その14



 ほんの、わずかの抵抗もなかった。
 ベッドの外に投げ捨てられる、白いドレスと白い下着。
 そして、ミレルの白い地肌がカイルの目の前に晒される。
 服を乱暴に脱ぎ捨てるカイル。
 重なり合う、躰と躰……
 しっとりと、吸い付くような抱き心地に、気持ちよさを覚えるカイル。
「はああっ、ああんっ……」
 ミレルのため息が、カイルの耳に届く。
 それはとっても淫らで、欲望を沸き立たせる鳴き声だった。
「いかがですか、抱き心地は?」
「とっても、いい……」
 ミレルの躰に溺れてしまうカイル。
「うふふ……」
 そんなカイルの様子に、ローザは満足げな笑いを浮かべた。
 ゆっくりとミレルの豊かな胸を揉むカイル。
 まるで手のひらに吸い付くような感触に、カイルは驚愕を覚え、次の瞬間、その感触の虜となっていく。
「ああんっ、あんっ、あんっ、ああんっ……」
 ひっきりなしにあがるミレルの鳴き声。
 それは否が応でも、カイルの欲情を高めていった。
「これはっ……まるで、麻薬だな……」
「くすっ、まさしくその通りですわ。人の形をした麻薬、それをカイル様に提供することによってカイル様に溺れて頂き、これからのローザのお願いを聞いてもらおうと思ったんですけど……」
「うっ、あっ!」
 ミレルの右腕がカイルの股間に伸ばされ、手で、指先で、カイルのイチモツを撫で上げる。
 艶めかしい動きを繰り返すミレルの指先。
 ミレルの手の中で、次第に大きくなるイチモツ。
 そしてついには、ミレルの手の中で一気にはぜた!
「うっ、きもちいい……」
 思わず吐息を漏らすカイル。
「あはっ、嬉しいです、にいさま。そう言って頂けると」
 右手にべっとりとついたカイルの白濁液を、嬉しそうに見つめるミレル。
 次の瞬間、手についた精液を舐め始めた。
「あうっ、濃いい、濃いくて、おいしい……」
 ぺろぺろぺろ……
 舐めるミレル。
「とってもいい匂い……」
 ぺろぺろぺろ……
 うっとりとした表情で舐めるミレル。
「結局、ミレルの心から、カイル様を慕う気持ちを殺すことができなかった時点で、わたしの負けですわ。まったく、……褒美にミレルをしっかりと抱いて差し上げなさいませ」
「ああ、ローザ……」
 ほとんど虚ろな表情で答えるカイル。
 その表情を見つつ、クスッと笑うローザ。
「あらら? もしかして本当に勝ったのは、ミレルちゃんだったりして」
 うふふ、まあ、たまにはこんなのもいいでしょ……
 内心つぶやくローザ。
「では、存分に……わたしは用事がありますので、失礼しますわ」
 絡み合う二人を残し、ローザは部屋から立ち去っていった。
 

 ゆっくりと、ミレルの足を押し広げるカイル。
 互いの激しい愛撫に、二人の肌は、ほのかに赤く染まっていた。
 ミレルの股間から、したたるのは愛欲の蜜。
 蜜を垂らしているそのとば口は、わずかに広がっていた。
 そこに、みずからの長大なイチモツをあてがうカイル。
「やさしくするから、いいだろう?」
「は、はいっ!」
「大切にするから、これからもずっと……」
「にいさま、うれしい……」
 ミレルの顔が輝く。
 それは、とてつもなく淫らな行為を行っているとは思えない、純真な表情。
 そのギャップに、カイルは思わず生唾を飲み込んだ。
「いくよ……」
 ミレルのワレメをみずからのイチモツで押し広げていくカイル。

