第三話【 決行 】


 夏も間近だ、ということもあって、今日も一段と暑い陽射しが職場に差し込んできている。
 一般的に公休扱いとなっている土曜日であっても、他の課では雑誌の発刊が迫っている課もあり、講学社ビルの人の出入りは決して少なくない。もっとも、五階を分け合っている四つの課は公休日で、敢えて休日出社しようとする物好きな人物は、俺を除いて皆無であった。
「暑いなぁ・・・・」
 たった一人しかいない事務所、ということもあって、わざわざエアコンを付けるのも躊躇っていたが、室内温度が四十を越えると、さすがにその意思も鈍り始めていた。
「ま、今のうちに作業を進めておかなくちゃ・・・・」
 休日出社を決行しておきながら、これといって仕事があったわけでもない俺ではあったが、天野の来社予定を人事部に報告している手前、その辻褄合わせには余念がなかった。

 お昼が近いということもあって、俺は作業を終えて、社員食堂へ向かおうと立ち上がった。その際、今日のもう一人の休日出勤予定者が出勤してきたところであった。
 普段の制服姿もいいが、私服もこれまた・・・・
 ピンクに白のラインが入った裾長のTシャツ。その胸元に下げられてあるロザリオのペンダント。見えそうで見えない、黒のティアードミニスカート。それによって、細長く色白の生脚が普段の制服よりも強調され、俺は一瞬にして、彼女の私服の虜と化していた。
(ゴクリッ・・・・)
 俺は思わず生唾を飲み込む。
「あ、課長、おはようございます」
「んっ、ああ、おはよう・・・・って、まだ出社の時間までに余裕があるけど?」
「ハイ。出勤の打刻は、ちゃんと一時にしておきますね」
 私服姿の愛らしい笑顔が非常に眩しい。
「今日は学校もお休みでしたし、午前中からこれといって予定もありませんでしたので、お昼がてら余裕もって出社してきました」
「そうかい」
 休日出社を要請した俺に気を遣っているのだろう。
 彼女の言葉が本当ならば、午前中から彼氏とデートしていたことであろう。
 俺も一度くらい、私服姿の琴乃くんと並んで、街中を歩いてみたいものだ・・・・もっとも、他人の目からしてみれば、俺と琴乃くんとでは、どう見ても、良くて親子、もしくは援助交際としか映らないことであろう。
(彼氏か・・・・)
 俺は羨望すると同時に、この後に琴乃くんとデートする、まだ見ぬはずの彼氏が、非常に憎らしく思えてならなかった。
「それじゃあ、社員食堂だけど、お昼はおごってあげよう」
「えっ、本当ですかぁ〜」
 彼女の反応が愛しいものであったそれだけに、俺には何とも言えぬドス黒い感情が疼き出していたのであった。

「課長、来客の予定がありますのに、エアコン付けておかないと、暑いですよ〜」
「はは。ただでさえ広い事務所にたった一人、エアコンで涼むのは贅沢かな、って思えてね」
 談笑を交えつつ俺は琴乃くんを伴って、地下にある社員食堂へ向かった。

「本当にお昼はそれだけでいいのかい?」
 琴乃くんの持つトレーを見て、俺は驚きの声を上げる。
 俺ならば、間食にもならない量でしかない。
「はい。最近、甘い物に目がないので、ダイエットしたいなぁ、と」
 その心配は無用であろう、その身体でダイエットって・・・・一体、何処を削ろうというのだろうか?
「でも、それじゃ・・・・立派な胸には・・・・」
「課長ひどぉーいぃ。これでも気にしているんですよぉ〜」
 さすがに控えめの発育を指摘されて、彼女も頬を膨らませる。
「でも、本当に貧血や骨折の恐れも指摘されているから、ほどほどにしておいたほうがいいよ」
「はい、そうですよね・・・・」
 俺たちは談笑を交えながら、彼女と初めての食事をした。
 と、言っても社員食堂で、料理も味付けより栄養価を優先としたものが多く、ロマンチックの欠片さえもなかったが、他の課の社員たちが、彼女との相席に羨望の眼差しを向けてきており、俺はささやかな優越感を満たしていた。


