その2
=今回登場する妖怪「毒針髪」=
その名のとおり、髪の毛先が毒針となっている妖怪人間。その毛先に首を刺されて血を吸われ、毒がまわった者も同じ妖怪人間となって他人を襲う。
悪魔の花嫁となった雅耶がもと同級生だった男子を毒牙にかけて妖怪化させ、女子高校に忍び込ませて手下をふやそうとしているのであった。
便所のなかで京子と七絵の二人を見つけた美佐は、その二人のようすがおかしいことも感じていた。
京子「うふふふ。」
七絵「うふふふ。」
美佐「あなたたちは、三年生の方ですね。いま、悲鳴を聞いてかけつけたんだけど、きゃあ。」
京子の長い黒髪がひろがって舞い上がり、七絵に命令して美佐を後ろからつかまえて身動きが取れないようにあいたのである。
京子「あたいはこの学校の女番長。あんた、見慣れない顔だね。」
美佐「あの、最近転校してきたばかりで、いきなりなにをするんですか?やめてください。」
京子「ふっふふふ。おかげさまで超能力を手に入れたのさ、七絵も。」
美佐「超能力ですって?」
京子「そうさ。どうする?七絵が今度はこいつを刺して仲間にしてみるかい。」
七絵「やっぱり、あたしはあまり髪の毛が長くないから、番長がやったほうがいいと思います。」
京子「そうか。それなら、七絵はこいつの髪の毛をわしづかみにしてわたしが襲いやすいように手伝いな。」
七絵「わかりました。ふふふふ。」
美佐「い、いたい、髪の毛を…。」
七絵「ふふふ。あたしたちの仲間になればあとは楽になれるんだよ。」
美佐「仲間に?わたしはスケバングループなんか入る気ないわ。」
京子「そうあがいているのもいまのうちだけさ。」
美佐「はっ、なんかおかしい。この人たちは人間じゃないような…。」
京子の髪が舞い上がってきたのを察して、美佐は自分の腹を抱えていた七絵の腕を、全身をこめて逆手にとって持ち上げ、投げ飛ばしたのであった。
七絵「きゃあ。」
京子「うっ、おのれ…。」
投げ飛ばされた七絵も京子の身体に直接ぶつかって、その場に腰から倒れていた。
美佐「はあはあ…。」
相手が苦しんだ状態に、特にとどめを刺す必要もないと思った美佐は、とりあえずその便所から出ていくことにした。
美佐の出ていった後、便所の一室に隠れていた増美も扉を開いて倒れていたふたりの前に立った。そして、増美の姿に気づいてようやくふたりも立ち上がったのであった。
京子「増美さま、申し訳ありません。やつを取り逃がしました。」
増美「ふふふふ、やはり手強い相手のようだわ。まあいい。おまえたちはまず先に別の者を襲ってみんな仲間にしていくがよい。それから、この学校のものみんなで美佐をおとしいれるんだよ。」
京子「はい。」
授業は午後になって、美佐と増美のいるクラスが最後の時間が体育になっていた。
増美は、運動を禁じられているので着替えをしないと言って制服のままでいたが、もちろんこれは男である正体を隠すためである。しかし、教室の隅にいてまた増美は着替えている少女たちのようすをまたいやらしげにずっと見続けるのであった。みんな、増美が男であることは知らないから、増美の視線も気にしていない。しかし、美佐が自分のことを増美がじろじろ見ていることに気づき、なんとなく増美がさびしそうにしていると思って、体操着に着替え終ると増美に声をかけた。
美佐「あの、増美さん、やっぱりわたしたちといっしょに運動できないの?」
増美「ええ?まあ…。」
美佐「あ、気を悪くしていたらごめんなさいね。わたしとたまたま視線が合って、なにかお話したいことでもあるのかと思って…。」
増美「あの、美佐さん…。」
美佐「なにかしら。」
増美「授業はじまるまでちょっと…。」
美佐「廊下に出るのね、いいわ。」
こうして、美佐と増美が二人で教室を出ていたが、増美は相変わらず美佐の姿を見続けているだけであった。
美佐「どうしたの?わたしのことそんなに見ていて。」
増美「わたし、美佐さんのこと…。」
美佐「わたしのことが…。」
増美「その、なんというか…、すごくきれいだなと思って。」
その言葉を聞いて、美佐はまたあっけにとられるだけであった。
美佐「まあ、あなたが男の子だったら言われてうれしくなるかもしれないけど、またどうして。」
増美「あの、おっぱい見せてくれない?」
美佐「そりゃ、ここは女子校で女どうしだから構わないと思うけど、いいわよ、ほら。」
