第三章 牧村南・肛虐調教



 いつもの場所――学校裏手のプレハブに奴はいた。この場所が奴の『巣』であることは知れ渡っており、他に人影はない。何でも、この場所に巣食っていた不良学生を駆逐して奪い取ったとか言う話を聞いたが…噂の真偽はともかく、奴がこの場所に色々と私有物を持ち込み、自分の縄張りであることを無言で主張しているのは確かだった。
 肩にガクランを羽織っている以外、鍛え抜かれた上半身を覆うものはない。奴は無造作に10キロはありそうなダンベルを片手で上げ下げしながら、鋭い目付きでじろりと俺を睨んだ。
「お前か。何の用だ?」
 別にケンカを売られているわけではない。この男は、普段からいつもこんな風なのだ。
「頼みたいことがあってね」
「ふむ。聞こう」
 言葉少なに、奴はプレス用のベンチの端を示した。座れと言うことらしい。このベンチを始め、プレハブの中はトレーニング用の器材が溢れていた。肉体を鍛え上げることが、こいつの唯一と言っていい趣味なのだ。俺と話す間にも、ダンベルの動きは片時も止まっていない。
 ベンチに腰を下ろし、俺は用件を切り出した。
「実は――」


「こんにちは」
 こみパ事務局をのぞくと、デスクに向かっていた女性がこちらを向いた。
「あら、和樹さん。いらっしゃい。今日はどうしたんですか?」
 眼鏡の奥でふわっと柔らかい笑みを浮かべるのは、牧村南さんだ。『和樹』と呼ばれたのを敢えて訂正せず、俺は笑みを返した。
「ちょっと、聞きたいことがあって。少しいいですか?」
「ええ、構いませんよ。何でしょうか?」
 机にはうずたかく申込書の封筒が積まれているが、彼女は仕事を中断し、こちらに体ごと向き直った。
 しばらくどうでもいいような事を質問していると、午後6時のチャイムが街に流れた。
「南さん、この後は?」
 素知らぬ顔で聞いてみる。
「ちょっとまだやることがあるので、今日は残業していきます」
 俺は申込書の山に今気付いたような顔をして、バツが悪そうに頭を掻いた。
「あ……済みません、忙しいところで時間取らせちゃって。お詫びに手伝いますよ」
「あら。いいんですよ。参加者に色々便宜を図るのも、私達スタッフの仕事ですから」
 何でもないと言うように微笑む。
「でもそれじゃ俺の気が済みませんよ。何でも言ってください」
「そうですか? そこまで言うんでしたら、手伝っていただきますね」
 彼女は頬に手を当て、笑みを深くした。


「お待たせしました」
 事務局の鍵を閉めて、南さんは外で待つ俺のところにやって来た。
 時刻は既に、夜の11時を回っていた。
 女性の夜の一人歩きは危ないということで、自然、送って行くことになる。
「今日は助かりました。明日、休日出勤でやろうと思っていた分の仕事が、和樹さんが手伝ってくれて片付きました。おかげで明日は休めそうです」
「…何、南さんにはいつもお世話になってますからね。これくらい、お安いご用ですよ」
「うふふっ。それじゃあ、お礼に明日はデートに誘っちゃおうかしら」
「え?」
「私なんかとでは、イヤかしら?」
「そんな、滅相もない! 南さんに誘ってもらえるんだったら、万難を排して行きますとも!!」
「まあ、和樹さんったら……」
 俺のオーバーなリアクションに、南さんは困ったように笑いながらも、満更ではなさそうにしている。
 俺達は明日の予定を話し合いながら並んで歩き、広い公園に差しかかった。
 と――。影が動いた。
「牧村南だな?」
 冷淡な低い声。黒い人影が立ち塞がっていた。とっさに南さんを背後にかばう。脅えたように俺の背中にくっついてくる南さん。
「――誰ですか、貴方は?」
 夜の公園で見知らぬ相手に名指しで呼び止められ、さぞ気味が悪いだろうに、問い質す彼女の声は凛として力強かった。……俺の背中に掴まる手からは、微かに震えが伝わってきていたが。
「俺が誰かなど、どうでもいいことだ。お前に用があるのは俺ではない」
 そう。こいつが現れたのは、周囲に今誰もいないことを教えるためだ……この俺に。
「南さん――離れて」
 俺は緊張した声で告げる。俺の意図を察して――あるいは誤解して――掴まっていた手を放し、数歩離れる南さん。俺は直ちに振り向き、びっくりした顔の南さんに、隠し持っていたスタンガンを押し当てた。
「――――!!」
 びくん、と痙攣して、彼女はその場に崩れた。大器が用意してくれた高電圧の違法改造スタンガンは、彼女の意識を一瞬で奪い去っていた。
 掴まられたままだと、俺にまでスタンガンが効いてしまう。そのために離れてもらったわけだったが……南さんの物分りがよくて、少し助かった。ずっとしがみつかれていたら困っていたところだ。
 人影が外灯の明かりの下に歩み寄ってくる。黒いガクランを肩にかけた大柄な男。今回の件を前もって頼んでおいた俺の友人、立山威蔵(たてやま・たけぞう)である。無愛想で粗暴で、人間相手でも躊躇なくその鍛え上げた筋力を揮う危険極まりない男だが、何故か俺には一目置いてくれている。何故こいつが俺の友人でいるのかは、俺自身にもけっこう謎だ。
 威蔵は用意していた大きなスーツケースを開くと、意識のない南さんの体を素早く押し込み、何事もなかったかのように俺と連れ立って歩き始めた。
 公園脇の路地に、ありふれたワゴン車が停まっている。威蔵はその車の後部のドアを開けると、スーツケースを軽々と放り込み、無造作にドアを閉じた。そのいとも軽そうな扱いに、もしも見ている者がいたとしても、このスーツケースに人間が一人入れられているとは誰も信じなかっただろう。
 助手席のドアを開けて乗り込む。威蔵は後部座席だ。
 運転席に座っていた大器が、ちらりと視線を向けてきた。
「首尾は上々のようだな」
「ああ。嘘みたいに簡単だった」
 我ながら、割とズサンな計画だと思っていたのだが……びっくりするほど上手く運んでしまった。いいんだろうか、こんなことで。
「上等だ。では、行こうか」
 そう言って、大器はエンジンをかけた。
 俺は後部座席のさらに後ろを見た。そこには、南さんを入れたスーツケース以外にも、大量の荷物が積まれていた。万一職務質問されても、これなら「友達の引っ越しの途中です」で済んでしまうのは間違いない。俺が大器に頼んだのは車とスーツケースの手配だけだったのだが…抜かりのないヤツ。
「しかし……今回のはばっちり犯罪だからな。間違っても失敗はできないぜ」
 自分に言い聞かせるように呟く。計画通りとはいえ、俺は今更ながら自分のしたことに呆れ、しかもそれで全くビビっていない自分に苦笑した。
 月曜の朝、牧村南の出勤まで、約56時間。その間で彼女を堕とすことができなければ、ほぼ確実に訴えられ、犯罪者の仲間入りである。
 俺は気を引き締め、次なるステージへ意識を向けた。
 大器の運転する車は、順調に夜の街を走り抜けていった……。


「南さん――起きてください、南さん」
「ん……ふぅ、んん……あふ…」
 電撃による気絶はいつしか自然な眠りに移行していたらしく、俺がそっと揺すると、彼女は可愛く呻きながら薄く目を開いた。
「おはよう、南さん」
「あ…ら? 和樹さん……? やだ、私、途中で寝ちゃってました…? ええと…」
 ふわふわした表情で辺りを見回す。――明日のデートの夢でも見ていたのか、映画を観ながら寝てしまったとでも思っているのだろう。目をすがめるのを見て、俺は苦笑して手を伸ばした。
「眼鏡でしょ、南さん。――はい」
「あ、済みません」
 受け取ろうとするが、手は動かない。俺はそのまま、眼鏡を彼女の顔にかけてあげた。
「ありがとうございます」
 こんなことまでやってもらうのが恥ずかしいのだろう。ほのかに頬を染めて恥じらいの笑みを見せ、彼女は改めて周囲を見渡した。
「――あら? ここは…?」
 不思議そうに首をかしげる。
 簡素な白い壁紙の小部屋。窓はない。南さんは、その片隅に置かれたソファベッドに横になっていた。他の内装品が一切ないため、何かの待合室と言った印象が強い。
 見覚えのない場所にいる自分に困惑しているのがよくわかる。まだ寝起きで頭がはっきりしないのか、記憶と整合しない現状に首をひねっていた。とりあえず身を起こそうと思ったらしい彼女は、何故か腕が動かない上半身を持ち上げ、足を振り落として何とかソファに座った姿勢になり――そこで初めて、自分の姿に気付いた。
「――きゃっ!」
 下着姿の南さんは可愛い悲鳴を上げ、体を隠そうと手を動かした――つもりなのが見て取れた。実際には、その手はまったく動いていない。
「…っ?」
 焦って自分の体を確認しようとする南さん。――ようやく、両手が背中で固定されていることを認識したようだ。
「な――何ですか、これ――? どうなっているんです? 和樹さん」
 ブラ一枚に包まれただけの胸を隠そうとするように身をよじるが、まあ端的にいって無駄な努力だった。大器の資料によると確かトップ86の美乳が、身じろぎするたびにふるふると揺れ、かえって自己主張している。カップサイズはCかな?
「落ち着いて、南さん」
 俺は自分でも驚くほど平静な声を出して、状況が掴めず混乱している南さんの隣に腰掛けた。
「か…和樹さん…」
 恥ずかしそうに首をすくめ、俺からやや距離を取る。あまり赤くならない体質なのか、ほんのり朱が乗ったままなのは変わらず、その代わり薄赤い肌のエリアだけが広がり、肩口にまで微かに血の色を透かせていた。――ちょっと……いや、だいぶ色っぽい。
 俺は逃げるような風情の南さんの肩を抱いて引き戻し、耳元に一見関係ないようなことを囁き始めた。
「南さん。こないだのこみパで、俺に販売停止を食らわしてくれたこと、覚えてる?」
「え……? ――あ、はい。そう言えば…ちゃんと反省しましたか? あの後、大志君達とかお友達が一緒にいたみたいなので、あの場ではお話を合わせておきましたが……だからと言って見逃してあげたわけじゃありませんよ? まさか和樹さんが、わざわざ別名でサークルを取って、あんな本を作っていたなんて……。それは、男の子ですから――お気持ちはわからなくはありませんけれど。でも今、和樹さんは大事な時期だと思うんです。ここで安易にそう言った方面に逃げてしまってはいけない、と思います。和樹さんは――もっともっと、上に行ける人だと思ってますから」
 いきなり真剣な口調で語りだした南さんに、俺は呆気に取られてついつい聞き入ってしまう。――何重もの意味で驚いた。
 まず――未だに、俺と千堂が同一人物であると思っている点。口振りから察するに、どうやらあの日の後刻に千堂とも会っていたようだが、それでもまだ気付いていないとは…。『四堂和巳』と言うのは千堂の変名だとでも思っているようだ。…まあ、俺も何も知らずに言われたらそう思うかも知れんが。名前似てるし。
 それから――ただ「千堂がエロを描いた」(ホントは違うが)ということに怒っていたのではない点。どうやら千堂と、千堂の作品について大いに期待し、真剣に憂えているものと見える。調査報告のときに大器が言っていた「同人活動のすべてを愛する」とか言う表現もあながち間違いじゃなさそうだ。
 さらに――状況を忘れて語りに入ってしまう点。南さん――もしかして、一つのことに夢中になると周りが見えなくなるタイプ? 下着姿で男と密着してること、忘れてません? 俺に説き聞かせようとするあまり、こっち向いて顔を寄せて来るんだもんなぁ。ほとんど唇が触れ合いそうな至近距離だ。
 だが、まあ――今回は、早目に誤解を解いておく予定だった。彼女が千沙ほど単純な性格とは思えないので、俺が千堂と別人と知った上で屈服させないと、後々までしこりが残りそうだからだ。
「南さん。俺、感動しました。そこまで本気で心配してくれていたなんて――」
「あ…あら、やだ、私ったら――わ、わかっていただければ、その、とっても嬉しいです…」
 ようやく態勢の危険さに気付き、桜色の頬をそむける。同じく淡いピンクに色付いた耳朶に、息を吹き込むようにして囁く。
「でもね、南さん。俺、南さんがそこまで心を砕いてくれている千堂和樹とは、別人なんだ」
 きっぱり言い放つ。
 南さんは表情を強張らせ、ぱっと振り向いた。
「…そ、そんな、まさか……」
 唇が震えている。かなりショックだったようだが、まあ、これで――。
「それは――これからも別サークルで参加するのを、見逃せと言うことですか?」
 ――がしゃあっ!
 俺は真横に転倒していた。
「今の自分は千堂和樹ではないので、ああいうものを描いてもいいんだ――そんな勝手な言い分は通りませんよ!? そんな風に自分をだましたって、私はごまかされません!」
 ソファから転げ落ち、床に側頭部を打ち付けたままの状態で、俺はのしかかる精神疲労に身動きできずにいた。
 こ――このアマ、ハナから俺のセリフを信じていやがらねえ――。
 顔だけでなく、声とか喋り方とかも、よっぽど千堂に似てるんかなあ、俺……。
 なおも説教を続ける厳しい声を聞き流しながら、俺はどうやって俺が千堂ではない事実を彼女に理解させるか、などと言う、根本的かつバカバカしい問題に頭を痛めていた。
 ああ――マジ、頭痛ぇ……。
 …………。
 ……頭、ぶつけたせいか。
 俺は肉体的にも精神的にも痛む頭を抱え、何とか体を起こす。
 一気に緊張感が失せたな……。どうしたもんだか……えーと、そう。
 俺はポケットから免許証を取り出し、南さんの目の前に突きつけた。
「あら。和樹さん、免許取ったんですか?」
「…名前。南さん、名前!」
「え、四堂…和巳? …………。――用意周到ですね……こんなものまで用意して。そうまでして、あちらの活動を続けたいんですか……?」
 っがーーー! 哀れむような目で見るなぁ!!
 いい加減怒ったが――いい加減、疲れたな……。
「もういいです。とりあえず、俺は千堂とは別の人間と言うことで話を聞いてください――調べれば、この4月から俺がサークル参加してるのはわかるはずですから」
「まあ……それじゃまさか、最初から……?」
 ……無視して先を続ける。
「エロスの極限を目指して創作活動を続けてきた俺ですが、前回、貴女の一方的な勘違いと決め付けによって、販売停止に追い込まれました。この状況を放置すれば次回また同様の事態が発生する可能性もあり、その防止のため、また、今回俺の自己表現の場を理不尽に奪った制裁をかねて――牧村南さん。この度、貴女を拉致するに至りました」
 はっ、と息を飲む南さん。ようやく、途切れる前の最後の記憶を思い出したのだろう。俺が彼女にスタンガンを押し当てたことを。
「まさか……貴方が、そんなに追い詰められていたなんて――和樹さん」
 ……まだ言うか。ある意味筋金入りではある。そうまで人を信じる、と言うか思い込むことができるのはいっそ立派と言っていいのかも知れん。――俺には迷惑至極だが。
 俺はもはや丁寧に話す気力も失い、ぞんざいに告げた。
「南さん――あんたの知る千堂和樹が、俺がするようなことをする男なのかどうか……たっぷり確かめるがいいさ。――その体でな」
「――あっ!」
 乱暴に立たせると、彼女は表情を強張らせた。ようやく身の危険を感じたらしい。下着姿で後ろ手に拘束され、男に乱暴に扱われているのだから。
 だが…遅ぇ。やっとか。危機感薄いよな、このヒト……。それだけ、『千堂和樹』を信頼しているのかも知れんが……。
 俺は南さんの背中を押して、小部屋の唯一のドアに向かった。彼女の両腕は、背中に回され手首と肘を合わせたような形で、横一文字に筒のような拘束具に包まれ、ベルトでがっちり固定されている。自力で外すのは不可能だ。
 俺は彼女を地獄に誘う扉を開けた――。


