その12
三人の黒人達に、躰を揉まれるミレル。
六つの手で、躰のいたるところを徹底的に揉まれている。
ミレルは三人の黒人達に、催淫マッサージを施されていた。
淫らのツボをその指で探られ、指圧をかけられていくミレル。
ミレルの躰の中に、淫らの気をそそぎ込んでいく黒人達。
それと同時に、ミレルのしなやかな筋肉はやわやわと揉み上げられ、次第に愛玩動物特有のやわらかな筋肉へと作り変えられていった。
黒人達が送り込む刺激に敏感に反応するミレルの躰。
背中を一撫でするだけで、ミレルはエビのように反り返り、身悶えするまでになっていた。
すっかりセックスの快感に溺れてしまったミレルの躰。
しかし……
「…………」
「ふうっ、まったく始末に負えないわね、この姫様は……」
思わず嘆息するローザ。
ミレルは、一言も快楽の鳴き声を上げていなかった。
「少しは、声を出したらどう?」
「……め、命令……ならっ……っ」
ローザの問いに、かすれた声ながらもしっかりと答えるミレル。
その問いにローザは再び嘆息した。
「まったく、恋の奴隷になった姫君が、ここまで始末に悪いものだとは思わなかったわ。これから娼婦にする娘には、あなたみたいなタイプは出来るだけ外した方がいいかもね」
「…………」
ひたすら沈黙するミレル。
「ひとつ聞きたいんだけど、いい?」
「……なにっ、うっ……」
「なんで、わたしの調教の時には強情を張らなかったの?」
真剣な表情でミレルを見つめるローザ。
「そ、それはっ……ローザさまは、ミレルの、……恩人で、それにっ……わかんないけど……他人と思えなく、なったのかも……」
息も絶え絶えに、それでも答えるミレル。
しばしミレルを見つめ、その後でかすかに肩をすくめるローザ。
「まったく、屈辱で涙が出てきそうになるわ、ホントに」
「…………」
「わかる、ミレル? 今までわたしが調教した子はみんな、最後には自分の意志を失って、他人のいうことは何でも聞く肉奴隷人形になったものよ。あなたみたいに、『従ってあげる』みたいな意志を持った子なんて一人もいない」
「そ……んなこと、ない。わたしは、……ローザ様の命令に従う、あやつり人形……」
「自分があやつり人形だって言う人形がどこにあるっていうのよっ! あなたを『命令』することでしか従わせることが出来ないなんて、まったく……屈辱的だわ!!」
「そ、……そう、なの?」
「そうなのっ。結構、プライドが傷ついたわ。わたしもまだまだ修行しないと駄目ねぇ……」
憮然とした表情でつぶやくローザ。
「でも、躰が完全に屈服しているのに心が屈服しないなんて、なんか詐欺としか思えないわ。納得いかないわよっ!」
思わず声をあげるローザ。
「『心と体は別もの』なんて言う子ほど、躰が屈服する前に心が屈したものだったわ。しょせん心なんて躰に従うものだなんて思ってたけど、あなたを見てるとそんな思いがぐらついてくるのよね」
しみじみと語るローザ。
「あなたを壊していいのなら、もっともっとキツい調教を施して、本当に心と体が違うものなのかどうか試してみたい気がするけど、残念ながらあなたはカイル様のもの。ここまでね……」
黒人達に向けて軽く腕を振るローザ。
ミレルをなぶるのを止めると、黒人達はミレルの躰から離れていった。
「あなたたち済まないわね。せっかく来てくれたけど、ここまでにしてくれる?」
ローザの言葉にうなずく黒人達。
その後で、三人の内の一人が口を開く。
「タイシタ『ヒメ』ダ」
「……ギー?」
「ワレラノ、テクニックニ、クッシナイ。モシカシタラ、カーリアノ、ウマレカワリ」
「カーリア? あの淫らの邪神の?」
ローザの言葉に、うなずく三人。
「カーリアノイシ、カイラクニ、ソマラズ」
「カーリアハ、アイスルアイテノタメニダケ、ミダラニナル」
「カーリアハ、ニクヨクノメガミニアラズ、アイヨクノメガミ」
「……へぇ、そうなの?」
興味深そうに三人の話を聞くローザ。
