第八章 崩壊・悶え咲く奴隷華たち・・・

 比良坂が初めて現れてから一週間・・・・静音にとって、地獄の底でのたうつような辛苦の日々が続いた。
 男は毎日サンクチュアリにやって来て、そのたび数時間に及ぶ調教を彼女に加えていく。
 時には日に二度、三度と繰り返し現れることもあり、PPO(治安機構)管区長という要職にありながら、この男は一体いつ仕事をしているのだろうと、静音が訝るほどの入り浸り様であった。
 一方クリスはと言うと、静音の調教を行うことはほとんどなくなった。どうやら恵麻里の方にかかりきりでいるらしい。
 と言っても静音の前に姿を現さないわけではなく、毎日部屋にはやって来る。そして静音の髪を整え、何某かの服を着せて、比良坂が待機しているバスルーム(調教部屋)へと送り出すのだった。
 服は先にも着せられたブルマを始め、メイド服やナースルックなど、いわゆるコスフェチをそそるような物が多く選ばれた。ある時などは、比良坂が職場から持ち出してきたらしい、PPO女子隊員の制服を着せられたこともある。
 つまりはイメクラを気取ったチープな演出なわけだが(これも比良坂の趣味なのだろう)、何を着せられるにせよ、結局はネチネチとイヤらしく全裸に剥かれるのだから、静音にとっては辱められるネタが増えたにすぎないとも言えた。


 調教は、肉体、精神の両方を徹底的に造り替えようとするかのような激しさで反復された。
 比良坂の凶暴なシンボルで日々犯されながら、駆使するべき性技、奴隷としての行儀をとことん仕込まれる。上手く出来るようになるまで何遍でも繰り返しを命じられるので、静音もいきおい「課題」をクリアしようと励むしかないのだった。まして男に逆らったりサボタージュを決め込んだりなどは、既にそんなことを試みようとする気力すら根こそぎ奪い取られつつあった。
 もっとも堪えがたかったのは、やはり例の、母乳を強制生産させる特殊薬を用いた調教である。
 ほぼ一日おきに行われるそれは、静音にとってこの上ない恐怖の的であり、回避するためならばどれだけ男の前に這いつくばっても良いとすら思わせるほどだった。
 ポータブルの搾乳機を取り付けられたときなど、休み無く襲う異常な官能に、ついには失神、失禁までしてしまい、その体たらくへのペナルティとして更に激しい調教が加えられたりしたから、つい先日まで無垢だった少女を、いっそ正気を失った方が楽なのではないかとまで思い詰めさせるには十分だったのである。


 そして・・・・


 そうした惨たらしい調教よりも、さらに静音を怯えさせ、絶望の淵へと追い込むひとつの事実があった。
 他でもない静音自身の肉体が、今や明らかにこの状況に屈し、急速に変質を始めているということである。
 それはバイオチップによる強制ということとは別に、彼女自身の内奥から起こっていることであると、認めたくはないが自覚せざるを得なかった。
 バイオチップは完全な安定期に入り、つまり本来の肉体とのせめぎ合いが無くなって、その機能を緩やかに、持続的に発揮するようになっている。
 初期のように、暴走気味にオルガが連続することはなくなったが、それでも通常の人体とは比較にならない豊かな性感を発生することには変わりない。むしろその官能をじっくりと、純然たる快感として肉体に味合わせるようになった分、実用性が格段に増したと言えるだろう。
 結果徐々に、無意識レベルでではあるが、静音の中で官能に対する抵抗感、嫌悪感は薄まっていき、少なくとも肉体的には性の悦びを受け入れさせられつつあった。搾乳調教は別としても、バイオチップや媚薬による性感は、もはや快楽として身体に馴染んできていたのだ。
 特に恥ずべきことでもない、若く健康な女性としては無理もない肉体の反応なのだが、しかし静音にとっては、我が身の安直な裏切りがことのほか堪えた。
 囚われの身で、しかも強制的に教え込まれる性のあれこれに、どうして身体が悦びをもって応えてしまうのか。比良坂がからかって言うように、自分はそもそも変態ではないのかと、際限のない不安と絶望が胸を押しつぶしてくる。
 最近では、比良坂の顔を一目見た途端に、身体の芯がジュッと音を立てて湿るようにさえ感じられ、性の奴隷として着々条件付けられていく自分には、もはや本当に、この地獄で一生を送るしか道が残されていないように思えてくるのだった。


 そして今日もまた・・・・


 バスルームの中で、静音は男の巨大な肉体に刺し貫かれ、湧き起こる激しい官能に抗する術もなく、あえぎ、悶え、すすり泣いていた。
 今日着せられたのはウェイトレス用のコスチュームだったが(有名なカフェチェーン店のもので、これまた比良坂の趣味らしい)、それも既に全てを剥ぎ取られ、豊かに過ぎる裸身が余さず剥き出しにされ、プリプリと若さあふれる輝きを放っている。
 比良坂は洗い場に仰向けになっており、静音はそれを跨ぐ格好で腰を抱えられ、下腹を蹂躙されていた。
 腕は例によって後ろに回され、今日は金属製の手錠で手首を束ねられている。
 恵麻里と違って静音は格闘技の心得があるわけではないから、そんなことをして抵抗を封じる必要もないのだが、男は大抵何らかの拘束具を用いようとした。
 手枷を使わない日でも首輪だけは嵌められることが多く、だからこれは自由を奪うということよりも、奴隷、家畜扱いという意識を静音に徹底させることが目的なのだろう。
 今も首輪は巻かれており、そこから伸びる鎖が、行為のリズムに合わせてチャラチャラと冷たい音を立てているのが何とも哀れを誘う。まさに「セックスのために飼われている獣」という風情なのであった。


 やがて・・・


 「おうッ、いくぜ!」
 「あッ!静音もイキますッ!うッ、ダメっ!イキますぅぅぅーッ!!」
 男が一際激しく腰を突き上げたのと同時に、静音も大きく背を仰け反らせ、言いつけられている通りに絶頂の申告を叫んだ。
 男の体液が胎内で炸裂し、その熱さが身体の芯にジンワリ浸みていくのを感じながら、少女の裸身はやがてクタクタと力尽き、相手の胸に倒れ込んでいく。


