なぜ人は言葉を解す?
同族の命を無下に奪う事の愚かさに気付いたからではないのか


Please fight! My Knight.
第6章
『死闘(ソウルフル)・カシミアビッグブリッジ』

1、
語り ジャッキー

「んあー?おいジャッキー、ありゃあ…」

 港から本陣への帰還の最中だった。もうすぐカシミア大橋の南を通過する、といった所で、ドラブが馬を止め北を見つめそう語りかけてきたのは。こちらもすぐにそちらを見やる。

「なるほど、やはり来たか」
「異国でいう”後門の狼”…って奴だな!は!」
「まさか、狼騎士団!?」

 ドラブの皮肉に、大真面目に答えるアム。いや、そういう意味じゃなくてだな…いや、とにかく今は。

「後陣の憂いを絶つ!総員、戦闘配置!敵はおそらく」
「へっ…この機械音!油臭さ!間違い無え!裏切り者のいる第11混成部隊!!」
「二代目ロックロック…!!」

 木馬隊の離反者、グルニアの面汚し、そしてザゲットを討った男!!

「新兵ばかりと侮るな!ザゲットの後を追いたくなければな!!展開!!」


2、
語り キャブ

「ロックロック、”ライトニング”モードで前衛待機!牽制は俺とダイトリォで行う!ファーゴは後衛の歩兵部隊に
伝令!急げ、とな!!」

 川の向こうからの先制牽制射撃を受け、俺はとりあえずこの4人でやれる事を判断、”生き残る為に必要な事”を割り出し、皆に伝えた。生き残る…それは隊長がいつも口を酸っぱくして言っている事。戦い慣れない者にとって、最も重要な事。
 俺は木馬用の弓・クインクレインを改造した俺専用の弓、超級長弓(オーバークラスロングボウ)を”組み立て”矢をつがえた。ダイトリォもヘビィクロスボウを構える。ロックロックの”ライトニング”…足は遅いが堅牢さを誇る、木馬本来の姿のモード…をトーチカ代わりにして…

「行くぞ!ダイトリォ!ロックロック!応戦開始!!」

 歩兵隊合流まではもたせてみせる…俺達3人の牽制射撃、受けてみろ!!


3、
語り カメラアイ

 その頃、カチュア1人によって半壊したここ黒騎士団本陣では、セリカを連れてきたイングが出撃しようとしていた。応急処置を受けた騎士の1人が、痛む腕を押さえて問い掛ける。

「イング隊長、よろしいので?」
「あぁ。僕は”あんな事の為にあの女を連れて来たんじゃない”。港に戻る」

 若くも、誇りあるイング。パージ将軍のやり方に疑問を持つ事も頷ける。

「それに、ここを守る意味は無いからな…お前達は動ける者を集めて本城に向かえ。…恥でもいい。生き残れ」
「……そのご命令を聞け、と?」
「そうだ。あの暗黒戦争で、僕達は生き残った。それには運命と意味がある…そうは思えないか?」
「意味があるとすれば…それは、何ですか」

 イングは馬を西に向け、しかし立ち止まって、答えた。

「……グルニア黒騎士団の誇りを体現し、後世に語り継ぐ事だ。そうすればグルニアは真には滅びない」


4、
語り キャブ

「オラオラオラオラーっ!!」

 ロックロックの火炎弾…ファイアーガンが文字通り火を吹く。ファイアーガンは木馬の武装一の連射力を持つからな。俺も負けじと弓を引き絞り、ロングソード並みの長さの矢を放つ。長射程、高貫通力を誇るこの矢だが、連射が利かないのが唯一の欠点か。だが、その欠点を補ってくれるのが、

「そこっス!!」

 ヘビィクロスボウを放つダイトリォ。矢を弓にストックし、それを自動連射する機能を付けたために、通常のボウガンよりも重くなってしまったという弓だが、ダイトリォは俺をフォローする為にあえてその改造を施した。しかし

(どうする…今は牽制合戦だからどうとでももつが、黒騎士団がその突進力でもって攻めに転じたら、この戦力で止めるのは無理だ。歩兵は…ササやホーシ達はまだか?!)

 黒騎士団に限らず、騎兵の戦いの真髄は攻め…それも屋外での突進戦法にある。今は橋の上で少数対少数の戦いになる事を警戒してか、攻めに転じては来ないが…もし先手を打って攻めてこられたら、制橋権を握られてしまう。

(そうなったら、橋を踏破する為に全滅させるかするかの消耗戦になる…犠牲者が出る事は必至!)

 だが、逆に考えれば相手が攻めてこないのは消耗戦を避けようとしているから、とも取れる。戦力が限られているのは、こちらも向こうも同じ…?

(勝機を見いだせるとしたらそこか…だが、分の悪い賭けだな)
「…ブさん!キャブさん!!増援っスよ!!」
「…はっ!?何、増援だと!?」
「ああ、こっちのな!!上を見ろ!!」
「こっち…上?」

ひゅるるるるる…ドズーン!!