 職場に戻ってからも、俺たちは普段の職場では考えられないだろう雑談を交わしながら、それぞれの作業を続けていた。
「それじゃぁ、課長はもう、結婚される気はないのですか?」
「うん、ないね・・・・と、言うか、相手が居ないから、もう無理ではないかなぁ〜」
「そんなことないですよぉ〜」
 二人きり、という状況下でも、意外と会話が弾んだ。
 一つには俺を信用しているのであろうが、一人の男としては見られていない現実でもあっただろう。
「それじゃぁ、課長が結婚する相手に求めるものって何ですかぁ?」
「ほへ?」
 余りにも大胆な質問に、思わず間抜けな声が漏れる。
 まぁ、今の彼氏に対して、俺の考えを参考にしようというだろう。
「そうだね・・・・もう歳だし、多くは望まないけど、たった一つだけ。自分の子供を産んでくれる人かな?」

 そんな和やかな空気の中、俺は懸命に、ある衝動を抑えていた。
 今、職場に居るのは、琴乃くんと俺だけである。たとえ騒がれたとしても、ここは無人の五階・・・・今、琴乃くんを襲っても、誰も助けに駆けつけることはないだろう。
 それはまさにレイプではあるが、レイプならば膣内出しさせて貰っても後腐れもないことに変わりはない。
 それとも以前から所持している睡眠薬を、飲料水に溶かして服用させるか。昏睡レイプなら騒がれる恐れもなく、堂々とその身体を愉しむことが許されるだろう。
(うまくいけば、レイプされたことに気付かないかも、な・・・・)
 それはあくまでも予想である。
 だが、その間も邪な欲望が俺の中で何度も渦巻いていた。
 そして、こう思わずには居られない。

 もし、今回の計画が・・・・天野の催眠術が失敗に終わったら、後日に再び休日出社を決行し、昏睡膣内出しレイプを必ず決行しよう、と。

 俺はさりげなく琴乃くんの身体を一瞥して、そう決意するのだった。


 そんな中、時計は確実に進み、もうすぐ二時となろうとしていた。
 課長室のデスクに備えられた電話が、内線のコールをする。
《課長、天野さんという方が来訪されましたが、応接室ではなく課長室にお通しすればよろしいですか?》
 天野が来たか・・・・
「うん、こっちでいいかな」
 わざわざ応接室を使って、手間をかける必要もないだろう。
《ハイ》
「あ、それから少ししたら、お茶を頼むよ」
《ハイ、では、今からお客様とそちらに向いますね》
「ああ、頼むよ」
 俺は心の中で微笑する。
 もしかすると君が孕ませて貰える、琴乃くんにとっては、大切な賓客になるかもしれない人物である。
 しっかり(妊娠までの)誘導を頼むよ・・・・

 課長室に入ると、デスクの前に設置されてある二〜三人用のカウチソファに腰掛け、俺もテーブルを挟んで相対するように座り込む。
「これはまた、私服になるとめっちゃぁ可愛い娘やなぁ・・・・」
「ああ、俺も目を奪われたよ」
 是非、あの私服姿の琴乃くんでSEXがしたいものだ。
「ならばあの服を、お前との初SEX衣装にさせてやるよ」
 あの私服姿の琴乃くんが抱けるかもしれない、と思うと、股間の愚息が次第に大きく反応を示してしまう。
 齢四十一の男が持つようなモノとは、到底思えない剛直である。
《コンコン》
「失礼します〜」
 そんな邪な欲情を抱かれているとは露知らず、その彼女がお茶と茶菓子を持参して課長室に入室してくる。
「あ、琴乃くん、こちらが中学の同期、天野智樹」
「・・・・あ、以前、お電話をお受けしたことがありましたね」
 礼儀正しく頭を下げる。
「初めまして・・・・内藤とは古い付き合いでしてね、中学時代では親友と言ってもいい間柄だった」
「何が親友だ。お前なんか悪友だ、悪友」
「課長〜、そんな言い方は酷いですよぉ〜〜」
 思わず課長室に三つの笑い声が流れる。
「あ、そうだ・・・・」
 俺は一枚の写真を手に取り、琴乃くんに手渡す。
「琴乃くんは、この写真の人物を知っているかい?」
「ん、いいえ・・・・ごめんなさい」
「知らなくても不思議はないさ。別に謝ることじゃないよ」
 それは天野が持参した、書類と写真の一枚である。
「クリストフ・アンダーソン・・・・その人は今、世界で最も高名な催眠術師の写真だよ」
「催眠術師さんですか?」
 天野の言葉に彼女は今一度、写真を見つめる。
「おや、琴乃くんは催眠術を信じるかい?」
「えー、そうですねぇ〜〜」
 俺から再び質問を受けて、琴乃くんは姿勢を戻す。
「う〜、課長。それ答えなきゃ、ダメですかぁ?」
「うん。若い娘の意見は大変、貴重なんだよ」
 質問されたのは俺であったが、答えたのは天野のほうである。
「ん、催眠術の特集を考えていてね」
 それに合わせるように俺も笑顔で優しく頷いた。

