第七章 それぞれの黄泉路・・・

 静音がふと気が付くと、いつの間にかその身体をバスルームの床面へ横向きに転がされていた。
 ほんの一時的にではあるが意識を失っていたらしい。それも無理はなかった。
 一体幾たび、獣じみた男の手によって、望みもしない官能の頂きに追い上げられ、浅ましい声を上げさせられ、恥辱に満ちた報告を強いられたことだろう。
 これまで性の悦びを知らず、どころかそれを商いとして弄ぶ犯罪組織と戦う立場にいた少女にとって、自らがその闇の快楽に屈し、苛まれることは、肉体的にも精神的にも計り知れないダメージを負わされることに他ならない。
 静音の自我は、自己防衛のために、一瞬ブレーカーを下ろした状態となってしまったのだろう。それほど心身共に追い詰められていたのだ。


 意識は戻ったものの、半ば放心状態となって桃色の床に目をやっていた静音は、やがて耳元で微かに空気が動くのを感じ、ノロノロと上方を振り返った。
 「ひッ!・・・」
 のどが引きつった音を立てる。
 比良坂の日に焼けた顔がすぐ上にあり、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべて覗き込んでいた。
 「目まで回してみせるなんざ、なかなかどうして愛嬌があるじゃねェか。失神するほど気持ちが良かったのかよ?ええ?」
 「・・・・・・」
 思わず背けた目から、再び涙があふれ出す。自らの演じた痴態が、脳裏にまざまざと甦ってきたからだ。
 散々にヨガり、あえかな声と共に気をやる姿を見られてしまったのだから、男のイヤらしい揶揄に返す言葉もない。
 どうしようもない恥ずかしさと情けなさに、熱くなった身体をただ震わせ、縮こまらせるだけの静音であった。


 そんな少女の、未だ淫らな血流で異様に膨れあがっている乳房の一方を、比良坂はゴツイ手で掬うように持ち上げ、愛おしげに指を這わせ始める。
 「あッ・・・」
 「全くすげぇオッパイだな。このバカでっかさのまんま、プリプリに張って型崩れしないってのが価値モンだ。柔らかな芯があるっていうか、全体がスーッと反って、先っちょがツンと上向いてる感じなんかたまらねェぜ」
 「ひあッ!・・そこはもうッ・・・」
 異常な性感がようやく僅かばかりおさまりかけていた乳首を再びつまみ上げられ、静音は悲鳴と共にはねつけるような反応を示したが、男は素知らぬ顔で言葉を継いでいく。
 「この間までここにいた『備品』の娘も相当の巨乳だったが、お前さんと比べりゃ全く役者が違うな。ボリュームだけじゃなく、弾力と言い、肌のキメと言い、同じ乳でも天と地だぜ。それに何より感度がな。よほどアゲットのチップが体質に合っていたのか、それとも元々の才能なのか、まあその両方なんだろうが、お前さんのがはるかにスケベな身体だぜ。・・・ホレ、またすぐに形が変わってきやがった」
 「むッ!・・・」
 男の言葉通りに、乳首はその部位全体がきつく反り返り、まるで淫らな刺激から必死に逃れようとでもするように、乳房の先からさらに上へと折れ曲がり始めた。
 「あッ・・あッ・・・」
 紅色にヌメり光る乳首の下側を、今度は指の腹でスリスリとこすり上げられ、切羽詰まったような泣き声が切れ切れに吹きこぼれる。抗いようのない官能の渦に、再び全身が呑み込まれかけていた。

 「ここで調教されなくても、お前はいずれとびきりの淫乱女になっていただろうな。・・・前の『備品』の娘にもバイオチップは植えられていたが、それでも乳を弄られただけでイッちまうなんてだらしないことはなかったものなァ・・・」
 他愛もないでまかせで巧みに相手の羞恥心を煽りながら、しかし男は不意に指戯を中断して、しゃがんでいた姿勢からノソリと立ち上がった。
 「あ・・・・」
 ほとんど気を遣る寸前にまで達し、また再び、あの恥辱に満ちた申告を繰り返さなければならないのかと覚悟していた静音は、呵責の止んだことにホッとするよりも、一瞬何か拍子抜けしたような気分になり、思わず意外そうな声を上げてしまった。
 「フン、どうした?えらく物足りないってツラになってるぜ」
 嘲笑うような調子で男からそう言われ、上気した泣き顔がさらにオロオロと困惑に歪む。
 揶揄された通り、身体中に、叫び出したくなるようなやるせなさが満ちていた。
 乳首は特にひどい状態になっていて、あれだけ逃れたかった淫らな愛撫を、今は自ら激しく求めるかのように、ヒクヒクと痙攣し、脳天にまで響くような疼きを発振し続けている。


