行間話【 調査 】(視点・天野智樹)


 内藤から彼女の写真を手渡されたとき、思わずその可憐さに目を奪われてしまったのは、これまでに幾人もの美少女を手籠めにしてきたはずの俺でさえ、琴乃初音という美少女に勝る存在を遂に見出すことができなかったからだろう。
(ありゃあ・・・・一種の奇跡だわなぁ〜)
 正直、内藤の奴には悪いが、俺が頂いてしまうか・・・・と、思わせるだけの魅力が彼女には確かにあったのだ。
 だが、その脳裏に過ったはずの琴乃初音の寝取り計画(この場合も寝取りと呼ぶかどうかは不明だが・・・・)を、俺が断念したのは、個人的に内藤には少なからぬ借りがあったからであろう。


 馴染みの情報屋を介し、俺は内藤のマンションがある都内から車で移動すること、およそ数時間。
「さて、と・・・・初音ちゃんのご自宅は・・・・」
 いよいよその目的地が・・・・
「・・・・と、おいおい・・・・」
 豪邸ともいうべき屋敷の、「琴乃家」という表札を見て、俺は思わず、その威厳さと広大さに唖然とせずにはいられなかったほどである。
 だが、それもそのはずであろう。
 俺は情報屋から受け取った報告書に目を落とす。
 琴乃家とは、かつてのとある名家が衣替えした際に与えられた家名で、その歴史はまだ一代と若く、以前の名家の名を「草薙家」という。
「まぁ、その草薙家にしても、都内で由緒正しき家柄と目されたほどの名家だったらしいからなぁ・・・・」
 そして、琴乃初音の父親は・・・・
(あちゃぁちゃぁ・・・・)
 九州のほうから覇を唱えていた大原財閥を数年かけて完全併呑し、今や日本全土の企業を手中に収めた稀代の一大人物である。
 また以前、内藤に見せて保存もした青山恵都のこと、名女優「kto」の後ろ盾となった(正確にはかつての後ろ盾ではあるが、未だにこの事実は公表されていない)人物でもあった。
「神崎・・・・和馬・・・・」
(またこんなところで、この男の名前が出てくるとはなぁ・・・・)
 神崎家二十七代目当主、神崎和馬。
 神崎和馬には美しき愛人に、何百人にもなる美しき愛妾が存在し、彼に認知された子供だけでも、実に二桁に及ぶ。その数多くの美姫たちの中でも最も美しく、可憐であると一族で囁かれたのが、琴乃弥生(旧姓・草薙弥生)が出産した、琴乃初音であっただろう。

 内藤の奴は、その琴乃初音を孕ませよう、としているわけだが・・・・
(これは寝取り計画を早々に断念しておいて良かったなぁ。おい、俺!)
 初音ちゃんを孕ませておいて問題となるのは、こんな名家のお家騒動の云々もあるが、何よりも、この一大人物の眼光をもかわさなければならない必要があろう。
 神崎和馬の機嫌一つで、国の法律や憲法さえも変わる、というほどの実力の持ち主の眼光を・・・・
(はぁぁぁ・・・・こりゃ、内藤の奴、凄い娘を見つけ出したものだ)
 冷厳壮大な御屋敷。まるで不法の来訪者を拒むような巨大な門。甲子園がまるまる納まりそうな敷地。梯子を使っても越えられそうにない石壁。「ただ、こりゃぁ。聞き込みのほうも、決して楽じゃないぞぉ・・・・」
 たった一代でも名門「琴乃家」となった建物を前に、俺はそう確信するのであった。
 だが・・・・
 内藤から借りてきた一枚の写真を取り出す。
 まぁ、常に名家の富豪だけが良い思いをして、この世の春を謳歌している世の中なのだから、たまには一般人の俺ら(今回は内藤)に抱かれて、その結果、孕まされちゃってもいいんじゃねぇのかい?


 俺が聞き込みをする理由には、催眠術を仕掛ける前の仕込みのためである。つまり、彼女のこれまでの経歴、人間関係などを予め調べておき、あくまでも占いで出た結果、だと思わせる必要があるからだった。
 カラクリを知れば、ペタンだと言われても仕方のないことではある。だが、それを見抜かれない限り、有効な手段には違いない。時に良く出来た贋作の絵画がオリジナルの絵画と認定されるなど、鑑定士の頭を悩ますそうであるが、結果的にあれも結局は騙されたほうが悪いのである。
 まぁ、それはともかく・・・・後日、初音ちゃんに告げた占いの正解率満点の種は、この事前調査の賜物であったわけである。
 その際、内藤の奴も俺の占いにはすっかり騙されていたようであったが、その甲斐もあって、初音ちゃんも簡単に俺の占いを信じ、そして容易に催眠術に掛かってくれたのだから、賞賛は素直に受け取っておこうか。


