【揺らめく路】
人馬と西風の月1日 13:30 リド・クジャ山中腹



揺らめいている。
山の頂へと続くリド・クジャの岩面。
そこを行く者たちの視界に映る風景はいつもこうだ。
吹き上がる熱気で寒空に大穴を開ける、炎の山リド・クジャの地熱。
旅行く者を足元からジワリジワリと蒸し焼いてゆく。

「暑・・い」
全身から汗の雫を滴らせつつ、ミュラローアは足取り重げにそう漏らす。
陽炎を立たせるほどの地熱と急勾配の岩の道。
訓練された兵士たちですらきついこの環境だが、ミュラローアはここまでよく頑張って登っていた。

「ミュー姉、もうすぐだから・・」
ミュラローアを先導するのは、既にグロッキーのシアフェルを背負ったソネッタだ。
彼女はミュラローアとは対照的に足取りも割りと軽やか。
子供の頃から培われた遊牧民族のバイタリティが、彼女の最大の武器だった。

「ゴッタバル村まではもうすぐのはずだから、もう少しだけ頑張って!」
ゴッタバル村。
それが今彼女たちの目指している場所の名前だ。
疲労からか朦朧とし始める意識の中、ミュラローアには1つの大きな不安があった。

「ねえ、ソネッタ・・・今更聞き返すのもなんだけれども、オーガたちは本当に危険じゃないの?」
「ん?」
恐ろしい凶暴な巨人族。
ミュラローアの中でのオーガという種族のイメージが、まさにそれだったからだ。
ダノンもソネッタも全く怖気づく事もなく推し進めてきた進路であったため、ミュラローアもここまで大した反論はしていなかったが、この悪環境に指揮官であるダノン脱落という状況がミュラローアの足元に不安の触手となって絡み付いているのだ。

「ああ、それなら大丈夫だよ。オーガの恐ろしさは、人間が作り出した妄想のなせるところだからね」
「・・でも、オーガによって滅ぼされた村の話は複数聞いているわ?」
「それは、人が怖がって先に手を出すからいけないの。オーガを見るなり『化け物だ、退治しろ』とバカやってる人間が返り討ちにあっているだけで、友好的な相手はオーガたちもそれなりの態度で接してくれるはずよ」
数少ない人間が知るオーガの性質。
しかしそこは、ジプシー時代に様々な異種族たちとの交流もあったソネッタだ。
そこら辺を熟知していても、何の不思議もない。
「そういえばね、オーガたちの作るメロドニクっていうスープがあるんだけどさ」
「・・・・・・」
「これがまた美味なの!まあ、シア様のお口に合うかは微妙だけど・・」
「・・・・・・」
「・・・あれ、ミュー姉・・?」

――ドサッ

突如、ソネッタの後方でそんな音。
振り向いた彼女の視界に、力なく地に倒れ伏せる先輩の姿が映っていた。

「ミュ・・・ミュー姉!!」


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