「本当は信じているのですけど・・・・でも、現実的じゃない、ってことは解かっているんですよ!」
 赤面しつつも答えてくれるその姿は、健気なものである。
「まぁ、確かにドラマやバライティーの中だけの話だよな」
 俺も目の前の天野には悪いが、本音を口にする。
 さすがの天野も苦笑せずにはいられなかった。
「催眠術か・・・・占いは得意なんだけどな」
「そういえば、天野は占いが得意だったよなぁ」
 無論、そんな事実なんかはない。少なくとも俺の知る限り、では。
 だが、俺は予め示し合わせたとおりに口にする。
 古来より、占いごとなど女の子が好むところではある。
「金運、未来、吉日を占ったり、恋人との相性や、その二人の運命を占ったり」
「本当ですかぁ〜〜?」
「琴乃くんも、彼氏とかの未来とか、相性とかも占ってもらうかい?」
 案の定、瞳を輝かせる琴乃くんに、俺は天野の占いを薦めてみた。
 無論、それは恋占いなどではなく、まさに催眠術への誘いではあったのだが・・・・そう、彼女がただ妊娠するためだけの、孕ませ目的の誘いであった。
「それじゃぁ、恋占いでいいかな?」
「あ、ハイ。是非、お願いします」
 だが、彼女は自らの意思で志願する。
 それは孕ませられることへの、彼女の了承に他ならない。
(まぁ、たかが妊娠させられる・・・・いや、俺に妊娠させて貰えるだけのことだよなぁ?)

 天野が鞄から手にしたのは、様々な色柄模様のカード。
 占いでカードといえば、タロット占いが有名ではあるが、タロット占いが22枚(トランプの起源である小アルカナでは、56枚)に対し、天野が持参していたカードの枚数は、もっと多く・・・・描かれた色柄模様も独特的なものが多かった。
 おい、かなり本格的だな・・・・
「一応、前もって言っておくけど、Aという出来事が来週に起こる、としても、それよりも以前に、Bという予定外の行動を起こせば、結局Aは起きなくなる・・・・程度のものだよ?」
「ハイ、解かりました」
「では・・・・目を瞑ってくれるかな?」
「ハイ」
 琴乃くんは瞳を伏せ、天野はテーブルの上にカードの山を置く。
 視線で俺の方に向き、指先で離れることを促す。
 そして再び鞄から、小さな小坪を取り出すと、彼女の前に置き、ゆっくりとその栓を抜いた。
(・・・・んっ?)
 僅かに甘い香りが室内に漂う。
(これは、何かの香料か?)