 見慣れたドラム缶の落下、見慣れない天馬の羽ばたき…来たか!!

「待たせたキャブ!!ササ、ホーシ、クレアちゃん、そしてこのファーゴ様!歩兵第1陣、到着!!」

 ロバに乗って現れたファーゴ、ドラム缶から出てきたササとホーシ、そして異国の天馬騎士!!

「あたし達の船だもん、あたしも戦わないとね、お兄さん!!」
「…協力、恩に着る!!」

 いける…制橋権を握るなら、今だ!!

「ロックロック、ドラム缶に”黒”を!ササはそれを振るってくれ!ホーシは何でもいい『ウォーム』のチャージ!行くぞダイトリォ!…とクレア嬢!突撃ーっ!!」
「あの…俺は?」


5、
語り カメラアイ

 薄暗い何かの建物の中、その淫らな宴は続けられていた…。

「はぁ…はぁ…はぁ…ぐ、あぁぁっ!!」

グリッ、グリュッ!!

「傷もほぼ癒えた様だな。それに、媚薬の効果も抜群の様だ!」

 喘ぐのは囚われのカチュア、語るのはパージ将軍…痩せた男からの肛虐が終わり、覚えている限り3度目の媚薬塗布が行われ、カチュアはすっかり蕩けきっていた。それもそのはず、3度目の塗布は、腹の傷と共に、裂けた秘裂と菊門に行われたのだから…。

「ふっ…、どうだねセリカ”大使”殿、貴殿が最初から協力的であれば、彼女はこの様な目に合わなかった…」

 パージ将軍は後ろに振り返り、そう声を掛ける。と、そこにはいつ連れてこられたのか、両腕を後ろ手に、そして乳房を強調するかの様にグルグル巻きにされて拘束されたセリカがいた。

「酷い…こんな事が許されるのが、あなた方の騎士団なのですか!?」
「酷い?ふっ…大使殿はこの大陸の歴史に疎いと思われる。この女は…我々黒騎士団に、ドルーア連合にとって裏切り者以外の何者でもない。裏切り者の末路は死…という考えに比べれば、こんな物まだまだ甘い方だと思いますが」

 そう言うとパージ将軍は、カチュアの手足の拘束を解いた。

「さぁ、カチュアよ。お前の本性をお知り合いに見せてやるがいい。お前の欲しい物は何だ?どこにある?」

 カチュアはノロノロとベッドから起き上がると、歩くのに邪魔な下げられたショーツを脱ぎ捨て、パージ将軍の下へと行き…

「オ○ンチン…ここぉ…」

 パージ将軍の腰の前に膝まづいた。

「あはァ…セリカぁ…わらしぃ…オ○ンチンすきなのぉ…コレほしいのぉ…」

 そう言って焦点の合わない瞳のままセリカの方を向き、パージ将軍のズボンのそこに頬ずりをするカチュア。

「カチュアさん……!」

 セリカは言葉を紡げなかった…。


6、
語り カメラアイ

「この狭い橋では多対多の戦闘は不可能と見た!ならば!」
「いや、この橋結構幅広いし」
「第11混成部隊1番槍は、このロバーナイト・ファーゴが引き受けた!!」
「いや、もうとっくに戦闘始まってるし」
「悪いが、俺はサシの勝負で負けた事は無い!!」
「いや、2・3人の小隊同士の戦いだし」
「ふ…俺の駆る馬をただの軍馬だと侮らない方がいい。死ぬ事に…なるぞ」
「いや、お前の乗ってるのロバだし」

 ファーゴの挑発なのか本気なのか分からない(恐らく本気だろう)ボケに、『ウォーム』をチャージしながらツッコむホーシ。そのツッコミにもある通り、戦いは本格化していた。
 戦況は4・6で第11混成部隊側が不利…いや、これでもまだ戦えている方か…だった。何せ、混成部隊側は戦える人間がキャブ・ダイトリォ・ロックロック・ササ・ホーシ・クレアくらいなのに対し(え?俺は?byファーゴ)黒騎士団側は全員が戦闘経験豊富、しかも隊長クラスがジャッキー・ドラブ・アムと揃っている。しかも数は数十騎
ときたもんだ。徐々に徐々に戦線は押されていた。だが、混成部隊側は誰一人として犠牲を出していなかった。

「うおおおおおおおりゃっ!!」

 ササは金のドラム缶に棒(マルチプルタイタンバー、という)を突き刺し、さながらどんな壁でも一撃粉砕しそうな黄金の巨大ハンマーとしてふるっていた。中に入っている”黒”がよい重りとなり、回転力が遠心力となって破壊力(ゲージは3本消費しない)を生み出していた。その一撃を受けて行動不能とならない軍馬など、いない!!

「チッ…おとなしくチャージはさせてくれないか!」

 『ウォーム』の書(ホーシが帯状に書き換えた物)の1本を握り締めるホーシの所にも、黒騎士が襲いかかる。ホーシはよけるのに精一杯だ。と、その時!

