」
「にゃああああー！？」
……わけがわからないうちに、千沙ちゃんは俺の車の助手席に納まっていた。いや、千沙ちゃんだけでなく、俺も……。
千沙ちゃんの級友一同（おそらく）は、千沙ちゃんを俺に押し付けて風のように――もとい、嵐のように去っていった。
俺は千沙ちゃんに苦笑を向けた。
「……それじゃ、送って行くよ」
「にゃああ……お願いします……カズミお兄さん」
顔を真っ赤にした千沙ちゃんは、困り顔で頷いた。
和巳お兄さん、か。車を出しながら、俺は訊いてみた。
「――すぐ、俺だってわかった？」
「はいです」
「どうして？ 何か見分け方でもあった？ 俺でも千堂の写真見ると混乱するんだけど」
「うーん……よくわからないですけど、何となくわかったです」
自分でも首を傾げながら、だがきっぱりと千沙ちゃんは言った。
――？ 何だかわからないが、見分けてくれるというならまあ文句はない。それなら……。
「……帰る前に、俺の部屋に寄っていく？」
誘ってみると、千沙ちゃんは耳まで真っ赤になって、だが頷いた。
赤くなるというのは、俺の言う意味を正確に理解したからだろうが……不思議なほど聞き分けがいいのは、何故だろうか……？
「さ、上がって」
「お邪魔しますです」
千沙ちゃんを部屋に上げると、珍しげにきょろきょろ見回した。
俺の部屋は１ＤＫの学生向けアパートだが、窓の外がすぐ大きな道路に面しているためか、防音だけは妙にしっかりしている。まあそれだけが取り柄で、後はごくごく当たり前の物件だ。築１０年だが、前の住人が部屋を乱暴に使ったので俺が入居する前に一度簡単にリフォームしたそうで、内装が綺麗なのは嬉しい。
オタクらしく、タンスがあるべき位置には天井近くまで達するでかい本棚があり、中身がぎっしり詰まっている。服は、ベッド下収納の半分だけにしかない。残り半分は無論、本だ。
…ちなみに、今日は最初から千沙ちゃんを連れ込む計画だったので、普段床が見えないほど散らかっている部屋も、完璧に片付けてあった。
普段原稿を描くガラステーブルのそばのクッションに千沙ちゃんを座らせ、俺は冷蔵庫を開けた。
「ホットとコールド、どっちがいい？」
秋口で風はやや冷たいが、日差しは強い。車で移動したし、室内なら冷たいものの方がいいかな。千沙ちゃんの返事も冷たいものとのことだったので、俺は冷蔵庫からオレンジジュースを出した。ミキサーで氷を砕き、ジュースといっしょに大き目のコップに入れる。ついでにバニラアイスを浮かべ、オレンジスライスをコップの端に噛ませれば、はい、簡単オレンジフロートの出来上がり。スプーンとストローをつけて千沙ちゃんに出す。
「はい、どうぞ」
「うわぁー。凄いです」
千沙ちゃんはいただきます、とお辞儀をしてから、嬉しそうにオレンジフロートに口をつけた。
「おいしいです♪」
既製品を組み合わせただけだが、そう言ってもらえると、こちらとしても手間をかけた甲斐がある。俺は自分用に烏龍茶を注ぎ、厚手のカーテンだけ開けて日差しを入れ、千沙ちゃんの向かいに座った。ベッドを背にしてにこにこ笑顔でアイスをすくう千沙ちゃんを眺める。
ふと思いつき、俺はスケッチブックを取り出して、千沙ちゃんの素描を始めた。こと女の子に関する限りは、そこそこ画力はあるつもりだ。何枚か描いた頃、千沙ちゃんは顔を上げて微笑んだ。
「ごちそうさまです〜♪」
お、いい顔。そのままスケッチする。――と、俺がしていることに初めて気付いたらしい千沙ちゃんは、ぎしり、と固まった。当然笑顔も強張る。うーむ、いい表情だったんだが。感じだけは掴んで描いたから、まあいいけど。モデルには向かないタイプだな、千沙ちゃん……。
もちろん今回の主目的は違うことだから、いいけど。俺はスケッチブックを置いて立ち上がり、テーブルを回り込んで千沙ちゃんの傍らのベッドに腰掛けた。
「おいで、千沙ちゃん」
「――はいです」
硬直が解けた千沙ちゃんは、大人しく俺の足元に身を寄せた。髪を撫でたり頬を撫でたりすると、くすぐったそうにしながらもされるがままになっている。小さな唇を指先でそっとなぞる。