 「フフフフ、良かったぜェ・・・」
 比良坂は下卑た含み笑いを洩らしながら、汗にまみれ、ビクビクとオルガに脈打っている静音の背を愛おしげに撫で回す。
 「お前の方も、今のは相当楽しめたみたいじゃねェか。身体がセックスに慣れて、オレのイチモツをじっくり味わいながらくわえられるようになってきたようだな、ええ?」
 「・・・・・・」
 「男と女のアソコってなァ、互いの形や大きさを存分に味わえるよう、自然ピッタリ、鋳物の型同士みたいに馴染んでいくもんだ。お前の身体はもう、オレ以外のセックスでは満足出来なくなってるかもよ?なあ?」
 「うッ・・・う、うッ・・・・」
 静音の背がブルリと震え、食いしばった口元からは搾るような涕泣が洩れだした。
 男の揶揄に反駁はしたいが、その言葉が浮かんでこない。行為の最中、あまりの快感にとても抗えず、自ら身体を揺らし、のべつに嬌声を上げ続けてしまったことは覆い隠しようもなかったからだ。
 死にたいほど悔しく、情けないことだが、相手の言葉が半ば真実かもしれないとすら思えてくるのだった。


 「オレの方も、お前の身体にバッチリ相性が合ってきてるワケだ。おかげで今もタップリ出たぜェ」
 言いながら、男は繋がったままの腰をユサユサと揺すって、ようやく波の引きかけた静音の女芯を意地悪く刺激する。
 「こうしてやると、子宮ン中で精液がコポコポ音を立ててる気がしねェか?え?」
 「あッ、やッ・・・」
 「言ってみりゃ、今のお前はオレ専用の精液タンクみたいなモンだものな。どうだ、ついでにオレのガキを孕んでみるか?アゲットのヤツは元々産科医だから、何の心配もなくここで出産も出来るぞ。・・・まああえて妊娠しようとしなくても、これだけ連日ナマでやってりゃ、そのうちイヤでも命中しちまうだろうがな」
 「そ、そんな・・・」
 比良坂の言葉に、静音は伏せていた顔を思わず上げ、オロオロと声を震わせた。


 妊娠の危険はあえて言われるまでもない。この半月で一体何度、男の穢れた精を胎内に受け止めさせられたことか・・・・
 しかしいくら不安に思っても仕方のないことだから、あえて深刻には考えないようにしていたのだが、いざズバリとそれを言われると、恐怖心が強い悪寒を伴って湧いてくる。・・・この獣のような男の種を宿すなど、まさに死に増す拷問としか思えない。
 「許して下さい。それだけは・・・どうか・・・」
 「と言ったって、こればかりは運否天賦だからな。オレがその気じゃなくても当たるときには仕方がねェさ」
 怯える少女の様子をニヤニヤと楽しみながら、しかし比良坂には本当に静音を妊娠させる気など更々無かった。と言うより、その可能性がゼロに近いことを知っていたのだ。


 静音は毎日、アゲットによって十錠ほどの薬剤を処方されている。それはビタミン剤だとか、バイオチップを安定させるためのホルモン制御剤などと説明されていて、事実それには違いないのだが、その中にはピルの錠剤も紛れ込ませてあるのだ。
 「第6世代」と呼ばれるこの薬は、生理日とは関係なく、また2、3日服用を怠っても確実に排卵を抑制するスグレものである。しかしそのことを知らされていない静音は、幻影に過ぎない妊娠に怯えているのだった。
 無論そのことは、調教の効果を上げるためにわざと伏せられているのであって、つまり対象を精神的に追い詰めることを狙っての措置だと言えた。


 「さて、と・・・いったん汗を洗い流してやろうな」
 「あッ」
 男が不意に身体を起こしたので、静音は軽く尻餅を付く格好になってあえかな声を上げた。
 相手が立ち上がるのに連れ、硬度を失った肉塊がズルリと胎内から引き抜かれていく。ホッとすると同時に、何か下腹がポッカリと空虚になったような感覚も覚え、それが静音の打ちのめされた心をさらに苛んだ。
 (言われたとおり、日々身体がセックスに慣らされていくみたい・・・こんな最低の男を相手に・・・・)
 自身への嫌悪感で身を竦ませている少女を、比良坂は首輪の鎖を手繰って引きずり起こし、洗い場の壁に向かって座らせ、それを背後から抱え込むようにして自らも腰を下ろした。
 壁には温水、冷水の蛇口、シャワー、ソープジェルの供給装置、室内の照明その他を操作する耐水性のリモコンラック、そして全身の写る巨大な一枚鏡がはめ込まれている。


 「あ・・・」
 眼前の鏡に自分の裸身が大きく映っているのを見て狼狽え、静音は両足を腹に引き付けるようにして身を縮ませようとしたが、男はそのヒザに手をかけてグイと開脚させ、さらに自らの足を回り込ませてガッチリと固定してしまった。
 「どうだい、自分の見事な身体を見てみろよ」
 「許して下さい!恥ずかしいッ!・・・」
 固く目を閉じ、必死に顔を背けようとするのを、
 「オイオイ、毎日あれだけ仕付けられてるのに、まだ口答えをしようなんてバカな了見が残ってんのか?今すぐまた乳搾りの薬を打ってやったって良いんだぜ?」
 「そ、それは・・・・」
 ハッと身をこわばらせ、静音は震える声を出す。
 「く、薬はイヤです。どうか・・それだけは・・・」
 「だろうがよ?じゃあさっさと目を開けて前を見な」
 促されて、もう拒む術もなく、静音はおずおずと鏡に目をやった。
 鏡の中では、豊満な女体が、Mの字に押し開かれ、全てをさらけ出した状態で固められている。
 目を惹くのはその局所で、恥毛が全て綺麗に剃り落とされ、濡れた紅色の亀裂が覆うものもなくあからさまにされていた。
 無論比良坂が個人的な趣味から施したのだが、幼女のそれと同じ状態にされながら、しかし全く異なるインモラルな迫力を放つその部分が、静音の羞恥心を強烈に刺激するのは当然で、つまり調教上の効果も考えての処置なのだろう。
 実際男は、毎度その様子をネチネチと言葉で嬲るのが常であり、今もまたやはり・・・