 こんな生殺しのような状態に置かれるならば、いっそひと思いに気を遣らせて欲しい、それで楽になりたい、といつの間にか無意識に渇望している自分に気が付き、静音は愕然とした。実際両手が自由であれば、堪えきれずに自らの乳首を愛撫し始めていたかもしれなかった。
 (どうして、こんな?・・・・)
 無論それは、押し引きの緩急を心得た比良坂のテクニックが、静音のリビドーを絶妙に刺激したということにすぎない。これまで受けてきたクリスの調教は、彼女が己のサディズムさえ満足させられればよいという、いささかメリハリを欠いたものだったからだ。
 しかし性的知識に乏しい静音は、官能と羞恥に虚(うろ)が来ていることとも相まって、何か魔術のような力で巧みに心身を操られているような錯覚にとらわれ、それが比良坂という男に対する恐怖心を過大に煽っていた。
 (身体だけじゃなくて、精神までが淫らに狂わされかけているというの?この人が現れてまだ間もないのに・・・・。怖い・・・この先もっとヒドイことをされたら・・・・)


 「まだまだイキ狂いたい気持ちは分かるがな・・・」
 やり場のない官能の高ぶりと恐ろしさとの板挟みで細かく震えている静音を、比良坂は悠然と見下ろしながら言った。
 「そろそろ次の調教に移らないと日が暮れちまう。さあ、いつまでも横になっていねェで、座ってこちらを向きな」
 「は・・い・・・」
 「次の調教」という言葉には慄然とさせられつつ、しかし何ら抵抗の術のないことも思い知らされている静音は、ノロノロとではあるが素直に返事をした。
 後ろ手に手錠をかけられた身体を苦労してよじり、何とか横座りの姿勢を取る。そのままヒップの位置をずらして男の方を向くと、
 「ひッ!・・・・」
 のどの奥から、再びくぐもった悲鳴が洩れた。
 比良坂が長身を折り、履いていた青いトランクスを脱ぎかけている。
 「あ・・あ・・・・」
 半ば覚悟はしていたものの、犯される!という危機感が間近の現実として迫り、静音は痴呆のような掠れ声を上げながらイヤイヤと首を振った。


 既にクリスに何度となく女体を汚されてはいるが、それはあくまでディルドーによるものであり、つまり他者の「肉体」を胎内に受け入れたことのない彼女は、未だ精神的に処女性を手放しきっていなかった。それ故、理性ではともかく、皮膚感覚として、男性に汚されることには押さえ付けがたい恐怖を覚えてしまうのである。
 せめて少しでも比良坂から遠ざかろうと気は焦るのだが、恐ろしさに腰が砕けたようになって、上手くいざることが出来ない。ただオロオロしているうちに、男はトランクスをスルリと外し、局所を誇示するように反り身になってこちらに向き直った。
 「あ・・ッ!・・・・」
 せめて顔だけでもそのおぞましい器官から背けようと首をひねりかけたが、しかしチラリと見てしまった比良坂の「それ」から、静音は逆に視線を外せなくなってしまった。
 (何て・・・・)
 そう唖然とするほど、男の持ち物が常人離れをしていたからだ。


 まず大きさが並みではなく、完全には怒張しきっていないのだろう現在の状態でも、小ぶりのビール瓶くらいのボリュームがある。
 下側には筋(きん)とも血管ともつかない二本の太い流れがあり、それがペニスを支え持つようにカリへと繋がっていて、竿全体をモコモコと不規則に波打たせている。まるでヘビが絡み付いた古木のようだ。
 色は、元々浅黒い比良坂の肌へさらに濃く色素が乗り、ほとんど焦げ茶のように見えている。たくましく露出した亀頭部はその焦げ茶色が艶を増し、テラテラと下卑た輝きを放っているのが不気味であった。

