大学生北奈


 
 私の名前は、邦楽(ホウガク)北奈(ホクナ)。

 早くに父親を亡くし、母親と三人の妹だけで暮らしてきた。

 それなのにそいつは、いきなり現れた。

 お金を稼ぐ為にお母さんがパートと家事をしに行っていた小説家。

 驚く事にいやらしい小説を書いているのだ。

 そんな人の所で仕事をしていたお母さんの苦悩が思われる。

 今日、外食と言われて家族全員で来たのがそいつの屋敷。

 いくら目の前にテレビでしか見たことが無いようなご馳走を並べられても、東奈や西奈みたいに目を輝かせては、いられない。

 私があの男に疑いの眼差しを向けている中、お母さんが衝撃告白をする。

「突然だけど、先生と結婚することにしました」

「嘘?」

「信じられない!」

「いつ決まったの」

 妹達の驚きは、当然だ。

「お母さん、いくらなんでも突然過ぎます。それにその男は、信用出来るのですか?」

 私が睨むとその男は、苦笑した。

「無理だろう。だが、君が抱えている不安には、答えをだそう」

 ふざけているの?

 しかし丁度良いキッチリと問い質し、化けの皮を剥いでやる。

「貴方は、本当に母の事を愛しているのですか?」

 小説家でどんなに上手い話を作ろうと私は、騙されない。

「愛していない。結婚するのは、お互いの性欲を満たすためだ」

 一瞬固まった。

「性欲って何?」

 西奈な純粋な質問。

「三大欲求の一つだよ。子孫を残すために人も異姓とエッチな事をしたいと言う欲求がある。ただし俺は、大食い王みたいな節操が無い性欲で、君らのお母さんのは、君らのお父さんへの操をたてていた事でたまっていたそれの解消だ。お互いの性欲処理に都合が良いから結婚するんだ」

「ふざけないでください!」

 私が机を叩く。

「ならば聞こう。君らのお母さんの亡くなった旦那への愛情がぽっと出てきた男への愛情に負けると思うのか?」

「それは……」

 まさか逆に愛情について問い返される展開になるなんて思わなかった。

「先生は、貴女達のお父さんへの愛情を捨てなくても良いし、自分の事を愛さなくっても良いと言ってくださったわ」

 笑顔で答えるお母さんに戸惑いを覚えた。

「そんな、愛していない相手とそんな事をするなんて本当に平気なの?」

 小さなため息を吐くお母さん。

「貴女達のお父さんを愛したまま、好意を持ってくれる男性とするのは、どちらにとっても裏切り行為になるわ……」

 屁理屈とも思えるが確かに理屈は、通っている。

 この理屈を論破するとしたら、お父さんへの愛情を捨てさせるか、お母さんに一生性欲を我慢し続けろと言うしかない。

 矛先を変える。

「結婚する以上は、貴方には、私達への養育義務が発生します。それをどうお考えですか?」

 性欲処理と言い切るこの男に明確なプラン等ある訳がない。

 だが予想と反し数枚のリストと通帳印鑑カードが出された。

「父親としての愛情を注げるかどうかは、証明出来ないが、四人が大学を出るまでの金銭的な保証は、ここにあるなんなら君に預けよう」

 リストには、私達が大学を卒業するまでに掛かるだろう金額が算出され、通帳には、その為金額が入って記入されていた。

「ギブアンドテイク、美しいお母さんを占有する見返りだよ」

 もしかしたらと思ったけどやはりお金の為にこの男と結婚するのだ。

「お母さん、学費は、皆で頑張ってどうにかする。だからこんな男と結婚する必要は、無い!」

 しかし、お母さんが首を横に降る。

「貴女達は、勉強を頑張ってくれれば良いわ。それに先生と結婚するのは、先生がさっき言った通り私の性欲を満たす為でもあるのよ」

「性欲もお前達が満たしてやるのか?」

 いやらしい笑みを浮かべる男を睨む。

「真面目な話に戻そう。掛かる費用はリストアップしてあるが何とか出来る金額だと思うか?」

 唇を噛む。

 どう考えても無理だ。

 こうして第一ラウンドは、完敗で終わった。





 結婚式は、無かった。

 婚姻届けをだし、私が今まで住んでいた家を離れ、あの男の屋敷に引っ越した。

「あまり顔を会わせない方が良いだろう」

 と言って、あの男は、食事も別に摂った。

「お母さんが家に居る時間が増えて嬉しい」

 西奈等、そう言って喜ぶ始末だ。

 しかし私は、知っている。

 私達の目がない所であの男がお母さんと信じられない程のいやらしい事をしていると。

 自分の無力さを痛感させられる毎日。

 少しでも気分を直そうと大学の先輩で恋人の北条さんとデートする事になった。

 言って来たのは、北条さん。

「君が気にしすぎじゃないのか? 確かに普通とは異なる関係だけど、お互いにとってデメリットが無い。君のお母さんだって一人の女性だ。母親としてでなく女性としての幸せも考えても良いんじゃないのかい?」