「それじゃまず、眼を閉じたまま、テーブルの上にあるカードの山から、五枚・・・・好きなのを選んで貰おうかなぁ」
「ハイ」
 琴乃くんは瞳を伏せたまま、五枚のカードを山から抜き取る。
 抜き取ってもらったそのカードを、天野は静かに一枚ずつ開いていく。
「おや、これは結構、長い間・・・・想い続けていたのかな?」
「えっ・・・・」
「彼氏はきっと幼馴染かな?」
「す、凄い・・・・」
 彼女の驚きも当然だが、俺でさえ知らなかった事実だけに、俺も驚嘆の意を禁じえない。
(こいつ・・・・占い師としてでも、食っていけるんじゃないか?)
「君の想いの強さは、一途に・・・・そして最高にまで達しているね」
「あぅ・・・・」
 事実を指摘されたこともあって、顔を真っ赤に染め上げる。
「小さいころから好意を抱き続け・・・・ようやく告白して、付き合いだしたのは・・・・そう、今年からかな?」
「ハイ・・・・」
 これまでの占いは全て的中・・・・
 俺は正直に、天野のこの才能に舌を巻いていた。
「それじゃ、次は彼氏の想いを占ってみようか・・・・」
「え、ちょっと恐いなぁ・・・・」
 さすがに彼氏・・・・しかも最近付き合えるようになったばかりの相手とあって、琴乃くんも揺らぐ。
「どーする?」
「・・・・お、お願いします」
 それでも好奇心が恐怖を勝るのか、それとも本当に彼氏の想いを知りたいと、もしくは彼氏を信じているのか・・・・琴乃くんは覚悟を決めたようだった。
 琴乃くんが再び選んだ五枚を、天野が一枚ずつ開いていく。
「ん・・・・」
 ピクッ、と天野の手が止まる。
 俺の目からしても禍々しく、不吉とも思えたカードが開かれた。
「・・・・えっ、悪いんですかぁ!?」
「あ、いや・・・・少し待ってね。次のカードを開けてみるから」
 再び天野がカードを開き、五枚全てが場に治まる。
「・・・・」
「あぅ・・・・」
 全て開かれたことを察した彼女は、僅かに口篭る。
「まず、彼氏のほうも・・・・君よりはずっと遅いけど、意識はしていたみたいだね」
 それは彼女にとって朗報であり、琴乃くんは思わず手で口を押さえた。
「ただ、喧嘩・・・・いや、進展のないことで、諍いを起こしたことが、もしかして・・・・ある?」
「!!」
「彼は少し、焦っているのかな?」
 その琴乃くんの反応からでも、それらが事実を指摘していたのだと、傍から見ていた俺にでさえ解かってしまった。
「あ〜、やはりねぇ・・・・」
「ど、どうしたら・・・・いいですかぁ?」
 その問いかけは、天野であり、俺のほうにも向けられたものであった。
「うん。ただね、良いカードも出ているから、早急に決着を付けるより、もう少し時間をかけたほうが良いかもね」
「あ、ハイ・・・・」
「これじゃあ、二人の今後の未来を・・・・こっちで十枚、選んでみるからね」
「お願いします・・・・」
 天野はゆっくりと十枚のカードを選んで抜き取り、一枚ずつ時間をかけて開いていく。

 そう遠からず、彼は再び、進展のない状況に焦りを覚えるだろう。
 だが、初音ちゃんが進展するように歩み寄り、努力することで、
 二人の関係は改善されることだろう。
 また長い間、想いを募らせていた甲斐もあったね。
 このまま二人が添い遂げられれば、二人の未来は明るい・・・・
 明るく・・・・そして深い、深い愛情が育まれる・・・・
 そう、深い・・・・深い、ね。

 室内の時計の音だけがゆっくりと響く。
 次第に天野の声が低くなり、だが、それでも脳裏に直接、囁かれるような錯覚を、聴覚ではなく全身の感覚でしていた。
 頃合を見て、天野が暗示を仕掛けていく。
「・・・・深い、深い世界に・・・・そう、深い・・・・眠りの世界に」
 離れていた俺でさえ、これはヤバイ、と思った。
 次第に俺は立っていることもままならなくなる。だが、それは同時に、天野の催眠術に信憑性が増していくのと、ほぼ同義であった。
 こと、催眠状態の際には、全ては天野に一任するということが約束事である。また何か異常があっても、職場から見渡せる課長室ならば、すぐに駆けつけることもできるだろう。
 俺は片手で退出することを天野に伝える。
(ok〜)
「何も聞こえない。何も感じない・・・・深く、深い世界へ・・・・」

 その天野の暗示に応じて、琴乃の意識は完全に深い眠りの世界へと落ちていった。


 課長室に二人だけを残して、俺は室内を意識しつつ、コーヒーを飲むためのお湯を沸かす。
「しかし、天野の催眠術が・・・・まさか!?」
 だが、現実を見る限りでは、天野の催眠術は完全に成功し、琴乃くんは完全に天野の術中に陥っている状態である。また、それ以前の占いとしての技量からして、俺は天野の実力を侮っていたこともある。
 だが、これで・・・・あの琴乃くんを抱けるのか?
 琴乃くんの膣内に生で挿入し、膣内出しして、孕ませることが・・・・そして、高校生にして出産を余儀なくさせることも・・・・
 夢ならば、永遠に覚めないで欲しい、と思う。
 せめて琴乃くんと一度ぐらい、ハメられる、その時までは・・・・