「デビット・カッパーシールド!!」

 騎乗槍の一撃を真正面から銅の盾で受け止める影。ファーゴだ!ファーゴは何かにつけて今一つだが、ただ1つ、誰にも負けない特技を持つ!それが、

「俺の仲間に手ぇ出す事は、俺の目の黒い内は許さねぇ!!」

 己を守り、仲間も守るという事!!その点に関して、ファーゴの盾捌きの右に出る者はいない!!そして重装歩兵と違い、ロバの機動力がある。そして彼の根性の強さが、こうやって割り込む事を可能にする!!

「ありがとよ、ファーゴ!チャージ完了!!」

 チャージしていた『ウォーム』の書が光を放ち…ホーシはそれをVの字型に折り、胸に付ける!!

「いくぜ、『ウォーム』・超ォ絶!ビートルブレイザー!!」

 そう叫ぶと同時に、Vの字型に折られた『ウォーム』の書が塵と化し、ホーシの胸の前から何十何百というカブト虫が前方に飛び出す!!凄まじい勢いで飛ぶカブト虫の体当たりは、何十何百という石つぶてを食らわされているのも同じ!少しずつ、少しずつ、戦線を押し返していく!

「お兄さん達、やるぅ!!よーし、あたしも久々の対人戦!張り切っちゃうもんねっ!!」

 そしてクレアのターン!クレアの上級天馬・イリューは、カチュアのアクアに比べ突進力がズバ抜けて高い!故に

「どいたどいたどいたどいたーっ!!」

 単純な真正面からの突撃が、シンプルに強い!さしずめ白い矢と化した彼女を捉えられる者など、そうはいない!
 キャブ・ダイトリォ・ロックロックの牽制で足を止め、突撃してきた敵をファーゴがいなし、ササが屠り、隊列が固まった所にホーシの『ウォーム』の広範囲攻撃にクレアの直線突破!これが第11混成部隊戦闘班の戦いの型!!
(クレアはピンゾロの穴を埋める嬉しい誤算だが)

「よしっ、このまま押し返すぞ!!」
「「「おおーっ!!」」」

 キャブの号令に熱くなる面々。このまま勝負の行方はわからなくなる…と、皆が思っていた。だが、

「キャブさん!上!あれ!!」

 ダイトリォの指摘に上を見るキャブ。

「なっ…どういう、事だっ!黒騎士だあああああああん!!」


7、
語り カメラアイ

 話はほんの少しだけ遡る。カチュアが堕とされ、セリカが連れてこられたある場所での話だ。

「んちゅ…ちゅば…オ○ンチン、臭くて…おいひい…おいひいよう…はむっ…」

 まるで熱病に浮かされたかの様に、カチュアはパージ将軍の一物をしゃぶっていた。ただ、その一物は全く反応してはいなかったが…。

「フン、下手くそが…」

 一生懸命なカチュアを見下すパージ将軍。だが、その様子を見ていた2人の黒騎士は違った感想を持った様で…

「おお、すげぇ…あのカチュアが何てぇ淫れっぷりだ…」
「きゃきゃ、俺のもしゃぶらせてぇ…」

 2人は再び反り返った肉棒をカチュアの方に向けてシゴキだす。そして白濁液がカチュアに降り注ぐ。カチュアはその洗礼を受け、光悦とした表情になった。

「あぁ…いいよお…きもひいいよぉ…」
「将軍!こんな事、今すぐ止めさせて下さい!酷すぎます、止めさせて!!」

 未だカチュアにしゃぶらせ続けるパージ将軍に詰め寄るセリカ。その様子を見て、パージは強気に提案した。

「では大使殿、我々に協力願えるかな?無論、全軍をもって」
「そ、それは……っ、それは……」

 セリカは言葉に詰まる。どう、すればと。と、その時だった。

「ふぇふぇふぇ…朝から精が出ますなぁ、将軍」

 1人の年老いた男が入って来た。その格好から察するに、カダインから着いてきた魔道士か僧侶の崩れ、だろう。

「貴様、たしかヴァイス…とか言ったな、崩れが何の用だ?」
「ふぇふぇふぇ…なぁに、わしの占いで面白い物が写りましてな…『ウォッチ』」

 ヴァイスと呼ばれた崩れは、なぜか上級魔法の『ウォッチ』を使ってみせた。この男、『ウォッチ』の杖は使えるが、治療の杖が使えない崩れであった。その『ウォッチ』で写された光景は、カシミア大橋での戦闘だった。

「ロックロックの木馬…第11混成部隊か!!」
「ふぇふぇふぇ…わしは名前までは存じませぬ。が、この状況…よろしくありませぬなぁ…」
「まどろっこしい言い方はよせ。どうすればいい?私も行くべきか?」
「ふぇふぇふぇ…心配無用でさぁ。その女騎士を使えば…”右手に『ウォッチ』、左手に『イリュージョン』”…」

 そう言うとヴァイスは、右手に魔法を発動させた杖を持ちながら、左手で別の魔法を発動させ…しかもそれは

「『イリュージョン』!?まさか、それはバレンシアの白魔」
「合成、”『キネマ』”!!」

 セリカの驚きなど気にせず、ヴァイスは2つの魔法光を合わせる!!…この男、本当に崩れなのか?!