美佐は、体操着を下裾から上にあげ、ブラジャーまで増美に見えるようにあげていた。そこにまじまじと増美は視線を送ったのであった。
美佐「あんまり自慢になるほど大きいわけじゃないけど、増美さんもそんなに大きくないようね。」
男だから当然であるが、もちろん口がすべっても言えないことである。
増美「わたしから見れば、うらやましくて…。」
美佐「でも、あなたはほら、こんな長くてきれいに編んでいる髪の毛があって、すてきじゃない。」
美佐は、増美のお尻まで毛先が届いている三つ編みの髪をなではじめた。するとすぐに増美は首を振り向かせてさわられていた髪を美佐の手から離すようにしたのである。
増美「ごめんなさい、トイレに行きたくなったから。」
あわててまた増美は言葉通りに女子便所に向かっていたのだった。
美佐「増美さん…。」
美佐は、あげかけていた体操着を元のように戻して靴をはきかえに階段を降りていた。
便所にまたかけこんだ増美は、その一室に入ってスカートや下着をぬぎはじめた。
増美「ああ、どうしよう。興奮して下着が濡れている…。」
自分の長い髪の毛を異性にさわられていたため、増美は興奮して精液をもらしていたのだった。
体育の授業も終って、その日の授業がすべて終り、最後の一礼も終了して放課後になった。
部活動の所属もない美佐は、さきほどの増美が自分と友達になりたいのだろうと思って、いっしょに帰ろうと誘おうとしたが、ところが美佐の近づいてくるのを見て増美はさっさとかばんを抱え、二本の長い三つ編みの髪をはげしく揺らせながら逃げるようにして教室を出ていったのである。
美佐「増美さん、どうして急いで…。」
増美の正体が男であることも夢にも思っていない美佐に対し、増美は自分の髪をなでられたことで初めて美佐を女として意識してしまったようである。ちなみに、増美はこれまでも恋人を持ったことは一度もない、もともと異性には縁遠かった男であった。
ひとあし早く校門を出ていた増美は、途中で自分を下僕にした主である、雅耶に会ったのであった。
増美「はっ。」
雅耶「うふふふ。女子高校にひとりの生徒として忍び込んだ感想はどうだったのかしらねえ。まあ、最初の日はこんな程度だけど、おまえも美佐ごときにぼーっとしていたら世話ないわねえ。」
増美「あっ、もちろんいずれやっつけるつもりですから。べつに好きになんかなっていませんよ。」
雅耶「おほほほほ。あんなかわいげのない女、ほれるばかな男がいるわけないでしょう。さあ、おまえはそんなかっこうではもう帰る家もないから、、ずっとラブホテルに潜んで夜を送るのよ。べつに、誰にも気づかれないで出入りしているから、お金払わずにすんでいるのよ。」
増美「は、はい。」
雅耶「わたしとたっぷり、セックスを楽しめば、美佐のことなど女とは思わないようになるはずよ。」
増美「そうですね。」
雅耶「ふふふふ。ほら、わたしもおまえの髪の毛をなでたら、やっぱり興奮してきたわね。」
こうしてまた、増美は雅耶に連れていかれたのである。
増美が早く出ていってしまったため、美佐は増美のあとを追うにも追いようがなかった。
美佐「はっ。」
美佐は、またどこかで誰かが悲鳴をあげているのが超能力で聞こえてきた。
美佐「あっちのほうだわ。まあ、こんなところに…。」
美佐がたどりついたところには、朽ちかけて使用されていない倉庫があり、そこには昼間見た女番長である京子や七絵の姿がまた見られていたのである。
京子「うふふふ。おまえたちこれでみんな本当にあたいの下僕。われわれはそんじょそこらの学校とは違う、ひとあじ力強いグループになったんだよ。」
手下のスケバンもみな、京子の舞った髪の毛先に刺されて妖怪人間と化していたのである。
七絵「ふふふふ。気に入らないと思った者は殺すことだってできるんだから、そのとおりやっちまいな。」
おーっという、一斉にかけ声があげられて、倉庫からうつろな表情をした制服姿の少女たちが次々に京子を先頭に、七絵を最後尾にして列をなして歩いていったのである。
美佐「なんか、みんなのようすが…。」
グループのメンバー全員が、恐ろしい悪魔のもとに行動するようになっていることに、美佐はまだ気づいていなかったのである。
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