 「どうだ、立派だろうが?別に作りもんってワケじゃないんだぜ。正真正銘、オレの生まれついての持ち物さ」
 目を丸くしている静音を見て、比良坂はニンマリと相好を崩していった。
 静音にとって男性器を直に見るのはこれが初めてだが、確かに外科的な形成術で形や大きさを細工したのではと疑いたくなるイチモツであった。クリスが連日用いるディルドーと、それはあまりにかけ離れた外見をしていたからである。
 「まあたまげるのも無理はないがな。大抵の女はこれを見りゃ目をむいたり怖がったりする。ついこないだまで未通娘(おぼこ)だったお前はなおさらだろうさ」
 シシッと愉快そうに息を漏らし、比良坂はペニスを持ち上げてみせる。グロテスクに過ぎるその巨塊が、どうやら男はたいそう自慢らしい。
 この風呂場にわざわざトランクスを履いて入ってきたのも、恐らくはそれを脱いだときの静音の反応が楽しみだったからなのだろう。息子自慢もここまで甚だしいと、無邪気というより、何か黒々とした精神の歪みを感じさせる。


 「だがそんな女達も、いずれは自分の方から是非にもオレのモノを欲しがるようになるのさ。当然お前もそうだ。今にヨダレをこぼしておねだりするザマが目に浮かぶぜ。・・・・さあ、まずはコイツにキッチリ御挨拶をしてみろよ」
 「え?・・・・」
 言われた意味が分からず、オドオドと不安げに問い返す静音に、男は握ったペニスをからかうように揺すりながら、
 「オイオイ、今さらカマトトぶりは無しにしようじゃねェか。クリスから散々教わって知ってるだろう?男のモノを、まずは口で十分にしゃぶっておもてなしする方法を」
 「そ、それは・・・」
 確かにフェラチオのテクニックは連日叩き込まれていたが、それはあくまでディルドーを用いてのことであって、男の器官を実際に口に含むこととは心理的に雲泥の差がある。まして見るも恐ろしいこの男のモノをなどは、チラリと想像するだけで肌に粟の立つ思いだった。


 「何だよ、まさかフェラがイヤだなんてぬかすんじゃねェだろうな」
 ニヤニヤ笑いのまま、しかし声だけは凄味を増して、比良坂は言った。
 「そいつァ少々ワガママってもんじゃねェかい?オレの方はあれだけ何度もお前を昇天させてやったんだ。お返しにその程度のサービスをしてくれたってバチは当たらんだろうが」
 「・・・・・・」
 「それとも自分が気持ち良くなれたらオレのことはどうでも良いのかよ?自分だけ散々イキ狂って後は知らん顔か?」
 「そん・・な・・・・」
 下卑た揶揄に身を震わせながら、静音は押し殺した泣き声を漏らす。
 抗ったところで、男に力ずくで強いられたらどうせ無駄なのだし、それならネチネチと言葉でいたぶられているよりも、素直に要求に応えた方がマシなのだとは分かっている。しかし嫌悪感のあまりの強さに、どうしてもハイ分かりましたと応じることが出来ないのだった。


 「フン、その気になれないなら仕方がないな・・・」
 意外にも比良坂はアッサリ諦めたような口調で言って、バスルームの隅へ行くと、そこに造り付けてある物入れの戸を開けた。中にはクリスが調教に使うアイテム・・・ディルドーや拘束具、各種の薬物など・・・が、キチンと間仕切りされて収められている。
 「それじゃあもう少しオレの方からサービスを続けてやろう。お前が是非にもその口で奉仕したいと懇願するようになるまでな・・・」
 言いながら比良坂が物入れから取り出したモノを見て、上気した静音の顔が一瞬に蒼白になった。
 「ひッ、それは・・・・」
 「ヘヘヘヘ、見ただけでワクワクするかい? 」
 男が指に挟んでブラブラと振っているのは、銀色に光る箱形の器具・・・いつもクリスがゾニアンを皮下注射するのに用いる物・・・だが、装着されているアンプルを満たしているのは、薄緑色のゾニアンではなく、何か紫色に近い不透明な液体だ。
 「アゲットから聞いてるぜ。お前はゾニアンよりもこっちの薬が大の気に入りだってな。これでもう何度か天国へ行かせてやるよ」
 「い、イヤっ!イヤですッ!それはイヤーッ!!」
 目を見開き、半ば恐慌状態となって、静音は金切り声を張り上げた。
 上体を激しく震わせながら、何とか後ろへいざろうとギクシャク足を蹴る。彼女が、それも何らかの薬液であるらしい紫色のアンプルに、名状しがたい恐怖心を覚えているのは明らかだった。