「ふぇふぇふぇ…これでいい。これで奴らの勝ちは無くなった…」
「お前、何を!?」

 状況の掴めないパージ将軍がヴァイスを問い詰める。

「ふぇふぇふぇ…なぁに、敵部隊にお仲間の今の状況を伝えてやったに過ぎませんて。では、わしはこれで」

 そう言ってこの場を後にするヴァイス。パージ将軍は後を追ったが、すでにその姿は消えていた…。


8、
語り カメラアイ

「こいつぁ…使えるが、ヤっちまったな…将軍」

 頭を抱えるジャッキー。押され気味の戦線をどう巻き返すか、それを思案していた所に突如現れた映像。パージ将軍らが、敵部隊の一員である天馬騎士カチュアを人質に取り、陵辱している場面。第11混成部隊に動揺は走るだろうが…だが、誇りある騎士の戦い方では、すでに、ない。

「じゃあどうするよジャッキー?相手の手出しを封じておいて、退くかぁ?俺様は嫌だぜぇ?」
「そうですね。将軍のやり方の是非を問うのは、生きていればいつでも出来ます。ですが今は、敵に背を向けて斬られる憂いを絶つ方が先決かと」

 徹底抗戦の構えを見せるドラブとアム。ジャッキーは頭を掻く。

(ドラブもアムも、戦いを続ける気だ。それも一つの道だ。もう、卑劣という烙印は押されてしまった。どう取り繕おうが、取り返しはつかない。ならば生きて事を成すか?!…くっ!!)
「……全軍、突撃!!敵・第11混成部隊は混乱のさなかにある!この機を逃すな!行けーっ!!」
「そうでなくっちゃいけねぇやぁ!!!ドラブ隊、行くぜぇ!!!」
「ホースメン隊、戦線に合わせて前進を!」

 総攻撃を仕掛ける黒騎士団…それを食い止める手段は、キャブ達に、あるのか?!


9、
語り カメラアイ

「奴ら…やる気か!!知った上での事か!!卑劣な!!」

 キャブは悪態をつく。今の今まで黒騎士団は、最後の一線を…誇りにかけた戦いをするという縛りを…捨てない、という読みがあった。だが、それはもっとも汚い形で破られた。副隊長を人質に取り、あまつさえ陵辱を加えるという、卑劣極まりない現実で。

「どうするっスか?キャブさん!!」
「……各員、己の身を守る事を第一に考えろ!!場合によってはこの場…退くぞ!」
「そんな、キャブさん!!」
「命令だ、ダイトリォ!!」

 キャブはダイトリォの言いたい事はわかっていた。退けば、足の遅い歩兵が犠牲になる。副隊長1人と引き換えに…それが我慢ならないと。だが、この隊員達の間で動揺が走った状況で、勝ちはおろか、今の戦線を維持するのも難しいだろう。

(せめて、ピンゾロ隊長が居てくれれば…っ)

 まだ、兵士になって1年程のキャブ。いくら腕が立とうと、こういう時に甘えが出る。非情になりきれない。今無い希望に、望みを託そうとしてしまう…。と、その時!!

キイイイイイイイイイイン!!

 耳鳴りの様な音、独特の魔法光…『ワープ』の魔法だ!そして、その中心にいるのは!!

「皆、すまん!遅くなった!!」
「「「ピンゾロ隊長!!!」」」

 無かったはずの希望…切り札が、現れた!!


11、
語り カメラアイ

 さて、その頃ここマケドニア南方の基地では…

「パオラさん!?…本当に、パオラさん?」
「はい。お久しぶりです、エリス様」

 夜中の内に娼館を抜け出したパオラが、人目を避けながら北上し、ようやくこの基地に着いていた。それを出迎えたエリスは驚く。それもそのはず、まず髪がカチュア並みに短くなっていたし、てっきり城で軟禁されているものとばかり思っていたのだから…。しかし、声は間違いなく本人のそれだった。

「私自身、何がどうなってこうなったのかわかりませんが…色々ありまして、この南の港街で娼婦として働かされていた所を、この基地を預かる部隊の隊長だというピンゾロという方に保護していただきました」
「ピンゾロ隊長が?…そうですか。ではパオラさん、今すぐ私と一緒にアリティア城に戻りましょう。この件、早く手を打たないと大変な事になってしまいます。…安心して下さい。私は、あなたの味方ですから」
「…ありがとうございます…エリス様…ううっ…」

