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私は高校を卒業後、私は大学の薬学部に進学した。
大学の薬学部に通っていたときに将来、警察官のような仕事に就いてみたいと思うようになった。
具体的に言うと麻薬捜査官の仕事に憧れた。
アメリカ映画にさっそうと登場してくる女性捜査官が格好良く見えたから。
それともっと、強い女性になりたかった。
山本にレイプされて味わった屈辱感を忘れるためにどうしても強くなりたかった。
それには強そうに見える職業に憧れた。
卒業を目の前に控えた時、大学のゼミの教授から政府の厚生局が麻薬捜査官を少数だけど募集しているということを教えてもらった。
私は迷わず応募して採用試験を受けた。
面接のときに試験官から「非常に危険な仕事だけど覚悟はできてるか?」と問われたとき、「どんな危険なことにも立ち向かっていくつもりです。」と答えたことを覚えている。
採用後、拳銃の射撃や逮捕術、捜査技術などの研修を受けた後、関東信越厚生局に配属された。
私は第2課で主に女性容疑者の身体検査、取り調べなどを担当した。
それから数年後、情報官室に配置換えになった。
ここは捜査に必要な薬物関係の情報の収集や分析をするセクションである。
私はここで情報官室のキャップである情報官の指示でエスと呼ばれる情報提供してくれる協力者から情報を貰うという情報収集の任務をするようになった。

あの事件は関東コーポという小さな貿易代理店を隠れ蓑にした麻薬密売組織があるという協力者からの情報で始まった。協力者は吉田恵という女性だった。
恵の昔の友人で鈴木美佳という女性が今も密売組織と関係あるという。
その日は鈴木美佳のマンションの前で情報官室の先輩と張り込んでいた。
昼前に別の場所の調査をしていた調査班から応援の必要ありと無線で連絡があった。
私とバディを組んでいた先輩は「ちょっと行ってくる。もし何か動きがあったらすぐに連絡を入れろ。絶対に一人で無理をするなよ。」と言い残して応援に行くことになった。
私はマンションの前で止めた車の中で監視していたが、数時間後マンションから監視対象になっていた
美佳が出てきた。
そのとき、マンションに車が横付けされたドアが開いた。
そのとき、運転席から一人の男が顔を外へ出した。
(あっ!あれは・・・・・)
間違いない。忘れもしない。あの男は紛れもなく山本だ。
処女を奪われたときの屈辱感が甦る。
あの男だけは許せない。しかも自分たちが追っている麻薬密売組織の人間かもしれない。
もしそうだとしたら何としてもこの手で彼を捕まえたい。山本の車は美佳を乗せた後、走り去る。
本来ならばこの時点で無線によって応援を呼ぶことになっていたのに、私は何としても山本と麻薬組織の関係を自分一人の手で調べたいと思い応援を呼ばず、そのままその美佳が乗った車を見失わないように尾行した。美佳と山本を乗せた車は高速道路に入り走りつづける。
高速を降りた後は海岸線沿いの道路を走り続けた。
(どこへ行くの?)
そんな疑問を持ちながら一定の距離を保ちながら走っていくと山本たちを乗せた車は道路沿いの白い建物の脇に車を止めた。
美香と山本は車を降りるとそのままその建物の中に入っていく。
私は少し離れた場所に車を止めると、車を降りてそっと建物に近づいていった。
建物の玄関の近くにいくと、ドアの前に小さな会社名が書かれていた
表札を見つけので近寄る。そこには「関東コーポ保養所」と書かれている。
(ここだわ)
バッグの中から小型カメラを取り出しその表札を写す。
その時、ふと後ろに何か気配を感じ振り返った。そこには右手にナイフを持った男が立っていた。
「誰だ、お前。そこで何をやっているんだ。美佳の後をつけてきただろ!」と男が叫んだ。
男がナイフを突き出した瞬間、私は男のナイフを持った右手首を左手で掴むとそのまま後ろに捻ると、男は「イテ、テ、テ」と唸った。
男が右手に持っていたナイフを取り上げ、急いでその場から立ち去ろうとしたとき、突然ドアが開き騒ぎを聞きつけたのか中から数名の男たちが飛び出してきて、私は囲まれてしまった。
その中に山本がいた。「どうしたんだ?」
「おいっ!お前は誰だ?」
数人の男達はポケットからナイフを取り出した。
「おとなしく両手を上げろ!」なすすべは無くなった。
私はおとなしく男から取り上げたナイフを持った右手と左手を上げた。
先程、私にナイフを取り上げられた男が「さっきはよくもやってくれたな。可愛がってやるから覚えてろ!」と言って私が右手に握っていたナイフを取り上げそのナイフを私の首筋に突き付けた。
そのとき、山本が叫んだ。「お前、もしかして西条 亜矢じゃないのか?」
私は顔を背けた。山本は私の顎を掴み自分の方へ向かせた。
「やっぱり、そうなんだな。」
「山本さん、こいつのこと知ってるんですか?」
若い男が山本に聞く。
「ああ、こいつのおかげで俺は高校を退学させられたからな。」
「あれは自分が悪いんじゃない。」
私は言い返す。
「あの時、以来だな。痛い目に合いたくなかったら、二度と抵抗はするなよ。お前に聞きたいことがある。ちょっと来い。!」
ナイフを喉もとに突きつけられて抵抗ができない。
もうちょっとで山本と麻薬組織の関係を調査できたかもしれないのに。
悔しいがここは言うとおりにするしかない。
そのまま建物の中に連れ込まれてしまった。
私は建物の中の地下室に連れて行かれた。そこには鎖などが天井からブラ下がっている。
何に使うのか大きな透明の水槽も置いてある。
「ここは女の調教に使用する部屋だ。まさか高校の時の水泳部のキャプテンだった、西条 亜矢先輩をここで調教できるとは夢にも思っていなかったけどな。」
「何が調教よ!ふざけないでっ!」
「あいかわらず、威勢だけはいいな。」
それから私は天井から吊り下げられたロープで両手首を縛られそのまま身体を吊るされてしまった。
両足はかろうじて床に付いていたけど両足首もロープで縛られた。
私の周りには山本を含め5人の男と美佳がいる。
「西条、お前、なぜ美佳の尾行をしていた?」と厳しい口調で山本が詰問していく。
私は捜査に失敗した情けなさと捕まってしまった悔しさで胸が張り裂けそうになっていた。
しかも私のヴァージンを無理やり奪った憎い山本の囚われの身になってしまうなんて。
別の男が私から取り上げたバッグを開けた。
「他人(ひと)のバッグを触らないでよ!」と叫ぶが、男は「お前の正体を調べさせてもらうよ!」
と言いながらバッグを調べていく。
バッグの中から「麻薬司法警察」と書かれた黒い皮製の手帳や手錠、コルトディテクティブリボルバー拳銃が取り出されていく。
「お前、麻薬捜査官だったのかよ!」
男が驚いたように言う。
「ところで俺たちのことを誰から聞いたんだ。誰か俺達の情報を売ったとしか思えない。誰なんだ。」
山本が叫ぶ。
「嫌よ!絶対に言わないわ!」と言いながら顔を横に背けた。
「それでは仕方が無い。どうしても言いたくないのならお前の身体に聞いてやるよ。うんと可愛がってやる
ぜ。」
「女に生まれてきたことを後悔させてやるよ。」
山本たちが口々に言う。
(こいつらに負けたくない。吉田恵さんのことは絶対に何も言わない!)
そう誓う。


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