「はうっ!」
「痛いのかい?」
「いいのっ、そのまま突いてぇ!」
「け、けど……」
 とまどうカイル。
「こんなの、女の子になる時の、秘術の激痛に比べたらなんでもないっ! 引き裂いて、ミレルを! そして、にいさまの刻印を、ミレルがにいさまの女である刻印を、躰に刻んでぇ!!」
「わ、わかった!」
 覚悟を決めると、一気に貫くカイル!
 ズンッ!!!
「はあうっ、あああああああ……」
 エビぞりになるミレル。
 ……そして、
 カイルのイチモツをねじ込まれたワレメから、
 一筋の、……赤い鮮血が、トロトロと流れ落ちたのだった。


 カイルはミレルが意識を取り戻すまで、優しく抱いていた。
「うっ、……ううんっ、にいさま?」
 目をこすりながら、ようやく気がつくミレル。
「おはよう、ミレル」
 笑いながらつぶやくカイル。
「……あっ! ご、ごめんなさい、にいさま」
 カイルを見て、あわてるミレル。
「にいさまが達していないのに、勝手に失神してしまって……」
 カイルはギュッとミレルを抱きしめた。
「に、にいさまっ?!」
「僕の方こそ済まない、ミレル。やさしくするなんて言いながら……」
「ううん、いいんです。ミレル、にいさまだったら、どんなに乱暴に扱われてもいい……」
「ミレル……」
 ミレルの躰を愛撫しはじめるカイル。
「あんっ、きもちいい……じゃなくてぇ、にいさまにも気持ちよくなってもらわないと!」
 淫らな光を宿した瞳をカイルに向けるミレル。
「ミレルの後ろの穴をご賞味くださいませ、にいさま。こちらは鍛えて練り込んでありますから、ご満足頂けると思いますわ」
 にっこり、微笑むミレル。
「ローザ様がおっしゃるには、ミレルのお尻の穴って、絶品なんだそうですよっ!」
 楽しげに、誘うように、笑いかけるミレル。
「………………」
「あっ?!」
 いきなりミレルの躰を転がすと、うつぶせの姿勢にするカイル。
 そして、イチモツを振り乱しながら、背後からミレルの躰にのしかかっていく。
「うふっ、溜まってらっしゃったのね、にいさま……」
 うれしげにつぶやくミレル。
 ミレルは目を閉じると、お尻の穴から力を抜き、受け入れる態勢を整えたのだった。


 二人の激しいセックスは、次の日の昼までぶっ続けでおこなわれた。
 淫らな淫液を体中に纏う二人。
 むせかえるような匂いの中で、ミレルはカイルに微笑んだ。
「満足されました、にいさま?」
 嬉しげに微笑むミレル。
「いいや、まだまだ満足しないな」
「……えっ?」
「貪れば貪るほどもっと欲しくなってしまう。本当にいやらしい躰だ、ミレルの躰は!」
「あんっ」
「でも、ここまでだな。さすがに体力が保たない」
 苦笑を浮かべるカイル。
「今日は大切な会議があったのに、すっぽかしてしまった。父上、今頃かんかんになって怒ってるだろうな」
「あうっ、ごめんなさい、にいさま……」
 しおらしく謝るミレル。
「ミレル、にいさまので気持ちよかったから、ついつい溺れてしまって……」
「それは僕も一緒さ。あふっ……着替えて父上のもとにいくか。でもそのまえに」
「ううんっ……」
 ミレルにキスをするカイル。
 舌をたがいに絡め、唾液を啜りあい、たがいの口の中をまさぐりあう二人だった。


