第四話【 相談 】
この日。特に我が課の雰囲気は非常に良かった。
何処の県予選を見渡しても、甲子園の常連校によって引き締めあっているのだ。この都内の都大会においても、春の選抜覇者、名門青動高校、夏はその青動高校を降し、甲子園の決勝で駒台藤咲に涙を呑んだ稲白実業、打線の破壊力では類を見ない、薬師学園・・・・と、どの有力校にも、話題性に十分なエース、スラッガーたちが揃っているのである。
「こりゃぁ、今年のドラフトも楽しみですねぇ」
「永沢さん。その前に甲子園ですよ」
「いやいやプロの方も今年は負けていませんよ」
今年のセリーグ、パリーグともに混戦模様と化しており、未だ全ての球団にリーグ優勝できる可能性が残っている。野球人気の復活の一つには、逆指名制度が廃止され、FAの仕組みも更に改善されたことで、各球団の戦力が拮抗してきたことが上げられるだろう。
スポーツ部門を担当とする永沢のチームにとっては、まさに歓迎すべき時代の到来であろう。
それから案の定、居残り組の俺は会議室に残り、必要最低限の後始末をしていると、いつの間にか事務長の柴田くんが手伝ってくれていた。
「柴田くん、ありがとう」
「いえ、これぐらい・・・・」
彼女は微笑みながら、俺を見つめる。
「で、課長・・・・土曜日、琴乃ちゃんと何かありませんでしたか?」
またその話題か、と思わず後退りをする。
「何か今週から、課長と琴乃ちゃんの態度が、とっても怪しいのですけどもぉ?」
「ん、これといって特に・・・・」
勘の良い彼女のことである。俺としても迂闊なことを口にすることはできなかった。
まして琴乃くんとキスをしてしまった・・・・キスをされてしまったなどとは・・・・口が裂けてでも言えるものではないだろう。
だが、あの日の一件以来、俺と琴乃くんの関係は微妙な空気が漂うようになったのは、無理のないことであっただろう。お互いに挨拶をするにしても、どうしてもお互いに触れ合った唇を意識してしまうのである。
「もう。本当に何かあったのなら、私に相談してくださいよね」
「ん、そうだな・・・・」
「本当に私は課長の味方ですよぉ・・・・」
「あ、ありがとう、柴田くん」
俺の内面はともかく、表面的には余裕のある表情を取り繕って応じる。
だが、その彼女の言葉が本音であり、また、しっかりと柴田くんの目的意識にも沿った提案でもあったことを、俺は今日、明らかになる。
外回りの部下たちが帰社を終え、収穫の報告や明日からの予定などの協議を終えると、俺は永沢や田中、柴田くんたちと一緒に会議室を出た。
「あ、あの課長・・・・少し、お時間いただけますか?」
「んっ、どうした、琴乃くん?」
キスを交し合ってから、まだ五日と経っておらず、今もまた俺のほうは彼女から奪った唇を強く意識してしまっている。
「少し、相談に乗って貰いたいのですけど・・・・」
相談?
ああ、そういえば、帰り際に天野の奴も相談を持ち掛けてくる、ようなことを言っていたような・・・・
「ん、俺は構わないが・・・・暫く、琴乃くんを借りていいかな?」
俺は振り返って柴田くんに尋ねる。
何分、主に琴乃くんの雑用の仕事は、柴田くんの管轄内のことである。
「今日はもうほとんどの作業を終えましたので、私は構いませんよ」
「そうか。なら、課長室で聞こうか」
「はい。ありがとうございます」
彼女は俺と柴田くんに一礼する。
俺は課長室に入ると、琴乃くんにソファを薦める。
無論、課長室の鍵は掛けていない。柴田くん辺りにまた変に勘ぐられるのも考えものであろう。
「この前はすまない・・・・」
俺も向かいのソファに座りながら、彼女に陳謝する。
彼女が相談を持ち掛けてくるとしたら、この話題しかないだろう。
「あ、いえ、それは・・・・」
「謝って済むような問題じゃないけど・・・・」
「課長、それは・・・・もう、気にしないでください」
「えっ?」
てっきり糾弾されるものと思ったが、彼女には彼女の別の解釈であの一件を処理しているようであった。
「それに私のほうだって・・・・その、課長に・・・・しましたから」
確かに二度目のキスに到っては、彼女のほうから行動して、求めてきたものである。
「本当にごめんなさい・・・・」
「いや、その、琴乃くんが謝る必要はないよ・・・・」
彼女が謝罪するようなことを、俺はされた憶えがない。
こんな四十過ぎの中年である俺と、誰もが認める美少女の十五歳である琴乃くんとでは、明らかに俺の役得であったことだろう。
「・・・・迷惑、じゃなかったですか?」
俺は思わず唖然とする。
琴乃くんのような美少女とキスをして、喜ぶ男は存在しても、それを迷惑だと思える人物は皆無ではないだろうか。
これまでの彼女の仕草、振舞、性格からして、彼女は自分の容姿に無自覚だったことが窺える。
「課長には・・・・ずっと謝ろう、って思っていたのですけど、中々言い出せる機会がなくて・・・・」
「てっきり、その話題のことだと思ったのだけど・・・・」
俺は頭を掻く。
そもそも天野の奴が、相談してくる目的を明確に教えてくれなかったのが悪い。
「それで、俺なんかに相談とは・・・・」
「・・・・彼とのことなのですけど・・・・課長の考えを聞かせて貰いたくて・・・・」
「ははっ、今の若い子のことなんて俺に解かるかな?」
「・・・・今の彼と付き合って、婚約の話も上がってから、三ヶ月なのですけど・・・・まだ彼との交際に進展がなくて・・・・」
(こ、婚約!)