 「オイオイ、人の厚意は素直に受けるもんだぜ」
 比良坂はそう言って鎖をたぐり、必死に足を突っ張る静音の身体を手もなく引き寄せる。目の前に銀色の注射器具が迫り、少女の悲鳴は一層凄絶さを増した。
 「ヤダっ!イヤなのッ!お、お願いですッ、言いつけを聞きますから!何でも聞きますからッ!それだけは・・・・」
 「そのセリフはさっきも聞いたぜ。だけどお前はアレがイヤだこれがイヤだでサッパリ素直にゃならないじゃねェか」
 薄笑いを浮かべ、男は器具をピタピタと静音の頬に当ててみせる。
 「口先だけで他人を適当にあしらえると思ってる甘えん坊にゃあ、キチンと躾をしてやるってのが大人の責任だからなァ・・・」
 「ほ、本当にもう逆らったりしません!絶対に・・・だから・・・だ・・・・」
 咳き込むように言い募っていた静音の声が突然途切れ、ややあってから、驚くほど大きな嗚咽が、いささか獣めいた調子でほとばしった。
 「おお、おうおうおうおうっ・・・」
 同時に新たな涙がドッとあふれ出し、鼻水と混じって顎から胸元へと伝い流れていく。完全なパニック状態であった。


 「ゆふして・・・ごひょです・・・どか・・・どぉか、ごひょでふからァア・・・・」
 口中にあふれる涙とよだれ、そして何より恐怖から来る震えで呂律が回らず、まるで虐待を受けた幼児が必死で許しを乞うように、静音は上体をペコペコと卑屈に折りながら哀訴を繰り返した。アンプルの中身が何であれ、それは彼女の精神の平衡を完全に狂わせるほどの恐ろしいものらしい。
 「フン、随分としおらしくなったじゃねェか」
 静音のあまりな取り乱しぶりに、比良坂はいたく嗜虐心を満足させられた様子でニンマリとし、
 「それなら二度とオレ様には逆らったりしないってんだな?どんなことでも素直に言う通りにすると」
 「ふ、ふァい・・・何でも・・お言いふけどお・・り・・・」
 必死にうなづいて答える最中に、また激しい嗚咽が堰を切る。
 「ううあッ・・・しまふ・・・何でも、なんでもしまふからァ・・・おえがいです・・・うッ、おッ・・・薬・・打たないで・・・おえがい・・・お願いですゥうおおお・・・」

 まさにボロボロ、ドロドロの全面降伏宣言であった。
 抗うことは無駄だと最初から分かってはいたが、しかしこうまで惨めに屈従させられてしまったことが情けなく、恥ずかしくて、それが更に静音をあられもなく泣きじゃくらせていた。


 「じゃあメソメソしてねェで、さっき言いつけたことをさっさと始めてみな。ほらッ」
 取りあえず注射器を持った手を下ろし、替わりにグイと腰を突き出した比良坂に、静音は震えながらもコクリとうなづき、後ろ手にされたままの格好でいざり寄った。
 涙でふくれた目に、男の忌むべき器官がボンヤリと映る。恐怖と嫌悪感で肌中に粟を立てながらも、しかし少女は覚悟を決めるよりなかった。
 「し、失礼しま・・す・・・」
 大男である比良坂の股間へ顔を届かせるため、ひざまずいた姿勢から一杯に背筋を伸ばし、花弁のような口をおずおずと開く。
 眼前に迫ったペニスから何とも言えない生臭さがムワッと漂い寄せたが、既に恐ろしさにがんじがらめにされている静音は、一瞬固く目を閉じはしたものの、意を決したように、歯の隙間から小さく突き出した桃色の舌を、男のものの先端にソッと這わせ始めた。