「な……ここ……!?」
 そこは、トラス構造の梁が剥き出しになった、高い天井の寒々しい部屋だった。面積はけっこう広く、ちょっとしたテナントくらいはある。やはり窓はなく、人工の照明だけが室内を照らしている。天井のあちこちからチェーンやロープがぶら下がり、コンクリート打ちっ放しの壁や床にもところどころ固定用のリングやフックが打ち込まれている。片隅のラックには、一見しただけでは用途不明の道具類が並んでいる。扉は3つ。後ろに今俺達が出てきたドア、正面に両開きの大き目のドア、右手に普通のドアがある。後ろのドア以外は、どれもいかめしい鉄の扉だ。
 さしもののんきで天然ボケの南さんも、この部屋の禍々しい雰囲気に呑まれてか、言葉を失っているようだった。
「――準備は整っているぞ」
「ひ! ――誰!?」
 突然横手から声をかけられ、南さんは身をすくめた。
 左手のカウチに腰掛けていた人影に目をやり――俺はぐらりとよろめいた。
 中肉中背と大柄な人影。いやまあ、大器と威蔵なのだが。
「……ノリノリだな、お前ら……」
 南さんを連れて来る間待たせていたコイツらは、いつの間にやら、頭部をすっぽり覆って目元と口元だけ開いた、真っ黒い目明き帽を被っていた。ちなみにそれ以外は、いつものとおり小洒落たスーツ姿と、上半身裸にガクランを羽織った姿である。――間抜けなことこの上ない気がするのだが……。30年前の特撮の悪の戦闘員か、お前ら…。いや、ビデオでしか観たことないけど。
 案の定、南さんは一瞬警戒したものの、二人のあまりに安直な「変装」に呆気に取られて、ぽかんと口を開けた。
 えーい、揃いも揃って緊張感を台無しにしやがって。
 …深刻になってもしょうがないのは確かだが……気分の盛り上がりをどうしてくれる。
 素でやれってか?
 まあこの際、開き直るしかない。咳払いして、俺はヤツらに声をかけた。
「あー……じゃあ、そこの、ガクランビースト。固定台持って来て。ミスターXはシリンダーの準備」
 威蔵は黙って正面の大扉に向かう。
「ミスターXとは拙者のことか? せめて死神大使とか、地獄博士とか、センスのいいネーミングを所望したいが」
 ……センスいいのか、それ?
「…もうちょっとソレっぽい格好をしたらな」
 ぶつぶつ言いながらも、大器はすぐさま言われたものを取り出した。確かに準備は整っているようだ。
「それにしてもいきなりコレか。だいぶお冠のようだな?」
「ああ、南さん、物分りが悪いようなんでね。最初に思い知らせておこうと思って」
 軽い会話と共に大器が俺に手渡したものを見て、南さんが顔色を変えた。…さすがこみパスタッフ。こういう方面の知識も無闇に豊富のようだ。
 それは巨大な注射器のようなガラスの円筒だった。いわゆる浣腸器である。
「か……和樹さん! 悪ふざけはやめて下さい!」
 彼女の悲鳴に、大器は首をかしげた。
「『和樹』…? 貴様、今回は最初から説明する手はずではなかったのか?」
「――言ったろ。物分りが悪い、って」
「ああ――なるほど……」
 俺の疲れた顔を眺め、大体の事情を察したようだ。
「それで、最初にがつんと行こうというわけか。では、どのくらい使う?」
「たっぷり。――1回じゃ許してあげないから」
「それはそれは」
 千沙ちゃんにはあまり酷い真似をする気が起きなかった俺だったが、南さんの頑迷さのおかげで、今回は初めからオニになれそうだった。
 ――さーあ、鬼畜にいくぞ〜!
 ヤる気が出てきた。よし。
 威蔵が倉庫から固定台を持って戻る。
「これでいいか、首領」
 ……。本当にノッてるな…。実はそのチープな変装、気に入ってるだろう? お前。
 まあいい。お笑いモードはここで終わり。今からはハードエロモードまっしぐらだ。
 威蔵が運んできた『固定台』は、パイプベッドの枠だけを取り出したような形状の代物だった。違いは、ベッドよりは一回り以上小さいことと、その割に横倒しの状態で高さが俺の腰くらいまであること。さらには、あちこちに金具やベルトなどがごてごてくっついている。一見して、何かロクでもない道具であるのは明らかだった。
「ああ。それにこのヒトを固定してくれ」
 無言で頷き、南さんに手を伸ばす威蔵。
「…い、イヤです…っ!」
 後退ろうとするが、俺が肩を抱いて押さえているため、果たせない。俺は威蔵に南さんを手渡した。
「か…和樹さん…やめさせてください…」
 すがるような眼差しを向けてくる。よほど彼女の千堂への信頼は深いらしい。
 無論黙殺する。
 威蔵は南さんの体重をものともせず、猫の仔のように軽々と持ち上げて、台に固定し始めた。足をばたつかせて暴れるのもまるで意に介していない。改めて見ると大したパワーだよな……。まさにガクランビースト。――あ、いや。
 威蔵は手早く南さんを台に拘束していく。上部中央を横切るパイプに手枷の金具を留め、ベルトと革紐を使って脚の動きを奪う。両サイドのパイプに革紐が留められていくと、彼女はあっという間に下半身の自由を失った。相互に張力がかかるため、空中に縫い止められたように動けなくなる南さん。見えない床に四つん這いになったようなその姿は、蜘蛛の巣にかかった蝶を思わせる。
「こ……こんな格好……。み、見ないで。見ないでください」
 膝を持ち上げるように固定されたため、南さんの腰は台の上端よりも少し高い位置にあった。膝を大きく割ったその姿勢は、股間を後ろに――俺の方に向けて突き出しているように見える。南さんは唯一自由になる頭を激しく振りながら、耐え難い羞恥を逃がしているようだった。
「いい格好だね。南さん」
「いやぁ…! 降ろしてください。こんなのひどいです、和樹さん」
 ……。いや、もういいけど。体に思い知らせるって決めたし。
「それじゃ始めようか」
 振り向くと、ちょうど大器が重そうにバケツを持って来たところだった。見ると、中には薬液が一杯に満たされている。たっぷりとは言ったけど……また、ずいぶん作ってきたもんだ。まあ、せっかくだし、全部使おう。この際。
 手にしたガラス器の先端を薬液に沈め、シリンダーを引いた。円筒内に液体が充填されていく。
 自分の胸の谷間越しにこの光景を眺め、南さんは顔色を青くした。
 一杯になった注入器を手に南さんの突き出されたお尻の前に立つと、彼女は震える声を搾り出した。
「ま…まさか、本気じゃないですよね……? 和樹さん…」
 今度ばかりは信頼と言うよりは希望的観測と言うカンジだが…例によって無視。ガラス器の嘴管に大器が用意していたワセリンを塗り込み、俺は彼女の突き出された腰のすぐ後ろに立った。手を伸ばし――下着の股布をずらして、窄まりを露出させる。
「ひ――!」
 息を呑む気配。
 先端を中心に合わせ、無造作に押し込んだ。今回はほぐす手間をかける気もしなかったので潤滑剤に頼ったが、コレが思いのほか有効で、ガラス器の末端はほぼ何の抵抗もなく、彼女の消化器官の末端に滑り込む。
「い――いやあああああっ!!」
 ガラスの冷たさを粘膜で味わい、ようやく彼女は本気の悲鳴を聞かせてくれた。
 いい声だ。俺は鼻歌でも歌いたい気分で、ぐぅーっとシリンダーを押し込んでいく。円筒内の薬液が、圧力に負けて先端から南さんの体内へと注ぎ込まれていった。
「ひぃっ! は…入って…くる…」
 脅えた悲鳴を上げる。耳を楽しませるそれを堪能しながら、俺はゆっくりピストンを押し込んでいった。あんまり急に入れると腸壁が裂けてしまうと聞いたことがある。真偽は知らないが、まあ無茶をして壊してしまう気もないから、焦らず行こう。
「つ、冷たい……あああ…」
 多少じっくりやっても、すぐに注入は終わってしまった。これで500ミリリットル。ミニペットボトル1本分だ。
「あ、あ、あ……」
 まだ薬液の効力は現れていないはずだが、浣腸されてしまった事実そのものが相当ショックだったのだろう。南さんは目を見開いて震えていた。
「ああ!?」
 いきなりびくっと首を反らし、彼女は慌てて背後を振り向いた。そこでは俺が、薬液を充填したガラス容器の先端を彼女の菊蕾に押し当てている。
「――ああ、まさか――」
「――2本目だ」
 俺は笑ってピストンを押した。我ながら、邪悪な笑みだったろうと思う。
「ああっ…ああああッ!」
 もがいても、下半身はがっちり固定されているため、薬液の注入を妨げる役にはまったく立たなかった。俺はまたすぐにシリンダーを押し切る。
 ……って、あれ? なんかヘンだな?
 最初は1リットルの心積もりだったが――俺は、無言でまた薬液をガラス器に吸い上げ始めた。
「――くぅっ!」
 ぐっ、と彼女の体に力が入るのがわかった。きゅるる、と下腹から腸の鳴る音が聞こえる。希釈グリセリン溶液が効力を発揮し始めたらしい。
「んんっ……。――!?」
 額に脂汗を浮かべて訪れた腹痛に耐えていた南さんは、三度粘膜に触れるガラスの感触に、愕然とした表情でこちらを振り返った。
 にいっと笑って答える。