驚きに思わず、口にするところを何とか踏み止まった。
「その〜〜課長・・・・失礼なことかもしれないですけど、聞いてもいいですか?」
「ん、まぁ、俺で答えられる範囲内でなら・・・・」
四十一にもなって男女交際の経験は乏しいが、その中で助言できることなら喜んで答えるつもりであった。
「その・・・・課長は・・・・」
顔を真っ赤に赤面にして、琴乃くんは尋ねてくる。
「これまで・・・・SEX・・・・したことがありますか?」
「そりゃ、まぁ・・・・」
この歳になってまで童貞だとしたら、恐らくそれは希少価値ではないだろうか。
ちなみに俺の初体験は(勿論、後に妻となった彼女とではあったが)大学在学中と、比較的に遅いほうではあったが・・・・
「何人ぐらい・・・・ですか?」
「えっ・・・・」
清楚で一途な美少女の質問とは思えない内容に、俺は呆然せずにはいられなかった。
「男性には、抱く人によって、そんなに違うものでしょうか?」
「ん・・・・」
俺はこれまでに幾人とも男女の関係となっている。現在、もっとも最近な女性といえば、琴乃くんも知る事務長の柴田茜であろう。確かに二十歳の瑞々しい肉体を持つ彼女とのSEXは、これまでの女性と大きく異なる性的快感を得られたような気がする。
俗に言う、名器の持ち主ではあろう。
挿入すれば吸い付き、こちらが射精を終えるまで、いや終えようとも絡みつき、快感だけを伝えてくれる肉坪なのである。こんな名器を持つ女性は、妻となった彼女にも、数多く経験してきたソープ嬢、ホステス嬢にもなかったものである。
そして琴乃くんが語ったように、確かにそれぞれに全てが同じ、というわけでもなかった。
「まぁ、そうだね・・・・」
「やっぱり・・・・」
俺の回答を得ても、琴乃くんの表情はやや沈んだままだった。
やはり、そういうことが気になるお年頃なのだろう。
「気になるのかい?」
「はい・・・・もし、私の身体が気持ち良いものじゃなかったら・・・・彼と別れることになりそうで・・・・」
「・・・・」
男なんて膣内に出せれば、それで十分だと思うのだが・・・・
まして柴田くんほどの名器ではなかった、としても、こんな美少女とSEXができるのであれば、性的快感の大小など、二の次のことであろう。
「だ・・・・」
大丈夫、と言いかけて、俺は言葉を途絶えさせる。
(待てよ・・・・)
俺はこの時点で迂闊なことを口にできない事実に気がついた。
天野はその去り際、琴乃くんは彼との性行為の認可を俺に求めてくる、その返答如何で、彼に処女を捧げてしまう可能性を示唆していた。
故に俺は軽々しく、認可となりえそうな言葉を口にしてならない。
琴乃初音の処女は・・・・俺のものだ。
この美少女の処女膜は、俺こそが突き破るのに相応しい存在だろう。
俺は何としても、琴乃くんの処女が欲しい・・・・
と、俺は心の中で何度も反芻し、自分に言い聞かせるのであった。
「別れられそうなのかい?」
「全然、自信がないんです・・・・」
自分の魅力に少しでも自覚できていれば、言えない台詞ではあろう。
まぁ、俺は婚約なんてしたことがないし、そもそも年頃の女の子の気持ちなどが解かろうはずもない。
「この前、課長に言われたように・・・・それほど、ないし・・・・」
話を聞く限りでは、琴乃くんの彼氏は胸フェチと推定される。確かに彼女の胸の発育は、まだ控えめなほうではあるが、まだ十五歳という年齢を考えれば、十分な大きさではあろう。
「彼とは、幼少のころからの幼馴染で・・・・」
俺は初めて、琴乃くんの口から彼との生い立ち、彼への長い想いが綴られていった。
彼とは幼馴染でありながら、家柄の環境もあって、常に二人きりという状態は少なかったらしい。婚約の話が上がり、本格的な交際が始まってから、既に三ヶ月が経過しようとしているが、彼は就職したての新人で、彼女もまた都内に上京して来たばかりである。
お互いが多忙の身、ということもあって、これまでに彼とデートできたのは、たったの三回。遊園地に動物園に博物館。ただ手を繋ぐだけの健全なものだけで終わった。
彼自身はもっと親密になりたい、と積極的な行動に出るも、彼女に無理強いはさせたくない。厳しくいえば強引さに欠けていた。琴乃くん自身も進展することを望んではいるのだが、現状でも幸せである状態の関係から一歩を踏み出す、その勇気が足りなかった。
まぁ、そのおかげで、俺は琴乃くんの処女を・・・・彼女の【 処女喪失膣内出し妊娠SEX 】に臨めるのではあるが・・・・
「彼は都内の男子校に進学し、暫く会えなかった時期がありましたが、私も都内の女子高に進学して、」
彼女の彼への想いの強さが伝わったが・・・・
「少しでも彼と会える時間を作りたくて、部活も控え、彼と同じ職場に勤めたりして・・・・」
(お、同じ・・・・職場だとぉ?)