「直ぐに認める事が出来ないとしても新しい男性との幸せを掴むと言うなら納得するわ。でも今の関係は、いびつに感じるの」

 苦笑する北条さん。

「色々難しいと思うけど君自身も女性の幸せを考えないか?」

 唇を近付けてくる北条さん。





 ラブホテルでシャワーを浴び、出ると一枚の書き置きがあった。

『すまない。急用が出来たので先に出る』

 私の胸を冷たい空気が流れた。

「まるでセックスをするためにデートをしたみたいじゃない……」

 そうは、思いたくなかった。

 もしそうだったらあの男と同じだからだ。





 私の思いと裏腹に北条さんは、会うたびに体を求めてきた。

 あの男みたいに露骨じゃないが、その視線が明らかに語っている。

「今日もその気にならないの……」

 すると北条さんは、舌打ちした。

「またかよ! 毎回毎回愚痴を聞いてやっているんだ、やらせろよ!」

 豹変する北条さん。

 もしかしてと思ったが信じたかった。

「北条さんとは、もっと心で繋がって居たいの。駄目?」

「カマトトぶるんじゃない。お前も母親と同じ淫婦なんだろう!」

 男は、皆同じだ。

「もうおしまいね……」

「良いぜ! 俺には、源が居るしな」

「芳子と二股していたの!」

 芳子は、私の親友で北条さんには、私が紹介したのだ。

「あいつは、御高くとまったお前と違って直ぐに抱かせてくれたぜ」

 私は、それ以上そこに居られなかった。





 家に帰った私だったが、見たくも無いものを視る羽目になる。

 リビングでお母さんとあの男がセックスをしていた。

「もっと、もっと激しく来てぇぇぇ!」

 淫らにあの男を求めるお母さんなんてみたくなかった。

 直ぐに自分の部屋に戻るけど、漏れ聞こえてくるお母さんの喘ぎ声。

 北条さんの言葉がよみがえってくる。

「私は、お母さんと違う……」

 体の奥に感じる疼きと私は、戦った。





 あれから数日、定期的に電話をしていた芳子とは、音信不通、家は、何度も行っているから会おうと思えば会えた。

 しかし、私は、会いに行けなかった。

 理由は、明白だ、理不尽な怒りをぶつけてしまうからだ。

 そんな芳子から動画メールが届いた。

「何……」

 嫌な予感がしたが、開けないままでは、落ち着かない。

『アァァァン! イクゥゥゥ!』

 そこには、北条さんとセックスする芳子が映って居た。

 激しく腰を振り、涎を垂れ流しながらあられもない顔で快楽に溺れる芳子。

 行為が終わった後、満ち足りた表情をする芳子の後ろから北条さんが告げた。

「女なんか皆こんなものだよ」

 そこで動画が終わる。

 憤る私、しかし、私の体は、疼きを持ちはじめて居た。

 レポートも進まない。

「性欲は、生物としての当然のもの。それを制御してこそ人間。これもそうよ」

 自分に言い訳をしながら、自慰行為をしてしまうのであった。





 あれから数日、何度も自慰行為をしたが私の体は、満たされて居なかった。

 それでも、疼く体を鎮める為に自慰行為していた時、あの男が入って来た。

「何のつもり!」

 睨み付ける私にあの男が言う。

「母親の負担を減らしたくないか?」

 言いたいことは、わかった。

「戸籍上だけとは、いえ父親の貴方とは、出来ないわ」

 はっきりと断った。

「安全日だろ。子供が出来なければ問題無いだろう」

「何で……」

 驚く私にこの男は、使用済みナプキンを見せてくる。

「最低!」

 殺意が芽生える私にこの男は、チンポを取りだし言う。

「お前達の学費の為に頑張って居る母親を助ける。それだけの事だ」

 強い葛藤があったが、私は、体を開いた。

 この男の言う通り、お母さんの負担を減らす為、間違っても私の性欲を満たす為では、ない。

 直ぐにあれを入れてくると思ったが継親は、愛撫をしてきた。

 怪訝そうな顔をする私に継親が言う。

「俺は、無理やりして嫌がる女を楽しむのは、もう飽きたからな」

 どれだけの女性を泣かして来たのだろう。

 それだけに継親の愛撫は、凄かった。

 最初は、周りから僅かに性感帯を触れ、焦れるのを待ってからようやく直に触って来る。

 それもただ刺激するだけ時やない、緩急をつけてくる。

 指先で撫でるだけと思えば、あそこの奥まで指を深々と突き刺す。

「アァァァン……」

 甘い声が漏れてしまう。

「まずは、一回目だ」

 継親にそう言わるてクリトリスを強く刺激され私は、絶頂に達してしまう。

 ぐったりしている私の股間に顔を埋める継親。

「そこは、汚ない!」

「嫌いな人間だろ? 気にするな」

 継親は、あそこを舐め始める。

 継親の舌は、まるで一個の生物の様に縦横無尽に動き、その間も指での愛撫が続けられた。

「……イクゥゥゥ」

 何度めかの絶頂、体に力が入らない私に継親は、あれを取り出した。

「まだやるの?」

「まだもなにも、俺は、一回も出してない。それともこれは、お前の性欲を満たす為だったのか?」

