夕日が塔の中に射し込んでいる。
 リナは一人炊事場に立ち、料理にいそしんでいた。
 ガウリイの言いつけ通り、裸にエプロンという姿で。
 リナを塔から逃がさないためのガウリイの配慮だったが、すでに逃げる意志をすっかり失ってしまったリナにとっては、ただ恥ずかしいだけだった。
「うん! こんなものかな?」
 スープを小皿に取り、一口すするリナ。
 満足げに頷いている。
 テーブルの上には、すでに十種類以上の料理が所狭しと並べられていた。
「リナ、出来たか?」
 扉からのぞき込むガウリイ。
「だめ、まだよ!」
「おれ、もう腹ぺこなんだけど」
「がまんしなさい! おなか空いてるのはあなただけじゃあないんだから!」
 リナの言葉に渋々頷くガウリイ。
 その瞳が、好色な色を宿す。
 それをめざとく見つけるリナ。
「ガウリイ、だめよ。食事が終わってから……ね? わたし、もう逃げも隠れもしないから」
 はにかみながら、言葉を口にするリナ。
「だから、しばらくあっちにいっていて。お願い」
「しようがないな」
 残念、といった表情で扉を閉めるガウリイ。
「さて、あと少しね」
 リナは最後の仕上げに取りかかった。


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