にょきにょき。にゅにゅにゅにゅ〜。
あれよあれよの間に、妖精植物はスクスクと成長しました。
わたしの背丈(人間の女の子の中でもかなり長身です)を遥か超える、不気味植物、爆誕。
妖精植物(センモウチョコゴケ、でしたっけ)は根本から無数に枝分かれして、一本一本が別の生き物のように蠢いてます。
イソギンチャクを思わせる先端から「グヂュウゥ〜」とイヤな音を立てて、粘液が滴たります。
ちょ、こ、怖いんですけど!ちょ、ちょっと育ちすぎでは!?
「ヘイボーイ」「ねるこはそだつです?」「にんげんさんのせ、ぬいたー」「ちょこちょこのよかん?」「あぐりびじねすちゃーんす」
お祭り騒ぎな妖精さんたち、わたしは、唖然。ふふ、ですが、いけてる女というものは、どんな苦難にもエレガントに仕事をこなすものです。
敏腕調停官として幾多のトラブルを解決に導いてきた輝かしいキャリア(自称)が、わたしに冷静沈着な判断と慎重かつ果断な行動を取らせてくれるはずです。
「……んー、とりあえず触ってみましょう♪うふふ」
すみません。わたしとした事がっ。冷静ではなかった次第。
次の瞬間、わたしは後悔先に立たずという先達の金言と己の浅慮を悔い改めてたたたた助けてええぇえええっ!!
わたしの手足が一瞬で幾重にも絡め縛られ、更に無数のイソギンチャクが身体中を這いずりまわるように纏わりついてくるのです。
グジュウゥゥゥ…キシャアアァァ!
「ぴーーーーー!!!」
わたしは絶叫…できませんでした。無数の触手に唇を抉じ開けられ、侵入されたからです。
叫べなかったのは、妖精さんをビックリさせて逃がしてしまい収拾が図れなくなる事態を回避したという意味で、不幸中の幸いでしょうか。そんな風に思っていた時期がわたしにもありました。
口に異物を挿入され、塞がれた口内が触手に蹂躙されます。
ショックと嫌悪で死に物狂いで足掻きますが、触手が舌にねっとりと絡んで成す術がありません。
「あ…くっ、けほっ!むくぅぅぅ!んっ!んぅぅ!らめっ、いゃぁ…ふぁ…ぁ…」
…え?甘い?これは、チョコレートの味でした。まあ、それは経験済みですけど。
とてもとても、甘ぁいチョコが口一杯に流し込まれ、弄ばれる舌が蕩けてしまいそう。
極上の味でした。ふぁ…あぁ…
ごくん。飲み込んだ瞬間、頭がぼーっとかすみ、か、からだが…痺れ…ち、から、が、ぬけ…。
し、しまった!このチョコは飲んではいけなかったようです。
わたしは太らない体質なのでチョコ食べる事に抑止はありませんが、そんなことより!これはけねんすべきじたいですっ。
だめ。だめです!ぜったい…のん…では…。
「んぐっ!んっ!ンッ!ぷはぁ…ごくん」
ごくん。だめぇ…ごくん。やだぁ…ごくん…ごくごく、ぞくん。
喉を鳴らす音に絶望しながら、でもどうする事もできないのです。
「ふぁ…うふあうふふ…ふああああっ」
わたしのからだが、へんです。奥底から湧き上がる、熱く甘く蕩ける、凄まじい衝動が込み上げてきます。
からだの芯がチョコになったように、意識が甘い甘い快楽に染まっていくようでした。
じぃんと痺れる、からだとこころ。わたしから抵抗する意志と能力が消失してしまいました。
(…う…ん)
あまりのきもちよさに、意識がとんでいたようです。
あれ…わたし、どうしたのでしょう?その時。我が胸がわっしと掴まれました。
「あぁぁん!」
触れられただけで快楽の電流が胸から全身を貫き、思わずへんな声が出てしまいます。
《ねーちゃん、濡れ濡れだぜ?繁殖してーのか?》
……え?
朦朧とした目に映る、一人の少年の姿。助手さんです。
わたしより年下の、13歳の男の子。
スクノキの里の調停官事務所所長である祖父の助手ですが、わたしの付き人のように一緒に仕事をしております。
なかなかに可愛らしい、おとなしい子というか無口で存在感が不確定なのですが…。
い、いや、でも…どうして…?この助手さんは、普段と様子が違いすぎます。
「ねーちゃんの胸、まあまあかな。いや、なかなか?こいつはけっこう…お宝?」
さわ…ぴくんっ。助手さんの指が無遠慮にわたしの胸を撫で回してきました。
「んっ…え…なっ!?…ふぁぁ…さ、さわっ、さわっ…?」
し、しばらく反応できませんでしたよ?