 俺の退出から、およそ三十分が経過したころ、天野の誘導催眠の暗示は終わったようであった。
「彼女はもう暫くしたら、目を覚ますよ・・・・あ、俺にもコーヒーを淹れてくれる?」
 もう咽喉がカラカラだよ、と口にする。
「ああ・・・・で、催眠は成功したのか?」
「ん、完璧・・・・後でことの手順を説明してやる・・・・が、その前に一つ、な」
 天野は来客用のコーヒーカップを受け取ると、香りを楽しみながらゆっくりと啜る。
「あの娘が目を覚ました、と同時に、俺は既に帰った、のだと認識させてあるから、間違っても俺には話しかけるなよ」
 琴乃くんは天野の催眠術によって、帰宅した、認識している。つまり、天野の声も聞こえなければ、姿も気付かないのだという。だが、それはあくまでも天野個人だけのことで、俺が天野に話しかけてしまった場合、それはただの独白、ということになる。
 まだ笑っていられるような内容ならいいが、最悪の場合、催眠術のことを尋ねてしまった場合、さすがの彼女も訝(いぶか)る可能性がある。
 それも再び催眠術で除去することもできなくはないらしいが、多重催眠は極めて危険で、最悪の場合は精神に破綻をきたす恐れもあるとのことだった。
「まぁ、二度や三度で壊れるような、人の精神は軟じゃないけど・・・・要らん負担を強いるのは避けたいからなぁ・・・・」
「解かった・・・・気を付けるとする」
 俺は天野の言葉に従いながら、それでもやはり、一応の成果だけは知っておきたい、と思った。
「で、俺は琴乃くんを抱けるのか・・・・?」
「疑り深い奴だな・・・・」
 天野はコーヒーを飲み干しながら、苦笑する。
「ああ、それは間違いない。そして恐らく、お前に処女を捧げることになるんじゃないかな?」
「!」
(琴乃くんの・・・・処女・・・・)
 俺は思わず、課長室のカウチソファで昏倒している彼女を一瞥した。
 ああ、俺なんかのために、彼女はこれまで貞操を護ってきてくれたんだね・・・・こんな美少女が、俺のためだけに・・・・
 それが自意識過剰だとは、誰に言われるまでもなく、俺自身が良く理解していた。だが、それでも天野の言葉が本当に実現のものとなれば、それはまさしく、天が俺に、彼女の処女を認めたのである。
 催眠術の成果とはいえ、彼女は自らの意思で、俺に抱かれることを選ぶことになるのだから・・・・