 琴乃初音の人間関係を洗っているうちに、すぐにその彼女の彼、という存在を突き止めることができた。
 って、いうのも・・・・
「お隣の名家の坊ちゃんかい!」
 後日、俺が占いで指摘したように、初音ちゃんの彼氏とは幼馴染の間柄でもあったわけである。
 その彼の写真を手に入れて、俺は「それほどかぁ?」とも思う。
 確かに顔立ちは悪くはなさそうではあるが、少なくとも、初音ちゃんと釣り合うとは到底に思えない。まして若い頃の俺に比べたら・・・・(無論、財力では遠く及ばないので・・・・容姿でしか比較できないのだが)可憐な彼女の彼氏と呼ぶには、やや物足りなさを否めないでいた。
 また、その両家の間では、既に婚約という話も上がっているという。
(婚約かぁ・・・・)
 恐らくは内藤でさえ知らない事実ではあろう。
 ただ、あくまでも婚約の話が上がっただろう、という第三者の推測の域を出ず、その結論は当事者以外に不明ではあったが・・・・

 初音ちゃんの経歴を調べれば、調べるほどに驚かせられた。
 まず、学力は非常に優秀といっていいだろう。
 教師たちからの受けも良く、品性良好。まさに優等生の模範ともいうべき存在ではあったらしい。
運動のほうも、母親が高校テニス界のインターハイ覇者ではあったらしいが、娘のほうも常に女子中学テニス界の上位に名を連ねていた逸材であったらしい。
 だが、そんな彼女も都内の高校に進学した際、彼女はスッパリとテニスの世界から足を洗ってしまっている。なんでも今は、彼と一緒に居られる時間を大切にしたい、というそれだけの理由だけで・・・・
「この事実も、内藤は知らないんだろうなぁ・・・・」
 俺は調べれば調べていくほど、彼女がただの万能少女ではなく、全能少女・・・・もしくはビジネスパートナーとしても、妻としても、お値打ち完璧美少女であることが解かっていく。
「これであの非の打ち所もないルックスって、天は彼女に一体、何物を与えたんだよ・・・・」
 俺は調べ尽くした初音ちゃんの経歴、人間関係を、再びその帰路で頭の中に叩き込む。
「はぁ・・・・しかし、この距離、遠くねぇ?」
 まぁ、だからこそ彼女は、女子寮住まいなんだろうけど。



 そして遂に、初音ちゃんにとっては運命の岐路ともいうべき、今週末の土曜日がやってくることになる。
 テーブルの上には占いに使用した無数のカードと、彼女をより深い催眠状態へと誘う、香料の小瓶だけが残されていた。
 内々の事前調査の成果を、本当に占いのものと信じ込ませることに成功した俺は、容易なまでに初音ちゃんを催眠状態に陥れることができたのであった。
 ここまで完璧に落とせたのも、彼女の精神面が無警戒であったこと。そしてその功績は、占いのそれ以前から、この職場の空気を作り出すことができた内藤と初音ちゃん自身による、その賜物であったことだろう。