「3本目」
 言いながら注入を始めた。
「あああっ! やっ、やめて、やめてください! もう、もうダメ――! いやああ、入れないでぇええええ!!」
 悲痛な叫びを上げる南さんは、ほどなく合計1.5リットルの溶液を腸内に飲み込んでいった。


 固定台をこの位置に持ってきたのは無作為の行動ではなかった。俺は威蔵に指示し、すぐ横の壁にある手回しハンドルのロックを外させた。頭上のチェーンが耳障りな金属音を立てつつ降りてくる。先端のフックを捕まえ、固定台の上端につなぐ。南さんの頭の上に当たる位置だ。合図をすると、威蔵は頷き、ハンドルを回して鉄鎖を巻き上げ始めた。ゆっくりと、横倒しになっていた固定台が縦に起こされていく。
 さっきまで宙に俯せで固定されていた南さんは、今や見えない椅子に腰を下ろしたような姿で直立姿勢に戻った。だが、彼女は周囲で起きていることすべてに反応を示さず、ぎゅっと目を瞑り、固く歯を噛み締め、額だけでなく全身に脂汗を浮かべて荒い呼吸を繰り返している。眉間には深い皺が刻まれ、彼女の味わっている苦悶の深さを示しているようだ。ペットボトル1本分に相当する薬液が、彼女の腹中で猛威を振るっているのだろう。
 小さくきしっ、きしっとパイプ枠が軋む音が聞こえる。相互に張った革紐で固定された下半身を、静かに、だが全力でもがかせているらしい。
「ふーっ…ふーっ…」
 多分、横隔膜の運動が内臓全部を揺り動かすのが辛いのだろう。彼女は浅く深く、長く短く呼吸を乱し、もっとも苦しくない息の仕方を模索しているらしかった。
 俺は、己の内側に没入して襲い来る崩壊を留めることに集中している南さんの傍らに寄り添い、そっと頬を撫でて囁いた。
「南さん。ほら、目を開けてごらん?」
 反応してうっすら目を開く。焦点の合っていなかった目が周囲を認識すると同時に、彼女はその大きな瞳を一杯に見開いた。
「いっ…いやぁあ…! っ…あうっ……」
 絶叫しかけ、中断する。ぎゅるっ、と鋭い音が彼女の下腹から響いた。大声を上げかけて腹筋に力が入ったのが辛かったようだ。
 見開かれた目には涙がにじみ、血の気を失っていた顔に朱の色が戻る。彼女の濡れた瞳の中に、正面に据えられたガラスのレンズが映し出されていた。
「とらっ! 撮らないでっ…撮らないでぇ!」
 そこには三脚で固定されたビデオカメラが、彼女の痴態を余さず記録すべく、録画中を示す赤いパイロットランプを灯しながら南さんを注視していた。その向こうには大器が立ち、セッティングの確認をしている。
「だ…め……くぅ…っ」
 恥辱がいや増し、彼女は崩壊を引き伸ばす努力を強めたようだ。排泄の瞬間を他人に見られるだけでもたまらないだろうに、それを撮影されてしまうという事実に耐え難い屈辱を感じているのだろう。
 だが――薬液に加速された生理現象を、いつまでも留め置けるわけはなかった。
 見る見る顔色を悪くして、いよいよ限界が近付いたものか、南さんは汗にまみれた顔を俺に向け、すがるような眼差しを見せた。
「かっ……和樹…さん……お願い…これ…外して……ほ、ほどいて…ください……」
「ほどいて…どうするの? 南さん」
 わかりきっていることを意地悪く訊く。
「そ、それは……あの……」
 さすがに言い淀むが、いよいよ膨れ上がり切羽詰まった欲求は、もはや羞恥を振り切るまでに高まっているようだ。
「お…おトイレに……行かせて……ください…」
 小さく、だがはっきりと彼女はそう口にした。恥も外聞も、気にする余裕はもはやないのだろう。激しい葛藤の末搾り出したと思われるその必死のセリフを、だが、俺は一言で断ち切った。
「ダメだね」
「――!?」
 断られるとは思っていなかったのか、愕然とした表情で顔を上げる南さん。
 ヒトがいいなあ。――イジメてみたくなるタイプのひとつだ。
 俺は彼女の股間を覆う白布の端を摘んで訊いた。
「南さん――これ、穿いたままがいい? 脱いだ方がいい?」
「そ――っ! そ、それって――!」
「トイレには行かせてあげない、ってコト。――で、どっち?」
「そんな――そんな」
 いやいや、と首を振る。顔色は既に土気色に近い。時折ぎゅっと顔をしかめるのは、強い排泄衝動に襲われるためか。
「あ……ぐっ……。ホントに……ホントに、もうダメなんです……意地悪…しないで……お、おトイレ…おトイレに……行かせてください……」
 俺は黙って、いつの間にか威蔵が持ち出してきていた金ダライを彼女の腰の真下に置いた。ガラン、と大きな音がする。
 それが無言の拒絶だと悟って、彼女は泣きそうな顔になった。――実際、目尻に涙が浮かんでいるが――これは強烈な腸の活動からくる下腹部の鋭痛に耐えているためだろう。
「さあ。何もかも見られながらするか、そのままして気持ち悪い思いをするか。好きな方を選んでいいよ、南さん」
 もう声を出す気力もないのか、信じられない、と言うように弱々しく首を振る。その動作を都合のいいように解釈して、俺は用意していた道具を取り出した。
「――どっちもイヤなんだね。じゃあ、こうしよう」
 ひやっとした感触に南さんの体がぴくっと震える。俺は彼女の下着の底、一番細くなっている辺りにハサミを差し入れ――切断した。粘っこい汗で貼り付いている、切り離された後ろ半分を剥がし、ひくひく震える窄まりを外気に曝す。やや前屈みの態勢のため、彼女のそこが直接カメラに映ることはないが、それでも南さんは恥ずかしげに俯いた。
「ほら。これで、下着が汚れることも、カメラにここが撮られちゃうこともないだろう?」
 指先で残った下着の上、彼女の秘められた部分を布越しにつつく。
「ひっ……」
「……だから、遠慮なく出しちゃっていいよ」
 そのまま指を持ち上げ――へその下辺りに掌を添え、そおっと、産毛を漉くように極めてソフトに、撫で回してあげた。
 さあっと彼女の二の腕に鳥肌が立った。
 ほんのわずか。注意しなければわからないほどのその微妙すぎる接触でも、今の彼女には致命的な圧迫であるようだった。無論、そうだろうと思ってやったのだが。
「やめ……っ! それ、ダメ……く、ぁ………」
 全身の力を振り絞っているのだろう。下半身を空中に縫い止めている革紐が、ぎゅん、ぎゅんと弦のように微かに鳴っている。俺の与えた刺激ともいえない刺激が喫水を超えさせ、ついに決壊が始まろうとしていた。
「く…くふ……く、くぅ……」
 それでも、最後の足掻きとばかりに、必死で奥歯を噛み締め、お尻の周りの筋肉を引き締める南さん。だが、いつまでも緊張させていることなどできるはずはない。息を吸い続けることができないように、緊張の後には必ず弛緩が訪れる。
「あ…あ、あ……あ、あ――――ッ!」
 透き通った悲鳴と共に、彼女が耐えに耐え、引き延ばし続けた瞬間がついにやって来た。
 高まった圧力に押し出された半固形物が、凄い勢いで金ダライを叩く甲高い音が響く。
「ああ…あああ……あ、あ…」
 なまじ耐え抜いただけ、一度崩れると抑えは効かなかった。彼女は虚ろな表情のまま、延々と腹の中に溜まった、薬液に溶かされた流動物を吐き出し続ける。独力でかれこれ10分くらいは我慢していたはずだ。その分薬もたっぷりと効いて、腸内の堆積物をすっかり柔らかくしていた。…つまりは、排泄は長引いてなかなか止まらない、と。
「ふぁ……あ、は…あぁ……」
 ――ようやく排出を終えて、彼女はがっくりと首を折って喘いでいた。ティッシュでまだひくひく震えている菊口を拭い、後始末してやる。汚れたままじゃ可哀想だからね?
 拭かれている間、彼女はほぼ無反応だった。
 反応がないのでは面白くないので、『劇薬』を投与することにする。
 俺は南さんの正面やや横に立ち、指先で彼女のアゴを持ち上げた。先ほどたっぷりと薬液を注いだシリンダーを持ち上げ、よく見えるようにする。
「南さん。コレ、初めてじゃないね」
 断定的に言うと、眼鏡の向こうで瞳が大きく見開かれた。
 実のところ、こんな風にきっぱり言うほど確信していたわけじゃないんだが…まあカマ掛けを兼ねて。
「いきなり1.5リットルも入っちゃうし、それを10分も我慢しちゃうし。ずいぶん慣れてる証拠だよ」
 南さんはじっと見つめる俺の目を逃れるように、視線を泳がせる。即座に否定してこないってことは――やっぱりそうか。何と言うか……ウソのつけないヒトだ……。
 俺の知識も経験則じゃなく、本で読んだだけのものだったが…どんどん浣腸液を呑み込んでしまう南さんに違和感を覚えたのが、疑惑を持った最初の原因だ。初心者ではこうはいかない。……多分。
「誰にされたの?」
 口を噤んで答えない。まあ当然か。
 ――面白い。
 俺は彼女のアゴを支えていた手を下腹部に移し、優しくさすりながら、囁くように言った。
「……それじゃあ、訊問といこうか?」
 にやりと笑みが零れる。
 俺が耳打ちすると、大器は頷き、道具類が並ぶラックに向かった。威蔵に合図し、俺は固定台に体重をかけて手前に引き倒す。同時に威蔵がハンドルをさっきと逆に回してチェーンを緩め、ほどなく南さんは最初に台に固定された格好に戻った。空中に這いつくばった姿。
 さっきと同じ姿、と言うところに危機感を覚えたのか、南さんは気力を振り絞って質問してきた。
「な…何をする気ですか……? まさか…」
「30秒以内にさっきの質問に答えないと、また浣腸だからね。――ただし、今度は2リットル」
「――な……っ!」
「それじゃ、計測開始」
「ちょ、待って、待ってください…! もうやめて! またなんて……イヤです! お願い! やめてぇ!」
 半ば錯乱して叫ぶ南さんに、俺は意図的に優しい口調で囁いた。
「やめて欲しかったら、俺の質問に正直に答えて。――浣腸、初めてじゃないよね?」
「それ……は……」
 言い淀む彼女に、大器の宣告が浴びせられた。
「10秒経過」
 横手に立つ俺に必死の眼差しを向ける南さんの顔が強張る。
「…初めてじゃ、ないでしょ?」
 繰り返し問い掛けると、南さんはためらいがちに小さく――だが確かに頷いた。
「ちゃんと口で答えて。浣腸されたの、初めてじゃないんだね?」
「――はい……。は……初めてじゃ……あ、ありま…せ…ん……」
「よくできました。計測リセット」
「了解」
 さっきまで青かった彼女の顔は、今は羞恥でほのかな桜色に染まっていた。まともに顔を見せられないのか、ぐったりと俯いている。
「さて、それじゃ質問その2だ。誰に浣腸されたの?」
 はっ、と顔が上がる。
「質問がひとつだなんて言った覚えはないよ。ルールは同じ。30秒以内に答えないとアウトね。計測スタート」
「あ、あ……」
 もどかしげに唇が震えていた。言うべきか言わざるべきかわからない――そんな風に見える。
「さあ――誰に、浣腸を教わったの?」
「10秒経過」
 彼女が迷ううちに、無慈悲な大器の声が響く。
「20秒経過」
「早く答えないと――時間切れだよ?」
 悠然と促すと、彼女は逡巡の末、震える唇を開いた。
「こ――こう……ぐむっ!?」
「30秒経過。時間切れだ」
 南さんの朱唇に、黒光りする円筒が咥えさせられていた。大器は突っ込むようにそれを噛ませ、素早く彼女の頭の後ろで、円筒の両端から出ているベルトを留める。馬に噛ませるクツワのような形状の、横棒型の猿轡――バーギャグと言うヤツだ。先ほど大器がラックから持って来たのがコレである。
「残念。それじゃ、罰ゲームね」
 俺は軽く言って、ガラス器の先端をまだまだ薬液がいっぱいたたえられているバケツに浸した。
「あぐ! あぐぇ! むぅ! うぐぅ! くぉうううう――――!!」
 ぶんぶん首を振って何事か叫んでいるが、判別は不能だ。まあ、何を言いたいのかは聞かなくてもわかるが。
「さあ――覚悟はいい? 南さん」
「う――ッ! う――――ッ!!」
 必死で首を振って拒絶の意思を示すが、俺は当たり前のように無視し、ガラス器の嘴管を先ほど派手な粗相をした場所に押し込んでいった。一度弾けてほぐれたのか、今度はワセリンなしでも簡単に入る。
「注入開始」
 我ながら楽しそうな声だった。見ると、大器と威蔵が興味深そうに俺の手元を見ている。
 1本注入後、2本目を充填して、二人に見せた。
「やってみるか?」
 二人は同時にこっくり頷いた。女を責めるというより、オモチャを前にした子供の目に見えるのは、俺の気のせいだろうか……?
 俺は苦笑しつつ、ヤツ等に浣腸器を手渡した。