 …パオラは久しぶりに大粒の涙を流した。副隊長を務めているという妹には会えなかったけれど、まさにこうして地獄に仏に出会えたのだから…。

「では皆さん、私達は一旦アリティアに戻ります。隊長が帰ってきたら、このエリスが確かにお預かりした、とお伝え下さい。……『ワープ』」

 エリスとパオラが魔法光に包まれ…やがて消えた時、残された隊員達は一斉に話し始めた。

「隊長、あんな色っぽい娘と一晩あんな事やこんな事を!?」
「隊長は胸当てフェチだからな…恐らく、あの今にもはじけ飛びそうな胸当てで色々えろえろ…」
「ぶふっ!!(鼻血)」
「しかもあの美人、副隊長のお姉さんだと!?」
「という事はあれか?姉妹丼というやつか!?」
「かーっ!!うまやらしすぎるぜぇーっ!!!」
「なんだよ馬ヤラシイって!?」


12、
語り ピンゾロ

 魔法光から出るや、すぐ私は上空を見上げた。そこに写っていたのは…副隊長。待っててくれ、すぐ、助ける!!

「状況は大体掴んでいる。ロックロック、副隊長の居場所はわかるか!?」
「恐らく、奴らの本陣近くのラーマン寺院!!」

 ラーマン寺院…エリス様やガトー殿に聞いた事がある。あの、川の向こうの廃墟がそうなのだろう。

「よし!この状況を打開する為、私は副隊長を助けに行く。ロックロック!ササに”黒”と”赤”を!ササ!マルチプルタイタンバーは?」

 雨の様に降り注ぐ矢を、”相棒”を包んだ革布(私はABC…アンチブレードコーティング…ストールと呼んでいる)によるカバー・テンペストで振り払いながら、私は矢継ぎ早に命令を下した。

「”黒”はもう仕込んである!”赤”は今暖めている所!あと1分半!」
「マルチプルタイタンバー、準備完了」
「よし、ホーシ!”蛾”チャージ!ファーゴは”盾”で時間を!キャブ、リビングフォートレスで露払いを!」
「了解した、隊長!リビングフォートレス、突破出来る物ならやってみろ!」

 言うや否や、キャブはオーバークラスロングボウをバラし、鞭と棒に分ける。この弓の弦は金属でできている。かすれば鋭利な刃物の様に対象を刻む!いわば鞭状の剣だ!そして鞭の洗礼を掻い潜って来た者には、金属の棒の洗礼が待ち受ける!この状態のキャブは、中距離と近距離をカバーする、まさしく生ける要塞となる!!

「OK、バリバリ稼ぐぜ!デビット・カッパーシールド!アーンド虎の子、タッティジュニア・タワーシールド!!ここは通行止めだ、通さねえぜぇ!!」

 ファーゴの虎の子、タッティジュニア・タワーシールドはただのデカイ盾ではない。愛ロバへのリビングフォートレスのアンラッキーヒットを防ぐ役割を持ち、更に盾を横にする事で超ブ厚い鉄板にする事ができる!この時のタッティジュニアを貫き通せる武器など、皆無!!

「……チャージ完了!一・撃・必・倒!『ウォーム』・モス落とし!圧せよ!!」

 敵の全軍進軍と、こちらの抵抗によって橋の上に固まった部隊の頭の上に、『ウォーム』の書をマフラーの様に巻いたホーシが召喚した空を覆う超巨大毒蛾が1匹、落ちる!!前も後ろもつかえた部隊には逃げる事はできず…結果、その勢いと重量に耐えられなかった橋ごと川に落っこちる!!

「”赤”完成!受け取れササ!『ファイアクリスタル』!!」

 橋が陥落すると同時に大半の騎士が流され、こちらへの攻撃手段を失ったに等しい黒騎士団。”赤”こと『ファイアクリスタル』…ファイアーガンで極熱に熱した鉄球…完成までの時間稼ぎも楽になった。ロックロックは、それをストーンヘッジに載せ、ササに向かって射出する。どれ、私もドラム缶に入るか…。

「マルチプルタイタンバー、コネクト!鉄は熱い内に打てってな!『ブラックオニキス』点火!『ムーンストーン』発射ぁ!!」

 ファイアクリスタルをマルチプルタイタンバーで突き刺し、受け止めたササは、ラーマン寺院方面に向けて切り離しておいたドラム缶の底を、それで思いっきり殴る!すると”黒”こと『ブラックオニキス』という火薬の塊が急激に熱され、爆発する!その爆発の勢いは、中の底板を勢いよく弾き飛ばし、底板に乗っていた私を飛ばす!! 

月、光、ざあああああああああああああああああああああん!!!

 私は飛んで行く。凄まじいばかりの空気の抵抗を、月光斬で斬り開きながら。一路、副隊長の待つ所へ!


