その20



 ガラス器の中に、なみなみと汚物が溜まっている。
「ひいっ、はうっ、ああっ、いやーっ……」
 精も根も尽き果てたような声で、それでも叫ぶアリシア。
 ポチャン、ポチャン、ポチャン……
 汚物が、ガラス器に注がれていく。
 いや、それはもはや汚物ではない。
 アリシアの腸内の汚物は完全に洗い流されていた。
 それでも浣腸をおこなうミレルと三人の黒人達。
 アリシアの躰を屈服させる為だけに!
 アリシアの瞳が虚ろに染まる。
 あまりにおぞましい責めに、躰が、心が、次第に感覚を失い痺れていく。
「いや、はんっ、あうっ……」
 練り上げられていくそのアナル。
 ローザとカイルにアナルを徹底的に仕込まれたミレルは、その経験を元にしてアリシアを責めていく。
 じわり、じわりとアナルを広げていくミレル。
 それと同時に禁断の快感をアリシアに仕込んでいく。
 「うふふ、いいでしょ、かあさま? まるで魂が腐り果てていくかのような、快感。ミレルもこれでにいさまの『モノ』にされちゃったんですよ!」
 舌を唇に這わせ、淫らな表情で語りかけるミレル。
「みっ、ミレル……」
 愕然とした表情のアリシア。
「でも本当はミレル、前のほうからにいさまに捧げたかったのに。なのにかあさまの策謀のせいで、後ろの不浄の穴から! ……そのくせ、かあさまは自分だけ前のほうからとおさまに捧げてるし」
 恨みの表情をその顔に浮かべるミレル。
「かあさまって、……ひどい母親ですよね」
「わたしは、……わたしはっ!」
 けっして、抱かれたくなかったのに!
 それなのに抱かれたのは、すべてリーフシュタインの復興と、ミレル、あなたの為に……
「あら、何か言いたそうですわね、かあさま」
 そのくちびるに冷笑を浮かべるミレル。
「まさか、ミレルとリーフシュタインの為に抱かれた、なんて言いたいとか?」
「そ、そうよっ!」
 アリシアの叫びが部屋に響き渡る。
「嘘よ」
「なっ?! 嘘ではないわっ!」
「なら、なんでとおさまに抱かれているとき、あんなに乱れるの。あんなに淫らな嬌声を上げるの。あんなにあさましく腰を振ったのっ!」
「そ、それはっ……」
 思わずミレルから目をそらしてしまうアリシア。
「結局、かあさまはとうさまの男が欲しかったのよ。とおさまの女にされたかったのよ。でも、前のとおさまのことがあるから、自分の良心を誤魔化すために、ミレルとリーフシュタインの名を利用した。……あさましい女よね、かあさまって」
 そう言った後で、ガリウスに視線で合図するミレル。
「ち、ちが……」
「違うの? なら、次の責めにも耐えられるはずよね? ……とおさま、かあさまの後ろの穴をぜひともご賞味ください。後ろは前と違って、正真正銘の『処女』ですから。……かあさまよかったね、とうさまに処女を捧げられて! うふふふ」
「あ、あなたっ、やめてぇー」
 アリシアの悲鳴の中、前に進み出るガリウス。
 アリシアのアナルに目をやった。
 そこは過酷な調教のせいでヒクつき、何かを求めて蠢いていた。
 かつては慎ましやかな菊座は、いまや快楽を受け入れる為の道具として広く、拡張されている。
「はい、とうさまこれ」
 小瓶を差し出すミレル。
「ローションか?」
「ええ、そう。しかも、『堕天使への誘い』入りの」
 ミレルの言葉に楽しげな笑いを浮かべるガリウス。
「ほう、あれか」
「ええ、とうさま」
「ふふっ、ミレルって容赦がないよね」
 楽しげに笑う、ガリウスとミレルとカイルの三人。
「ローザ、かあさまに説明してあげて」
 視線をローザに向けるミレル。
「わかりました、ミレルさま」
 ミレルの言葉にうなずくと、ローザはアリシアの耳元で囁き始めた。
