CHAPTER 03  悪夢(2)



カシャー!カシャー!カシャー!



遠くで何か物音が聞こえていた。

(何の音だろう・・・。)

早川もえみは混濁している意識の中で考える。

(何が・・・何が起きたんだっけ・・・。)

だんだん意識がはっきりしてくる。

(どこかで私、寝ているようだ・・・。)

天井が見える。

その視界に歪んだ男たちの顔が入ってくる。

カメラを持っている。

(は!)

記憶が戻ってきた!

もえみはあらためて自分が半裸状態なのに気付く。

男がそんな自分の写真を撮っているのに気付く。

「・・・いっ・・・いや!!」

もえみは自分の胸と下半身をカメラから隠すように起き上がる。

股間に痛みを感じる。

(ゆ・・・夢じゃない・・・!!)

身体がガタガタ震えだす。

男たちの視線から身体を隠そうとさらに身を縮ませる。

(写真!写真を撮られたの!?)

恥ずかしさで身体が紅潮する。

山田はそんな風に恥ずかしがるもえみの姿も「いいな」と思いつつ、写真を撮り続ける。

「や・・・やめて!もう撮らないで!!」

もえみは山田の手からカメラを奪おうと立ち上がり、手を伸ばす。

「おっと!」

山田は手を伸ばすもえみから身体をそらす。もえみはバランスを崩し、そのままうつ伏せに倒れてしまう。

「早川もえみの処女喪失の決定的な瞬間か・・・。」

ニヤニヤ笑いながら山田が言う。

「親が見たらどんな顔をするんだろうなあ。」

もえみの顔がサーッと青ざめる。

「それとも、学校で配ってやろうか?同級生が見たら、お前で何百回と抜くんだろうなー!」

山田が追い打ちをかける。

「いや!そんな!やめてください!!・・・お願い・・・。」

もえみは胸と下半身を隠しながら応える。涙が止まらない。

「ううう・・・・・・いやぁぁぁ・・・・・・。」

嗚咽する。

山田も花崎もそんなもえみの様子、半裸のまま嗚咽するもえみの様子に興奮を隠せない。特にまだおあずけされている花崎は、下半身が限界にきていた。

「でも、俺たち優しいから、そんなことはしねえぜェ。」

もえみが山田の方を振り返る。微かな希望がもえみの目の中に光る。

「まあ、俺たちのいうことを聞いてくれればだがな!」

山田が言うのと同時に、花崎がズボンを下ろしながらもえみに近づいていく。

花崎の男が隆々と立ち上がっていた。

「ひい!」

もえみは初めて見る男性自身に恐怖し、悲鳴を上げる。

そして、そのまま四つん這いで逃げようとする。

「待てよ!逃がしたりするもんか!!」

花崎が逃げ出そうとするもえみの尻をつかまえる。

「・・・いやああ!!もうやめて!やめてください!!」

もえみが花崎に懇願する。

しかし、既に欲望に流されている花崎にその言葉は届かない。

花崎は躊躇せず自分のモノをもえみの女性自身にいきなり後ろから突っ込む。

「ひゃああ!いたあ!!痛いいいいいいい!!いやあああああああ!!」

先程、処女を失ったばかりのもえみのそこを、花崎は後ろから一気に奥まで貫いた。

もえみの全身に痛みが走る。

「いやああ!いやいやいや!!!」

もえみは痛みに耐えながら首を振り、涙を振りまく。

ずっと待たされていただけに花崎には余裕がなかった。すぐにも、激しく腰を使い始める。

それだけに、もえみは痛さしか感じられなかった。

「・・・やめ!・・・はあ!・・・う!!うううう!!」

貫かれるたびにもえみは悲鳴を上げる。

「おいおい、最初っからそんな激しく行って、どーすんだよ、花崎・・・。」

山田は苦笑しながら、苦痛にゆがむもえみの表情や、今繋がっている下腹部の様子を写真におさめていく。

花崎はもえみの柔らかく、しかしながら締まりのいい女性自身に山田と同様、興奮していた。

(いいぞ、これ!!こんな気持ちのいい女は初めてだ!!)

四つん這いにされたもえみの胸が、花崎が貫く度に激しく揺れていた。

花崎はその胸にも触りたいと感じる。

もえみを後ろから突きながら、その手をもえみの胸に回していく。

「あっ!!!ひいい!!」

胸を触られた瞬間、もえみの中に電気が走る。

「だめ・・・・!!そこ!あああ!・・・おかしくなっちゃうぅぅぅぅぅ!!!」

もえみは胸を捏ね繰り回されるたびに走る快楽の蕾に、翻弄されていく。

また、それにあわすかのように、もえみの女性も滾々と愛液を出し始め、そして膣自身もキュッキュッと花崎のモノをリズミカルに締めつけていく。

(こ・・・これはなんて気持ちいいんだ!!)