12、
語り ジャッキー

「なんってぇ野郎だ…流れを一気にひっくり返しやがった…」

 ドラブが呻く。

「非常識極まりない…ですが、敵ながらあっぱれな戦術です」

 アムが唸る。

「我々は負けたかもしれませんね…この一戦」

 合流したばかりのイングが呟く。

「打つ手は…無い、か!」

 そして俺は…白旗を掲げた。たった一人、たった一人加わっただけで…何てザマだ!奴ら、雑魚なんかじゃない!祭壇の守護を任されるはずだ!俺達は、とんでもない奴らを敵に回してしまった…。

「我らの夢…破れたり…許せ…グルニアの民よ…」

 奴らは小船で川をわたってきた。下手な抵抗はすまい。将軍…あんた、愚かだぜ…。


13、
語り カメラアイ

「さて…大使殿、大切な盟友の純潔を”再生したいとは思わんかね”?」

 そう言うとパージ将軍はセリカに、1本の薬瓶を見せた。
 
「これはユグドラルという大陸で出回っている傷薬でね…いかなる深い傷をも一瞬で治す事が出来る。毒も消せる。
これをいかに使うか…その為にはどうしたらいいか…想像に難くないと思われるが」
「私に…どうしろと?」
「これが最後だ、大使殿。私はこの薬を今、ここで捨てる。それが嫌なら…」
「くっ……カチュアさん……アルム……皆……わ」
「わ?」
「わ………わかりま……し」

グワシャーーーーーーーーン!!!!

 セリカがパージの脅しに屈しようとしていたその時、壁が崩れさる音が室内に鳴り響いた!そして、土煙の中から現れた人影は…!!

「副隊長!!助けに来たぞっ!!!」
「貴様は!!混成部隊のっ!!何をボーッとしている!やれ!!」

 小太りの騎士と痩せた騎士に命令を下すパージ。2人は剣を持ってピンゾロに襲いかかる。が、

「貴様らかっ、副隊長をこんな目に合わせたのは!?許さん!!頼むぞ”相棒”、跳ね返るなよ!!」

 ピンゾロはデビルソードを構えると、小太りの騎士を横薙ぎの月光斬で一閃!その反動を利用した返す諸刃で、痩せた騎士をも横薙ぎの月光斬で一閃!名付けて、

円月連(ムーンリングリンク)!!

 2人の騎士が真っ二つになると同時に、パージが大剣を持ってピンゾロに襲いかかる!!

「我が名は黒騎士団団長パージ将軍!ピンゾロ、勝負!!」
「名前を知ってもらって光栄だ、とでも言うと思ってか!悪党!!」

カキィィィィン!!

「うぐっ!!」
「”愚”ッ!デビルソードの”呪い”が発動したか!」

 デビルソードの”呪い”…それは、デビルソードの刃で「何か」を斬りつけた時に発動する。本来「何か」に与えるはずの傷を、使用者に跳ね返すのだ。それは生物・非生物関係なく起こる。今回は、パージの大剣を受け止めた時に、大剣に与えるはずのダメージがピンゾロに跳ね返ったのだ。
 ピンゾロは背中に痛みを感じていた。だが、こんなものは

「副隊長の痛みや苦しみに比べれば…!!」
「やせ我慢ま良くないな、ピンゾロ!!」

カキン、カキン、カキィィン!!

 パージはデビルソードの呪い狙いで、あえてピンゾロに攻撃を連続で受け止めさせる。2度、3度とピンゾロに呪いがふりかかってくる…。

「まだ…まだだぁっ!!」
「これで…終われぇっ!!」

 パージは大上段からの脳天唐竹…を狙うと見せかけ、刀身を切り離しバスターダガーでの突きを狙っていた…が、ピンゾロの脳内の賽の目が、ピンのゾロ目をはじき出す!!

月光斬!!

「…終わりだ、パージ」

 …パージは、バスターダガーを出すまでもなく、その全身を真っ二つに斬り裂かれていた…。

「あの世で基礎からやり直して来い!」

 ピンゾロは痛む身体を引きずりながら、カチュアの元へと歩み寄って行った…。


14、
語り ピンゾロ

「おい、副隊長!しっかりしろ!!」

 私はぐったりした状態の副隊長を抱きかかえ、揺さぶった。これで気がついてくれればいいが…。

「…あ……たいちょお……」
「副隊長!…すまん、私が不甲斐ないせい…で…?おい!副隊長!!」

 副隊長はモジモジとふとももを擦り合わせながら、私のズボンの社会の窓に手を添えてきた。

「たいちょおのオ○ンチン…ちょおだぁい…」
「オ○ン…(ブフぅっ!!)」

 …失礼。あまりの色っぽさに鼻血が…では無い!!どういう事だ?奴ら、副隊長に何をした!?