 「あッ!・・・」
 ふっくらと肉厚な秘唇に男の指が這い込み、ジワリと横へずらすようにかき広げられて、静音が悲鳴を上げる。
 「全くお前の土手ってのァ品がないよなァ。やたらこんもり高いもんだから、パイパンにしてやったら余計にイヤらしい感じになっちまってよ。まるでクリームを詰めすぎて破裂しそうなエクレアだぜ」
 「お、おっしゃらないで下さい!うッ!・・・」
 ニュヂュッ・・・
 湿った淫靡な音と共に、まるで口一杯に頬張っていた汁気タップリの果肉を吹きこぼすかのように、鮮紅色の内臓が蜜にまみれてあふれ出た。
 美しく左右の形が揃った肉襞は、その隅々に溜まった熱い汗に煽られ、別の生き物のようにヒクヒクと脈を打っている。そして・・・
 「おっと、オレの飲ませてやったモノがこぼれてきやがった」
 「あ・・・」
 惨めに拡げられた自身の秘裂・・・その膣口が咳き込むように蠢いて男の体液がドロリとあふれ出し、洗い場にねばい溜まりを作るのが鏡に映し出される。
 こんなものを連日これでもかと大量に注ぎ込まれ、染み込まされている我が身は、もはやそれ自体が汚らわしいとさえ思え、静音は激しい嫌悪感に身を震わせた。
 「まるでサーモン肉のホワイトソースかけって風情だな。ヘヘへ、よほど美味しかったと見えて、おっきな舌がはみ出したままになってるぜ」
 「あッ、イヤーッ!」
 男は自分の下卑たジョークにクスクス笑いながら、バイオチップで肥大化させられた静音の肉芽をつまみ上げ、からかうようにクリクリとこね回す。
 ようやくアクメの波が引きかけていた部分への刺激に悲鳴を上げ、静音は何とか男の指を逃れようと身をくねらせるが、所詮は空しい抵抗でしかない。むしろ悶える下腹の艶めかしさが男の嗜虐心をさらにあおり、喜ばせる結果となるだけなのであった。

 「それにしても、何とも美しく、そしてイヤらしい身体だよな。まさに芸術品と言っても良い」
 散々静音に泣き声を絞り出させて後、何かなだめるような調子でそう言うと、比良坂は淫らな指戯をようやく中止して、洗面器に受けた温水を、少女の震える肩へ二度、三度と流しかけた。
 男の忌まわしい体液、そして全身の汗が洗い落とされ、しかし肌は若い脂でピカピカと湯を弾き、一段とその輝きを増していく。
 「だがそれもオレ様の仕込みあってのことさ。分かるか?お前のプロポーションは、一週間前とは比べモノにならないくらい素晴らしくなってるぜ」
 「・・・・・」
 そう言われて改めて見れば、自分の裸身が大きく変貌を遂げつつあることが、静音にも分かる。
 バイオチップに冒されたバストや性器は別格として、それ以外の、女体全体のバランスも・・・・下腹やヒップがまろやかに充実し、対して腰や足首はキュッと引き締まりと、見事なメリハリが付いてきている。
 認めたくはないが、男との行為によって、体内に成熟した「雌」が開花させられつつあり、それが肉を付けたり落としたりする部位を急速に変化させているのだろう。
 「男も女も異性によって変わるもんだ。オレがお前の身体を撫でたりさすったり、毎日丹誠込めて愛してやってればこそ、これだけ女らしいプロポーションが出来上がったんだぜ」
 「・・・・」
 「嬉しいだろ?え?礼くらい言ったらどうなんだよ?」
 「あ、ありがとうございます・・・これも・・比良坂様に愛していただいた・・おかげです・・・・」
 仕方なしにそう答えながら、しかし悔しさ情けなさのあまり涙があふれてくるのを留めようもなく、最後はしゃくり上げるような嗚咽に変わっていく。


 「うッ、おッ、うッ、うッ、うッ、うッ・・・・」
 「まぁた泣きべそかよ。それだけ泣いてよく干涸らびちまわないもんだな」
 比良坂は苦笑して、
 「毎度言うが、性だのセックスだのってのは、本来大いに楽しむべきもんなんだぜ。どうせマーメイドになるんなら、早めに自分から頭を切り替えた方が楽じゃねェか?お前もせいぜい楽しみゃ良いんだよ」
 「そ・・んな・・・」
 「もっとも、全部のマーメイドがおんなじタイプである必要はないんだがな。お前の場合は、そうやってすぐメソメソしたり、羞恥心が強すぎたりするところがかえってそそったりするわけだから、それはそれで才能と言えるかもしれねェ」
 「・・・・・」
 「これは別にオレの個人的意見ってワケじゃねェんだぜ。オレ以外にも、お前のそういうところにグッと来るって言ってるヤツは多いんだそうだ。いわば『人気の秘密』ってヤツかァ?」
 「え?・・・」
 言われた意味が分からず、静音は戸惑った表情をおずおずと背後に向けた。比良坂以外にも、というのは一体何のことなのだろうか?・・・


 「フン・・・」
 男は愉快そうな顔つきになって、
 「そうだな、良い機会だから、今日はこれから映画鑑賞会といくか・・・」
 言いながら、耐水性の統合リモコンを壁から取り上げ、鏡に向かって操作する。
 と、鏡は一瞬真っ白に曇ってから透き通ったような質感に変化し、中で何かの映像が動き始めた。
 この鏡は一種のオプチカルデバイスで、ある時は鏡面、ある時は画像再生スクリーンと、操作によって様々な機能を発揮するのである。
 再生する画像はデジタルカードに収められ、脱衣所にある端末にセットするようになっている。見たいデータをあらかじめそちらへ用意しておけば、風呂に入りながら映画などの娯楽コンテンツを楽しむことが出来るのだ。
 しかし今、静音の眼前に映し出された映像は・・・・