「『堕天使への誘い』とは、かつて淫らの邪神カーリアが使ったといわれる恐るべき媚薬ですわ。これをつけて犯された女は、どんなに貞淑な僧侶、処女であろうとも、淫らな欲望に屈し、犯したもののいいなりになってしまうといわれてます」
「もっとも、ニセモノも多いんですけどね」
 おどけた口調でアリシアに語りかけるミレル。
「その筋にはあまりに有名な媚薬だし、それに、その製法は淫らの邪神カーリアと共に失われたとも言われているから」
「まあ、確かに」
 苦笑を漏らすカイル。
「神の秘薬。まあそんなのもが普通に出回っていることはないし……」
「こらこらカイルよ、ニセモノとはいえ仮にも『堕天使への誘い』と名付けられている媚薬だぞ。手に入れるのは大変だったはずだ。のうミレルよ」
 カイルをたしなめるガリウス。
「そ、そうだね。……ごめん、ミレル」
「いいんですの、にいさま」
 婉然と微笑むミレル。
「……でも、もしかしたら本物かもしれませんよ、これ」
「まさか!」
 苦笑するカイル。
「でも、まさかってこともありますし……とおさま?」
「わかっておるわ!」
 ミレルの言葉にうなずくガリウス。
「たしか伝承によると、愛していない相手へこの秘薬を使った場合、たちどころにカーリアの呪いが降り注ぎ、あそこが腐り果て、狂い死にするのだったな」
 ミレルから受け取った小瓶を傾け、その長大なイチモツにローションを絡めていくガリウス。
「わかっておるわ。心配するな、ミレルよ。がっはっはっは……」
 ガリウスは高らかに笑った。
「これが本物だとしても、心配することは何もないぞ。ワシのアリシアへの愛を、そこで見ておるがよい!」
「わーぁ、かあさまって愛されてるぅー」
 おどけた口調で冷やかすミレル。
 ……うふふ、さすがはとおさま。
 これでかあさまは、とうさまの愛奴ね。
 だって、この薬って、正真正銘の本物の『堕天使への誘い』だもの。
 まがい物でもない、ニセモノではない、
 本物の、『秘薬』。
 このわたしがみずからの手で精製し、調合した、秘薬中の秘薬。
 しかもこの秘薬は、前から吸収させるよりも、後ろから吸収させた方が効果が上がるの。
 それも数倍に。
 かつて聖女といわれし愛の女神ラティアも、一時はこの薬でハマってくれたんだから。
 ……くすっ
「さあかあさま、とうさまの愛の一撃、ぞんぶんに楽しんでくださいねっ!」
 ミレルの前でそのイチモツを高ぶらせ、アリシアに近づくガリウス。
 そして……
 ズンッ!!
「いやああああっ……」
 アリシアの悲鳴が部屋中に響き渡り、
 ……アリシアのアナルに、そのイチモツが突き立てられる。
 そして、そのまま、深く、深く、奥へと……
 ズリュッ、ズリュッ、ズリュッ……
 アリシアの躰に、淫らな音が伝わってくる。
 儚い抵抗を打ち砕いて突き進む、ガリウスのイチモツ。
 拡張されたアナルは、ついに根元までその長大なイチモツを銜えさせられてしまっていた。
「はっ、かはっ?!」
 な、なに? なんなのっ?!
 愕然とするアリシア。
 尻穴から伝わってくる、かつて経験しない波動。
 いや、それは、もっとも馴染み深いもの。
 しかし、それは本来、決してそこからもたらされるものでないはず。
 そう、それは、
 セックスの悦楽。
 ……うそ、うそっ、うそよぉっ!
 内心、激しく動揺し、声にならない叫びをあげるアリシア。
 そして、その叫びが終わらない内に倍増する、その快感……
 いやぁーっ、こんなの、いやぁー
「ひっ、はっ、あぐっ……」
 アリシアは全身を引きつらせる。
 そうしている間にも、秘薬はアリシアの腸壁からどんどん吸収され、さらにふくれあがっていく快感。
 もはやアリシアはその悦楽に、翻弄されるがまま。
 女神をも狂わせたことがあるといわれる秘薬に、いかにして人の身で逆らえようか?