「違う! 私は、お母さんの負担を減らす為に仕方なく……」

 私の主張に継親が頷く。

「そうだろう。だから背中を向け、嫌いな人間の顔を見ないで済むぞ」

 確かに継親の顔を見ながらするよりましかもしれないので背中を向けた。

 そしてあれが入って来た時、目を見開いた。

「アァァァン!」

 太い。

 北条さんのと段違いの太さ。

 それが度重なる絶頂で敏感になった私を容赦なく攻め立てる。

「アァァァン! らめぇぇぇ!」

 もう声を我慢する何て出来ない。

 いやらしい声が止めどなく私の口から流れ出る。

「一発目!」

 熱い飛沫が私の中で撒き散らされる。

「イクゥゥゥ!」

 その刺激でまたも絶頂に達してしまった。

 荒い息をつく私だったが未だにあれが抜かれない事に戸惑う。

「もう終わりじゃないの?」

「馬鹿を言うな。まだ始まったばかりだ!」

 信じられない、男は、出せば終わり満足すると思っていた。

 しかし、継親は、言葉通りそれから何回も私の中で精子を吐き出した。

 その間に私は、精子を吐き出されるより多くの絶頂に曝された。





 あの夜から毎晩の様に継親は、私の体を求めてきた。

 それだけお母さんの負担が減っていると考え、私も受け入れた。

 しかし、ここ数日継親が来ない。

 一週間を過ぎた時、継親の仕事部屋まで確認に向かった。

「どうして来ないんですか? まさかお母さんに無茶をさせていませんか!」

 責める様に睨むと継親が苦笑する。

「難しい理屈じゃない。お前が危険日だからだ。それが過ぎたらまたやりに行くさ」

 忘れて居た。

 確かにここ数日は、危険日だった。

 そんな大切な事を失念するなんて私は、どうかしていた。

 疑念も解けた筈なのに私の中に言葉に出来ない凝りが残る。





 翌日の講義の後、北条さんが話し掛けてきた。

「君には、僕が必要だって事が解っただろう?」

 言っている意味が正直解らなかったが、何をしたいのかは、解った。

 私が北条さんについてラブホテルに入った。

「芳子とは、単なる遊びだよ。結婚を考えているのは、君だけだ」

 私の親友、芳子を馬鹿にし過ぎだ。

 それでも私が応じてしまったのは、結婚を前提とした相手となら、危険日でも構わないと考えてしまったから。

 我ながら歪な考え方だと思う。

 それでも、体が男性を求めてしまう。

「愛しているよ」

 甘くて中身がない言葉と共に唇が合わさる。

 服を脱ぐと継親と比べて貧相なあれが勃起していた。

「女に磨きがかかったんじゃないか?」

 下品な表情、言葉を交わす度にひらく温度差。

 短く拙い愛撫の後の挿入、単調なだけな腰の動き。

 北条さんとのセックスしか知らなかった頃は、これがセックスだと割りきれた。

 こんな物の為に人生を狂わすなんてフィクションだと断言出来た。

「もう限界だ!」

 射精する北条さん。

 何の快感もない第一ラウンドが終わった。

「気持ち良かったよ」

 満ち足りた顔をして服を着始める北条さん。

「もう終わり……」

 苦笑する北条さん。

「我慢してた君には、物足りないかも知れないが、男は、何度も出来ないんだよ」

 北条さんが先に出ていってしまった後、私に有ったのは、ラブホテルに入る前以上の渇望だった。

 継親とのセックスで私は、解ってしまった。

 人生などどうなっても良いと思える快感が有るという真実。

 お母さんが性欲を前提にした結婚をしてしまった気持ち。

 私は、何も考えれない状態で習慣的に服を着、継親が居る家に帰って行く。





 その夜は、体の疼きが治まらず、何度も自慰行為をしてしまった。

 しかし、継親とセックスを知ってしまった私には、全然物足りない。

 火照る体に苦しむ私の耳に扉が開く音が聞こえた。

 入って来た継親に私は、絶対いけない期待を抱いてしまう。

「妊娠しても構わないから母親の負担を減らしたくないか?」

 それは、口実。

 それが判っているのに私は、答えてしまう。

「お母さんの負担を減らす為だったら仕方ない事……」

 私は、正面から継親を受け入れた。

「アァァァン!」

 あの日のお母さんと同じ女の声が出てしまう。

 北条さんのとは、全然違う太くて固いチンポが、私の中に楔を打つ。

「……」

 奥を付かれ、軽い絶頂に達してしまう。

 それでも止まらない激しく、絶妙な腰の動きに私の腰も勝手に動き出す。

「良い、いい、イイノォォォ!」

 更なる快感の高みに向かって昇り上がる私。

 継親の射精と共に強烈な絶頂に行着く。

「イクゥゥゥ!」

 荒い息を吐きながら私は、目の前の唇に熱いキスをする。





 あの夜から私は、継親とのセックスを続けている。

 お母さんの負担を減らす為と偽って。

 欺瞞でも何でも良い、私は、あの快楽から逃れられないのだから。


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