 『ああ、やめて!放してくださいッ!』
 『覚悟を決めるのね。フフフフ、私はあなたの、初めての男になるってワケよね・・・』
 『やッ、助けてくださいッ!』
 ペニバンを付けた女性に、座って向かい合った格好で抱え込まれ、縛められた裸身を激しくもがきながら泣き叫んでいる少女・・・・・
 明らかにそれは静音自身の惨めな姿で、映っているのはこのバスルーム内の場景だ。
 「ま、まさか・・・これ・・は・・・」
 忘れることなど出来るはずもない。
 つい半月ほど前、彼女がクリスによって無情にもバージンを散らされた、その惨たらしい陵辱劇の様子に間違いなかった。


 「どうだ?イカス映画だろうが?お前が主演女優ってワケさ」
 「どう・・して・・・・」
 スクリーン内で喘ぐ自身の姿に呆然とし、ようやくかすれ声で問いを発する静音を、比良坂はニヤニヤと眺め下ろして、
 「どうやってこんな映画を撮ったのかってか?ここで、カメラを回して撮ったのに決まってるじゃねェか」
 顎でグルリとバスルーム内を示す。
 「お前も知ってるだろうが?サンクチュアリの内部は隠しカメラだらけだ。このバスルームだけでも、40カ所以上にカメラが埋め込んである。それらで撮った映像を編集したのがコイツだよ」
 「何のために・・こんな・・・」
 「売るのに決まってるだろう?」
 比良坂はチラリと苦笑を浮かべた。
 「いささか貧乏くさいハナシだけどな、ゲーム(獲物)をただ調教するってだけじゃあ勿体ないだろ?調教過程そのものが、ポルノとして十分以上の価値を持っているコンテンツなんだ。売ればそれだけで莫大な利益を生むんだよ」
 「・・・・・」
 「だからゲームを捕まえたら、商品に仕立てるまでの一切を、なるべく詳細に映像で記録しておく。その中で使えそうなカットを編集して、こういったポルノムービーを作るんだ。無論撮ったまんまの映像だとマズイから、ああいう風に画像を加工してあるところもあるがね」
 比良坂は顎で今度はスクリーンを示した。
 映像内で静音を抱きかかえているのはクリスのはずだが、なるほど、画面のその位置には見たこともない赤毛の女が映っている。プロポーションはでっぷりとだらしがないし、肌の色もくすんだ黄色だ。
 まさか犯罪者が顔出しは出来ないから、こうやってCG処理による欺瞞を図っているのだろう。
 「だがそれ以外はまさに『実録モノ』だから迫力が違うだろ?当然人気の方もスゴイってワケさ。お前の友達のように最初から買い手が決まっている場合は別だが、こうやって調教映像を売られている娘は他にも大勢いるぜ」
 「そ、それじゃあ・・・」
 「そう、お前のこのムービーもすでに売られているんだ」
 ククッとノドを鳴らし、比良坂は犬歯をむき出しにした。
 「もちろん地下流通でだが、本数の方は相当出ているようだぜ。『美少女S・T、捕獲調教!』ってベタなタイトルでな。まだ一本目が出たばかりだが、今後シリーズ化していくそうだ」
 「そん・・な・・・」
 「当然、二巻目、三巻目にはオレも出演するってことになるなあ。もちろん念入りに画像加工をやって、別人にすげ替えてはもらうがね。何せPPOの隊員連中にもコレを購入してるスケベ野郎が大勢いるらしいから、顔出しなんかしたら一発でオレだとバレちまう。そしたら話題性で主役のお前を喰っちまわないとも限らないしな」
 自分のジョークに受けて、比良坂の言葉は途中からゲラゲラと下卑た笑い声になった。


 画面にはクリス(にCGですげ替えられた赤毛の女)が、自らの股間にそそり立っているディルドーで、今まさに静音の無垢な女体を押し破ろうとするシーンが映っている。
 『イヤですッ!助けてッ!!』
 悲愴な表情で赦しを乞う少女のグラマラスな裸身は、しかし無情にもディルドーの上へと落とし込まれ、それを体内深く貫き入れられてしまった。
 『ギャアアアアアーッ!』
 凄絶な叫喚と共に、静音の背が弓なりにピンと反り返る。
 惨めに押し開かれた太股の付け根がブルブルと緊張し、そこから流れ落ちた鮮紅色が、濡れた洗い場にサッと広がった。
 哀れな生贄の純血が、卑劣な召喚犯罪者によって踏み砕かれる、その瞬間を示す証であった。


 「へヘッ、ここは『ヌキどころ』ってヤツだよなァ。見てみろよ、お前のあのみっともねェ顔を。目ン玉も舌も飛び出しちまって、まさに断末魔って風情だぜ」
 「や、やめてッ!お願いですもう止めて下さいッ!」
 男の下品な揶揄と、何より映し出される自身の無惨な姿にたまりかね、静音は目を固くつぶり、頭を狂ったようにイヤイヤと振って絶叫した。
 後ろ手に縛められていなければ、耳もきつく塞いでしまいたい。画面からのべつに響き渡る自分の悲鳴を聞くに堪えないのだ。あの時の恐怖と屈辱が、身体の芯に甦ってくるようであった。
 比良坂はそんな静音の様子を全く意に介さず、
 「このメガトキオだけでも、恐らく何千という数の男が、お前が犯されたり、薬を盛られてダラシなくヨガったりしてるところをムービーで見てるんだぜ。アソコからケツの穴まで大写しになってる不様な姿を見て、チンチンしごいてみたり、さっきも言ったようにお前のファンだとメールを送ってきたりするワケだ。どんな気分だい?ええ?実績バツグンと評判の腕利きS・Tさんよォ?」
 「ひど・・い・・・・」
 静音の口元がワナワナと震え、涙声がしぼるように悲痛な調子であふれ出た。
 「ひどすぎます・・・い、いくら何でも・・こんな・・・・」
 敵である組織に捕らわれ、処女を奪われただけでも十分すぎる恥辱であるのに、その様を世間に開陳され、商品として売られるなど、それ自体がまさに拷問と言って良い。
 しかし比良坂は、ますます小馬鹿にしたような口調になって、
 「何をそう泣きべそかくことがあるってんだい?ええ?」
 静音の髪をつかみ、伏せていた顔を乱暴に仰のかせる。