いや、さっきから、からだの方はビクビクッと反応しまくってますけど。
助手さんの指先がわたしの胸を責め続けます。乱暴に、でも巧みなその責めは、今まで経験した事のない甘美な衝動を与えてくるようです。
「んっ!やぁ!あんっ、ふぁぁ!そんな、に…っ」
男の子がこ、こういうの興味、ある?というのは理解できますけど…助手さんが…ショックです。
かわいい弟みたいに、その、思ってましたから。
「へへ、ねーちゃん、いい反応だぜ?結構かわいいし俺っち好みだぜ?」
「はぁ…ふぇぇ…あなたを訴えます…むくぅ!?」
抗議するわたしの唇は乱暴に抉じ開けられ、舌が絡み、喉の奥までいいようにされてしまいました。
「……っ」
甘美で濃厚な味。脳が蕩け、そ…う。わたしは必死に五体を踏ん張ります。そうしないと膝が抜けそうだったのです。
キス。すごくディープな。は、初めてのキスですよ?
人類が衰退して滅亡寸前、超少子化のご時世、同世代の異性との交流なんて皆無ですから。
あれ?助手さんはまあ、年下ですけど同世代でしょうか。けど、こんなの、イヤだなぁ…。
羞恥に顔が火照り、つ…と、目から涙がこぼれてました。何故でしょう?
「泣いちゃった?ねーちゃん、ちょっと夢見すぎんなんじゃねーの?」
…そういう傾向はあるんでしょうけどね。
「ま、慣れてきゃいいんじゃねーの?お、乳首も勃ってきたぜ?お嬢様ぶってても、からだはえっちいんだな」
「んまっ!はああん…違い、ますっ!あふぅ!ふぁ…はうぅぅ…」
かあっとなって反論を試みましたが、からだとこころが言う事を聞いてくれません。
「きゃううううっ!!」
胸を揉みしだいていた助手さんの指が、勃起してしまった乳首をくりくりやりだしたのです。
今までより更に強い刺激に乳首から痺れるような快楽が全身を駆け巡ります。
「はああ!ふぁ…あ…んくぅう…っ!!じょしゅさん、やめ…はぁはぁ…」
「ねーちゃん、すげー濡れてるぜ?見なよ!」
…ふぇ?
助手さんの指が、スカートを捲り、その、女性の、大事な箇所をですね…っ
「ねーちゃん、おまんこ濡れ濡れじゃねーか!へへへ」
ソコに触れ、グリグリと弄るいやらしい指先。
「ふにゃあぁぁああああ゛あ゛ん!!!」
ビリビリと甘い電流に理性が焼き尽くされるような快感が駆け巡り絶叫していました。
こんな…こんな…っ
すべてがおかしいのです。助手さんも、わたしのからだも。
抗い難い快楽と虚無感と羞恥そして、わたしの意識が白い闇に沈んでいきました…。
「にんげんさんどしたのー?」「ひとりあそびですかな?」「げんかく、では?」「にんげんさんちょこだらけ」「たのしいかも?」
……え?
朦朧とする意識に、妖精さんたちの声。わたし、いったい…。
そうか、全て、妖精植物の媚薬粘液の幻覚だったのですね。
よかったあ。全部、わたしの妄想だったようです。助手さんと思っていた指や舌は、触手だったんですね、あはは。
……。恥ずかしさで死にそうですよ、わたし。イヤすぎますーーーっ!
状況は悪化していました。触手がわたしの全身をうねり弄び、蹂躙している現実。
絶望的ですね、これは。このままでは、イソギンチャクたちに美味しくいただかれてしまいます!
そ、そうだ、妖精さん、たたたすけてー!
「ぼくらもあそぶですなー」「ちょこのにんげんさん、うまうま?」「ぷれぜんとはわたし」「やはりおかしはにんげんさんにかぎるのです」
……へ?
天才少女で聡明(自称)なわたしは、状況を理解しましたよ、はい。
次はわたし、妖精さんたちにいただかれてしまうようです。
続きます。
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