「なんとなく、興味を覚えるわね。そのうち暇になったらカーリアの伝承を漁ってみようかしら」
快楽責めからようやく解放されたミレルは、ローザの言葉にいぶかしげな表情を浮かべた。
ローザの言葉に、なんとなく違和感を感じるミレル。
しかしそれを掴みきれないうちに、ミレルは深い眠りに堕ちていった。
ミレルの躰はローザの宣告のとおり、順調に女性へと変化していった。
男性の器官は完全に失われ、その後に、女性の器官がミレルの躰の中に生まれてくる。
生まれ出た女性の器官からはホルモンが盛んに分泌され、もはやキチェがなくとも、ミレルの体型を女性体型に維持しつつあった。
完全に女の子になってしまったミレル。
ミレルは心の底からの喜びを感じていた。
そっと、みずからのワレメをなぞるミレル。
そこはまだぴっちりと閉じており、一度として男の侵入を許していない。
ミレルは処女だった。
そんなミレルを見て苦笑するローザ。
「『処女姫』という言葉が、これほど似合わない姫もないわねぇ」
「ローザさまの、……いじわる」
ミレルはフェラチオ特訓のため、張り型に舌を伸ばしているところだった。
「早く、にいさまに処女を散らして欲しい。そしてミレルを、名実ともに『淫ら姫』にしてほしい……」
そういった後で、不安げな表情でローザを見つめるミレル。
「でもホントに、にいさまはご無事で帰ってくるのですか? 不安なんです」
「安心なさい、ミレル。このわたし、ローザが保証してあげる。……それよりも、舌が止まってるわよミレル」
「あっ、はい、わかりました、ローザさま……」
その瞳に安堵と、ローザに対する絶対の信頼を浮かべて、再び張り型に舌を伸ばすミレル。
「まったく、……少なくとも、調教師と肉奴隷の会話じゃあないわねぇ」
再び苦笑するローザ。
「結局、この子を気に入ってしまったってこと? このローザとあろうものが。いまの状態はまるで……」
仲のいい姉と妹みたいじゃない。
さらに、苦笑を深くするローザ。
「……ローザさま?」
「ミレル、もっとスジにそわせるようにして、……そうじゃなく! そう、そんな感じで舐めていきなさい。うまいわよ、その調子……」
目を輝かせながら、ローザの指示に従って、舌を張り型に這わせていくミレル。
その二人の様子は、行為が淫らな肉奴隷調教でなければ、仲のいい姉妹の態度といってもいいものになっていた。
ローザに心からの信頼を寄せて、その指示に必死に従うミレル。
そんなミレルに好感をもって、みずからが持つ性の秘術を教授していくローザ。
二人の関係は、もはや調教師と奴隷という枠をはるかに超えつつあった……
ローザの教えるテクニックを身につけつつ、日を過ごすミレル。
やがて、カイルの帰還の日がやってきた……
カイルは超絶不機嫌な様子で、城へと帰還していた。
あまりに不機嫌なその様子に、周囲の貴族達は遠巻きにしてひそひそ話を交わしている。
いくさは、ドレッド国の敗北となった。
だが、カイルの不機嫌な理由はそれだけではない。
いや、むしろそれは理由としては少ないだろう。
カイルは戦の経過そのものに、強烈な不満を感じていたのだ。
「よく帰ってきた息子よ! ……ずいぶんと不機嫌そうだな?」
玉座に座ったガリウスが、あきれた口調でカイルに問いかける。
「負けいくさでしたから」
ポツリと答えるカイル。
「いや、それはそうだが、お前はよくやった。わずか一個連隊で敵の攻勢を支えたのだ。その功績は大きいぞ」
ガリウスの言葉に、周囲を取り巻く廷臣達はいっせいにうなずいた。
追従やお世辞ではなく、皆が心からそう思っていたのだ。
「それはっ! ……相手に戦う意志がなかったからです」
戦の経過を思い返すカイル。
ラフランドの鉄騎騎士団の迎撃に向かったカイルに対し、相手は徹底的に交戦をさけ、ラーナ川にある中州に築城を進めていたのだ。
歯ぎしりしつつ、見つめるしか手がなかったカイル。
妨害しようにも、相手の戦力の方が圧倒的に多いのである。
しかも相手は完全に防御に入り、カイルのいかなる挑発にも乗ってこなかった。