 「そもそもお前は自分の立場をどう考えてるんだ?『悪いヤツらに捕まった可哀想な女の子』だとでも思ってるんなら、心得違いも甚だしいぜ?」
 「そ、それは・・・」
 「なあいいか?調教がイヤだとか恥ずかしいだとか思うのは、お前がまだ普通の人間界に戻れるなんぞと甘い期待をしているからだ。マーメイドって家畜に自尊心なんか無用だろうが?むしろ、自分の痴態を大勢に見てもらい、興奮してもらえることを、女冥利、いや家畜冥利に尽きると殊勝に考えるのが本当じゃねェのかい?」
 「・・・・・」
 「今さらまともな人間として希望を持とうなんてのは大きに甘ったれなんだよ!ここまで堕ちちまったら、さっさとマーメイドとして大成してやろうってくらいに明るく転換が出来ねェのか?ああ?」
 「そんな・・こと・・・私・・・」
 「ウジウジためらってたって意味がねェだろうが?お前には選択肢なんか無いんだからな。そんな調子だと、一緒に捕まってるお前のパートナーの方にどんどん先を越されちまうぞ」
 「え、恵麻里さんが?・・・」
 「そうさ。あの娘の方は、クリスの調教でめきめきマーメイドらしく変わってきてるぜ。いやなかなかの精進ぶりだよ」


 「う、ウソですッ!」
 静音は不意に金切り声を上げ、挑むような目つきになって背後の比良坂を振り返った。
 「恵麻里さんがそんな・・・あの人はあなた達なんかに負けたりしませんッ!」
 「オイオイ、そりゃお友達を買いかぶりすぎちゃいねェか?お前だってゾニアンやバイオチップの威力は身に染みてるだろうが?ここで調教を受けて、最後まで抗える女なんかいやしねェんだよ」
 「それは・・・薬やバイオチップの力に逆らうことは出来ないかもしれません。でも恵麻里さんは、そんなことで容易く魂まで売ったりはしません!私、信じてますッ!」
 「けっ、パートナー同士の信頼と絆ってヤツも、こうまで脳天気だと物笑いだぜ」
 比良坂は本気で呆れたような表情になって、
 「よし、往生際の悪いお前のオツムにダメを押す意味で、もう一本別のムービーデータを見せてやるよ」
 再びカチカチとリモコンを操作する。
 スクリーンは一度消灯して鏡の状態に戻り、すぐにまた灯って何か新しい映像を映しだした。


 「あッ!!」
 驚愕に大声を上げ、静音は目の前のスクリーンに釘付けとなった。
 そこには、彼女が焦がれてやまない友人であり同志、早坂恵麻里の顔が大写しに映し出されていたのである!
 「え、恵麻里さん・・・・」
 見ているだけで、静音の目に新たな涙が大粒に盛り上がってきた。
 恵麻里と会えなくなってまだ半月ほどにしかならないのに、まるでもう何年も顔を見ていないような気がする。狂おしいほどの懐かしさで、胸がつぶれそうな思いだった。
 (だけど・・・一体どうしたの?恵麻里さんのこの変わり様は・・・)
 そう静音が戸惑うほど、恵麻里はその雰囲気を変質させてしまっていた。
 顔の造作の美しさこそ以前のままだが、その表情は暗くやつれ果てており、キョトキョトと周囲にさまよわせている目つきには酷い怯えの色が浮かんでいる。
 この少女が、つい先日まで、強い誇りと正義感、そして信念をオーラのように身にまとっていた気鋭の少女S・Tだとは、もはや誰にも想像すらできないだろう。
 自身も監禁状態にあることから、ストレスによって消耗してしまうことは静音にも理解できる。だがそれにしても、恵麻里の変貌ぶりは程度が甚だしすぎるように感じられた。


 「こちらのムービーは非売品で、流通はしていない。さっきも言ったが、この娘の場合はもう既にマーメイドとして売られていく先が決まってるそうだからな。買い手に無断でポルノコンテンツを流したりは出来ないワケさ」
 比良坂が得々と説明している間に画面はスルスルとロングに引いていき、恵麻里の全身が映し出される。周囲の様子も見えてきて、場所はやはり、静音が今いるこのバスルーム内であることが分かった。
 当然恵麻里も全裸に剥かれており、首輪を嵌められているのも静音と同様だ。首輪から伸びる鎖は壁の金具に繋がれ、彼女がその場から大きくは動けないように自由を奪っている。
 手には手錠が嵌められているが、後ろ手にではなく、身体の前で両腕がまとめられている。と言っても不自由なことには変わりがないようで、上手く裸身を覆えそうにないという諦めからなのか、恵麻里は正座をしているヒザの上に、その手を物憂げにダラリと投げ出しているだけだった。


 『何をボヤッとしてるの?早く股を開いてあっちのカメラに向けなよ!』
 画面の外から、女の激しい口調が投げつけられてきた。明らかにクリスの声である。
 『・・・・』
 恵麻里は命じられたとおりM字に脚を広げ、ヒップの位置をずらし、カメラに向かってその局所をさらけ出した。
 その様子と、クリスの言葉からすると、恵麻里はバスルーム内にカメラが設置してあることをあらかじめ承知しているらしい。
 またその姿勢になって良く分かるようになったのが、恵麻里のプロポーションの大きな変化であった。
 表情のやつれぶりとは裏腹に、半月前に見たときよりもはるかに女らしく成熟して見える。
 静音の尋常ではないグラマラスぶりに比べればもちろん地味ではあるが、処女らしい頑なさが消え、胸と腰にタップリと柔らかな肉を付けたボディラインは、同世代の少女達に比して明らかに数段勝っていた。これもやはり肉体改造、そして性調教の効果なのであろうか。


 そしてさらに・・・・


 「見てみろよ、アソコはお前とお揃いだぜ」
 比良坂が指差して言う意味は明らかだ。
 恵麻里の秘部は恥毛を全く失い、紅く刻み込まれた肉の亀裂が丸見えになっている。つまり剃毛によってパイパン状態にされているのだ。
 (恵麻里さんにまで・・・酷い・・・)
 自身も受けた陵辱であり恥辱であるだけに、あの誇り高い恵麻里がどれだけの精神的ダメージを受けたことかと、静音の胸がつまった。