 「む・・・・」
 初めて触れる本物のペニスは舌が焼けそうなほどに熱かった。いや、恐らくは嫌悪感から来る錯覚なのであろうが、とにかく静音にはそう感じられた。しかしこれ以上怯んだり躊躇したりはしていられない。
 「ん・・んッ、んッ・・・・」
 まずはカリの部分をつつくように、エラを優しく吸うようにと、クリスに教えられたことを必死に思い出しながら、少女は哀しい奉仕に精を出してゆくのだった。
 1週間前には想像もしなかった、商売女のような浅ましい行為を、よりにもよってS・Tである自分が強いられていると思うと、目のくらむような屈辱と絶望感が黒々と胸を満たしてくる。


 「何だよ、ずいぶんと可愛らしいやり方だな。クリスはそんなお上品なことを仕込んでるのか?」
 焦れたように鼻を鳴らすと、比良坂は右手で鎖を手繰り、もう一方の手で静音の後頭部をガッと鷲掴みにした。
 「15やそこらの童貞坊やならともかく、オレみたいに年季の入った持ち物には、最初から全力で向かってこないと雫(しずく)一滴吸い出せねェぞ。ほれ、こんな風にやるんだよッ!」
 「あぅおッ!!」
 強引に頭を引き寄せられ、静音は思わずアッと開けた口へ、比良坂の巨大な局部を一気に突き通されてしまった。
 「むッ、むむぅッ・・・」
 これまでトレーニングで用いられていたディルドーとは比べものにならないボリュームにノドをふさがれ、激しい吐き気と顎が外れそうな苦痛から、切羽詰まった呻き声が吹きこぼれる。


 「くわえてるだけじゃ仕方ねェだろうが。舌を動かさねェか!」
 下品極まりない命令が頭上から叩き付けられ、静音はすすり泣きながらも必死に舌を操ろうとし始めた。
 薬で脅迫されていることもあるし、涙が鼻の中にもあふれているため、このまま口を塞がれていては窒息させられかねない。男の情欲を少しでも早く満足させることが、この悲惨極まる状況から抜け出す唯一の道なのだと思えた。が、
 「んッ、んむッ・・・」
 比良坂の持ち物の圧倒的なボリュームによって、そも口の中には舌を動かす余裕がほとんどない。静音は苦しげに鼻を鳴らしながら、ペニスの側面に舌を巻き付けるようにあてがい、その位置を少しずつズラして、何とか男の命令に応えようとしていることをアピールするだけで精一杯だった。
 「フン、どうにもヘタクソだな。やっぱりオレ様がみっちり仕込まなきゃあならねェ。ま、元々そのために呼ばれたんだが・・・」
 ブツブツ不平を言いながらも、しかし惨めに屈服しきった静音の様子に、比良坂は舌なめずりをしそうに相好を崩し、
 「取りあえずはこっちで手綱をさばいてやるぜ。お手本にして頭の動かし方を良く覚えときな!」
 叫ぶように言うと、静音の両お下げを引っつかみ、腰に向けて乱暴に引き寄せる。
 「ふふあッ!」
 くぐもった悲鳴を上げ、ペニスをノドの奥一杯に突き入れられる格好になった静音の頬を、お下げを握った拳が今度はグイと押し戻す。その一連の動作を、男は素早く反復し始めた。

 ジュッ、ジュッ、ジュボッ、ジュボッ、ジュボッ・・・・・
 まさに「手綱」をさばかれているような、無様この上ない体(てい)である。
 為すすべなく頭部を往復させられ、ノドが隙なく圧迫されることにより、よだれがなお一層大量にあふれ出し、それがピストン運動を滑らかに変えていく。吹きこぼれる音も次第に水気を増し、淫靡さを加えていくようだった。
 「そうそう、まずはたっぷりツバ出してしゃぶることが肝心なんだ。ヌルヌル滑りよくな。少しでも歯なんぞ立てやがったら承知しねェぞ」
 「えッ、おあッ、えふォおおッ・・・・」
 あまりの惨めさ、恥ずかしさに、一層激しく嗚咽しながらも、静音は必死に目で頷いて恭順の意を示そうとする。お下げをつかんだ男の手に未だ注射器具が握られたままカシャカシャと音を立てており、それに完全に射竦められていたのだ。
 その悲愴極まる表情にそそられたのか、比良坂の男根は急速にその硬さとボリュームを加え始め、それがさらに静音の苦辛を積み増す。
 涙とよだれ、そして鼻水とが混じり合ってボトボトと胸元にこぼれ落ち、それによってテラテラ濡れ光るバストが、上体の前後運動に合わせて大きく振り出され、男の膝へピシャピシャとリズムを打つのがいかにも哀れであった。


