その11
『それ』は、筆舌に尽くしがたい行為だった。
王国の犯罪者に対するいかなる拷問も、『それ』と比べると色あせてしまうだろう。
苦痛、まさしくその言葉を体現する痛み、いや、激痛……
気絶することすら叶わぬ激痛の嵐に、ミレルは晒されていた。
「うあっあああああ! いやあああああっ! いたひっ、いたひっ、いやああああああ……」
地下室に、ミレルの悲鳴が響き渡っていた。
それは、とても人が出せるとは思えないほどの悲鳴。
そんな悲鳴を冷徹に無視し、ミレルの背骨に太い針を差し込んでいくローザ。
……麻酔は、一切かけられていない。しかも、ローザが針を打つのは神経節のもっとも集中する部位だった。
一ミリ、ずれただけでミレルの命はない、そんな危険な部位に針を打つ。
打った後で、針に注射器を繋ぎ、中に入った白く濁った半固形状の物体を強制的にミレルの背骨に注入していった。
ミレルの腰骨から始まり、関節ごとに背骨に注射していくローザ。
その動作はまるで機械のように正確で、いかなることにも動じていなかった。
ひたすら背骨にそって、上へ、上へと注射していくローザ。
そして、とうとう首筋にまで到達した。
「ここが正念場ね。さて、今のわたしに、ここを突き通すだけの腕があるかしら?」
長い、長い針をその手に持つ。
「まあいいわ。やってみればわかるでしょ……」
そういった後で、ミレルの首筋にその針を突き立てる。
「ひぐっ!! あぐっ!! うぐっ!!」
躰を痙攣させるミレル。
すでにその表情からは、感情を何も感じ取れない。
「大丈夫かしら? 正常かどうかは、終わってみないとわからないけれど……」
そう呟きながら、ひたすら針をミレルの脳に向かって突き立てていくっ!
ローザの額から、玉のような汗が次々流れ落ちる。
「ここっ!」
手応えを感じたローザは針を止め、再び針に注射器を繋ぐ。
「量を確実にしないと……」
真剣な表情で注射器の目盛りを見つめるローザ。
わずか、……ほんのわずかだけ、ピストンを押し込む。
すかさず次の瞬間、針を引き抜くローザ!!
「今までの中で、一番会心の施術ね!」
ローザは思わず顔をほころばせた。
ミレルの意識が戻ったのは、実に一週間後の事だった。
「あううううっ! あひっ! あうっ、あ……、あうっ?」
激痛が、躰から去ったことをようやく認識するミレル。
目を開けると、虚ろな瞳で周囲を見渡す。
地下室のベッドの中に寝かされていることに気がつくミレル。
「あうっ、いた、かった……いたかったようっ……」
ミレルは、すすり泣きを始めていた。
誰もいない地下室。
ミレルはただ一人、涙を流し続けていた……
ミレルは、ベッドの上で食事を摂っていた。
それはいつものような奴隷食ではなく、普通の食事。
ミレルの健康に最大限の配慮をした、栄養満点の食事だった。
スプーンで、スープを啜るミレル。
それを見つめるローザの瞳には、勝利感が漂っていた。
「どう、気分は?」
「……あまり、良くないです」
「そう。まあ、当分は仕方ないわね」
肩をすくめて答えるローザ。
「ローザ様に質問があります」
「なに?」
笑顔で応えるローザ。
「秘術、失敗したんですか? わたしの躰、まだ男の子……」
無念さを滲ませて、ミレルはつぶやいた。
「くすっ、……いいえ、成功したわ」
「なら、なぜっ! ミレルの躰におちん○んがあるんですっ!!」
スープ皿を投げつけ、非難の声を上げるミレル。
「ローザ様のことを信じて、この躰を投げ出したのにっ! ただ、ミレルをいたぶり楽しむ為だけに、あんなことをしたのなら、ミレルは許せませんっ!!」
ミレルの言葉に、急に険悪な顔をするローザ。
「ミレル、あなた、……誰に向かってものをいってるの?」
冷ややかなローザの言葉に、ミレルの動きが硬直する。
「このわたしが、成功したといってるのよ。それを疑うとは、なんという恥知らずな子……」
ローザの冷酷な声と表情に、ミレルの顔に怯えがはしった。
「いっ、……いったいあなたは……何者なのですっ?!」
ミレルの口から、自然と吐き出される疑問。
「そんなこと、どうだっていいでしょ? あなたはわたしの役に立った。わたしはあなたの希望を叶えてあげた。それでいいじゃない」
酷薄なその声。娼館の主人というよりも、……地獄の門番に相応しい声。
ミレルはか弱い小鳥のように震えた。
「心配しなくてもいいわよ、ミレル。あなたの気持ちはわかるけど、この術は効果を発揮するのに時間がかかるの」