「・・・・んっ・・・・」
 琴乃くんはカウチソファから身を起こそうとしていた。
 その際、ミニのスカートの中身が見えそうで・・・・見えなかった、その光景に落胆してしまう。
「あ、す、すいません・・・・業務中に、眠っちゃうなんて!」
「ん、いや、時間にして二、三十分ってところだよ」
 時計の針は、間もなく五時を差そうとしている。
「本当は今日、公休日なのに・・・・お疲れ様」
「あ、天野さんは?」
 俺は彼女の目の前に居る天野を、極力見ないようにするのに僅かな努力を要した。
「ん・・・・もう、帰ったよ。琴乃くんによろしく、って」
 確かに彼女の目には、天野の姿が見えないらしい。
「そ、そうですか・・・・」
「それじぁあ、後一時間・・・・頑張ろうか」
「・・・・」
「ん? 琴乃くん?」
 俺は呆然としている彼女を呼びかける。
「あ、ハイ・・・・あ、か、課長?」
「ん?」
 書類に目を落としていた俺は、カウチソファに座ったままの彼女に視線を送る。
「・・・・」
「どうした?」
「あ、いえ・・・・あ、今、コーヒー、淹れてきますからぁ!」
「?」
 コーヒーならば先ほど自分で淹れたばかりのが、まだ残っているのだが、余りに不自然な彼女の反応に、俺は戸惑いを禁じえないでいた。
「内藤、どうした?」
「いや・・・・琴乃くんの様子が少し変だったような・・・・」
「催眠状態は間違いなく、彼女が覚醒した時点で解けているよ」
「ふむ・・・・」
 何か釈然としない視線が気にはなったが、再び書類に目を向ける。
 だが、それから二十分が経過しても、琴乃くんが課長室に戻ってくる気配はない。
 俺はゆっくりと立ち上がって、キッチンのほうに視線を向けた。
「琴乃くん・・・・どうした?」
「え、あ・・・・は、ハイ・・・・」
 だが、いつもの琴乃くんのような明るさはなく、瞳を潤わせて、無言で俺に何かを訴えている・・・・ように見えた。
「どうしたんだい?」
「か、課長・・・・そ、その・・・・」
 彼女は視線を慌てて逸らそうとしたが、広い職場に比べて、キッチンは狭く、おのずと彼女が見据えるものは俺だけになる。
「あ、今、コーヒー・・・・あっ!」
 コーヒーメーカーを持って転びそうになった彼女は、俺の胸元に飛び込み、俺もまた思わず抱き締めてしまっていた。
《ガシャーン!》
 と、ガラス製のメーカーが音を立てて割れ、それでも琴乃くんは俺の腕から逃れようとはしない。いや、むしろ、何かを待っているかのように。
 頬を染めて、瞳を潤わせて、何かをせがむように・・・・
 こ、これって・・・・
「キスしてやればいいじゃん・・・・」
 天野の言葉に俺は唖然とする。
 やはり、覚醒してからの彼女は何処か余所余所しく、そう、まるで俺を男として意識し始めているかのようだった。
 これが催眠術によってのものであることぐらい、俺にも解かる。
「あ、ただし、内藤。初音ちゃんにとっては、ファーストキスになるんだから、優しくソフトにしてあげろよ」
(ファーストキス? つまり・・・・キスも未経験だったのか?)
 俺は可憐な表情の琴乃くんを見据え、ゆっくりと唇を接触させる。
 柔らかい唇の、だが、確かな感触。
 ただ唇と唇だけが触れるだけの、児戯にも似たキス・・・・
 だが、彼女にとってそれは、まさに初めてのキスとなるらしい。
 その柔らかな唇から離れても、俺と彼女は見つめあう。
「す、すまない・・・・つい・・・・」
 俺は慌てて彼女から離れようとしたが、ことは詫びて済むような問題ではない。たとえ彼女が催眠術によって望ませた、としても・・・・覚醒した意識は、彼女のものなのである。
(えっ!?)
 だが・・・・俺が離れようとするよりも早く、今度は琴乃くんのほうからキスを求めてきたのである。それも・・・・俺の唇の中に割って入ろう、とするものが・・・・
 俺はおのずと唇を開け、琴乃くんの舌の侵入を許す。
 さっきのソフトなキスとは異なり、今度は舌と舌を絡ませて、お互いの唾液を嚥下していく。
 まさか先ほどファーストキスを済ませたばかりの琴乃くんが、まさかこんなにも激しい、ディープなキスを求めてくることになるとは・・・・
「おうおう、見せて付けてくれるやんかぁ・・・・」
 天野が苦笑交じりに呟く。
 だが、そんな外野の言葉などにお構いなく、俺たちはお互いの舌が幾度もなく触れ合い、絡み合い、弄んでいく。
「んっ・・・・んん・・・・」
 既に二度目のキスから五分以上が経過し、さすがの俺もクラッ、としてきたが、俺のほうから琴乃くんとのキスを拒む選択はない。
《ネチャ、ネチャ・・・・》
「んっ・・・・ん・・・・」