俺は思わず、聞き捨てにならない言葉に気が付いた。
「琴乃くん。その幼馴染で婚約者の彼、ひーくんとは・・・・まさか?」
「あ、ハイ・・・・ずっと職場では内密にしてきたのですけど、課長だから言っておきますね・・・・」
その瞬間、琴乃くんの座るソファの向こうにデスクがある、田中を凝視せずにはいられなかった。
あ、あいつが・・・・
(田中が、琴乃くんのその彼氏・・・・だとぉぉ!?)
これまで田中のことになると、何かと便宜を図ってやったり、庇ってやったりもしてきた。漢字こそ異なるが、同じ「ひとし」という名前、何よりも誠実で真面目な部分を気に入り、目を掛けてきた大切な部下である。
だが、この瞬間から、田中には「琴乃くんの初恋」「琴乃くんの彼氏」「琴乃くんの婚約者」という、新しい条項が備えられるようになる。
現段階でそれがどのように作用するか、俺でさえ解からないほど、激しく動揺していた。
「課長・・・・?」
俺の動揺していた様子に、琴乃くんが戸惑う仕草を見せる。
彼女は俺の邪な思惑を知らない。
先週のキスはただの事故ぐらいに思っているのだろうが、それは大きな間違いである。天野が仕掛けた催眠術の、その始まりの序曲にしか過ぎないのだ。
つまり、あれか・・・・琴乃くんを孕ませる、ってことは、田中から彼女を寝取る、ということになるのか・・・・?
それは琴乃くんの彼氏が田中だったという、新事実をたとえ知らなくても、寝取り計画ではあっただろう。だが、見も知らぬ他人だった彼のはずが、実際はお気に入りとしていた大切な部下の一人だった、とあっては、決して後味の良いものではない。
それだけ俺は、田中の境遇に自己投影していたのだ。
「ん、すまないね。少し驚いたものだから・・・・」
実際に彼女と田中が付き合っていたなどと、三ヶ月が経過しようとしているのに、気が付くことはなかった。
田中に好意を寄せる柴田くんは、この事実を知っているのだろうか?