 『黙って脚をおっぴろげてても仕方がないでしょうが!さっさと言い付けられたことを始めなよ!』
 蓮っ葉なクリスの怒声が再び降ってくる。
 『は、ハイ・・・』
 一瞬躊躇する表情を見せたものの、恵麻里はすぐに観念したようにうつむくと、クリスに「言い付けられた」らしいことを実践し始めた。
 「あッ!・・・」
 激しい驚愕の声が静音の口をつく。あまりに意外な光景が、スクリーンの中で繰り広げられ始めたからだ。


 『ん、んッ・・んんッん・・・』
 甘い鼻声が、最初は微かに、しかし次第に高く画面に満ちていく。
 恵麻里は何と、さらけ出した女芯を指先でくつろげ、襞を淫靡になぞり、肉芽を弄んで、自らを激しく慰め始めたのである!
 「えッ、恵麻里さんッ!?」
 愕然とする静音の眼前で、スクリーンは痴態に興ずる恵麻里を大写しにし続ける。
 彼女のバイオチップも静音のものと同様、定着期に入って多少の落ち着きを見せているようではあるが、それでも常人のそれとは比較にならないほど豊かな性感を呼び起こすことに変わりはない。
 『あひアアアアッ!』
 たちどころに恵麻里は、腿をギュッと身体に引き付け、あえかな悲鳴を吹きこぼして、淫らな高みに達しきったことを表明した。
 恥ずかしさ、そして悔しさからなのか、目には大粒の涙が浮かび、裸身の震えに合わせてフルフルと波を打っている。
 『一度アガったくらいで呑気に一休みしてんじゃないよッ!脳ミソが溶ろけちまうまで続けるんだ!』
 『は・・い・・・』
 画面の外からまたも投げつけられるクリスの声に従い、恵麻里は指先をその秘裂に這わせると、浅ましい行為に再び没頭し始めた。
 鮮紅色の内臓からはすでに大量の蜜があふれ出ており、上気した肌にも次第に一面汗が浮いて、少女の中に淫らな熱が満ち満ちていることを如実に示している。

 「やめてッ!そんなことやめて下さいッ!恵麻里さんッ!」
 たまりかねたように静音が大声を張り上げた。
 録画画面なのだから、そこに映っている恵麻里に呼びかけても意味のないことは分かっている。分かっているのだが、無意識に声が出てしまったのだ。
 愛するパートナーであると共に、この世で最も尊敬する友人の狂態は、静音にとってとても正視に耐えられるものではなかった。


 「へヘッ、どうだい?お友達の方は結構楽しそうにマーメイド修行をしてるだろうが?だからお前も負けないように・・・」
 「恵麻里さんはそんな人じゃありません!そんな、弱い人じゃありませんッ!」
 比良坂の揶揄をさえぎって、静音の涙声が響き渡る。
 「恵麻里さんは、きっと私のために・・・・1人なら逃げ出せるのに、私が人質になってるから・・・私を守るために、仕方なくあんなことをさせられて・・・・」
 涙をポロポロこぼしながら抗弁する静音だが、言っていることにはそれなりの根拠がある。事実半月前、恵麻里は静音を窮地から救うためにクリスに屈従し、汚れ仕事を引き受けたりもしているからだ。
 「フン、そりゃどうかな?」
 比良坂は薄く笑って、
 「キッチリ現実を受け入れねェと後がツライぞ。まあ良いから続きを見てみなよ」
 促されてスクリーンに視線を戻すと、それまで声だけの出演だったクリスが画面内に歩み入ってきて恵麻里の背後に立った。
 この映像は非売品だと比良坂は言ったが、だからなのだろう、先ほどの静音のムービーとは違い、こちらのクリスはそのまま堂々と顔出しをしている。


 『手錠がジャマでオナるのも難儀だろうからねェ。私も手伝ってやるよ』
 そう言うとクリスは恵麻里を背中から抱き回し、半月前とは比較にならないほど豊かに張っているバストを両手で包むように持ち上げると、その先端同士をこすり合わせるようにして恵麻里の鼻先まで持ってくる。
 『さァ、うんと気分出してしゃぶってごらん』
 『は、はい・・・』
 上気した顔を仰のかせ、恵麻里は言われるまま、自らの両乳首をいっぺんに口に含んだ。が・・・・
 『んッ、ふうううッ!!』
 ほんの一瞬後にそれを吐き出してしまい、きつく弓なりに反らせた裸身をビクビクと跳ね躍らせる。彼女が脆くも、再び気を遣ってしまったことは明らかだった。
 静音のものとは別の種類なのであろうが、恵麻里の乳房にもやはり性感増大用のバイオチップが植え付けられているらしい。


 『まだ終わりじゃないよ!』
 再びクリスの声が、今度は心なしか楽しげに響き渡る。
 『オッパイの面倒は私が見てやるから、お前はコレをアソコへ打ちな!』
 そう言って、輝くブロンドの魔女は、恵麻里の前の床に銀色のツールをカシャリと投げ落とした。
 それは静音も見慣れている皮下注入器で、差し込まれたアンプルには薄緑色の液体が満タンに詰まっている。明らかにゾニアンの薬液だ。
 恵麻里は震える手で、しかしさして躊躇をすることもなくそれを拾い上げた。
 『もっと大きく股を拡げて、アソコが良くカメラに写るようにしてから薬を打つんだよ!』
 口やかましくクリスが言う。
 『さっきも言ったように、撮った映像は静音ちゃんにも見せてやるんだからね。張り切ってイイ顔しなよ!』
 不意に自分の名前が呼ばれて静音はギクリとしたが、画面の中の恵麻里もその名に反応してハッと裸身をすくませた。
 いずれ静音が、自分のこの痴態を見せられることを改めて意識したのだろう。ややあってその顔がクシャクシャに歪み、今まで必死にこらえていたのだろう涙が、嗚咽と共にドッとあふれ出て頬を伝った。