 俺たちの長い、長い二度目のキスが終わったのは、定時の六時を報せるチャイムがきっかけとなった。
(つまり、二十分近くも・・・・あの琴乃くんと?)
 お互いの唇が離れても、お互いの頬が熱く、そして息も乱れていた。
「こ、琴乃くん・・・・」
「あ、ご、ごめんなさい、課長・・・・」
「いっ、いや・・・・」
 俺のほうは、彼女に謝罪されるようなことはされていないのだが。
 それから俺たちは何処か余所余所しく、帰宅の準備をする。残り時間で完遂させる予定だった書類もあったが、残業をしてまで続ける気には到底なれないでいた。
「琴乃くん、良かったら・・・・帰り、車で送っていくけど、夕食は一緒にどうだい?」
 無論、彼女にはこの後、彼氏とデートだという予定は、俺も知っていたはずであった。だが、誘わずにはいられない誘惑が存在していたのも、また確かであった。
「あ、・・・・え、と・・・・」
 帰り支度を終えた彼女は、かなり戸惑っていたようである。
「彼、との約束の、時刻が・・・・迫っているので・・・・」
「あ、そうだったね」
 俺もダメもとで誘ったわけであるし、ショックはなかった。
 そもそも彼女が通う高校の女子寮には、門限があり、たとえ今から彼氏とデートができたとしても、時間は恐らく一時間もないであろう。
「んじゃ、帰るかぁ・・・・休日出社、本当にお疲れ様でした」
 それは彼女だけにではなく、彼女には居ないはずの存在にも向けて言った言葉である。
 そして一階までのエレベーターの中で、三人(彼女には二人)は無言のまま乗り込み、そしてまた、無言のままエントランスに降り立った。
「これから、彼とデートかぁ・・・・」
「ん、なんや、今頃のキスの余韻を思い出して、そら無理やろう」
 即座に天野が返答を寄越してくる。
「しかもキスしてしまった後に、食事に誘うとは・・・・エゲツないのぉ」
「ん・・・・あんなの社交辞令のようなモンだろう。まぁ、元々ダメもとで誘ったつもりだったし」
 俺の素っ気無い本音に、本当に天野は唖然とした模様だった。
「末恐ろしい奴や、な・・・・」
 車に乗り込みながら、天野が俺に舌を巻いたようだった・・・・が。
「あのなぁ・・・・今頃、初音ちゃんは、彼のいる・・・・しかも、これからその彼とデートしよう、って時に、他の男と初めてとなるキスを、自ら求めてしまった・・・・その後悔とその余韻の板挟み状態。そこにお前のお誘いときたら、その社交辞令でトドメやろぅ」
 天野曰く、恐らく今日のデートは取りやめになることだろう、との予測であったようだ。
「俺、悪いことをしたのか?」
「んん、まぁ、少なくてもお前にとっては、プラスな材料だけだろう」
 彼とのデートの回数も少なくなれば、当然、進展も遅れることになるのは当然のことである。
「まずお前に言っておかなければならんのが、初音ちゃんの処女、お前とやる前に、彼に捧げてしまう可能性もないとは言えない」
「なっ!」
 俺の憤りを見て、天野は微笑する。
「まぁ、安心せい。お前の許可なしに、性行為はできない暗示はかけてあるからな」
 つまり、琴乃くんの彼には、彼女が次の排卵日を迎える日までに、琴乃くんを完全に口説き落とし、彼女が俺の許可を取り付けられることが、彼女の処女を俺から奪えるチャンスとなる。
「なぁ、それって・・・・」
「まぁ、皆まで言えば・・・・そう、お前さんが許可さえしなければ、彼女は無意識に、お前に処女喪失膣内出し妊娠SEXを希望してくる。お前の望むように、孕ませから出産までが確定ってなるだろう」
 つまり、琴乃くんには生理が訪れており、次の排卵日を無意識に調べ、その排卵日の当日に俺に抱かれることを望むのだという。
「まぁ、生理を迎えたのが、昨日のことやから・・・・だいたい二十日過ぎから、二十五日前後だろうなぁ」
「ふむ・・・・」
 話を聞いている限り、琴音くんの処女喪失、そして妊娠SEXは遅くても今月中の出来事となる。だが、その僅かな日数さえも、今の俺には長く感じてしまうのだった。
「ま、その前に相談を持ちかけてくることになりそうだから、そこで許可を与えずにパスすることができりゃ、初音ちゃんの処女は、お前さんの望み通りになる」
「そうか・・・・」
「それからな。初音ちゃんの排卵日の当日には今日の服装で、出社する前に、お前に連絡を入れてくる。会社が公休日だった場合には、お前の家に直接連絡を入れてくるやろぉ」
 それが合図となる。
「それから、まぁ、一〜二週間ぐらいかな。彼女が彼氏とSEXしても平気かな、と思い始めたら、お前との関係も終わるやろぉ。無理強いして、犯罪者になんかなるなよぉ〜」
「一〜二週間も、琴乃くんを抱けるのか?」
「すまんなぁ、催眠術って言っても、俺の催眠にはある程度の期間を設けないと、相手の精神が持たんのよねぇ〜。まぁ、初音ちゃんが妊娠したら出産することだけは、ちゃんと精神の根底に植えつけてあるけどぉ」
 妊娠・・・・出産。