(私は課長の味方ですよ・・・・)
唐突に、今朝の会議の後に聞かされた柴田くんの言葉が蘇る。
恐らく気付いているのだろう。勘の良い彼女のことである。この事実を知っているからこそ、柴田くんは俺に協力しようとしているのかもしれないではないか。
「まぁ、二人はまだ若いのだし、そんなに焦る必要はない、と思うかな」
「・・・・そうですよね・・・・」
「あ、ごめん。煙草を吸うよ・・・・」
「ハイ」
俺は未だに整理のつかない感情を隠すように、煙草に火をつけた。
「ただ、母様のことを考えると・・・・」
「うん? 琴乃くんのお母さんがどうかしたのかい?」
「母様にも婚約者、私の父のことですけど、居たんです。ですけど、母様も覚悟が決められなくて、時期を逸した・・・・っていうか、その・・・・」
「うん?」
何か言い辛そうではあったが、相談されている手前、尋ねずにはいられなかった。
「最初に父とは・・・・SEX・・・・」
「うん、言いたいことは解かったよ」
口にしたくないことを、皆まで言わせるのは酷というものであろう。
もっとも、今月中にはその酷なる仕打ちを彼女に与えようとしていたわけなのだが・・・・
「確かに今の琴乃くんと、田中は似た境遇か・・・・」
そしてそれは、もうすぐ現実のものとなる。
そう、俺の手によって・・・・
だが、まだ最終的な選択権はこちらにある。少なくとも、天野に聞かされた内容の限りでは、だが。
「ただ、そんな酷いことが続くとも限らないだろうし・・・・」
「ハイ・・・・」
「それに性急に事を急いで、元が壊れてしまったら、意味がないしね」
「ですね・・・・私も同じことを考えていました」
その際、定時を報せるアラームが職場全体に届けられる。
「あ、もうこんな時間・・・・すいません、長々と」
「いや。まぁ、いつでも相談には乗るから」
「ありがとうございます」
琴乃くんはソファを立ち上がると、俺に一礼して退出しようとする。
「あ、課長〜。くれぐれも他の社員の人たちには言わないでくださいね」
「ああ、約束するよ・・・・」
一人だけ手遅れのような気がしないわけでもなかったが・・・・
だが、それにしても、琴乃くんが田中とね。
未だに感情が整理できない。
「はぁ・・・・」
俺は深々と溜息を漏らさずにはいられなかった。
・・・・それから数日後。
俺のその渦巻く様々な感情は、本人が自覚するよりも早く、俺の表面へと具現化されるのだった。
俺は目の前に立つ、田中を凝視する。横には相変わらず憮然とした態度の永沢が、田中の背後には整然とした柴田くんの姿がある。
「遅刻、って・・・・お前、先週も遅刻して、先方に迷惑をかけたばかりだろうがぁ!」
《バァン!》
俺はデスクに置いてあるファイルを叩きつける。
「す、すい・・・・ません・・・・」
いつも一言、二言で穏便に処理して貰えたこともあって、田中の受ける衝撃の激しさは並大抵のものではなかったことだろう。
それでも言い訳をせず、ただ懸命に、涙に耐えようとする姿勢には、普段の俺ならば好感を憶えたものであっただろう。だが、今日の俺は容赦がなかった。
今回は永沢とのチームということもあり、永沢が一人で取材を済ませてくれたおかげで、大きな問題に発展することなく、問題を未然に防ぐこともできた。
だが、もしも先週の遅刻のように、田中個人での取材であった場合、会社側の受ける批判と、損害は計り知れないものと成り得たことだろう。
最悪の場合、今後我が社の取材を一切拒否という可能性もあったのだ。
(・・・・)
二度あることは、三度ある。
仏の顔も三度まで・・・・とは、誰の言葉であったか。
「・・・・少し言い過ぎたかな?」
田中と柴田くんが退出していた後、俺は横にいた永沢に尋ねる。
「いや、あれぐらいでいいんじゃないですか?」
今まで甘やかし過ぎましたからね、と言われて、俺は途端に顔を背けずにはいられなかった。
そう、俺は個人的な感情を優先して叱責してしまったのだ。
羨望、嫉妬、憎悪・・・・
しかも入社してから何かと目に掛けてきたことが、倍返しとなって増幅されたものであった。それも無理もないことであっただろう。俺の知っている、今年の新春に入社してきた田中均は、その時から琴乃初音と付き合い、婚約者でもあったのだから。
永沢が退出していった後、俺は課長室の中からデスクで沈痛する田中を凝視する。壁の電圧はそのままにしてあるから、向こうには今も睨まれていることは解からないだろう。
田中は唐突に立ち上がる。
俺や永沢にもう一度、謝罪する気になったのか、とも思ったのだが、田中は喫煙室のほうに向かって、そしてその途中で琴乃くんと擦れ違う。
恐らく彼女は、俺に叱責されたことで気落ちする田中を励すのだろう。
僅かな間だったが、二人は立ち止まり、一言二言、会話を交す。
琴乃くんは頬をやや染め、田中の表情も少しだけ和らぐ。
再びデスクにつくと、もう何事もなかったように作業に取り掛かっていくではないか。
俺は握り拳で、その光景を睨みつけていた。
それは俺の中で、一つの決意を下す。
ああ、そうかい・・・・田中。
彼女に慰められたのか・・・・
良かったじゃないか・・・・
「クックック・・・・」
俺から洩れたそれは、明らかに嘲笑であった。
ああ、いいだろう。
お前がその気なら、琴乃の身体で謝罪して貰うとしよう。
ああ、たっぷり、とな・・・・
お前も琴乃の処女が欲しかったようだが、アレは俺のものだ。
じっくりと味わって突き破ってやろう。
膣内出しすれば、その後、彼女に待っているのは腹ボテの未来のみ!
さて、そのとき・・・・琴乃の脹れる腹を見て慰められても、お前は今のように何事もなく済ませられるのかな?
それが今から楽しみの一つとなった。
だが、何よりも最大の楽しみは・・・・
「クックック・・・・」
頬を染めて田中の姿を見送る美少女の身体を見据え、そのときを今かと待ち侘びていくのであった。
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