 『し、静音、許して・・・。こ、怖いの・・・逆らえないの・・・』
 ブルブルと肩を震わせ、カメラに向かってしゃくり上げながら呼びかける。
 『誰がそんな余計なことまで言えって言ったよ!』
 すかさずクリスが怒声を投げつけてきた。
 『さっさとポーズ取って薬を打ちな!モタモタしてるならまた向こうへ送ってやろうか?』
 後ろから乱暴に頭を小突かれ、恵麻里は怯えきった様子で、
 『ご、ごめんなさいッ!すぐ、すぐお言い付け通りに・・・』
 そそくさと注入器を持ち直し、熱くパックリと割れている自らの局所、その肉芽付近に押し当てる。
 シュッ!
 ゾニアンの打ち込まれる乾いた音、そしてほぼ同時に、恵麻里の魂消るような悲鳴が響き渡った。
 『ィひァアアアアッ!』
 激しいオルガが全身を痙攣させ、意識を一瞬真空状態にする。
 半ば裏返った目。だらしなく開かれた口から飛び出している舌。そして唇の端からドロリとこぼれ落ちる、白く泡立ったヨダレ・・・・。
 ほとんど廃人めいて見えるその人物が、ほんの半月前まで、極悪組織と戦う凛とした少女探偵であったとは!・・・


 クリスはそんな恵麻里の顎をすくい取るようにして後ろへ振り向かせ、
 『ククククク・・・気持ちがイイんだね、お嬢ちゃん?』
 『ひ・・ァい・・・ひもひイイ・・・きもひイイ・・でふ・・・』
 『どこが気持ちイイんだか言ってごらん?』
 『は、身体・・じゅう・・イイの・・・お腹の中・・ふごく気持ちイィイ・・・』
 『だったらもっと良くなってごらん。ホラ、自分でもっと拡げて、指も入れて良いのよ・・・』
 クリスはうって変わったような猫撫で声で言い、背後から回した手を恵麻里の手に添えて、それを再び女体の芯へと導いていった。
 少女の濡れた指先が、クリスの誘導で、しかし半ばは自分の意志で、すっかり熱く濡れてヒクヒクと震えている恥門をさらにくつろげ、襞の裏をなぞり、一杯に蜜を溜めた膣口へと這い込んでいく。
 『ひあッ!・・もうアめ・・・ひもひイい・・また良くなっひャうです・・・あッ!うむッ!・・・』
 泣き悶えながら、しかし次第にウットリと恍惚の表情を浮かべて官能に呑まれ、自ら激しく手を動かしてオルガを繰り返す恵麻里のあまりな痴態に、静音はとうとう堪らなくなって目を固く閉じ、悲鳴を張り上げた!
 「やめてッ!お願いです、もうやめて下さいッ!こんなの、とても見ていられませんッ!」
 ガックリと首を折り、全身を震わせながら激しくしゃくり上げ始める。


 映像の中でクリスが「向こう」と呼んでいたのは無論「サキュバス」によるバーチャル世界であり、恵麻里はそれに対する恐怖心のあまりの大きさ故に屈従しているのだが、サキュバスの存在を知らない静音にとって、信じていた友のあまりに不様な敗北、転向ぶりは、心の奥底に微かに秘めていた最後の希望を打ち砕くのに十分だったのだ。
 あの気丈な恵麻里をここまで完璧に打ちのめした恐るべき調教に、柔弱な自分がこの先どうして抗い続けられるだろうか?
 もはやここから脱出するなどは夢のまた夢と絶望せざるを得ない。


 「そう野暮を言わずにしっかり目ェ開いて見ておきな。ここからがイイところだぜ」
 比良坂は言って、嫌がる静音の顔を無理やりにスクリーンへとねじ向けた。
 画面の中では、アクメの限界に達して失神しかけている恵麻里を、クリスが鎖を手繰って強引に引きずり起こし、四つん這いにさせている。
 パクパクと何かを訴えかけた口には真っ赤なボールギャグがグイと押し込まれ、発声の自由を奪ってしまった。


 『さっき余計なセリフを喋った罰を与えてやるからね。さあ、ケツを高く上げな!』
 激しい調子で命じられ、恵麻里は慌ててヒップを持ち上げようとするが、ゾニアンの効力に未だ冒されている下半身には思うように力が入らない。ヒザをガクガクと震わせながら、土下座から立ち上がりかけたような姿勢を取るのが精一杯だった。
 『フン・・・』
 嘲って鼻を鳴らし、クリスは恵麻里の側に屈み込むと、
 『お前のように物覚えの悪い犬は、身体と同時にオツムの方も厳しく仕込んでやらなきゃね。まずは数を数える勉強だ。いいかい?ケツを叩かれた分だけ数を大声で報告するんだよ!』
 言いながら、恵麻里の豊かなヒップに勢いよく平手を叩き付ける!


 パシィィーン!!
 『い、イふィィー!』
 「1」と言ったつもりなのだろう、馬のいななくような調子で、ギャグに塞がれた恵麻里の口から申告の声が噴きこぼれる。
 『声が小さいよ!キチンと聞こえるように言わないと向こうへ送っちまうからね!』
 クリスの恫喝にギクリと身をすくませ、必死にうなずいて了解の意を示す恵麻里のヒップに、間髪を入れず2発目の張り手が打ち下ろされる!
 パシィーン!!
 『フィー!(2)』
 パシィーン!!
 『ホァーン!(3)』
 パシィーン!!
 『フォォン!(4)』
 と、ここでクリスは不意に張り手のリズムを変え、5、6、7発目をパパパンと連続して叩き付けた!
 『ふぉ、フォ!(5)、フォ、フォッ、オッオッオッ・・・・』
 慌ててリズムに追いつこうとした恵麻里は、そのためにむせて大きく咳き込み、数の申告を中断してしまった。


 『なんてザマだよ、このバカ犬がッ!』
 クリスは鎖を引っ張って恵麻里を乱暴に仰のかせる。
 『まともに数も数えられないのかい!そこらのノラ犬の方がまたマシじゃないか!』
 『お、おふェなはい、おふェんなはい・・・』
 泣きじゃくりながら、不自由な声で必死に詫びる恵麻里を、クリスは再び床に伏せさせて、
 『キチンと100まで数え終わるまで、何べんでもやり直させるからね!さあ、最初から!』
 パシィーン!!
 『いッ、いフィー!』
 残酷なスパンキングが再び始まり、肉の打たれる音と悲鳴とが交互に響き渡る。
 商品に傷を付けるわけにはいかないからだろう、クリスの張り手には手心が加えられているようだったが、下半身にゾニアンを盛られている恵麻里には、痛みよりもその衝撃による激しい官能の方がこたえるらしい。
 全身を次第に汗でズクズクにし、力尽きたように床に腹這いながら、少女は少しでも早くその地獄から逃れようと、必死で数を数え続けるのだった。
 顔を付けた洗い場の面が、涙と鼻水、そして大量のヨダレとでヌルヌルに汚れていくのが見える。まさにお仕置きを受けた犬が泡を吹いて蹲(つくば)っている様子を思い起こさせずにはいなかった。