「ふぅ――――、くふぅ――――……」
 南さんはまた固定台ごと引き起こされ、ビデオカメラの前に据えられていた。
 結局、威蔵が1本、大器が1本、最後に俺がもう1本注入し、計2リットルの薬液が南さんの腸内に収まっている。
 脂汗を吸って、ブラとパンツが肌に貼り付き、布越しに肌の色が透けて見え始めていた。
 バーギャグはまだ嵌めたままだ。
 2回目だし、さっきより分量も多い。長く耐えられるはずはなかった。それでも粘って見せる南さん。既に一度醜態を曝しているのになお耐えるのは、女性の本能的な慎みのためなのだろうか。ビデオカメラの威力もあるのかな。こんなところを撮られるのは1度でもご免なのに2度もなんて、と言う感じか。
 ――限界を迎えるまでに、南さんは何と7分も我慢してのけた。
 忍耐力あるなあ。


「ひゅぅ――、ひゅぅう――」
 台をまた前に倒してバーギャグを外してあげると、南さんは笛のような喘鳴を洩らした。
 目尻からは苦悶の涙が流れ落ち、頬を濡らしている。
「さあ……それじゃあ、また訊問タイムだよ、南さん。時間内に答えられなかったら、2.5リットル浣腸してあげる」
「――ひッ……」
 今のよりさらに半リットル多い分量を聞かされて、南さんの顔が引きつる。
「まずは、さっきの質問。南さんは、誰に浣腸を教わったの?」
 一瞬迷う様子を見せるが、大器が10秒を告げるまでもなく、震える唇を開いた。
「こっ……高校のとき……先輩に……」
 それだけ答えて口を濁す。まあ、一応答えたからよしとしよう。
「じゃあ次。南さんは、処女?」
「え……そ…れは……」
「ほら、早く答えないと……」
「――10秒経過」
「ひ……しょ…処女……じゃ、ありませ…ん……」
「それも、先輩に?」
「は、はい。……そうです……」
「それじゃ、肝心な質問と行こう。――その先輩って誰? 名前は?」
「…………」
 途端に口が重くなった。だいぶ素直になってきたと思ったが……この質問だけは特別、と言う感じだ。
 俺は敢えて促すことなく、彼女の返事を待った。だが――。
「30秒経過。時間切れだ」
 大器の宣告と共に、再び彼女の口にバーギャグが嵌められた。
 これだけはよっぽど守りたい秘密のようだ。
 ……そうであるほど、余計に口を割らせたくなってくるから不思議だ。
 よ〜し、頑張るぞ〜!


 腹中で暴れる2.5リットルの薬液に耐える南さんを撮影しながら、大器が首をかしげているのが見えた。
「――どうした?」
「うむ。牧村南の高校時代に関してだが」
 水を向けてみると、ヤツはそう切り出した。
「拙者の調査したところでは、牧村南が高校時代に付き合っていた男性はいない」
 断言する。それはもうきっぱりと。
「え? だがそれは――」
「先程の自白と矛盾する、か? ――調査結果を思い返してみたのだが……牧村南にとって、親しい先輩と呼べる人物は、たった一人」
「………」
「高校の同好会で共にマンガを描き、同人誌を作っていた人物、一人だけだ」
「……じゃあ、それじゃねえの? って言うか、南さん、マンガ描いてたんだ」
 振り向くと、南さんは、浣腸液の効果以上に青褪め、脅えた表情を見せていた。
「――?」
「その人物とは……」
 重々しく切り出す大器のセリフに、目をそっちに戻す。
「現在コミックZの編集長を務める、サワダマキコ、25歳。牧村南の1年先輩に当たる」
「……コミックZの編集長!?」
 コミックZ。日本最大の発行部数を誇る少年マンガ雑誌だ。この雑誌、凄いのは連載作家の力量もさることながら、掲載作のバラエティ豊かな方向性、マンネリ展開を見せない独創性などで、幅広いジャンルを1冊でカバーしつつ他の追随を許さない多様な娯楽性を保ち続けているところだ。――平たく言えば、常に面白い。さらに、新人育成の丁寧な手腕でも知られ、Zでデビューできれば人気作家間違いなしとまで言われている。
 その日本一の雑誌の編集長、しかも25歳の若さで。有能無比の証拠だ。
「南さん、凄いヒトと知り合いじゃないですか!」
 ついつい勢いよく振り返ると、彼女の顔色はさらに悪化していた。
 ――あれ? そう言えばさっき、何か違和感があったような。えーと……そう。名前、何て言った?
 サワダ、マキコ……。
 マキコ?
「――女じゃねえか!!」
 勢いよく体を回し、平手の甲で大器にツッコむ。
「言ったであろう。付き合っていた男性はいない、と」
 えっと。付き合っていた男性はいない。親しい先輩と呼べるのはサワダマキコ1人。
 てコトは、南さんの処女を奪い、浣腸を仕込んだ高校時代の先輩ってのは、イコール……。
 見ると、南さんの顔は土気色になっていた。目は見開かれ、わなわなと震えている。激しい狼狽の色がありありと見て取れた。
「南さん、そうなの? その先輩って――サワダマキコさん?」
 ずばり斬り込むと、南さんはさらに動揺して視線をあちこちに泳がせた。これは、十中八九間違いなさそうだな……。


 結局、南さんがその基礎事実を認めるのは、3.5リットルまで耐え抜いた後のことだった。
 最後にはほとんど我慢できなくなり、1分ともたずに排出してしまっていた。排泄物はすべて出し切ってしまったらしく、このときは、入れた薬液を透明のまま吐き出すばかりだった。