 「なかなか良くなってきたぞ・・・」
 比良坂はリビドーの高ぶりを隠しきれなくなったように息をせわしくして、
 「ヘッヘヘ、腕っこきの少女S・Tさんもこうなっちまったらもうオシマイだな。仕事に失敗して逆に捕まったってだけでも十分マヌケなのに、その上ブルマなんぞ履かされて、乳を牛よりでかく腫らしてよ、オレみたいな男の竿をしゃぶらされてるんだからなァ」
 相手を貶めるために、わざと芝居がかった調子で投げつけてくる男の揶揄が、すでに摩耗の著しい自尊心をザクリと切り苛む。と同時に、自らの身中に淫らな熱が再び満ちてきていることに気が付き、静音の動揺と絶望は頂点に達した。
 気を遣る寸前の中途半端な状態を強いられていた乳首が、情欲の満たされないことに抗議するかのように激しく疼き、内側から破裂しそうなほどにキリキリと熱い血を溜めているのが分かる。
 男の足にその部分が打ち付けられるたび、静音は目のくらむような心地よさに身体の芯を貫かれ、思わず泣き声と共に背を丸めてアクメを堪えるのだった。


 (どうして、こんな非道い状況でも身体が感じてしまうの?最低のゴロツキのような男に、こんな変態みたいなことをさせられて、死にたいほどイヤなのに・・・)
 先にも感じた、比良坂によって自分の精神までが狂わされかけているのではという不安が再び強まり、それが更なる妖しい官能を呼ぶ。そして、
 「ィひあッ!!・・・」
 一際強く乳首が男の足を打った瞬間、静音の理性はついに爆ぜ、一体今日何度目になるだろう強烈なオルガに屈した。
 折った背が異様に緊張してブルブルと震え、しかし口に異物をくわえさせられているために、言いつけられている申告をすることも出来ない。


 「おいッ、人のチンチンしゃぶりながら先に自分がイッちまってどうすんだ!恥ずかしくねェのか淫乱S・Tさんよ!」
 比良坂は気配でそれと察して怒声を上げたが、あまりに哀れを誘う静音の様子に刺激されたものか、自身も急速に絶頂を迎え、
 「仕方ねェな。せっかくだから付き合ってやるぜ!」
 せわしい口調で言って、つかんだお下げを思い切り引き絞る!
 「ンむふふゥうううーッ!!」
 男の腰に顔面を密着させられ、静音が思わずくぐもった悲鳴を上げた直後、その口中一杯に汚れた濁液が叩き付けられた!
 反射的に顔を後ろに引こうとするが、髪の毛を掴まれたままなので無論それは出来ない。静音は首を吊られたような格好で不自然に腰を浮かせ、相手が絶頂の余韻を味わい尽くすまでひたすら堪えるより他無かった。
 それにしても驚くほど大量に口腔を満たしている物の、何と熱く、生臭いことか。男性の生理については一応承知していたつもりの静音だが、そのおぞましさには首筋の毛が逆立つような思いであった。


 (お願い、口を自由にして!早く吐き出したいの!)
 必死に心中で訴える少女を更なる絶望へと追い込むように、比良坂の無情な声が覆いかぶさってくる。
 「何をボヤっとしてやがる。さっさと飲み込みな!」
 「!!」
 まさかそんなことまで要求されるとは思ってもいなかった静音は、一瞬目を剥いたような表情になって比良坂を見上げたが、その頬に再びピタピタと注入器を押し当てられ、絶望しきったようにうなだれる。
 口に入れているだけでも身の毛がよだつ男の精を、さらに飲み下すなどはとても出来そうにない。しかしその出来そうもないことをしてみせる以外に、今の自分には何の選択肢もないことを思い知らされる気分であった。

 (いつまでこんな浅ましいことをさせられ続けるの?ああ助けて、恵麻里さんッ!・・・・・)
 地獄の淵に身を投じるような思いで、静音はその細いノドをコクコクと動かし、口の中の汚物を体内へと送った。涙がまた堰を切ったようにあふれ始め、男のグロテスクな肉塊の上へ、まるで赦しを乞うかのようにポトポトとこぼれ落ちていく・・・・


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