すでに簡易防護柵は張り巡らされ、堀まで掘られつつあるという手回しの良さ。
カイルは攻撃を断念すると、ドレッド王ガリウスに大規模な動員を止めるように進言し、そのかわりに相手の城に対になるようにラーナ川の川岸に築城を始めた。
二ヶ月間をかけて双方の砦は出来上がり、結果……戦は千日手と化した。
意気揚々と引き上げる鉄騎騎士団を、悔し涙を流しながら見送ったカイル。
前回のいくさで手に入れた北部地区は、完全にラフランドに取り返されてしまっていた。
ちなみに、今回の戦による死傷者はゼロ。
双方共に無駄な損害を出すことを恐れたからである。
「それでも、ラフランドの侵入を防いだことには違いがあるまい」
「し、しかしっ!」
「今回は相手の方が上手だった。そういうことだろう」
そう言った後で、冷徹な視線でカイルを見つめるガリウス。
「カイルよ。まさかお前はこの大陸中で一番頭がいいのが自分だなどと、思い上がってはいまいなっ?」
雷鳴のような声を轟かせるガリウス。
「ち、父上……」
「もしそう思っているならば、それは思い上がりも甚だしいっ!! 相手も知力を振り絞り最高の策をもって戦いを仕掛けてくるのだぞ。それがわからぬというのなら、お前にこの国の王子たる資格はないっ!」
「……父上、申し訳ありません」
思わず頭を垂れるカイル。
「よい、やっとお前らしい表情になったな」
厳しい表情から一転、朗らかに笑い飛ばすガリウス。
カイルの顔に、ようやく笑顔が少し戻る。
「だけど、こんなに見事にしてやられるとは思ってもみませんでした。まさか、狙いがあの中州だなんて……」
「盲点だったな。まあ本来あの土地はラフランドのものであったし、地理にうとかったのは仕方があるまい。奴らもあの土地を取られて中州の重要性に気がついたんだろうしな」
「ええ、あそこに砦があったら前回の戦そのものが起きなかったでしょう」
「だが、今回は相手の策が上手すぎて救われたな。あのまま攻勢をかけられていた方が、実際のダメージが大きかったろう」
その言葉に、いっせいに頭をうなだれる廷臣と貴族達。
「いずれにしてもお前の判断は悪くなかった。あのままだと北部地区どころか、ラントル穀倉地帯への侵入を許していたかもしれん。そういう意味ではお前の功績は非常に大きい。さすがは我が息子だ!」
「ありがとうございます、父上」
ガリウスの言葉に、頭を下げるカイル。
「もう下がってもよいぞ。長期の戦、疲れたであろう? さっそくミレルの手料理でも食べ……むっ? そう言えばミレルを最近見かけないが……」
言葉を途中で切り、訝しげにつぶやくガリウス。
「いつもなら、真っ先に飛び込んでくるはずだが……」
その言葉に、カイルの背中に冷や汗がつたう。
「ミレルは、……僕の別荘に滞在しています」
「別荘に?」
隣にいるアリシアに問い掛けるような視線を送るガリウス。
アリシアは、不満そうな表情で微かに頷いた。
「なんでも、ジャムやケーキの食材にする為の材料を集め回っているとか……カイル様の料理に使うための」
吐き捨てるようにつぶやくアリシア。
「まったく、あの娘には姫としての自覚がないのかしら?」
苦々しげにつぶやくアリシアの態度に、肩をすくめるガリウス。
「まあよい、元気でやっているのなら何よりだ。カイルよ、ミレルにもよろしくいっておいてくれ」
「はい」
深々と頭を下げると、退出しようとするカイル。
「おっ、そうだ。一つ聞きたいことがあったのだ」
「……なんでしょう?」
足を止め、振り返るカイル。
「なぜあんなにたくさんの兵糧を持っていったのだ? 長期戦になるとは思っていなかったのであろうに?」
ガリウスをしばし見つめるカイル。
その後で、カイルは口を開いた。
「……忠告されたんです」
そう答えたカイルの口調には、ある人物に対する不信感で満ちあふれていた。
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