「あ、あの…カチュアさんの部隊の隊長さん、ですか?」

 と、副隊長の近くにいた赤い髪の女性が話しかけてきた。拘束されている所をみると…敵ではなさそうだ。

「え、ええ…貴女は?」
「私、バレンシア王国親善大使、セリカと申します。カチュアさんは、彼らに媚薬を盛られたのです。そして、この薬瓶がその解毒剤で…あの、この戒めを解いてもらってかまいませんか?…私が、カチュアさんの治療を行います」
「なるほど…(たしかに女同士の方がいいよな…)わかりました。縄を解きましょう」

 私はデビルソードで彼女…セリカ殿の戒めを切った。さて、治療の間、この寺院を見て回るか…捜し物の手掛かりがあるかもしれんし、な。


15、
語り カメラアイ

「せりかぁ…からだがあすいのぉ…」
「その感覚は神経疾患の一種です。治し方は私が知っています。私に身を任せて下さい…」
「うん…せりかがそおいうならそおするぅ…」

 何か(色んな意味で)ヤバいやり取りが、ここラーマン寺院跡の一室で行われていた。セリカは、カチュアのふとももに手をやり、これを開かせる。

「うん…ここぉ…ここがいひばんあすいのぉ…」
「はい、わかりました。わかってますから、ね」

 まるで子供をあやすかの様に語りかけ、ソコをいじろうとするカチュアの手をどかせるセリカ。

「お薬を塗れば、すぐに楽になりますからね」
「おくすりぃ…おくすりすきぃ…きもちいいのぉ…」

 カチュアはお薬=媚薬傷薬、と思っているらしい。セリカは悲しくなり、一刻も早くカチュアのソコへ薬を塗布しようと…して、止まった。秘裂からトロリと垂れてきた精液が気になったのだ。

「…カチュアさん、お薬の前に、ちょっと…」
「なにぃ…はやくシてぇ…」
「はい…早く、しますね」

 裂けた膣、そして直腸。それらの傷を癒すのに、精液は邪魔になる。もし、傷が癒えたとしても、それが中に残っていたらどうなるか…答えは、1つだった。セリカはカチュアの股を大きく広げると、その部分に口を付け、吸い出し始めた。

じゅるっ、じゅるるるっ!!

「ふあああああああっ!!いい、それいいよぉ…せりかぁ!もっとぉ!」
「…ぺっ!!はい、もっと…奥まで、吸い出しますね」

じゅるるっ!!じゅる!じゅるるるっ!ずっ!!

「はああああん!ふあぁぁあんあん!!イク、イクぅ!!イクイクイクぅぅぅぅぅ!!あ、ああああ…」
「…ぺっ!!はぁ、はぁ…終わりです。次は、お薬を…」

 絶頂を迎え気絶したカチュアを、セリカは熱を帯びた瞳で見つめていた。そして薬を秘裂にトプトプとかけると、指を使って両穴の内部まで塗りこんでいく。

「……これで、大丈夫なはず…カチュアさん、ごめんなさい…」 


16、
語り ピンゾロ

 歩いても歩いても、目に入るのは荒らされきった寺院の跡。

「歴史的建造物も、戦争の前には脆いという事か…」

 これでは、捜し物はおろか、その手掛かりすら見つかりそうに無いな…と思った、その矢先だった。風が、不自然に吹いているのが分かったのは。

「こういう時は十中八九、隠し部屋が…ここか?」

 床の埃が他より少ない場所があった。誰かが頻繁にここに来ていた、という訳か…?あやしい。

ドンドン、ドンドン…

 辺りの壁を叩いてみる。もし隠し部屋などがあれば、音が違ってくるはず。そう、音が…

『ひぃっ!だ…誰?』

 …音が…いや、子供の、声?私はデビルソードを構え、叫んだ。

「音のした壁から離れろ!斬る!頼むぞ”相棒”、跳ね返るなよ!」

月光斬!!

 ガラガラと、音を立てて崩れ去る壁。やはり、隠し部屋があった。そして、そこには…

「あなた、誰!?」
「おじさん…悪い人?」

 2人の子供がいた。どういう事だ?山賊か何かに誘拐された…とかか?

「…私はピンゾロ。統一アリティア軍第11混成部隊隊長だ…わかるかい?」
「アリティア軍…!来てくれたのね!」
「お願い、隊長さん!お父様を助けて!許してあげて!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、話が見えないんだが…」


17、
語り カメラアイ

「港を見てきたよー。敵さんは全員撤退、船の皆はセリカとリュート以外無事だったわ」

 空からクレアの明るい声が木霊する。そして陸のキャブ達は、生き残った4人の騎士隊長と、その他の生き残りを拘束し、事情を聞いていた。

「では…副隊長を拘束し、人質に取ったのは、お前達の将軍の独断なのか?」
「信じる信じないはそちらに任せる。だが、俺達はあんな真似は認めていないし、その場にいれば止めさせた」
「…わかった。俺達は信じよう。だが、事実かどうかの判断は法廷でなされる。それを忘れるな」
「…恩に着る」
「けーっ!あのロックロックがいる部隊だから覚悟はしてたが…なかなかどうして話せるじゃねーかよぉ!」

 ちなみにロックロックは、例のごとくドラム缶を被せられている。

「話は戻るが…お前達は旧グルニア王家のユベロ王子とユミナ王女を確保し、元国王に対し独立を進言した?」
「ああ、そうだ」
「王子と王女は今、何処に?」
「わかりません。パージ将軍だけがその居場所を知っています」
「だからお前達はパージ将軍の命令に逆らえなかった、と?」
「逆らえなかった、というのは語弊があります。実質は逆らい辛かった、というべきでしょう」
「でなければ『その場にいれば止めさせた』なんて言えないからな。矛盾が生じる」