「口を開けて」
開いた唇に指先を含ませた。
「舐めてごらん」
指示すると、千沙ちゃんはちゅっちゅっと音を鳴らしながら、俺の指にしゃぶりついた。無心に吸い付き舐める様は、赤ん坊か、子猫を思わせる。俺の指を舐めながら、千沙ちゃんは甘えるように俺の膝に頬を擦り付けてきた。瞳は高まった情感を示して潤み、頬にはうっすら朱が浮かんでいる。
――ちょっと不気味なほど従順な千沙ちゃんの様子に疑問を持った俺は、それとなく色々聞き出してみることにした。
いくつか質問してすぐに気付いたのは、あの日の強烈な体験が、千沙ちゃんの中で絶対的な刷り込みとなっているらしいと言うことだ。
「千沙は、お兄さんが千沙を欲しいって言ってくれたから、千沙でいられるんです。いていいんです。千沙を助けてくれたのはお兄さんだけで……だから、千沙の全部はお兄さんのものなんです」
心の内をそう吐露して縋るように見上げてくる千沙ちゃんを見つめ、俺は感情のままに放たれた少々難解な言葉を読み解いていった。
自分が無価値だと自責の念に駆られたとき、俺が千沙ちゃんを自分のものにしたいと言ったことが、どうやら千沙ちゃんの新たな価値基準となっているようだった。つまり、千沙ちゃんの価値は、俺のものである点にあるのであって、千沙ちゃん自身にあるのではない――自分を否定した千沙ちゃんにとって、俺による肯定というものが自己の根幹、自分の値打ちを認められる唯一の基準となってしまったと、そう言うことだろうか？ …解釈してて俺にもわからなくなってきたが。
千沙ちゃんを助けたのは千堂ではなく俺だ、と吹き込んだのは俺自身だが……千沙ちゃんの中では、先ほどの価値基準の崩壊と再建に結びつき、『俺一人だけ』が千沙ちゃんの味方であるように誤って解釈されたらしい。…いや、誤解を正すつもりはさらさらないが。好都合だし。
「俺が千沙ちゃんを捨てたらどうする？」
足元に擦り寄って甘える千沙ちゃんの髪を撫でながら、からかい混じりにそう聞いてみた。口調から冗談だというのは読み取れたはずだが、千沙ちゃんの目には見る見る涙がにじんできた。
「にゃああ……千沙、お兄さんに捨てられたら生きていけないですよ。千沙はお兄さんのモノです。千沙、いい子にするですから、ずっと側に置いて欲しいです」
「わかったよ。その代わり、俺の言いつけは何でも聞くんだぞ」
「はいです！」
即答し、花が咲いたような笑顔を見せる。可愛い。
と、千沙ちゃんはふと表情を曇らせ、不安気に見上げてきた。
「どうしたの？」
「にゃあ…。千沙、お兄さんのものですけど……お兄さんは、千沙でいいですか？ 千沙、お兄さんとは釣り合わない気がするです」
俺はちょっと考えた。これは、立場を明確にするいい機会かもしれない。
「――つまり、『彼女』には相応しくないって？」
こくん、と頷く。ここで「そんなことはない」と言って恋人にしてしまう選択肢もあったが――正直、非常に心惹かれたが――それでは、立川郁美を堕として同人活動を継続する計画に支障が出る。俺は敢えて心を鬼にした。
「それなら大丈夫さ。俺は千沙ちゃんを、恋人にするわけじゃないからね」
「え？ それなら、千沙はお兄さんの何ですか？」
「奴隷さ」
言い切った。
「ど……奴隷？」
さすがに唖然とする千沙ちゃんを膝の上に抱き上げ、キスした。――オレンジの味。腕の中にすっぽり抱え込み、髪や頬を優しく撫でながら、呪文のように耳元に囁きかける。
「そうさ。千沙ちゃんの心も体も、全部が俺のものだよ。俺だけのものだ。他人に所有される人間を何て呼ぶ？ 奴隷だろう？ だから千沙ちゃんは、俺の命令に絶対服従しなきゃいけないんだよ。逆らったら、きついお仕置きをしてあげる。奴隷の躾は飼い主の義務だからね。その代わり、もう怖いことは何もない。何も心配しなくていいんだよ。奴隷を守るのも、主人の義務だから」
子守歌のように言い聞かせるうちに、千沙ちゃんの目から意思の光が薄れてきた。
「奴隷……千沙は、お兄さんの、奴隷……」