花崎はもうもえみの身体に夢中であった。

「あああ・・・!!だめ!だめ!だめぇ!!・・・もうやめてぇぇぇぇぇぇ・・・!!」

もえみが叫ぶ。

体位が変わったせいもあり、山田の時より奥深くまで花崎のモノは達していた。

もえみは最深の奥を突かれるたびに、先程は感じなかった電流のようなものが生じ、もえみの身体の中を駆け巡っていた。

そしてその声も、また少しずつ鼻にかかったように変化し始めていた。

「いやあ・・・あ・・・はああ・・・・う・・・ああ・・・・だめえええ!!」

(こ・・・こいつ、感じている!?)

花崎はもえみを突き上げつつ、そう感じる。もえみの胸を激しく揉みあげる。乳首を捏ね繰り回す。

「いや!・・・だめ!!そこ・・・あ!・・・うんん!!!・・・変になっちゃううう!!」

(やっぱり、こいつ胸を触られて興奮している!!)

花崎はもえみの胸を更に攻撃していく。

「ああ・・・!だめええええ!いやああいやいやいや・・・やめてえええええ!!」

もえみの頭の中はもう真っ白になっていた。

自分でも痛いだけなのか、それとも感じているのか、わからなかった。

ただただ、股間と胸からくる刺激に流されていくだけであった。

山田もそんなもえみの様子に興奮していた。

もえみのもだえる表情に、シャッターをどんどん切っていく。

(花崎め・・・。ただ突いているだけのようで結構やりやがる。)

山田は自分の男が再び鎌をもたげてくるのを感じていた。

「はあああ・・・・!!ひいい!・・・ふうう!あっ!・・・ひいいいいいいい!!」

もえみの声に興奮している花崎に、そろそろ限界が近づいて来ていた。

「う・・・・出る・・・出るぞ・・・!!」

花崎が呻く。

そして最後のストロークをもえみの中に突く。

「ひゃあああああ!!!」

もえみの最深部に花崎のモノが突く。その瞬間、もえみの中がキュウッと花崎を締めつける。その気持ちの良さに花崎は爆発する。

ドクッ!

もえみの中に花崎の欲望が放出される。

「はあ!!あああああああ!!」

もえみの中を熱いものが満たしていく。

もえみの意識が戻ってくる。そして、再び男の精を注がれたことに気付く。

(・・・また?・・・また出されてしまったの?・・・えっ・・・いや・・・・いやあああああああ!!)

絶望感が彼女の中に再び広がっていく。

涙もさらに溢れてくる。

(また・・・またなのね・・・。もう・・・私は・・・私は・・・・・・。)

「うっ・・・・うううううううううう・・・・・・。」

もえみはそのまま泣き崩れる。

そんなもえみを見下ろす山田と花崎。その顔は未だ獣欲に歪んでいた。













弄内洋太は、学校に向け嵐の中を自転車で走っていた。

強風の為、何度も落車もした。

でも、何かが洋太の心の中を突き動かさせ、学校へと急がせた。

(はやく、はやく、もえみちゃんの所に行かなければ・・・。)

そんな焦りの気持ちが洋太を逸らせた。

理由はない。

ただ、彼の親友であり、また、もえみの彼氏である新舞貴志の言葉が、心に引っかかっていた。

「行くな・・・。行くんじゃねェ・・・。」

(あれは、どういう意味なんだ?貴志は何を考えているんだ。)

自転車の上で、洋太はその考えを反芻していた。

(貴志が俺を行かせたくない理由って何だ?)

嵐の中を洋太の自転車は学校に向かって走っていく。













その後、何度貫かれたことであろうか。

もえみはもはや反応を示していなかった。

あまりのつらい現実に精神が耐えられなかったのか、精神を平静に保とうとする本能が動いたか、もえみは失神したままだった。

「ひひひ!最高だったぜ、お前の身体。気持ち良過ぎて、とろけそうになったぜ。まあ、俺たちは優しいから写真をばらまく気はないが・・・でも、その代わりに俺たちに逆らうんじゃねえよ。」

山田がもえみに言う。

だが、もえみにはもう何も聞こえていない。













洋太の自転車が強風にあおられ、倒れる。

(く!・・・・・もう少しだ。ここまで来たんだ・・・。とにかく学校に行かなくちゃ・・・。)

自転車を起こしながら、洋太は学校に急ぐ。



「はあ、はあ、はあ・・・」

洋太の息は完全に上がっていた。だが、学校は目の前だった。

校門の前に自転車を乗り捨て、洋太は部室に向かって歩いていく。

(あそこには悲しそうにうつむいたもえみちゃんがいる・・・・・・。)

部室に近付きながら洋太は思う。

(貴志の事、ひとりぼっちで待ってる・・・。くそ!貴志のヤツ、何を考えてんだ!!)