 全身汗みずくで、下着はもはや体を隠す機能を喪失し、内側をすっかり透けさせている。
 荒い呼吸を繰り返しながら、彼女はついに自白した。
「……は…い……。私の……処女を…奪って……浣腸を……教えたのは……澤田、真紀子先輩に……間違い、ありま…せん……」
 最大の秘密を暴露させられた後は、南さんはすっかり観念し、素直に質問に答えるようになった。
 俺は質問を重ね、当時の経験の一切、現在に至るまでの性体験の詳細などを聞き出していった。
 ――南さん自身は同性愛者ではなかったようだが、敬愛する先輩の求めを拒めず、愛戯に耽っていたらしい。関係を持ち始めたのは南さんが2年生になって少ししてから。次第にエスカレートし、ついには張型で処女を奪われるに至る。同人誌でヤオイにも手を出していたこともあり、アナルに興味を持ち始めた澤田は、南さんのアナル性感の開発にも手をつけた。その一環として浣腸も施され、最大3リットルまで注入された経験がある。当時は、排泄こそ我慢させられたが、その後はトイレに行かされており、他人に排泄姿を見られたのは今日が始めてであるらしい。アナルへの異物挿入の経験は指と細身のアナルバイブ、ローターなど。高校卒業後澤田が上京し、関係は終了。それ以前も以後も、男性との性体験はなし。オナニーはバイブで週に3日ほど。
 ざっとこんなところを聞き出した後、俺はやや口調を変えて問い掛けた。
「それじゃ、最後の質問だ。これは別に、答えなくてもお仕置きはないよ。さて、南さん――俺は、千堂和樹だと思う?」
 彼女はのろのろと顔を上げ、まじまじと俺を見つめた。少し考え込んで、口を開く。
「そう……ですね……。私は、和樹さんを信じてます。和樹さんは……きっと、こんなことは…しません。だから…貴方は…和樹さんではないんだと……そう、思います」
「やっと、わかってくれたみたいだね」
「ええ。和樹さんは……こんな卑劣な真似はしません。納得しましたから…もう、解いてください」
 疲れきった平板な口調で吐き捨てる。その言い方が癇に障った。
「――南さんさあ。最初に俺が言ったこと、覚えてる?」
「――?」
「再発防止と制裁を兼ねて。そう言っただろ?」
 不審そうな顔。何が言いたいのかわかっていないのだろう。
「今ようやく、南さんは俺が千堂でないことを認めたわけだろ? つまり、ここまでが再発防止」
「……え? それって、まさか……」
 俺の言わんとするところを察したのか、何だか投げやりだった態度に再度脅えがにじみ始めた。
「これからが、制裁だよ。たっぷり反省してくれよな」
 ついでに言えば――これからが、やっとお愉しみでもある。いやあ、南さんを苛めるのがけっこう楽しくて、延び延びになっていた。
「そんな……やめて、もう、もう許して…!」
 脂汗を吸い切って透き通ったブラに手を伸ばし――俺は、やっとそれに気付いた。
「――あれ? 南さん。乳首立ってるけど……もしかして、浣腸されて感じてたの?」
「え!? そ、そんな……そんなこと、あるはずないです!」
 力強い否定が返ってくる。確信の口調だが……でもなあ。
「あ、ちょっと? やめ、やめて…!」
 抗議の声を無視して、肌に密着していたブラを剥がすようにして取り去った。邪魔な肩ストラップはハサミで切断する。露わになった胸肉がふるん、と揺れた。搗き立ての餅のような質感。その中心で、赤く色付いた乳首が凝固し、ぴんと屹立していた。
「……うそ……」
 自分でも気付いていなかったのだろう。否定しようもない性感の証に、南さんは声を失ってまじまじと自分の充血した尖端を見つめている。
 俺は手を伸ばし、彼女の乳首を摘んでみた。
「……ひ!」
 南さんの乳首は、千沙の、ちょこんと乗っているだけと言う感じのそれとは違って、しっかり綺麗な円筒形に突き出し、大いに自己主張している。よく見ると乳暈も乳房の曲面からほのかに膨らんで別の曲面を描き、その部分も充分に発達しているのが察せられた。千沙の場合だと、色も肌と見分けはつかないし、乳輪なぞないも同然だ。……何だかやたらと千沙と比較するようだが、他にまじまじと体を観察した女性などいないのだから仕方がない。
 とか比較検証しつつ、俺は彼女の乳首をくにくにと捏ねたり、そっとしごいてみたり、微妙な刺激を与えてみた。
「んあっ……はぁっ、ふぁ……っ」
「ちょっと触っただけでずいぶん色っぽい声を出すね」
「そんな……うそです、こんな――」
 その敏感さが、南さんの体が昂ぶっている何よりの証だったが、現実を認められないのか、頭を振って否定する。だが先程に比べてその動きは弱々しい。
「ふうん……それじゃ、こっちはどうなってるのか、見てみようか」
 俺は既に布越しに陰裂の形がくっきり浮き出ているパンツのサイドにハサミを差し入れた。
「あ、やめ…」
 シャキン。
 軽快な音を立て、薄い布を切断する。――が、肌にべったり貼り付いた布は自然に落ちることはなかった。ブラと同様、これまた引き剥がす。…何だかブラより密着度が高いような。
「あ、あ……」
 呆然と注視する南さんと俺の目の前で、布と肌の間に粘性の糸が何本も橋をかけていた。
「…うわぁ……。ぐしょぐしょに濡れてるね、南さん。パンツの股のところ、実は全部愛液で透けてたんだ。こんなんじゃ、言い逃れできないでしょ」
「い、いや…そんなの……見ちゃダメです。――あ!? そ、それより、そんなところ見ちゃダメです!!」
 んー。パンツを脱がされ、直接イケナイ部分を見られている事実に一拍遅れて気付くところが、何だか南さんらしいと言うか。
 恥毛は、きちんとムダ毛の処理をしているらしく、割れ目の上の丘の部分にひと塊に生えている。一ヶ所だけ濃く生えている様は何だかエッチだ。ふわっと柔らかそうな毛質のようだが、今は蜜液に濡れてぺったり肌に貼り付いている。
 その下、秘唇は触れてもいないうちからぱっくりと口を開き、内部の充血した襞をのぞかせている。言うまでもなく、自らの果汁でとろとろに濡れそぼっていた。ひくひく震える果肉に触れ、上下になぞってみる。ほとんど力を入れず、触れるだけの接触。だが、南さんの反応は激しかった。
「――きゃうっ!!」
 胸を突き出すような格好で上体を反らす。下半身が固定されているので、そう言う風にしか体を動かせないのだろう。さっきの自白が正しければ、他人の指に触れられるのは6〜7年振りと言うことになる。過敏な反応も仕方ないのかな。
 そのまま何度も撫でると、左右の肉唇の収縮は大きくなり、ぱくぱくと開閉して見えるようになった。開いたときは、とろみのある液を垂らす膣口が露になっていた。まるで「早く埋めて欲しい」と訴えているかのようだ。
「あ、あっ……ひぁ、やめ…あん…ダメ…触っちゃ、ダメぇ……」
 必死で制止の声を上げる南さんだが、そんな甘い声音で訴えられると、逆の内容の懇願に聞こえる。…いい加減、俺の方の興奮もピークに達しかけていた。
 俺は威蔵に合図し、また固定台を前倒しにする。南さんの艶姿を目の当たりにし過ぎて、もはや配慮とか余裕とか言ったシロモノは俺達の脳裡から蒸発している。少々乱暴に倒す結果となった。
「――あぅんっ!」
 がしゃん、と台が音を立てて倒れ、南さんの柔らかそうな乳肉がふるるん、と揺れる。背後に立った俺の前に、彼女の秘密の部分が、都合よく俺の腰の高さに固定され、さらけ出されている。まあ、そういう用途のものでもあるので、当然ではあるのだが。
 俺は、ズボンの中からギンギンに堅くなった牡の器官を引きずり出した。先端を、収まるべき牝の器官の入り口に押し当てる。
「ひ――」
 脈動する熱気が伝わったのか、南さんはぎゅっと身を縮めて凍りついた。
「男とシたことはないんだよね、南さん。――それじゃあ俺が、南さんの最初のオトコだよ」
 俺は先端で膣口をこねて蜜液をなじませてから、一息に突き込んだ。
「――ひあっ!」
「くぅ――!」
 とろとろに蕩けた秘肉は何の抵抗もなく俺を呑み込む。根元まで沈め、俺は一旦動きを止めた。そのまま女肉の感触を探る。
 千沙みたくぎゅうっと必死で締め付けてくるのではない、ぬめった柔らかさが俺を包み込んでいた。襞々が発達しているのか、千沙よりもいっそう淫肉が絡みついてくるようだ。膣洞が蠕動して、収めた異物を咀嚼し始めていた。ただ締められるよりも……何と言うか……腰が抜けそうに気持ちイイ。千沙のとは快感の種類が違った。アレはアレでイイけど――こっちも、たまらない。
「どうだい? 初めての男のモノの感触は。たっぷり味わってよね」
 動かずにそう告げるが、なに、動いたらすぐに出そうな気がするだけだ。
 ムスコが落ち着くのを待つ間にも、南さんの膣口が断続的に締め付けてきて、肉襞が複雑に蠢いて絶え間なく俺を刺激する。そのためなかなか静まらない。凶暴な射出の衝動を押さえ込むのに、たっぷり1分以上かかった。
「それじゃ、いくよ」
 ようやく暴発をやり過ごし、俺はゆっくりと抽送を始めた。腰を引くと、粘度の高い愛液が絡み、襞々が名残惜しげに肉棒に吸い付いて、膣口からめくり返る。突き込んでいくと、淫肉が迎え入れるようにざわざわと蠢き、しゃぶりついてくる。先端に感じる子宮口の感触は、ほのかに痙攣しており、俺の鈴口をついばんでいるかのようだ。
 ものすごく気持ちよかった。
「――っ! …あっ、あっ、あぁ〜〜……っ!」
 身を固くして初めての衝撃に耐えていた南さんは、詰めていた息を吐きながら、長く尾を引く嘆声を洩らした。その艶っぽさに首筋がぞくぞくする。
「どう、南さん。どんな感じ?」
「あああ……こんな、こんな……あっ、あ、な…内臓全部……動いちゃいます…。んあっ! こ、こんなの……初めて、ですぅ…! あ…熱い…お腹の中が……ふぁ…熱いぃ…っ! 奥に、奥に響く、はぅああ……!」
 ぶるぶるっと背筋を震わせ、存外素直に今の感想を教えてくれた。さっきまでの『訊問』が効いているのだろうか。『俺の質問には答えなければならない』と無意識下に刷り込みがなされたのだろう。
 これは面白い。
 俺はゆっくり腰を動かしながら、質問を続けた。
「自分でするのとどっちが気持ちいい?」
「こっちの方がいいですっ!」
 即座に断定される。
「お、オモチャなんかより、こっちの方が……全然、スゴいです! ……んあああっ!」
 不自由な体で必死になって肩を左右に捩るたび、肩越しにのぞく桜色の頬が色っぽい。俺は興奮を強め、ゆったりしたリズムはそのままに、腰のストロークを深くした。カリが抜けるほど引き戻し、子宮を貫くかと思えるほどに突き入れる。膣肉が密着してこようとするのを引き剥がすかの動きになるため少々大変だが、その分俺の快感と南さんの嬌声も高まる。
「ひああっ……凄い、こんなぁ……!」
 俺は彼女の背に覆い被さり、片手を前に回した。柔らかそうに揺れる乳肉を少し強めに掴む。
「……ふぁっ!」
 喘ぎに苦痛の色はなかった。
 どこまでも指が沈んでいきそうな素晴らしい柔らかさを掌に感じながら、俺は捏ねるように乳房を揉みしだいた。掌にこりこりと固い感触。乳首を押し潰しながら大きく揉み込む。