 さて、どう見るか?嘘をついている様には見えないが…と、キャブが思案していた時。

「おーい、水と食べる物を用意してくれ!神殿の中で子供が2人いたんだ…が?」

 事情をよく知らないピンゾロの声に、キャブは「こちらからか…」と思うのだった。


18、
語り ピンゾロ

「ふむ…事情はわかった。あの神殿にいたのは本物のユベロ王子とユミナ王女なのだな…よし、ロックロック。木馬の”プラズマ”モードで一っ走りグルニア城まで行って、2人は我々が保護したと言って来てはくれないか?副隊長は…まだ、本調子じゃないからな」
「わかったぜ!」
「いいか、くれぐれも戦闘行為は行うなよー?…って、もう行ったか」

 ロックロックは高速移動用”プラズマ”モードで走り出す。行く先も分からぬまま…なんて事は無い、よな?

「さて…諸君らの処遇だが…本当に軍事法廷に立つのだな?」
「ああ。そして我々の言い分にも一理あった事を世間に伝える。そのためならこの決意、決して無駄にはなるまい」

 そうか…彼らは彼らで、主義主張があったのだな、と改めて思う。

「……(ぼそっ)国家統一の闇、か……」
「隊長?」

 ホーシが怪訝な顔で訊ねてくる。…っと、いかんな。

「いや、何でもない。ロックロックの帰還次第、帰るぞ。後の事は狼騎士団に任せよう。今日は疲れた」


19、
語り カメラアイ

「『エルサンダー』3、エレクトリックバイパー発動…」
「行っくよー!ココノちゃん命名、『電蛇荘園(でんじゃぞうおん)』はっつ動〜!!」

 双子の魔道士、イルルとミルルの電撃魔法が今朝方地面に埋めた鉄線を伝い、騎士達を感電死させる!

「遮刃軟央(しゃじんなんおう)…瞬観零(しゅんみれい)、旋風転刃(せんぷうてんじん)乱風(らんぷう)!」

 騎士達に取り囲まれた異国のプリースト・ココノが、凄まじい速さで動き、騎士達の武器をはねとばし、その武器
で持ち主を貫いていく!

「ダンスの基礎がなってませんわ…それ、脚を捌いてアン・ドゥ・トロワ!」
「たたっ斬るたたっ斬るたたっ斬るっ!!全員まとめてたたっKILLっ!!」

 シャリルが舞う様にスリープの剣で次々と騎士を斬り眠らせ、片っ端からシリアが勇者の剣で止めをさしていく!

「………」

 ミーナがいつもの異国語も無く、ひたすら無言で勇者の弓を引き、騎士達に命中させる!

「大将格部隊、発見。レイミア、頭は任せる」

 ネネが事務的に淡々と、頭…マケドニア南の港に赴こうとしていた狼騎士団のビラク…の取り巻きを、キラーボウで射抜いていく!

「な…馬鹿な、この数が全滅だと!?」

 狼騎士団ビラク隊、総勢40名。しかし、レイミア傭兵隊によって、その内39名が討ち倒されていた。

「ボウヤがこの騎士団の頭かい…運が無かったねえ。悪いけど、この地獄のレイミアが狩らせてもらうよ」
「ふ…ふざけるな!俺とてパラディンの一人、得体の知れぬ傭兵などに!!」

 ビラクはレイミアに向かって突撃する。傭兵隊は誰も動かない。そう、”レイミアも動かない”!!

ドズゥゥっ!!

 ビラクの銀の槍が、レイミアの胸を貫く。槍を伝わる…赤い血と、白い液体。だが!

「ク…ククク…まただ。まぁた、地獄に行きそびれちまったよ」
「な…っ!!」

 槍は確かに、レイミアの胸を貫き、背中まで貫通していた。が、”レイミアは平然と生きていた”!!

「いーい腕だったよ、ボウヤ…だが、まだ届かないねえ!!」

 レイミアは槍が突き刺さったまま、その槍を深く深くその身に沈めさせていく。そして、驚くビラクの手元まで行くと…

「さよならだよ!!」

 銀の大剣を一閃!そのまま、力を失ったビラクの手から槍をひきたくると、その槍を一気に引き抜いた。そんな事をすれば血が吹き出す…と思いきや、その傷跡は見事に消えていた。

「こんなもんでどうだい、クライアント!!」

 大空に向かって叫ぶレイミア。そして空から現れたのは、あの長い緑の髪の天馬騎士…。

「合格よ、レイミア傭兵隊。さて、あなた達に頼みたい仕事というのはね…」


第6章
『死闘(ソウルフル)・カシミアビッグビリッジ』 終わり

次回、Please fight! My Knight.
第7章
『三月兎の鍵尻尾』に続く

炎の御旗。悪魔の剣はその明(あか)を受けて煌くか?


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