第六章・悲しみの大地グラ

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若い兵士達に犯されつづけるシーマを残し、ラング達はジオルが眠る王の間へやってきた。
昨晩の曇り空とは打って変り今日は綺麗な満月が夜空に輝いている。
その月の明かりに照らされた王の間の壁に小さな鍵穴が現れていた。
「これだな・・・月に照らされた時にしか入り口が現れないとは、こんなちっぽけな国にしては立派な仕掛けだな」
一人関心しながら鍵穴に鍵を埋める。
すると、壁の奥で何やら音がした。
ラングは恐る恐る、目の前の壁を押すと、壁が回転扉のようにグルッと周り、僅かな隙間が出来る。
その隙間の中に大きな身体を丸めて入っていった。
「何だ、何もねえじゃねえか」
金銀財宝の山を期待していたラングにはこの宝物庫の状況はかなりの不満だった。
金貨一枚すら残っておらず、あるものといえば、錆びた鞘に入った剣が一本あるだけだった。
「この古びた剣があの伝説のヤツなのか?」
ラングは疑い半分に鞘から剣を引き抜いた。
すると、外気に触れた刀身は七色の光を放って辺りを眩しいほどの明るさで覆った。
「すげえ・・・本物だ・・・」
ラングの声は微妙に震えていた。
それを見てるシーダとリンダの声も同様に震えている。
「それって・・もしかしたら・・ファルシ・・」
「光の剣・・・ファルシオン・・」
シーダの声に被さるように背後から男の声がする。
振り向くとそこには漆黒のローブを纏った男が立っていた。
「ガーネフ・・・」
そこにはシーダの度重なる苦難の元凶であるガーネフの姿があった。
「光の剣をよくぞ見つけてくれた・・・おとなしく渡せば命だけは助けてやる・・・」
「貴様・・・何様のつもりだっ!この光の剣でぶった切ってやる!お前ら、あいつを捕まえろ!」
ラングの命令にシーダとリンダはガーネフに近づく。
身動き一つしないガーネフだったが、シーダとリンダが近づくと、両手を上げ何やら呪文を唱え始めた。
「・・・これはボーゼンの服従の印か・・・こんな術であの男のいいなりになっていては辛かろう・・・」
そう言ったかと思うと、シーダ達の身体が急に軽くなったような気がした。
何故だかわからないがシーダは自分に掛けられていた服従の印が解かれたことを本能で察した。
「あとはお前だけか・・・素直に言うことを聞いておれば死なずにすんだものを・・・」
「うるせえ!」
両手を振り上げ襲い掛かるラングに向かってガーネフの両手が突き出される。
その両手から禍々しい闇が放出されラングの身体に纏わりついた。
「何だこれは・・・体がうごかねえ・・・」
「暗黒魔法マフー・・・」
リンダの口から思わず言葉が零れる。
ガーネフが使った魔法はリンダの父ミロアが受け継いだ光の最強魔法オーラと匹敵する闇の最強魔法マフーであった。
ラングの身体を覆った闇は無数の魑魅魍魎に姿を変えラングの身体を蝕み始めた。
「ぐわぁぁぁ・・・・」
ラングは断末魔を上げるとそのまま生き絶えた。

「待ってください・・・」
光の剣を手に取り去ろうとするガーネフをシーダは呼び止める。
「お願いです・・私の身体に刻まれたこの印を解いてください」
「あの時言ったはずだ・・・その印を解きたければ我を倒せと・・・」
「はい、それは憶えています。でもあの時あなたは言いました『印を消すには我を倒すか・・・それとも・・・・』と。この印を消す方法はあなたを倒す以外にもあるのではないのですか?」
シーダの問いは無視されるかと思ったが、ガーネフはまるでその質問をされるのを待っていたかのように話し始めた。
「アリティアとマケドニアの国境近くの山奥にラーマン寺院と呼ばれる神竜の神殿がある。そこに祀られてる月と光のオーブを手に入れろ。さすれば印を解くことが出来る・・・」
「ありがとうございました・・」
シーダは憎むべき相手に対して頭を下げた。
そしてもう一つ気になっていることを問い掛けた。
「もう一つ教えてください。タリスであったときあなたは私に『ここで殺すのは簡単だが・・・あいつの言いなりになるのもおもしろくない・・・』と言いました。私は『あいつ』というのはメディウスだと思っていました。でもそれはもしかしたら違うのではないのですか?」
この質問はガーネフも予想外だった。
その証拠に口から「ほう・・」と感嘆の声が漏れた。
しかしその質問には答えず今度こそガーネフは霧のように消えていなくなった。
そして暗い宝物庫にシーダとリンダだけが残された。

続く


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