 「どうだよ?これで分かったか?」
 比良坂の声で、静音はハッと我に返った。
 いつの間にか彼女の顔面も、新たにあふれ出た涙で一面にテラテラと濡れ輝いている。
 「お友達は心底ビビってクリスに服従し、性奴隷になるための勉強に精出してるんだ。お前を守るためとか何とか、そんな余裕のある心境じゃねェんだよ」


 「・・恵麻里・・さん・・・」
 激しいショックを受け、呆然とつぶやく静音を、比良坂はニヤニヤ笑いながらさらに開脚させ、ツルツルの無毛にされた局所へと再び指を這わせてきた。
 「あッ!やッ!・・・」
 「フン、思った通りだな」
 男の指先が秘裂をなぞり込み、次いでヘソの方へ這い上がると、タップリとまとわりついた熱い蜜がボトボトと下腹にこぼれ落ちる。
 「アソコのまわり中エロい汁だらけじゃねェか。お友達がイジめられるのを見て大きに興奮してたってワケだ。お前も変態ぶりが板に付いてきたなァ」
 「ち、違います!そんな・・・・」
 慌てて反駁しようとして、しかし静音はそれ以上言葉が続かなくなった。
 比良坂の言うとおり、ムービーを見ている最中、身体の芯がジクジクと音を立てて熱を持ってくるのをイヤでも自覚していたからである。
 それが、言われたように、友人のSMシーンを見せられて興奮したからなのかは分からない。しかしこのような状況下で、あふれ出る体液をとどめようもない自分は、それだけで「ヘンタイ」と揶揄をされても仕方がない体たらくなのではないか?心も身体もすっかり淫らな色に染め上げられてしまったのではないか?そんな絶望感から言葉を失ってしまったのである。


 「お前がヤル気マンマンなのを見て、オレのもまた元気になってきたぜ。ホラ、触ってみなよ・・・」
 比良坂は背中に回されている静音の手をつかみ、自らの股間へグイと導いた。
 「あ・・・」
 そこにそそり立っているモノがまるで金棒のようなボリュームと硬さになっているのを感じ、静音はビクリと肩を震わせる。
 「コイツがもう一度お前の中に入りたがってるのが分かるだろう?ええ、ド変態の女S・Tさんよォ?」
 「い、イヤ・・あッ!・・・」
 裸身が背後から軽々と持ち上げられ、クルリと回されて、男と向かい合う格好で胡座の上に乗せ直されてしまう。さらに硬直しきった剛槍が恥ずかしい割れ目にピッタリと沿う形で押し付けられ、そこをスリスリとなぞるように刺激してきた。
 「やッ!むうッ!」
 ふくれ上がった肉芽がグリッとすり潰され、まるで感電したかのように腰が跳ね躍る。
 それだけでたちまち二度、三度とアクメに達し、静音の頭の中はピンク色のモヤがかかったように朦朧としてきた。


 「イ・・ふァ・・・」
 「ヘッ、夢見心地だな。ホレ、お友達の方もますます盛り上がってるぜ。見てみなよ」
 比良坂は静音を身体の前に抱えたままの格好で尻の位置をずり動かし、2人がスクリーンを横目に見られるようにした。
 画面の中では、クリスが今度は恵麻里の秘部に小型の電動ローターを押し込み、抜け落ちないように耐水皮革の貞操帯をはめて、彼女の首輪に付けた鎖を壁から外して持ち、まさに犬の散歩よろしく洗い場を引きずり回している。
 『いふァ!ゆふひてくァはい・・・ほめへ(止めて)、ほめへくァはいィィ・・・・』
 ローターの淫靡な震動に堪えかね、恵麻里は泣きじゃくって哀訴をするが、元より聞き入れられるはずもない。
 失神しかけて床に這いつくばると、すかさずクリスにヒップをドヤされ、再びすすり泣きながらのいざり歩きが始まるのだった。
 その肉体内でどれだけ狂気じみた官能が荒れ狂っているのか、またその精神をどれだけの屈辱と絶望感が苛んでいるのか、静音は我が身に照らしてみて想像するにあまりあった。


 (もう、どうしようもないのですか、恵麻里さん?私たちはもう、浅ましい性奴隷として、日々淫らな奉仕をするためだけの存在にされるのですか?死ぬまでそんな生活から抜け出すことは出来ないのですか?・・・・)
 もはや抵抗しようとする意志すら一切奪われ、あられもない痴態を晒し続けるパートナーの姿を見ながら、静音は心中で独りごちる。心の隅に微かに抱いていた一縷の望みが、今や粉微塵に打ち砕かれていくのを自覚せずにはいられなかった。
 見開いた目に再び大粒の涙が盛り上がり、その中へ恵麻里たちの姿がにじむように溶けていく・・・・


 「さあ、また腹一杯に呑み込んでみな」
 男は言って、高ぶりに高ぶった肉の杭を、ふくれ上がり、パックリと口を開けている少女の秘唇にズブリとめり込ませた!
 「あぎィイイイイイ!!」
 静音の理性は脆くも一瞬に弾け飛び、今日何度目かも分からない忌まわしい絶頂感が、豊満な裸身をビクビクと痙攣させる。
 ほぼ同時に、スクリーン内の恵麻里も追い詰められきった声を高く長く上げ、バスルームには哀れな少女S・Tたちの悲鳴と嗚咽とが激しく交錯した。まるで自らの葬送曲を、2人共同で奏でるかのように・・・・
 煉獄の極みのようなこの状況が、しかし男の目論む調教計画の未だ中間ステップに過ぎないことを、静音は全く知る由もなかった。


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