「こっちはどうかな? 気持ちいい?」
「いいです……おっぱい、いいです…! ふあ…っ、乳首、痺れちゃう…!」
 切なそうに答える南さんの耳元で、意味ありげに囁いた。
「――それじゃ、こっちは?」
 残る片手も前に回し――結合部のすぐ上に指を伸ばす。自然に包皮を剥け返らせて尖り立っていたそこに、俺の指は上手いこと直接に触れていた。
「うひゃああああっ!」
 奇声を発する南さん。…うわ、凄い締め付け。
 そのまま摘んでしごいたり、指先で転がしたりすると、南さんはまともに言葉も出せなくなって首を振り立てた。
「あひゃっ! ひあ! らめぇ…! そこ、そこらめぇ……! ひやぁっ、かんり…かんりすいひゃう…らめぇえええっ!!」
 呂律が回っていない。ちょっと面白いかも。
 俺は指の動きを緩めないまま、乳房の揉み込みと腰の律動を再開してみた。
「ひああ! ふあ! はっ、は! ひゃうあ、ああああ!」
 複数の刺激にもう何も考えられない様子で、南さんは途切れ途切れに声を上げながら、強烈な締め付けを断続的に繰り返した。
「くぅう……!」
 こりゃたまらん。
 俺も次第に押さえが効かなくなり、叩きつけるように腰の動きを強めた。それでも南さんに色んな刺激を与えて惑乱させるのが楽しく、ちょっと突き込む角度を変えてみたり、奥までねじ込んで軽く腰を捏ねてみたりはする。その度に不意を突かれて声音を変える彼女の反応が、何か可愛く思える。
 もうお互い行き着くところまで行かなければ収まりがつかなくなっていた。
「あっあっあっあっあっ!」
 南さんの甘い悲鳴が次第にオクターブを上げていく。俺も細かい技巧を凝らす余裕をなくし、ただ直線的かつ暴力的な律動に終始する。俺と南さんの興奮が、絡まり合うようにボルテージを上げていった。
 先にイったのは南さんだった。
「あっあ――――――――――ッ…………!!」
 それまでも細かい頂点に何度も達していたようだったが、ひときわ高い声を振り絞って限界まで首を反らし痙攣する。強烈な絶頂に達しているのは確かめるまでもなく明らかだった。同時に膣の蠕動と締め付けも最大になり、俺も数瞬遅れて欲望を解き放った。
「くぅう……っ」
「はぁあああっ……ふぁあああっ……」
 我慢を重ねて放出したせいか、射精は自分でも驚くほど勢いよく、断続的に長く続いた。快感で腰の後ろが痺れる。熱塊に膣奥を叩かれるたび、南さんが震えながら喘ぐ。絶頂の上に絶頂を重ねているみたいだ。
 ……すっげえ気持ちよかった……。
 射精後も挿入したまま南さんの背にもたれていると、膣壁が淫靡に収縮して俺のペニスに柔らかい刺激を加えてくる。うわ、なんか凄い――。イったすぐ後で敏感になっているところに、コレはたまらない。余韻に浸るのを中断して慌てて引き抜くと、早くも俺のモノは第二次臨戦態勢に入りかけていた。我ながら元気だなあ…。
 素直な南さんはえらく可愛かったので、ちょっとは優しくしてあげたくなった。俺は南さんの頭の方に回ると、ぐったりうなだれて荒い息をつく彼女の顔を上げさせた。眼鏡の向こうの瞳はとろんと潤み、彼女の味わった快感の大きさを感じさせる。
「可愛かったよ、南さん」
 微笑んで桜色の頬を撫で、焦茶色の髪を撫でて、顎を持ち上げて顔を寄せた。
「ああ……」
 気怠い吐息をつき、震える睫毛をそっと伏せた。逆らう様子はない。
 俺はそのまま彼女と唇を重ねた。しばらく唇を合わせ続け、さらに何度かキスを繰り返してから、舌先で彼女の唇を割る。やはり拒む気配はなく、俺は彼女の舌を絡め取ってディープなキスに移行した。
 長い口唇愛撫の末、たっぷり彼女の甘い口を味わってから、俺はようやく南さんの唇を解放してやった。陶酔したような表情は変わらない。もしかしたら、初めて味わった快感が彼女の判断力を消し飛ばしてしまったのかもしれない。俺を千堂と思って甘い白昼夢に浸っているのだろうか。
 まあ、それならそれで利用価値はある。俺は立ち上がって、南さんの顔の前に、精液と愛液に濡れ、半ば以上勃起している俺のモノを寄せた。発情した牡の器官を間近にして息を呑む気配。初めて至近で目にするそれに驚いているのか。
 俺は彼女の髪を撫でてやりながら、精一杯優しく囁いた。
「南さん――口で、してくれる?」
 一瞬ためらった後、小さくこくんと頷く。おずおずと舌を伸ばし、ちろっちろっと舐め始めた。しばらく好きに舐めさせてから、次の注文をつける。
「咥えてみて」
 躊躇いがちに、だが従順に南さんは唇を円形に開き、俺のペニスを迎え入れていった。温かい口内粘膜に包まれ、俺はふぅっと息を吐いた。
 南さんは何も言わないうちから舌を動かし、唇をすぼめ、頭を小さく振り動かして口蓋や頬の裏に先端を擦りつけ始めた。ちょっとぎこちないので不慣れなのは間違いないが、こみパスタッフを続けるうちに同人誌などで知識だけは豊富に身につけていたのだろう。
 小さく鼻を鳴らしながら懸命に奉仕する南さんの姿は、かなり可愛い。正直オーラルの快感は千沙の方が断然上だが、表情の色っぽさと言うか、艶っぽさでは南さんが勝る。そっと首筋を撫でてやると、南さんはぞくっと震えて目を細めた。
 それ。――凄く『イイ』表情――。
「…もういいよ、南さん」
 亀頭と突き出した舌の間に透明な唾液の橋がかかる。俺の肉棒は早くも完全復活を果たしていた。いきり立ったその表面からは、淫液はすっかり拭われている。南さんが全部舐め取ってくれたみたいだ。
 俺はまた屈み込み、南さんの顎を持ち上げ、横に視線を向けてやる。
 そこでは録画状態で三脚固定したカメラとは別に、ハンディビデオカメラを構えた大器が、横から南さんの痴態を克明に記録していた。
 いや、いつまでも従順でも仕方ないので、正気に戻そうか、と。いい『絵』が撮れそうだから放っといたけど、全部『夢』のつもりでいられちゃ困るし。
「――ほら、南さん。南さんが犯されてイっちゃったとこも、俺のチ○ポ美味そうにしゃぶってたとこも、ばっちりビデオに撮ってあるからね」
 わざと下品な言い方をして羞恥心を煽ってみたり。
 どこか焦点が合っていなかった南さんの瞳に光が戻り始める。
「…………? え……。あ、あ…あああ、い、イヤぁああ――――っ!!」
 無事残酷な現実に引き戻されてくれたみたいで、悲鳴を上げる南さん。よしよし。
 ――さあて、それじゃそろそろ、今日のメインイベントと行くか〜。
 これからすることを考えて、俺のナニがいっそう硬度を増して反り返った。俺は再び南さんの後背に回り、限界まで勃起したモノでいまだ愛液に濡れる秘裂を擦り立てた。自然にカリの段差が彼女の膨張したクリトリスをこじる。
「……ひあっ!」
 南さんはたまらず甘い悲鳴を上げてしまう。もはや心がどれほど拒んでも肉体の快楽に逆らえなくなっているようだった。
 もうちょっと念入りに絡めとくか……。
 俺は柔らかい襞の合わせ目に先端を突き立てた。ほとんど抵抗なく肉掻き棒が牝蜜の壷に沈んでいく。
「ふわぁあああ〜〜……」
 喘ぎとも吐息ともつかない嘆声を洩らす南さん。
「あああ……え…っ?」
 数回ゆっくりピストンして引き抜くと、南さんは不思議そうな声を上げた。疑問を晴らしてやることはせず、俺は腰の角度を少し変えて、ぐっと体重をかけて突き込んだ。
「――――――!!!」
 びくっと体を揺らし、彼女は声にならない悲鳴を上げた。
 俺のペニスは、南さんのアナルに根元まで突き刺さっていた。
 たっぷり絡めた愛液の潤滑と、散々エネマで苛めほぐした甲斐があってか、抵抗らしい抵抗もなく彼女のアナルバージンを俺は奪っていた。一拍置いて、思い出したように『ぎゅうっ!』と括約筋の激しい締め付けがペニスの付け根を襲う。だが、浣腸を我慢するので疲れ果てていたためだろう、数秒するとふっと力尽きるように締め付けが弛んだ。そしてまた数秒置いて、強く握り締めるように締まる。少し痛いくらいの締め付けが、何だか南さんの必死さを表しているようで心地よかった。
 すぐ横で大器が南さんの記念すべき「初めて」の瞬間をつぶさに記録している。
「ふふ。南さん、今、自分がどこを犯されてるかわかる?」
 南さんの耳元に顔を寄せると、彼女は正面の空間を見つめて口をぱくぱく開閉させていた。何だか、金魚みたいだ。
 返事がないのが寂しかったので、腰を引いてみた。ぬるーーっと肉柱が滑り出る。…おお、滑る滑る。膣より引っかかりが少ない感じ。雁まで抜いて、肛門括約筋が最大限に押し広げられるよう配慮する。
「はぁああああ〜〜……」
 南さんは引き抜いていくにつれ長く息を吐いた。締まりが急に緩くなる。腸の襞がめくれかけ、俺のものに貼りつくみたいな感じで吸い口のように長く伸びていた。
 先端だけちょっと入っただけの状態まで抜いてから、俺はまた一気に奥まで突き立てた。
「――――ひィいいいいっ!」
 最初の時は声も出なかったようだったが、今度はちゃんと悲鳴が出た。違和感のあまり、という感じで、聞いてると苦鳴ではない。どうやら痛みはなさそうだ。イコール、ちょっとくらい乱暴にやっても壊れそうにない。
 俺は本格的に腰を使い始めた。
「あああっ! いやっ、は、激しっ……! やぁああ、ヘン、変なのぉ! お願い、もっとゆっくりぃ……!」
 脅えたような懇願を発する南さんだが、アナルセックスそのものを忌避するセリフが無いことに、自分で気付いているだろうか? 俺は構わずに抽送を続けた。
 腸の粘膜は滑らかで刺激が少ないが、入り口の強い締め付けがペニスをこそぐような独特の感触を与える。それに、普通とは違うアブノーマルな行為を強制しているという精神的な興奮が加わり、腰を送り込む勢いは自分でも止めようがなかった。
 南さんも同様の精神作用に襲われているものか、上げる声は急速に切羽詰まっていきつつある。
 俺は敢えてアヌス以外の部分には刺激を与えないようにしつつ、南さんを問い詰めた。
「だんだんよくなってきたみたいだね、南さん。お尻の穴を犯されて、イっちゃいそうなの?」
「そっ、そんな、私……っ、あああっ、そんなの、嘘……っ!」
 俺に指摘されてようやく自身の性感の高まりを自覚したらしい。混乱する南さんに畳みかける。
「どうなの? お尻、イイんでしょ?」
「……ああ……」
「答えて」
「は…はい……お尻………い、イイ……で…す……」
「イきそう?」
「……イ…き、そう……です…」
「お尻でイきそうなんだよね。他のところには何にもしてないもんね」
 ようやくその事実に気付いたらしく、南さんは愕然した目で振り向いた。
「どうなの? 南さん」
 捏ねるように腰を回して返事を促す。ちょうどツボにはまったのか、びくんっ、と彼女の背が跳ねた。
「ひぁっ! くぅ……っ、ひ、やめ…それ、ダメぇ……!」
「ほら、ちゃんと答えて」
「ああああ……わ――私…お尻、お尻で……イきそう…です……あ、あ、あ、何か……凄いのが……あっ、何か、何か来る……あああああっ!」
 最後の体力を振り絞るように南さんの全身が緊張し始める。締め付けも今までで一番キツくなり、かなり動かしにくくなる。それでも無理やり貫くように突き通し続けた。
「イヤっ! ああ、嘘、こんな……! あああっ、スゴ、凄いィ……! イヤ、こんな、怖い…! あああ、じわじわ、じわじわ来るぅ! こんな、こんなの初めて…! ひぁああ、あああ、あああああ! イ…く……! ひィいっ、イっちゃうぅう――――!!」
 徐々に徐々に高まって、彼女は律義に告げながら強烈な絶頂に達した。最大限の締まりが俺を襲うが、引き剥がすように突き続ける。俺もあとちょっとで出そう…!
「ひィああああああ――――――ッ!!!」
 絶頂中にさらに動かれたのがたまらなかったらしく、南さんの絶頂痙攣は終わる気配を見せずに持続していた。いわゆるイきっぱなし状態ってヤツ?
 最後のトドメとばかりに、俺は最奥まで突き込んで固定し、今まで触らなかった乳首と陰核を指先で捏ね、さらに陰核を捏ねながら陰唇を引っかいた。
「――――――ひッ!!」
 びくんと跳ねて凍りついたように動きを止めた南さんの腸腔深くに、俺は二度目の欲望を解き放っていた。


「――ふぅ」
 一息ついて俺は南さんの尻穴からペニスを引き抜いた。いや、満足満足。
「気持ちよかったよ、南さん」
 南さんの反応はない。がっくり首を垂れたままぴくりとも動かなかった。
「――?」
 見てみると、息はしているようだが、意識はないようだった。快楽のあまり失神したらしい。そんなにアナルがよかったのかなあ。
 とりあえず起こすか。
「南さん」
 軽く頬を叩いて呼びかける。何度か繰り返すうちに目を開いた。――が、次の反応は予測の外だった。
「―――はああああっ!!」
 びくびくっと震えると、再度絶頂に達したのだ。何もしてないのに。
 その後、何度か繰り返しイってから、ようやく南さんは落ち着いた。
 ――そんなことがあり得るのかどうか知らないが……どうやら、生じた快感があまりに激しすぎたため、一度味わっただけでは「消化」し切れなかったもののようだ。『イき待ち』の快感が神経に残留し、意識が戻ってから改めて襲いかかってきたらしい。
「凄いね。そんなにアナルが気に入った?」
 南さんはかぁっと真っ赤になって俯いてしまった。俺はくすくす笑って彼女の髪を撫でる。
「疲れたでしょう、南さん。今日はもう勘弁してあげるよ」
 ぱっと顔が上がる。ほのかに希望の色が射しているのが見えた。
「ずいぶん汗かいたね。拭いてあげる」
「えっ…あっ、いいです……それより下ろしてください……」
 抗議を無視し、威蔵が用意していたスポンジと温水で彼女の肌を拭う。胸や股間は特にソフトに念入りにスポンジを這わせた。
「んっ…あっ…」
 強烈にイったばかりでまだ敏感な性感帯を刺激され、南さんの唇から甘い吐息が洩れる。
「はあ……はあ……」
 全身の汚れを優しく取り除かれ、恥じらいながらもほっとしたような顔になる南さん。
「今度は食事だよ。仕事の後に激しい運動したからね。お腹空いたでしょ、南さん」
「え、あ…まあ」
 何気なく答える。それが次の地獄への鍵となる言葉とも知らず。
「たっぷり用意したからさ。お腹いっぱい味わってね」
 にいっと笑う。我ながら、悪魔の笑みだっただろう。
 ――俺の手の中には、ビーカーのような点滴のようなガラス器があった。
 瞬時にその正体を見抜いた南さんは、一気に半狂乱になって叫んだ。
「ひっ――いやあ! 浣腸は、もういやぁあっ!!」
 ガラス器はイルリガートル浣腸器と言うヤツで、原理は点滴と同じ。重力の力を借りて少しずつ流し込む仕掛けで、逆らえずに流し込まれてしまうため、過度の分量だと危険らしい。
 南さんの傍らに立てた点滴スタンドにイルリガートルを吊り、下端から伸びるチューブを今犯したばかりの肛門に刺し入れた。
「やぁああああっ!」
 泣き叫んでも拒むことはできない。
「腸からの吸収がいいように調整した濃縮栄養液だから、きっと気に入るよ」
 食道や胃に障害があって経口食餌できない人のために、実際に使われるものらしい。南さんによく見えるように、点滴スタンドは彼女の頭の脇に置いていた。俺は栄養液をイルリガートルに流し込んでいく。どんどん目盛りが埋まっていった。
 ――3リットル。
「あ……あ……あ……」
 その分量に顔を歪めて脅える南さん。
「それじゃあ――召し上がれ」
 楽しげに告げて、俺はイルリガートル下端の弁をひねった。つつーっと薬液がチューブを伝い落ちていく。
「いや…いや…いや…イヤぁあああああっ!!」
 音も立てず、静かに液体は南さんの腸内に流れ込んでいった――。