 ありとあらゆる光が脳の中で炸裂し、アリシアの理性を粉々に打ち砕く。
 人としての自我もあっさり破壊され、そのかわり引き出されるのはケダモノの欲望。
 アリシアの心の中にあるのは、いまや牝としての欲望と、たくましく自分を犯しているオスへの恋慕の感情。
 アリシアのすべては解き放たれ、
 そしてアリシアは、……一匹のケダモノへと変わっていた。
 理性なく、熱く潤みだすその瞳。
 理知的な顔が、発情したケモノの表情へと変わる。
 きりっと引き締まったそのくちびる。
 それがいまでは半開きになり、涎をひたすら垂れ流しているという、無惨な状態。

「ハッ、ハッ、ハッ……」
 ケダモノのように喘ぐアリシア。
 その表情を見つめるカイル。
 ……その顔が曇った。
「ちょっと、効き過ぎなんじゃないか、この薬? これじゃあせっかく犯しても、おそらく記憶が飛んでて何をされたか覚えてないと思うけど?」
「大丈夫です、にいさま」
 カイルの言葉に、自信満々で答えるミレル。
「この秘薬は、魂にその行為を刻み込むんです。そして時間が経つごとに、フラッシュバックで記憶が戻ってくるんです。……心が緩んだときに、強烈なイメージで、ね」
 心の奥から楽しげに笑うミレル。
「心が休もうと、……やすらぎを得ようとすると現れるんです。その結果、こころがぐじゃぐじゃになり、やすらぎを求めてのたうつんです。そして、やがて気がつくんです。やすらぎを得るためには、フラッシュバックの記憶に身をまかせることだと。そして、実際に犯した相手に躰を、心を委ねることだと」
 邪悪な笑みを浮かべるミレル。
 ……そう、この薬から抜け出せたのは唯一人、ラティア、あなただけ。
 しかも、自分の全ての記憶を消去するという荒技でね。
 ラティア、愛していたのに。
 ……でも、それも遙か昔の過去のこと。
 かすかに苦笑するミレル。
 そんなミレルを見つめるカイルの瞳に、わずかに恐怖の感情が混じる。
「まあもっとも、……この秘薬が本物だったらですけど」
 肩をすくめるミレル。
「本物だったら、……ね」
「そうですわ、本物だったら。でも、たかだか三十ゴールド程度の薬にそれを求めるのは……」
「そ、そうだよな」
 なんとなく安堵するカイル。
 その後で、ハッと気がついた。
「三十ゴールドぉ?!」
「だって、にいさまからもらってるお小遣い、それしかなかったんですもん!」
 ぷくっと膨れるミレル。
「いや、それはそれとして……」
 ううっ、もうちょっとお小遣いやってれば良かったか、な?
 なんとはなしに反省するカイル。
 ちなみに家族五人で三ヶ月生活するぐらいの価値である。
 いや、……お小遣いとしては多いと思うが。
 ……王族のお小遣いとしては少ないのかな?
 とにかく、めちゃくちゃ不機嫌そうなミレル。
「……えっと、ら、来月から二十ゴールド上乗せしてあげるから」
「わあっ、だからにいさまって大好きっ!」
 微笑んで抱きつくミレル。
「あはははは……」
 乾いた笑いをうかべるカイル。
 ……すでに尻に敷かれかけてるし、カイル。
 まあ、それはそれとして、カイルは話を戻した。
「三十ゴールドじゃあ……」
 なんとはなしに失望のため息をつくカイル。
「確かに安くはないけど、……効いているだけ、奇跡に近いような」
 ぼやくカイルに、まあまあとばかり手を振るミレル。
「それはそうかもしれませんけど、安いから、量を多く用意できますし」
 ミレルの言葉に、顔を激しく引きつらせるローザ。
 じ、冗談じゃあないわっ!
 内心悲鳴をあげるローザ。
 こんな、凶悪な薬を大量に製造されてばらまかれたら……
 ローザの背中に冷や汗が大量に流れ落ちる。
 そう、かつてみずからが作り出した麻薬によって滅んだヘブンの二の舞よっ!
 おぞましい想像に、ローザの躰が固まった。
 そんなローザに流し目を送るミレル。
 ……わかってるわ、ローザ。広く、ばらまくつもりはないから。うふふ……
 ローザの内心を見透かし、視線だけで語りかけるミレル。
 その視線に、ローザは心の奥まで凍らされた。
「おいおいミレルよ、そんな安物で大丈夫なのか?」
 アリシアにしっかり腰を突き入れながら、あきれた声で問いかけるガリウス。
「まあ、とりあえずは効いているようですし」
「……うむ、そうみたいだが」
 なんとなく不安げなガリウス。
「それよりもとおさま、今のうちに! 安物なので効果がいつ切れるかわかりませんから!!」
「おい……」
 ジト目でミレルを見つめるカイル。
「あはっ……」
 照れた笑いを浮かべるミレル。
「わっはっはっ、ではそうさせてもらうか」
 あきれた表情で豪快に笑い倒すと、ガリウスはいよいよアリシアのアナルをじっくりと突き始めていた。


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