洋太はプレハブ造りの部室の窓から中を覗き込む。

(もえみちゃん・・・・・・。)

部室の中から洋太の想像を絶する光景が目に入ってくる。

「ん!!!」

床に無造作に落ちた水玉模様のブラジャー、そして白い清楚な感じのショーツ。

(え・・・!!)

洋太の心臓が高鳴ってくる。

そして、スピーカーの影からはもえみの素足が目に入ってくる。

(も・・・もえみちゃん!?・・・まさか!?・・・そんな!!)

洋太の思考回路が一瞬真っ白になる。

心臓ばかりがどんどん高鳴っていく。

ドクン!ドクン!!ドクン!!!

洋太はそのまま自分の心臓が破裂するのではないかと感じた。

「ど・・・どうして・・・うそだろ・・・・!!」

洋太は窓にかじりつく。



ガタッ!



部室の中から物音がする。もえみ以外に誰かが中に入るようだった。

誰が何人ほどいるのかは、洋太の窓の位置からは全くわからない。でも、誰が何人いようと構わなかった。洋太は完全に頭に血が上っていた。

洋太はドアノブに手を掛け開けようとするが、鍵がかかっている様で、開かない。

(ええーい!!ままよ!!)

洋太は力いっぱいドアを蹴飛ばす。ドアがミシッと音を立てる。

(いける!!)

洋太はもう一回、自分の持てる力を全部こめて、ドアを蹴飛ばす。



バカッ!!!



大音響とともに、ドアが壊れ開く。中には二人の男が居た。突然の来訪者に驚いた様子だった。

「5分後に警察が来る!!それまで動くんじゃねェ!!!」

洋太は相手を良く見ず、気付けば啖呵を切っていた。

しかし啖呵を切った後良く見ると、その男たちは、自分よりも体格が良くケンカしても勝てそうにない相手であることに気付く。

(しまった!失敗した・・・。本当に警察に電話しておけばよかった・・・!)

後悔が冷や水のように洋太の背中を流れた。

しかし、男たちの行動は思いの外、弱腰だった。

「お・・・俺は関係はねえよおおお!!!」

臆病な花崎は、真っ先に逡巡している洋太の隙をついて、外へ逃げてしまった。

「あっ、待て・・・!!」

洋太が花崎を目で追いながら、叫ぶ。しかし、花崎はあっという間にいなくなってしまう。

「て、てめェ、どっかで・・・。そーか新舞のダチだなァ!?」

山田も浮き足立っていたが、それでも洋太を見、その正体に気付く。

「あのやろ・・・裏切ったのか!?」

山田が叫ぶ。

「な!?」

もえみを襲ったらしき男から新舞の名前が出てくるとは、洋太は予想もしていなかった。

洋太の動きが止まる。

「いいか!俺たちのこと、しゃべんじゃねーゾ!!テメエのマブもパクられっことになんだかんな!わかったナ!!!」

洋太は山田のその言葉に激しく動揺する。

山田は洋太が動揺している隙に部室から逃げ出していく。

「た・・・貴志が・・・?」

洋太は頭の中が真っ白になっていた。男たちを追いかけることも何もできなかった。

(貴志が?・・・・・・・・・貴志がもえみちゃんを!?・・・し・・・信じられん・・・。めずらしくバンドの練習にもえみちゃんを誘ったのも・・・俺をここに来させないようにしたのも、このためなのか!!・・・そんな・・・どうしてだよ貴志!!どうしてだよ!!!)

洋太はその場に立ち尽くす。

(ま・・・まさか・・・な。・・・警察にチクられたくないからあんな事言ったんだ・・・。貴志がもえみちゃんをこんな目にあわせる手助けなんかするわけねーよ・・・。)

洋太は必至でそう考えようとする。しかし、電話で話したときの貴志の言葉が耳に甦ってくる。

(「行くな・・・行くんじゃねェ!」)

洋太はゆっくりもえみの方に近づく。倒れたままのもえみの状態を知りたかった。

(・・・でも貴志のあの電話は・・・いったい・・・。)

洋太の頭の中で打ち消しきれない貴志への疑惑が膨れ上がってくる。

(もし・・・もしこれがホントなら・・・俺はもえみちゃんになんて言えばいいんだよ・・・。)

洋太はもえみの側まで行き、さらに驚愕する。

「!!」

心臓が激しく高鳴る。

ドクン!ドクン!ドクン!