元々、半ば俺に隷従した状態になっていた千沙ちゃんは、方向性を明確に示してやるだけで、容易く自己暗示にかかってくれた。
「そう。千沙ちゃんは俺の奴隷。大事な奴隷だよ。千沙ちゃんは……千沙は、もう俺のことだけ考えていればいい。俺の命令にだけ従っていればいい。そうすれば一生、大切にしてあげる。可愛がってあげる。俺だけの千沙。俺の可愛い奴隷の千沙」
「千沙は、奴隷。お兄さんは、千沙の、大切な御主人様」
とろんとした瞳で、自分に言い聞かせるように呟く千沙。頃合を見て、俺は強い口調で呼びかけた。
「――千沙」
服従を強いる響きを持たせた声……の、つもり。
どうやら通用したらしく、千沙ははっと顔を上げて、従順に頭を垂れた。
「はい――御主人様」
俺と千沙の主従関係が確立した瞬間だった。
千沙の首に、真っ赤な革の首輪を嵌めた。大型犬にするような幅広のその首輪は、蒸れたりかぶれたりしないよう通気性のいい柔らかい布で内張りされた『人間用』の首輪で、そのうち千沙に着けさせてやろうと思って用意していたものだったが――まさかこんなに早く使えるとは思っていなかった。
少しきつめに絞める。
「苦しいか？ 千沙」
「大丈夫です。きゅっとしてる方が、御主人様に束縛されてる気がして、嬉しいです」
千沙、マゾっ気あるしな。
俺は千沙を窓際に立たせて鑑賞した。制服姿に首輪というのも、これはこれでいいが…。
「千沙。服を脱ぎなさい」
命令する。
「――はいです、御主人様…」
頬を染めて、千沙は制服の襟に指をかけた。スカートを落とし、セーラー服を脱ぐと、簡素な白の下着姿が露わになる。俺の視線を意識して、千沙はやや固い動きで、ブラを外し、パンツを脱ぎ、靴下を脱いだ。
千沙は一糸まとわぬ裸に首輪だけ着けた姿で、もじもじと立ち尽くしていた。胸と股間を恥ずかしげに腕で覆う。
「隠すな。腕は背中で組んで、脚は肩幅に開くんだ」
無慈悲に命じると、千沙はびくっと震え、頬の色合いを強めた。
「そんな…そんな格好したら、千沙の全部がご主人様に見えちゃいます……恥ずかしいです」
「そうだな。千沙の恥ずかしいところが全部、俺に見えちゃうな」
「にゃあああ…そんなぁ…ご主人様ぁ」
だが、恥じらいながらも、千沙は俺に言われた通りの姿勢を取った。羞恥心を服従心が凌いでいるのだ。…素晴らしい。俺の背筋を黒い充足感が這い登っていく。
俺は千沙の裸身をたっぷりと観察した。
相変わらずほっそりして肉付きは薄いが、腰がきゅっとくびれているので、幼くはあっても子供っぽくは見えない。レースのカーテン越しの午後の日差しを浴びて、もともと淡い色の千沙の体毛が金色に輝いていた。髪、産毛、そして恥丘をうっすらと覆う飾り毛。
――綺麗だ。素直にそう思えた。
恥ずかしさのあまり、千沙は顔をそむけ、目を伏せていた。
「千沙。こっちを向いて、目を開けて。俺を見るんだ。俺だけを」
はっとしたように千沙は俺の目を見つめた。見つめ合ううちに千沙の瞳は陶酔に蕩け、噛み締められていた唇はあえかに開いて熱い吐息をついた。千沙の内股を、つっと牝蜜が一筋伝い落ちる。俺に、主人に見つめられることに、羞恥よりも快感を覚え始めた証だった。
「俺に見られて恥ずかしい？」
「にゃあ…恥ずかしいですけど、御主人様になら……見て、欲しいです……」
嬉しいことを言う。俺はことさら舐めるようにじっくりと千沙の裸身に視線を這わせ、羞恥快楽をたっぷり味わわせてから、言い聞かせるように命じた。
「千沙。今日は、千沙が俺を気持ちよくするんだ」
「にゃ？ どうすればいいですか、御主人様」
「おいで」
足元へ呼び寄せ、跪かせる。順に指示して、俺のズボンの前をはだけさせ、肉根を引き出させた。淫靡な状況に膨張し切っていた陰茎が、千沙の眼前に曝される。初めて間近でそれを目にし、千沙は目を瞠っていた。
「ふわぁ……凄いです。こ…こんなにおっきいですか……」
「コレが、千沙の中に入ったんだよ」
改めて指摘してやると、千沙はびっくりしたように俺を見上げた。俺の顔と肉棒を交互に見遣る。