「……えっ?」
「あなたのカイル様に対する想いに免じて、いまの非礼な言葉は忘れてあげる。でも、二度目はないと覚悟なさい、ミレル」
「は、はい……」
ローザの迫力ある言葉に、ミレルはあわててコクリと頷いた。
「それよりも、再開しないとね……」
「な、何がですか?」
すっかり怯え、おずおずと問い掛けるミレル。
「あなたに対する調教。あなたの望みを叶えてあげたんだもの、当然、絶対服従するという誓いを果たしてくれるわよね、ミレル?」
そう言ってミレルを見つめる視線は、いつの間にかベテラン調教師のものへと変化していたのだった。
「ほーら、気持ちいい、気持ちいい……」
ティルドーをミレルのアナルに押し込んでいくローザ。
「はぅっ、感じるっ……」
全身の力を抜き、ミレルは素直にティルドーを受け入れていた。
すでに痛みはなく、ただ肛虐の魔悦が快感となって、ミレルを犯していた。
「さあ、締め付けなさい、ミレル」
「は、はい……」
ローザの言葉に従順に従い、アナルをすぼめようとするミレル。
「はうっ!」
その瞬間、淫らなパルスがミレルの脳髄を駆け上がる。
「……にいさま……」
「うふふ、思い出したのね、ミレル?」
「は、はい……ローザ様」
腰を前後に揺さぶりながら、ミレルはローザの問いに答える。
その表情は、羞恥で赤く染まっていた。
「わたしの手による調教より、カイル様に抱かれた方が数倍効果があったことについては、ちょっと癪に障るけど……」
ゆっくりとティルドーを動かすローザ。
「こうなってしまえば、どちらにしても一緒ね。うふふ、嬉しそうに腰をふっちゃって!」
「ああっ、ローザ様、いわないでくださいっ!」
ミレルの甘い抗議の声が、部屋に響き渡る。
ティルドーの動きにあわせ、淫らに腰を振るミレル。
ミレルはもはや、ローザの為すがままになっていた。
「さあっ! もっと締め付けなさい」
ミレルに指示を送るローザ。
腰を前後に振り乱し、快感を貪ることに夢中になっているミレル。
それでもミレルは、さらにティルドーを締め付けていった。
「ふふふ、まったくこの子は……いやらしくなったわね」
ローザは満足げに微笑んだ。
調教を再開してわずか一週間、ミレルは完全に肛虐の虜と成り果てていた。
カイルとのセックスを思い出しながら、調教をうけるようにと命令するローザ。
誓いを守り、ミレルはローザの命令に従った。
カイルとの行為を思い出しながら、言葉にしながら、ローザの調教にその身を委せるミレル。
カイルに抱かれた記憶がミレルの脳裏に浮かぶ度に、ミレルの躰は悦楽に打ち震えた。
ミレルの中からしだいに歯止めが失われていく。
やがてローザの思惑通りに、セックスを貪るケダモノへとミレルは変わっていった。
カイルの名前をミレルの耳元で囁き、抵抗心を剥ぎ取ると、ローザは仕上げのアナル調教をミレルの躰に施していく。
後ろの穴で深い悦楽を感じるたびに、どんどん肉欲の海の中へ溺れていくミレル……
「ホントにいやらしい子。そして、……いじらしい子ね。カイル様があなたに溺れる気持ちがわかるわ」
ティルドーをゆっくりと出し入れしながら、ローザは呟いた。
「さあ、もっと締め付けるのよっ! カイル様に飽きられて捨てられたくなかったら、もっともっとテクニックを磨くのっ!」
「はあうっ!!」
死に物狂いでティルドーを締め付けるミレル。
ローザの目の前で、ミレルのアナルは艶めかしい動きを繰り返していた。
収縮を繰り返すアナル。その度に、ミレルの口から切なく甘いため息が漏れ出す。
ローザが動かすティルドーの動きに、あわせて動くミレルのお尻。
ミレルの躰はローザのちょっとした仕草にも従うように、躾られてしまっていた。
誓いを楯にとられ、次々に服従を強要されていくミレル。
ミレルはローザの思うままに仕立て上げられていく。
そして……
「はうっ、あふっ、あああああっ!!」
ミレルはカイル以外の者の手で、ついに絶頂を極めてしまったのだ。
うふふ、とうとう完全に堕ちたわね、ミレルちゃん!
ほくそ笑むローザ。
これで、あとはあの三人にまかしてもいいわね。自らの意志を失った、淫らな肉奴隷人形に仕上げてくれるでしょう。うふふふふ……
失神したミレルに、その手で、その指で、撫で回すローザ。
それに無意識に反応するミレルの淫らな仕草に、ローザは調教の成功を確信したのだった。
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