気を失っているもえみは全裸だった。そしてその股間は開き、中から白い精液と破瓜された証拠である赤い血が流れていた。

洋太は思わず目を背ける。見てはいけないものを見てしまった感覚があった。

(もえみちゃん・・・もえみちゃん・・・・・・・。)

心臓の高鳴りは消えない。その上、身体も震えてきた。頭の中がハンマーで殴られたかのようにズキズキと痛んだ。

洋太はもえみの身体を見ないようにしながら、自分の着ているコートをもえみにそっとかけてやる。

そこまでの行動をしただけで洋太は疲れ切ってしまった。その場に座り込んでしまう。

身体がガタガタ震える。

考えなくちゃいけないことが沢山あった。しかし、考えは何一つ纏まらない。

「どうして・・・どうしてだ!何でこんな事になっちまうんだ・・・。」

洋太は頭を抱え独白する。

「何でもえみちゃんが・・・!!何で貴志が・・・!!」

洋太は叫びだしたかった。だが、もえみがこの場で気付くことも同時に恐れていた。

(でも、このままにしておけない・・・。)

どのくらい経ったろうか。洋太にはその時間は1時間にも2時間にも感じられた。実際は数分だったのかもしれない。心臓の音が少しおさまった時、洋太はもえみをとにかく移動させないとと、やっと考えられた。

散乱しているもえみの衣類を集めもえみの鞄に入れ、もえみには自分のコートを着せ、背中におぶった。

(とりあえず・・・俺の家に連れて行こう・・・。こんな姿じゃ帰すわけにいかないから・・・。)

洋太はもえみをおぶり、部室から外に出た。

暴風はまだ暴れていた。

そしてその中に、雨に濡れながら、洋太の親友である新舞貴志が立っているのを、洋太は見つける。

(貴志・・・。)

豪雨に濡れながら、二人の男が対峙した。













新舞は、意識のないもえみの様子を見て驚いて声をかける。

「どう・・・したんだ?」

その言葉に洋太は腹を立てる。

「とぼけてるのか?」

ついそんな言葉が洋太の口を突いて出る。

「なに!?」

新舞も驚いた様子である。洋太の次の言葉を待っている。

「もえみちゃんはなァ・・・・男たちに襲われたんだぞ・・・。」

洋太は噛み締めるように新舞に告げる。

新舞の目が見開かれる。

「お・・・俺が連れて行くよ。」

新舞が絞り出すような口調で言う。

だが、洋太はその新舞の言葉を無視し、もえみを背負い直す。

「もう・・・もう、お前にはまかせられない!」

洋太ははっきりと新舞に告げる。新舞が黙り込む。その様子が洋太の怒りに火をつける。

「もえみちゃんとまじめに恋愛するって言ったじゃねーか!これは、これはどういうわけなんだよ!貴志!!何でもえみちゃんがこんなになってんだよ!!貴志!!エエ!!」

洋太は怒りを止められない。

「やつらはお前の名前を言ってたよ・・・どういうことなんだ?」

新舞は黙り込む。

「どういうことなんだ!!!」

洋太が叫ぶ。

しかし新舞は黙り込んでしまう。

「まさか・・・あいつらが言うように、お前も・・・グルだってんじゃねーだろーな・・・。貴志!!」

新舞は洋太の視線を外し黙り込んだままだった。

「貴志、何とか、何とか言えよ!!」

洋太が新舞に詰め寄る。

(違うと・・・違うと言ってくれ・・・)

洋太は自分の親友を信じたかった。が、状況や新舞の態度がそれを否定にかかる。

「そ・・・そいつら・・・。俺の名前、言ったのか・・・。」

洋太は新舞の次の言葉を待つ。

「そうか・・・。」

新舞がぽつりとそれだけ言う。

「それだけ・・・?」

洋太は思いもかけない新舞の言葉に絶句する。そして、絞り出すかのようにもう一度言う。

「それだけなのか?」

新舞はそれには応えない。

洋太の目から涙が溢れてくる。親友に裏切られた思いがした。

「俺は・・・俺はお前を軽蔑する・・・。」

雨が激しく二人に叩きつける。



その時、ぴくっともえみが洋太の背中の上で起き上がる。

「!」

洋太も新舞ももえみがどう反応するのか、息をのむ。

緊迫した雰囲気が二人の男の間を漂う。

ゆっくりともえみの目が開かれる。

洋太におぶられていることは意識していない様だった。頭はまだぼうっとしているようだ。

もえみは目の前に立つ新舞を認識する。

もえみの顔が朱に染まる。

「・・・よかったァ・・・来てくれたんだ・・・新舞くん・・・。」

それだけ言うと、ほっとしたのか、もえみはまた気を失っていった。

洋太も新舞も声が出なかった。

洋太はもえみをおぶり直し、新舞の横を通り、学校を後にした。

新舞は激しく雨が降る中、1人佇んでいた。













続く


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