「こんなおっきいのが……千沙の中に…」
呆然と呟き、下腹を押さえる。
面白いのでそのまま見ていたい気もしたが、それではもったいなさ過ぎる。
「さ、千沙。舐めてごらん」
「……舐めればいいですか？」
「ああ。でも始める前に、『ご奉仕させていただきます』って言うんだよ」
「はい…ご奉仕させていただきます、ご主人様ぁ」
ちょっと甘えたような声ではっきり口にして、千沙はためらいなく俺のものをぺろぺろと舐め始めた。俺はちょっとずつ間を置いて、千沙に舐め方の指示を出す。千沙は敏感に俺の反応を感じ取って、必要以上の指示をしなくても、急速に俺が気持ちよく感じる舐め方を身につけていった。
――基本的にアタマいいんだよな、このコ……。素直すぎるのと頑張りすぎるのが欠点といえば欠点だが、俺にとっては都合がいい特性ではある。
「よし。今度は咥えてごらん、千沙」
「ふぇ？ …咥えるって？」
「コレを口の中に入れてしゃぶるんだ」
「は、入るですか？」
「試してみればいい」
「…はい、御主人様」
千沙は従順に、俺の先端に口をつけた。精一杯唇を開き、肉筒を呑み込んでいく。
「んっ……んむっ…」
苦しそうだが、何とかちょっとずつ口内に収めていった。やがて小さくえずきながらも続けるのを見て、俺は苦笑して制止した。
「最初から無理しなくていい。苦しすぎないところまででいいから」
千沙は涙目で俺を見上げてかすかに頷き、少し頭を引き戻した。口一杯に凶暴な肉を頬張り、せわしなく鼻で息をしながらじっとしている。動けないらしい。
柔らかく温かい千沙の口内粘膜に包まれているのは相当心地よかったが、ちょっと刺激が足りない。
「そのまま舌を動かして」
指示すると、千沙はちろっ、ちろっと小さく肉棒の腹を舐め始めた。
「ちょっとずつでいいから、頭も動かしてごらん」
不思議そうに首を傾げるので、俺は千沙の頭に手を添え、実演してやった。
「――こんな感じだ」
そっと前後に揺する。千沙はすぐに納得し、ゆっくりと俺のものを唇から出し入れし始めた。舌の動きは休めていないので、自然、裏筋をランダムに刺激していく。
お、コレは……けっこう効く。
「唇をすぼめて。時々、吸い付くような感じにしてみて」
もともと小さい千沙の口なので、意識させると途端に『締まり』がよくなった。ちゅうっと吸引されると、思わず吸い出されるままに精液を放ちそうになってしまう。
「うおっ…」
声を洩らすと、何かいけないことをしたのかと思ってか、不安げに見上げてくる千沙。大丈夫だという風に頭を撫でると、快楽の声だったことに気付いたのだろう、千沙の奉仕が急に熱を帯びた。教えた技術と先ほど舐めさせた経験を統合し、俺の弱点を探りつつ、見る間に的確な奉仕を身につけていく。恐ろしい上達速度だった。
うわ…凄い、急に……！ こ、コレはたまらん。上手いフェラってのは、こんなに気持ちいいモンか！？
俺は我慢できなくなり、つい千沙の頭を掴んで引き寄せていた。
「〜〜〜〜！？」
突然のどの奥を突かれ、千沙が口の中で何やら悲鳴を上げるが、今の俺には聞こえていない。急速に極限まで高まった欲望が俺を突き動かし、フェラチオからイマラチオに移行して、千沙の口を犯す。
千沙は苦しげに呻き、身をよじっていたが、やがて俺の行為を受け入れるように、突き込まれながらも舌を使い、唇を引き締め、要所で吸引し始めた。表情は見えないが、腰が控えめにくねっているのを見ると、苦悶がマゾの快楽を引き出したのだろうか。
時間が引き延ばされたような感覚で色々見て取ってはいたが、実際は、千沙の口を犯し始めていくらも経たないうちに俺は精を放っていた。千沙の健気な奉仕がとどめになったのは言うまでもない。千沙の喉奥に先端を触れさせ、どくどくと汚濁を注ぎ込む。腰の後ろが痺れるほどの快感だった。
射精が終わり、息をついてふと見下ろすと、びくっびくっと千沙の背が痙攣している。
――まさか窒息した！？
慌てて腰を引こうとするが、果たせない。見ると、千沙の手が俺の腰に回され、ぎゅっと抱きついていた。