 ゆっくりとイルリガートルの液面が下がり、ついには3リットルすべてが南さんの腹中に納まった。心持ち彼女の下腹部が膨らんでいるようにも見える。
 ちゅぽっとチューブを引き抜き、俺は代わりのように三角錐の形をしたものを押し込んだ。
「ひィ――な、何……?」
 すっかり脅え上がった声で聞いてくる。俺の手の中にゴムの楕円球が握られているのを見て、目元が悲痛に歪んだ。エネマシリンジ――ポンプ式浣腸器――のように見えたのだろう。
 俺は構わず楕円球のポンプを握り込んだ。南さんのかすれた悲鳴。
 何度もポンプを握ると、悲鳴は戸惑いの声に変わる。次いで恐怖の声に。
 俺が手の中の空気ポンプを握ると、押し込んだ三角錐の先端が膨れ上がっていくのだ。それは空気圧式のアヌス栓だった。充分膨らましてからアヌス栓の後端から空気チューブを引き抜いた。逆止弁がついているので空気が抜ける心配はない。言い方を変えれば、また空気チューブを刺さなければ中の空気を抜くことはできない、と言うことだ。
「これで腹の中のものを出すことはできないよ。たっぷり味わってもらわないと、もったいないからね」
 俺の言葉の意味を理解して、南さんの顔が土気色になった。どんなに強烈な便意に苛まれても、これがある限り決して排泄できないのだ。文句か哀願か、何かを言おうと口を開けた南さんに、俺は素早くバーギャグを噛ませた。
「――ッ!? おうううっ、ふっ、むぐぅううううっ!」
「それじゃ、今日はここまでだよ。南さん、ゆっくり休んでくださいね。では、また後で」
 にっこり笑ってあいさつする俺に、南さんは驚愕の瞳を向ける。
 さっきの俺の言葉を誤って解釈していたのは間違いない。「今日は」許してあげると言ったのだ。つまり「明日」また続きをする、と言うこと――。
「んんんっ! んむぅうううう〜〜っ!!」
 何かを訴える悲痛な呻きが聞こえるが、無視する。
 俺は大器と威蔵を連れ、広間を後にした。スイッチを切って広間の照明を落とすと、窓のない空間は暗闇に包まれた。鉄扉を閉じ、鍵をかける。中は真の闇。
 彼女、けっこう芯が強そうだから、本当に屈服させるにはもうちょっと精神を削る必要があるだろう。そのための布石だった。
 それでは南さん、また明日――。


「んんっ! ン――――――ッ!!」
 翌日も浣腸責めから始まった。俺達が一眠りする間放置された南さんは、べっとり脂汗をかき、消耗した様子だった。もしかしたら一睡もしていなかったかもしれない。小腸に残っていたものが出てきたためか、昨日あれだけ吐き出させたのに意外に排泄物の量は多く、浣腸液が透明になるまでに数回のエネマを要した。
 昨日の体験で開発されてしまったのか、南さんは浣腸に明確に興奮を示すようになり、最後には排泄と共にイく姿を見せた。
 昨日の激しい反応と考え合わせて、俺は、今日は徹底的にアヌス苛めをしてやろうと決めた。
「どう? 気持ちいい、南さん?」
 問いながら、俺は段々が連なったアナルバイブ――かなり上級者用の太いヤツ――を南さんの菊門に出し入れした。ごりごりと音が聞こえてきそうな手応えが響く。
「ふぉおっ! んおおおおっ!」
 ちなみに南さんにはバーギャグを噛ませたままだ。と言うか、一度たりとも固定台から下ろしていないし、昨日からバーギャグは外していなかったりする。
 びんびんにしこり立った乳首や陰核、ぱっくり開いてひくひく震える膣襞を見ても、問いの答えは充分過ぎるほど明らかだった。そのどれにも、今日は一度も触れていないのだ。
 尻の窄まりをほじくり返しながら、俺はアナルバイブのスイッチを入れた。ブーン、と力強い振動が手に伝わる。
「ひぅううううううッ!!」
 びくびくっと南さんの腹が振動で波打った。膣孔の収縮する周期が短くなり、絶頂寸前なのがわかる。俺は南さんが絶頂に達しようとする瞬間を慎重に見極めて、バイブのスイッチを切って手の動きを止めた。
「……ぅうううう〜〜……」
 イきそこねた南さんが不自由な尻を必死に揺する。固定台がきしきしと音を立てた。
 ――さっきからこれを何度も繰り返していた。絶頂の直前でお預けを食らわされ続けて、イくにイけない悶絶地獄にあぶられる南さんの苦悶がはっきり見て取れる。
 南さんは限界まで首を曲げて振り返り、恨みがましい目で俺を見つめた。
 まだまだ。その目に哀願の色しか浮かばなくなるまでは、ずーっとイかせてやらないからな。
 俺はある程度彼女の興奮が治まるのを待ってから、アナルバイブの動きを再開した。
「ひィううううっ! んんん〜〜っ!」
 南さんは再び、快楽の拷問に泣き喘ぎ始めた。


「ぷあっ……あ…はぁ、はぁあ……」
 確実に1時間以上、もしかしたら2時間近く――熱中してたので自分でもよくわからない――バイブ責めを続け、ようやく南さんの目から意思の光が薄れ始めたのを見て、俺は彼女の口からバーギャグを外してやった。
「さ、南さん。どうして欲しいのか、言えるかな?」
 極限まで焦らし抜かれて、彼女の考えることはもはやただ一つになっている……はずだ。
「い…イか…ふぇ…てぇ…。おね…がぁい…。イき…イきたい…よぉ…」
 長く口を塞がれていたためだろう。最初のうち呂律が上手く回らないで聞き取り難かった言葉が徐々にはっきりしてくるが、内容は予想通り、絶頂を欲する哀願を繰り返すだけだった。
「そんなにイきたいの? 南さん」
「イきたい…ですぅ……。イかせて……。お願い、イかせてぇ……」
「俺の言うことを何でも聞くって約束できるなら、イかせてあげてもいいよ」
 ここが最初の山だ。なんとしてもここで言質を取らなければならない。が、心配するほどのこともなく、南さんはこくこく頷いた。焦らし責めは予想以上に効いたらしい。
「します…約束します…。何でも言うこと聞きますから……だからぁ……」
「そう、それじゃあ……」
 俺は既に全身桜色に染めて欲情し切っている彼女の耳元に口を寄せて囁いた。
「俺の、奴隷になる?」
 彼女――牧村南の運命を決定付ける質問に、南さんはほとんど叫ぶように答えた。
「なります! 奴隷に、なりますッ!!」


 たぶん丸半日以上吊られていた固定台から、ようやく南さんは解放されていた。
「はぁ……」
 へたり込んで吐息をつく彼女の腿や脛には、皮紐の食い込んだ赤い筋がくっきりと刻まれている。多分数日は消えないだろう。誤魔化すにはパンツスーツでも着るしかなさそうだ。薄れれば濃い目のストッキングでもいいかな?
 まあ俺が心配することじゃないが。
 まだ何が起きたのかわかっていないような表情で、ぼんやり周囲を見回す南さん。その瞳に、徐々に意思の光が戻り始めた。だがもう遅い。致命的な一言を、既に彼女は吐いてしまったのだから。
「さあ、南さん。これを」
 一枚の紙切れを手渡した。まだ半分眠っているような少しぼおっとした顔のまま目を通す。数回目を通し、やっと理性が働き出した南さんの目元が曇る。
「な――何ですか、コレは」
「さっき言ったでしょ」
「……? ――――!」
 眉根を寄せて考え込み、先ほど俺が言った言葉を思い出したらしい。切羽詰まった表情になって、慌ててまた周囲を見回し、立ち上がろうと動く。
「あっ!」
 が、長時間吊られていた手足がそう簡単に回復するわけがない。痺れた四肢をコントロールできず、南さんはすっ転んだ。
「大丈夫? ほら、気をつけて」
 苦笑して起こしてやる。そのまま引きつった顔の南さんの耳に声を吹き込む。
「逃げようとしても無駄だよ。この部屋の入り口はあそこしかないし」
 目線で示した鉄扉の前には、威蔵が腕を組んで立っている。
「それに逃げたって、南さんの恥ずかしい姿がインディーズAVやネットで流れたり、無修正ビデオが友人知人、郷里のご両親に送りつけられたりするかも知れないよ? 確かお父さんは最近体調が良くないんじゃなかった? 愛娘のエロ画像なんか見せつけられたりしたら、倒れちゃうかもね」
 凍りついたように南さんの表情がこわばった。
『なります! 奴隷になりますッ!!』
 切迫した叫びが突然流れ、南さんはびくっと震えて恐る恐る振り向く。
 鉄扉の反対側の壁にいつの間にかどでかいスクリーンが張られ、プロジェクターで映像が投射されていた。全裸で枠の中に吊られる南さんの姿。ついさきほどの、焦らし抜かれて理性を失った彼女自身の映像だ。大器が素早くセッティングした代物だった。
「あ……あ……」
 目を見開いて絶句する南さん。
「さあ、南さん……わかるね?」
 肩を抱き、敢えて言葉をぼかして促すと、南さんはがっくりと俯いて、蚊の鳴くような声で答えた。
「…………はい……」
 ――堕ちた。
 どす黒い充足感が胸を満たすのを感じ、俺は我知らず歪んだ笑みを浮かべていた。


 複数のカメラの前に、一糸まとわぬ姿の南さんが跪いていた。
 全身を映すよう調節された正面のカメラ。横顔をズームして捉えるサイドのカメラ。後ろのカメラはアナルで微振動を続けるバイブとその下の濡れ咲いた淫華の様子を克明に記録する。そして大器は手持ちのビデオでポジション、アングル、倍率をその時々で変え、ベストショットを模索していた。
「あああ……っ」
 正面カメラのすぐ脇に立つ俺を、南さんは涙のにじんだ目で見上げた。許しを請うようなその視線に笑みを返し、俺は無慈悲に命じた。
「始めて、南さん」
「――――はい……」
 哀しげに頷く南さん。
 ちなみにこの姿勢も俺が指定したものだ。肩幅に膝を開いて跪き、お尻を後ろに突き出す。上半身は気持ち垂直に立てるようにし、胸を張り、乳房を隠さず手は両脇に垂らす。正面カメラ、もしくは俺をまっすぐ見て、目はつぶらない、と言うもの。
 南さんのどこまでも柔らかい美乳が、呼吸と羞恥とバイブの振動にふるふると揺れている。どうしても恥ずかしさに負けるのだろう、微妙に上目遣いなのは指定ポーズからやや外れるが、それもまた可愛いので許す。
 南さんは一瞬目を伏せてから、震える唇を開いた。
「わっ…私……牧村南は……今、この時から……ど、ど…どれ、ひああああああっ!」
 モーター音の高まりと共に南さんのセリフが中断する。手にしたリモコンでアナルバイブの振動を最大にしたのだ。悶える彼女がイく前に振動を戻す。