 その時、部屋の扉が静かに開いた。
「ごらん下さいな。ミレル・リーフシュタインはかのように、カイル様のしもべと成り果てましたわ」
「ククク、これでリーフシュタイン地方の領主共も、わが意志に逆らうことはできまいて。よくやった、ミレディア、いや、ここではローザだったな」
「もったいないお言葉でございますわ。ドレッド王ガリウス陛下」
 ローザは振り向くと、恭しく、その頭を下げた。
 中に入ってきたローザと、その後ろから現れた人物を見て、はじかれたように飛び起きるカイルとミレル。
「父上!!」
「とおさまっ!!」
 二人はいっせいに叫んだ。
「な、なぜっ?!」
 カイルの声が、部屋中に響き渡る。
 ミレルに至っては、言葉を失っていた。
「なぜ、はないだろう、カイルよ。そもそもローザはわたしの親友であり協力者なのだ。お前達のことを頼んだのは誰あろう、このワシじゃ。そのワシが、お前達のことを知らぬ訳があるまい? ククク……」
 邪悪な笑いを響かせるガリウス。
 カイルも、ミレルに続いて言葉を失った。
「それにしても、まさかこんな展開になるとはな。少々意外だったぞ、ローザ」
「はい。わたしも意外でしたわ」
 頭を上げると、ガリウスに対して気軽に声をかけるローザ。
「初めは奴隷に変えてしまうつもりだったのですけど、愛の力というものは強いものですわね。おかげさまで、したくもない『性転換の秘術』なんて危険な賭をせざるおえなくなりましたわ」
「さて、……後半の言葉だけは信じれんな。術を試したくてうずうずしていたお前を知っているからな」
「あら? ばれてる……」
 ペロリと舌を出すローザ。
「まあよい。いずれにしても、お前の働きに見合ったものを渡そう。期待しているがいい」
「ありがとうございます」
 ローザは軽く頭を下げた。
「……父上、全ては父上が背後で糸を!」
「全てではないぞ。いきなりラフランドが攻めてきた時には、さすがのワシでも肝を冷やしたわ! わっはっはっ……」
 豪快に笑い飛ばすガリウス。
「のう、ローザ、お前もビックリしたであろう?」
「え、ええ……」
 あまりにもわざとらしすぎるガリウスの言葉に、内心冷や汗を流すローザ。
 あうっ、ばれてるわ。わたしの策だったってこと……
 あわてまくるローザをしばし面白そうに眺めた後、ガリウスはカイルに向き直った。
「だが、まあ大したことではない。お前がミレルを手に入れた事に比べればなっ!」
 ガリウスはカイルに向けて笑いかけた。
「さすがはワシの息子だけのことはある。欲しいものは奪い、凌辱し、屈服させ、しかる後に愛させ、完全に自分のモノにしてしまう。その異常なまでの貪欲さがなければ、ワシの後継者としては、失格だったところよ」
「ち、……ちちうえっ?」
「なんといっても、お前は猫を被ってその本性を見せなかったからな。ワシとしては不安だったぞ。どうにも線の細さが目について、正直心配だったが……」
 ちらりとミレルに視線をやる。
「男と知っても、好きなものは犯す。その邪悪さ、貪欲さ、節操のなさ、まさしくワシの息子じゃわい、わっはっはっはっ」
 気持ちよく笑うガリウス。
「そういう意味ではミレルよ、お前はことのほか役に立ってくれた。息子の本性を知るという目的の為になっ」
「あっ……」
 絶句するミレル。
「ククク、リーフシュタインの王子であると知りつつも、お前を生かしておいて正解だったわい。アリシアが姑息な策を巡らしたようだが、策士、策に溺れる。カイルを試すための道具として、思った以上にワシの役に立ってくれた」
 ガリウスは満足の笑みを浮かべた。
「しかも欲望処理の道具として、これからもわが息子カイルの役に立ち続けることになる。それを思うと笑いが止まらんわ。わっはっはっはっ」
 ガリウスの笑い声が部屋に響き渡る。
「あうっ……」
 思わず目を伏せるミレル。
「どうじゃミレル、カイルに『使われた』気分は?」
「……とっても、きもちよかった……」
 ガリウスの問い掛けに、ミレルは虚ろな瞳で答える。
「ククク、そうか?」
「はい……」