……えーっと？
すぐに千沙の震えは落ち着いた。ごくっ、と嚥下の音が聞こえた。何も言わないうちから、口内に溜まった俺の精液を飲んでいるらしい。
ようやく千沙は顔を上げた。真っ赤に染まり、とろんとした表情を見ると――もしかしてと言うか、どうやら喉を犯され、射精されてイってしまったもののようだ。
うーむ、本当に、マゾっ気が強いというか、奴隷向きと言うか……。まあ、大事無くてよかった。びっくりしたよまったく。
「…千沙。大丈夫？」
千沙はこくりと頷き、はあっと吐息を洩らした。萎えかけた俺の性器に目を留め、先端から精道に残った白濁がにじんでいるのに気付くと、唇を寄せてちゅうっと吸い付き、吸い出した。
「おっ…」
俺も射精後で敏感になってるだけに、これはたまらん。気持ちいいぞ。
千沙は精液を吸い尽くすと、俺の肉棒を清めるようにぺろぺろ舐めた。
「…にゃぁ…。ごちそうさまでした…御主人様。千沙のご奉仕、気持ちよかったですか？ あれでよかったですか？」
幼い容貌に似合わない放恣な笑み。俺は千沙の髪をぽんぽんと叩く。
「ああ、いいぞ、千沙。千沙は奴隷の素質があるな」
「ホントですか！？」
今度は子供っぽい笑顔。俺は苦笑した。…ちなみにホントだ。奉仕そのものにも悦びを見出すタイプみたいだし。掘り出し物かも知れん。――身贔屓の可能性もあるが。
「さあ、今度は千沙を可愛がってやるからな」
「あ…御主人様ぁ…」
俺は千沙を抱き上げ、ベッドに横たえた。
千沙の最後の『後始末』のせいで、どうにも治まらないほどまた昂ぶってしまったことは……千沙には内緒だ。
俺は既に愛撫の必要もないほど準備が整っている千沙の秘所に、一気に突き立てていく。
「ふああああああん……」
千沙は甘い嬌声を上げた。
「見事、塚本千沙を手懐けたようだな。ネタはあったにもかかわらず、ことさら脅迫するでもなく懐柔してのけるとは、素晴らしい手腕だ。さすがは我が朋友」
訪ねて来た大器は、俺が出した緑茶を一口含むなり、唐突にそう言った。
俺は飲みかけていたお茶を噴いた。
「お、おおおおおお前……！？」
「ん？ 何でそこまで知ってやがる、と言いたいのかね？ ふ、水臭いぞ、盟友。手を貸した結果どうなったものか、気になるではないか？ 無論調べたとも」
いや――確かに協力してもらったわけだし、結果報告を兼ねて呼んだわけなんだが……。どう調べりゃそこまで詳細に把握できるんだ……？ 侮れんヤツ…。
「それで、拙者を呼んだのはその報告のためかね？」
「い…いや、まあそれもあったんだが。それよりもう一つ、重要なことに気付いてな」
「ほう？ 言ってみたまえ」
「ああ」
頷き、俺は以前大器にもらった資料の中から抜き出した写真をガラステーブルに置いた。
優しげな笑みを浮かべる眼鏡美人。こみパスタッフの牧村南だ。
「彼女がどうした？」
「つまりだな……仮に首尾よく立川郁美ってコを排除して、無事同人活動を再開できたとする。だがもし、またこの人に一方的に勘違いされて販売停止なんか食らった日には、結果的に本は出せない」
「…なるほど」
虚を突かれたように大器は黙り込んだ。ややあって口を開く。
「…すなわち、まだ手が出せない立川郁美の前に、この女を排除する必然性が生じた、と言うことだな」
「まあ、端的に言ってそうだ」
「こともなげに言うではないか。どうやらすでに何か計画が立案してありそうだな？」
「計画ってほどご大層なもんでもないが」
前置きして、俺は簡単に説明した。
「…で、数時間話してもバレない程度に、二人の関係が知りたい。それと２、３用意して欲しいものがある」
俺の話を聞き、大器は軽く頷いた。
「いいだろう。調べるし、用立てよう。とりあえずそれだけか？ ――では、直ちに取り掛かろう」
大器は携帯電話であちこちに連絡を取りながら、風のように去っていった。
さて――俺も多少準備がある。あいつに協力を頼まなきゃな……。
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