 あの琴乃くんを抱ける。生で、膣内出しで。
 しかも彼女の処女膜を突き破って・・・・彼女の危険日に、である。
 それだけでも十分であった。
 まして妊娠すれば出産までもが確定、とあっては・・・・

「俺のサービス、まぁ、実際に抱かれるのは初音ちゃんなんだけども、俺のサービスには感謝してくれよぉ〜」
「ああ、勿論!」
「それじぁあ、この辺で降ろしてもらうかな」
 てっきり俺の自宅へ来ると思っていただけに、天野の言葉の意味がすぐには理解できなかった。
「なに、もう俺の仕事、彼女への催眠は終わった・・・・後はお前次第、そしてうまくいったら・・・・ここに振り込んでおいてくれ」
 天野は口座番号を控えたメモを渡してくる。
「さすがに一週間も音沙汰がないようじゃ、関西のほうも危ないし、な」
「あ、おい・・・・」
「じゃあなぁ。あ、初音ちゃんの処女喪失、できたらメモリースティックで保管して送ってくれ・・・・あ、勿論、誰にも絶対に見せない、って」
 言いたいだけ口にした後、天野はそのまま下車し、最寄の駅のほうまで歩き出していく。

 俺はそのかつての旧友の後ろ姿を見送りながら、決意する。
 その翌日、俺は渡されたメモの口座に、二百万振り込んでおいた。
 これで俺は天野の慰謝料を全額、立て替えたことになる。
《なぁ、お前さん、金額の桁、間違えておるぞ・・・・》
 即座に天野は携帯に連絡をいれてきた、その第一声がそれであった。
「いや、間違いなく二百万、お前の口座に振り込んでおいたよ」
 二十万、という値段は、あくまで天野が決めたものであり、俺がそれに従わなければならない理由はない。
 琴乃初音のファーストキス、及びディープキス。
 そして何より、処女喪失させる権利・・・・
 彼女の身体の代金としては、二百万でも少ないぐらいだ。
 少なくとも、俺にとっては・・・・
《・・・・俺から頼んだのに、何か悪いのぉ・・・・》
「ん、気にするな。まぁ、釣りがでるのなら・・・・」
 俺は天野に提案を持ちかける。
 今度の夏、短期出張を希望して、現地で学生アルバイトを雇う。勿論、採用するのは容姿を第一前提とした、美少女だけに限定する。
 ・・・・無論、琴乃くんほどの美少女は、さすがに望めないであろうが。
 また天野の催眠術を利用して、その美少女たち学生アルバイトを抱き、そして孕ませようという、壮大な計画である。
《そりゃ、悪くはないな・・・・》
「だろう?」
《ただし、今度は俺のほうでも、選ばせて貰うぞ?》
「まぁ、それは仕方ないな・・・・」
 そもそも天野あっての計画である。天野の催眠術がなければ、こんな計画はたちまち、ご破算となるだろう。

 俺は携帯を閉じて雑務に奔走している、まず目先のターゲット、琴乃初音の姿を一瞥する。
 先週の土曜日にあんなこともあって、さすがにお互い、意識してしまうことは無理からぬことであった。しかもまだ月曜日のことである。
(さぁ、琴音くん・・・・処女喪失、妊娠SEXを記念して、その膣内にたっぷりと注いであげるとしようぉ・・・・)
 今月中にも起こりえる、彼女の人生における一大イベントである。
 そのためにも、今のうちから精力を蓄えておいてやらなければ。
「そうだな。とりあえず琴乃くんのためだけに、な」
 俺は卓上カレンダーに視線を注ぎ、着実に日数が経過していることを、そして遅々として進まない時間を実感しているのであった。

 そう。
 琴乃初音における処女喪失膣内出し妊娠SEXの一大イベントは、恐らくそう遠くはない、今月中の出来事となるであろうから・・・・


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