「『誰の』が抜けてるよ。最初からやり直し」
「はぁ……はぁ……はっ、は…い――」
 びくびくと震え、くすぶる欲情に耐えつつ言葉を絞り出す様子が大変色っぽくてよい。
「私、牧村南は、今この時から、四堂和巳様の、ど……奴隷と、なり…永遠の、忠誠を…尽くすことを、ち、誓い…ます…」
 奴隷宣誓――隷属の誓いだった。
「よし。それじゃあ、その言葉を証明するためにも…俺の足とペニスに、誓いのキスをしてもらおうか」
「なっ…!? ……くっ、わっ、わかり…ました……きゃううううっ!」
 再びバイブの最大振動に悶える南さん。
「『御主人様』が抜けたよ」
「くあああっ、わかり、ましたっ…御主人様ぁ…っ!」
「よし」
「――ああ…」
 優しげな美貌を悔しそうに歪めながら、南さんは這いつくばって俺の足の甲に唇を押し当てた。次いで、屈服の言葉を述べる彼女の姿に興奮していきり立った俺のペニスに顔を寄せていく。
 恥辱と屈辱に眉根を寄せ、それでも逆らえずに従う様が欲望をそそる。心の底ではまだ屈していないのは明らかだが、それはこれからの課題だ。今は脅迫されて従わされているだけでも、そのうち俺から離れられないようにしてやる。体はもちろん――心までも。
 俺の黒い決意を認証するかのように、南さんの温かい唇が俺の先端にそっと触れた。
 南さんのすべてを俺のものにしてやる。そう思い決めると、近い将来俺の所有物となる彼女に愛着が湧き始めた。俺は南さんの髪をそっと撫でた。


「――あひィっ!」
 アナルバイブを一気に引き抜いてから、俺は仰向けに横たわった。
「約束通り、思いっきりイかせてあげるよ、南さん。さ、こっちに来て」
 俺の上に南さんを導く。奴隷になる、と口走った彼女に、俺はそれじゃあ奴隷の誓いを立てられたら思いきりイかせてやる、と約束してあげたのだった。
 焦らしに入ってから一度もイかされていない自分の体を思い出したのか、ふらふらと引かれるままに俺の腰を跨ぐ南さん。
「自分で入れてごらん。――好きな方にね」
 意地悪く笑うと、南さんはかぁっと赤くなりつつも、反り返って下腹にくっついていた俺のペニスをそっと引き上げ、自分の肉穴に押し当てた。
 散々イジメ倒した後ろの窄まりに……。
 どうやらすっかり開発されてしまったらしい。したのは俺だが。
 そのまま少しずつ腰を下ろす。
「ああ……」
 俺のモノの先端が彼女の菊門を押し広げていった。刺激に耐えかねて腰が抜けたのか、固定台で悶えまくって筋力が低下していたのか――彼女の膝がかくんと抜ける。
「――えっ? あっ、あはぁああああああっ!」
 俺の腰にぺたんと座り込んでしまった彼女は、ぞぶり――と、一気に根元まで受け入れていた。びくびくっと震える。この瞬間軽くイったらしい。
 だがまだこれからだ。
 ――今度は絶頂地獄を味わわせてあげるよ、南さん。
 背中のバネを効かせて、俺は下から勢いよく彼女のアヌスを突き上げていった。
「ひゃあっ! ひわあああっ!」
 ややかすれた甘い悲鳴。それがもっと聞きたくて、俺はどんどん突き上げを早めた。
 何度も突き上げていると、彼女はすぐに二度目の、一度目よりも少し強めの絶頂に達した。
「あああっ! はぁあああああああ――――ッ!」
 きゅうっと締め付けてくるが、痛いと言うほどではなく――何と言うか、絶品の締め上げだった。
 気持ちいい。
 今のを、もっと――。
 俺の腰の動きは留まることなく加速していった。
 南さんは少しずつ間を置いて、三度目、四度目、五度目と、何度も何度もイき続けた。
「あっあっあっあっあ〜〜〜〜!!!」
 甘い嬌声が俺の鼓膜を心地よくくすぐった。


「はぁ――――っ、はぁ――――っ……」
 南さんはぐったりと俯せに俺に倒れかかっていた。柔らかい乳房が俺の胸板の上で潰れている。彼女が果たして何回イったのか、俺にも彼女自身にもわからなかった。最後の方は途切れなく連続してイき続けてたみたいだったし。俺も数度に渡って南さんに精液浣腸を施していたが、こなれてきた彼女の菊門の感触は素晴らしく、何度でもできそうな気がしていた。当然いまだに元気だ。――相性、いいのかもしんない。
「南さん――プレゼントをあげる」
「――?」
 顔を上げた彼女の視界に差し出したのは、真っ赤に染め上げた赤いベルト――革の首輪だった。
「自分で着けてごらん」
 手渡すと、戸惑いつつも、おずおずと自分で首に巻いていく。白い首筋に赤い首輪が鮮烈なコントラストをかもし出す。やけに従順なのは圧倒的な悦楽の直後だからだろうか。
「可愛いよ」
 褒めると、複雑な顔になった。――てコトは、ちょっとは嬉しいんだろうか。
「さ――今度は、アイツらを気持ちよくするんだ」
 俺が目線で合図すると、大器と威蔵がズボンからペニスを取り出して両脇に立った。ヤローのナニなんかまじまじと見るのはご免なので、威蔵のは体格に見合った代物で、大器のは細身だが雁高だったとだけ言っておく。
 迷うような表情の南さんに、俺は髪を撫でながら優しく囁いた。
「新しく手に入れた奴隷の使い心地の素晴らしさを、アイツらに自慢したいんだ。――ほら、これは飼い主の命令だよ」
 立場を思い出させる一言を付け加えると、南さんは顔を曇らせて頷いた。
「はい――御主人様……」
 力が入らない体を何とか起こし、俺の腰に座り込む。
「はぁああ……」
 結果、また根元まで俺のモノを後腔に受け入れて、深い吐息をついた。
 口元に突き出された二本の剛直をそれぞれ繊手で絡め取り、交互に口に含んで舐めしゃぶり始める。二人はそれほど長く持たず、精を放った。考えてみれば昨日一日こいつらにはヤらせてないし、今日もずっと見てるだけだったもんな。

 ――こいつらもよく、俺の言うこと聞いて『お預け』状態でいたもんだ。
 溜め込んでいた分ヤツらの欲望は限りがなく、南さんは見る見る白濁でどろどろに汚れていった。二人の指示と俺のアドバイスで、彼女の奉仕の技巧は急速に上達しているようだ。
 さて――休憩したし、俺もそろそろまた――。
 前触れなく腰の律動を再開すると、南さんは驚いた顔でむせる。
「ぶっ――うぶぅっ!」
 さらに、手を乳房と股間に伸ばしていく。南さんはゆっくりしたその手の動きを恐怖と狼狽と――ほのかな期待の混じった視線で追っていた。
「――――ひぅうううううううっ!!」
 乳首と陰核を同時に捻り上げると、彼女は腰を捏ねるように暴れ、くぐもった悦楽の声を放った。


 そして――最初に南さんを拉致した公園を、俺達二人は歩いていた。
 既に日付が変わろうとしているこの時間、人通りはほとんどない。南さんはスーツを着込み、前のときと同じような格好。違いは、首輪を嵌めていることと、下着を着けていないことだ。
 俺の肩にすがるようにして、南さんがよろめき歩く。
「ほら、大丈夫?」
 言いつつ指を捻ると、南さんは「ひゃぅん」と可愛く啼いてぎゅっとしがみついてくる。俺の手は彼女のスカートの中に消え、人差し指と中指は揃えて裏の窄まりを貫いていた。
 今日一日、南さんは快楽の沼に理性を保ったまま沈められていた。我を忘れることを許さず、ずっと性の愉悦を味わうよう強制したのだ。何度も悶絶失神し、何度も別種の快感で目覚めさせた。
 快楽地獄。そうとしか呼べない時間だっただろう。
 この二日間の経験で、彼女の肛門はクリトリスにも匹敵する最大の性感帯に変貌していた。突き入れた俺の指の僅かな動きに敏感に反応して甘い喘ぎを上げている。
 たっぷり凌辱し尽くした南さんを風呂に入れて隅々まで洗ってやり、服を着せて車で元の公園まで連れてきたのがついさっきのこと。今、あの時中断された予定通り、彼女の部屋まで送っていく途中だった。
 逆らえば、凌辱ビデオをバラ撒かれる。従えば、破滅的なまでの快楽を与えられる。
 とりあえずこの二日でその二つの事実を徹底的に、骨身に染みるほど教え込んでやった。
 あとは彼女がどちらを選ぶか、だ。それでも警察に駆け込むのなら俺達の負けだ。
 まあやるだけはやった。後はなるようになるだろう。
 指に力が入り、南さんが「ふあん」と甘く啼いた。


 南さんの部屋の前まで送り届けた。
 別れ際、菊座から指を引き抜くと、名残惜しげな目をしたように見えたのは気のせいだろうか。
 俺は腸液で汚れた指を舐め清めさせ、最後にそっと優しいキスを重ねた。
 南さんは拒まなかった。


 それから数日。初めのうちだいぶ情緒不安定な様子を職場で見せていた南さんは、だがしばらく経って落ち着きを取り戻し、元の状態に戻ったようだった。つまりは、異常な事件でこうむった精神的打撃から立ち直りつつあったと言うことだ。
 俺は賭けの結果を確かめるために、夜、公園のベンチにじっと座っていた。
 小一時間も待つと、はっと息を呑んでそばで立ち止まる気配がした。俺はそちらへ顔を向けて微笑む。
「――こんばんは、南さん」
「あなたは……四堂、さん…?」
「当たり」
 立ち上がって歩み寄ると、僅かに引く気配。
「なっ……何の、用ですか……」
「そんなに警戒しなくても。今日は、コレを届けに」
 薄い真四角のプラスチックケースを手渡す。
「?」
「南さん主演のDVD」
「――ひっ!?」
 肩に手を回すが、逃げようとはしない。かたかたと震えていた。
「もちろん、こないだのを編集したヤツね」
「あああ……イヤ……もうイヤぁ……」
「――本当にイヤ?」
「あ、当たり前です…」
「――なら、どうして警察とか行かないの?」
「だってそれは……このビデオが……」
「本当に、どうしてもイヤなら行ってるはずじゃないかな?」
「…………」
 混乱した表情で黙り込む南さん。
「それに、あの首輪」
「――!」
「大事にベッドサイドに飾ってあるのはどうして?」
「あ……あ……」
 震えが大きくなる。
「南さんさ……あれから、イけた?」
「! な、何の、こと……」
 ありありと動揺していた。嘘のつけないヒトだ。
「俺にされたときほど、自分で気持ちよくなれた? って聞いてるの」
「…………」
「ホントは…俺にされたいって、思ってたでしょう?」
「そっ、そんなこと、ありません…!」
「嘘吐きだね、南さんは」
「う、嘘なんかじゃ……っ!」
「まあ、その答えはまた今度でいいよ。でも今夜は……わかってるね?」
「――はい、御主人様……」
 俯いて小さく答える。この時点ですでにあらゆる決着がついていることに、彼女自身気付いているだろうか? 気付いていて自分を誤魔化しているのだろうか?
 まあ、どちらでも構わない。
 賭けは俺の勝ちだ。
 これで、本命の立川郁美の陥落に取り組める。
 とりあえず今夜は南さんを可愛がるけどね。
 いまだどういう態度を取ればいいのかわからない様子で、いまいち旗幟の不鮮明な南さんのスカートの中に手を滑り込ませつつ、俺達は南さんの部屋へと並んで向かう。
「あぁん…」
 尻穴を穿られて早くも南さんが上げる甘え声が、俺の聴覚を心地よくくすぐった。


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