 夢見るような表情で、コクリとうなずくミレル。
「にいさまの、たくましいイチモツがお尻の穴に入るたびに、ミレル、とっても気持ちよくなっちゃうんです。もっと欲しくなって、お尻を振って、……あん」
「振って、どうするのだ?」
 躰をくねらせ身悶えするミレルを楽しげに見つめるガリウス。
「締め付けるの、にいさまのを。そうすると、もっと感じて。擦れるたびに、エクスタシーを感じるようになってぇ……」
「ククク」
「そうすると、にいさまも感じてくれて。だんだん大きくなってくの。で、イキそうになる直前に、トドメとばかりに一気にセーエキを注ぎ込まれて、ミレル、幸せな気分になりながら、達してしまうの……」
 虚ろなその瞳。
 ミレルはすでに、快楽の記憶の中に沈んでいた。
「あん、……欲しい。また、欲しくなっちゃう……」
 ミレルのワレメから、新たな愛液の滴がしたたりおちる。
「ククク、ローザの助けがあったとはいえ、よくぞここまで仕込んだものよ」
「父上……」
 ガリウスの言葉に顔を赤らめるカイル。
「なにしろお前は、ミレルのことが昔から好きだったからのう」
 ニヤリと笑うガリウス。
「好きで、好きで、仕方がなかった。すぐにでも自分のモノとして手に入れ、虜にしたいと思っておった。だが皆の目がある手前、決してその欲望を表に出さなかった。いずれ自然に、ミレルを妻として手に入れられると思っていたからじゃろう。だが……」
 意地の悪い表情で笑う。
「ミレルが男であることを知り、お前は動揺し、焦った。小利口な男なら、ミレルへの想いを捨て、他の姫を娶るであろう。だが、お前はそうしなかった。利口な男なら、ミレルの事をワシに売って忠誠を示そうとするだろう。しかし、お前はそうしなかった」
「ち、父上……」
「お前はミレルを捕らえ、調教し、屈服させた。『男』として逆らえぬように、徹底的にな。そうしておいてワシにその姿を見せ、ミレルの助命をはかろうとしたのであろう?」
「にいさま……」
 びっくりした表情でカイルを見るミレル。
「わたしの命を救う為に……」
「ククク、しかしミレルよ、……お前はカイルに感謝する必要はないぞ」
「えっ?」
 思わず声をあげるミレル。
「命を助けたことを恩に着せ、お前を肉奴隷として飼育するつもりだったのだからな、カイルめは……」
「父上っ!!」
 驚愕と、恐れを抱いて叫ぶカイル。
「ワシが知らぬとでも思ったか? お前は自分の屋敷に地下室を作り、古今東西の淫らな責め具を集め、ローザに命じて多種多様な媚薬を取りそろえさせた。ミレルをそこに鎖で繋ぎ止め徹底的に嬲るつもりであったのであろう?」
「くっ……」
 カイルは思わず歯を食いしばる。
「興味が無くなればそのまま地下室を封印し、ミレルをそのまま殺すつもりであったのだろう? そうすれば、お前が『男』を愛したなどということを知る者はいなくなる。お前の事を『男を愛した男』だと知るものはいなくなる」
 そこでミレルを見つめるガリウス。
「カイルはな、お前の躰を楽しむだけ楽しんで、いずれお前のことを殺すつもりだったのだ。自分の体面を保つ為にな」
 その言葉に硬直するカイル。
「そ、そんな、デタラメだっ!!」
 さらに激しく動揺し、叫ぶカイル。
「なんで、そんなことを言えるんだっ!!」
「わからいでか、お前の薄汚い欲望などっ! 何しろ、ワシはお前の血のつながった親だからのう。お前の考えなど、お見通しよ!!」
「うっ」
 思わず絶句するカイル。
 その姿から、それが真実であると安易に知ることができた。
 カイルの瞳に怯えがはしる。
 思わずミレルの瞳から目をそらすカイル。
「ククク、ミレルよ。結局お前はカイルめに殺されることになっておったのだ。さんざん嬲り抜かれた後でな。ククク」
 意地悪い笑顔でミレルを見つめるガリウス。
「そんなカイルに、お前は恋しておったのだ。わはははは……」
 嘲るようなその表情を、ミレルはじっと見つめ返していた。


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