「それじゃぁ、目をゆっくり・・・・開けてください」
 俺は優しく、静かな声で彼女に問いかける。
 向かいのソファに座る琴音ちゃんは、相変わらず可憐な表情ではあったが、何処か無機質で生気に欠け、開かれた瞳にも瞳孔が丸く、まるで虚空の何処かを見据えているようであった。
「まずは簡単な質問から始めていきますから・・・・この声が聞こえましたら、ゆっくりと頷いてくださいね」
 そしてゆっくりと、初音ちゃんは頷いた。
 彼女の深層心理に俺の声が届けられた、その証明である。
「それでは、まず、貴女の名前を聞かせてください」
「・・・・琴乃・・・・初音・・・・」
「年齢は?」
「・・・・十五歳・・・・です・・・・」
 俺は催眠状態の良好さに会心の笑みを浮かべる。
「貴女の誕生日はいつですか?」
「・・・・十二月・・・・十四日・・・・です・・・・」
「貴女に彼氏は居ますか?」
「・・・・はい・・・・」
「それじゃあ、彼とのキスは経験済みですか?」
「・・・・いいえ・・・・」
「では、キスをした経験は、ありませんか?」
「・・・・はい・・・・」
 まぁ、当然ではあろうか。
 初音ちゃんがこれまでに付き合った異性は、今の彼・・・・幼馴染の婚約者である彼にしか存在しないのだから。
 催眠状態の良好さを確認して、俺はいよいよ核心に触れていった。
「それじゃぁ、初音ちゃんはまだ、処女なのかな?」
「・・・・はい・・・・」
 催眠下の彼女は恥じらう素振りも見せずに肯定した。
 喜べ、内藤!
 初音ちゃんはまだ処女だってさぁ!!
 その初音ちゃんの彼氏には悪いが、俺としても、このまま良家のお坊ちゃんの彼に捧げてしまうより、内藤の奴に捧げさせてやったほうが良いと思っている。
(って、いうか・・・・何よりもそっちほうが断然に面白い!)
「オナニーの経験はありますか?」
「・・・・ありません・・・・」
 近年の女子高生に比べて、随分と遅れているとはいえ、まぁ処女だったことからも未経験であっても、そう可笑しくはない話だろう。
「生理はありますか?」
「・・・・はい・・・・」
 俺はニヤリと笑う。
 この初音ちゃんの回答によって、内藤が望んでいた、孕ませ計画が確定した、その瞬間であった。
「前回の生理はいつごろのことですか?」
「・・・・七月・・・・十日頃・・・・です・・・・」
 俺は内藤の職場にある七月のカレンダーに目を向ける。
(昨日か・・・・)
 まだ前回の生理を迎えて間もなく、彼女が次の排卵日・・・・内藤に抱かれるであろう運命の危険日(排卵日)は、だいたい二十五日前後ぐらいであろうか。
「次の質問です。貴女は彼氏にキス、ないし身体を迫られたことがありますね?」
「・・・・はい・・・・」
 まぁ、元々婚約の話があるほどの間柄であり、本格的に交際を開始した恋人同士なのでもある。何ら不思議なことではないだろう。
「彼に抱かれたい、と思っていますか?」
「・・・・はい・・・・」
「つまり・・・・貴女も、彼氏との仲をもっと進展させたい、とは思っているのですね?」
「・・・・はい・・・・」
 つまり、そういうことなのだ。
 彼氏も彼女も、もうお互いに他人の一線を越えたい、とは思っている。だが、タイミングなり、覚悟なり・・・・その場のシチュエーションなどによって、進展が遅れてしまったのであろう。
「それじゃ、会社の上司の課長に相談しましょう。課長は貴女の上司なのですから、きっと貴女の恋愛の相談にも乗ってくれることでしょう」
「・・・・はい・・・・」
「では、来週中がいいですね。折りを見て、彼氏との交際に進展がない悩みを、課長に相談してみましょう」
「・・・・はい・・・・」
「その上司の課長の名前は?」
「・・・・内藤・・・・課長・・・・」
 内藤の姓を確認して、俺は頷く。
 これで別人の名前が出てきたら、それこそ笑い話にもならない。
 名前が出なかったのは、覚えていなかったのか、それとも役職で呼ぶことに慣れすぎていたか、そのどちらかであろう。
「ですが、貴女はまだ彼に抱かれていません・・・・彼のほうもまだ貴女を抱いていません・・・・何故なら、貴女はまだ処女ですからね」
「・・・・はい・・・・」
「つまり、貴女の身体がちゃんとSEXができる身体か、どうか・・・・そしてその貴女の膣内が気持ちが良いものなのかさえ、彼にも貴女にも解からないことなのです」
「・・・・はい・・・・」
「では、彼氏の他に、抱かれてみたい男性は居ますか?」
「・・・・いいえ・・・・居ません・・・・」
 まぁ、幼少の頃から一途に、初恋を抱いてきた初音ちゃんである。この彼女の回答は容易に想像がついた。
 まぁ、内藤。お前の名前は出てこなかったけど、他の男の名前も出てこなかったのだから、まぁ、よしとして、するべきだろう?

 俺は持参した鞄の中から、一枚のメモを取り出し、彼女の眼前に突き出した。
「まず、このメモを一読してください」
「・・・・はい・・・・」
 時間にして二十秒ほど・・・・俺はゆっくりと彼女に問いかけた。
「では、このメモを読み上げてください」
「・・・・はい・・・・内藤課長・・・・の・・・・権利・・・・認めます・・・・」
 途絶えながらも、催眠状態の彼女は最後まで読み上げた。
「それは貴女の誓いです。誰に告げることも、貴女自身も思い出すことはありませんが、今ここで貴女は誓ったのです・・・・内藤課長に、貴女の処女を与える、その権利をね・・・・」
「・・・・」
「貴女は内藤課長に処女を与える権利を認めましたね?」
「・・・・」
 返答はなかった。
 稀に固定観念が強い場合、どうしても潜在的に暗示を受け付けにくい場合がある。
「貴女は課長の権利を認めましたよね?」
「・・・・はい・・・・」
 俺は今一度、同じ暗示を繰り返す。
 大抵は二回も繰り返せば、深層心理に深く刻まれることになろう。
「内藤課長に貴女の処女を与える、その権利を認めましたね?」
「・・・・」
 ちっ。
 何という固定観念の強さではあろう。たかが処女ぐらいで、そこまで彼に義理を尽くすこともなかろうに。
 俺は先ほどのメモに書き加えて、再び彼女の前に差し出した。
「もう一度、このメモを読み上げてください」
「・・・・はい・・・・内藤課長・・・・の・・・・琴乃初音の・・・・処女の権利・・・・認めます・・・・」
「それは貴女の誓いです。貴女自身が思い出す必要もない、誓いではありますが、貴女は内藤課長に処女を与える、と認めましたね?」
「・・・・はい・・・・」
 よし。
 なっ・・・・
 俺は頷きながら、無意識のはずの催眠状態の瞳から、涙が零れ落ちるのを見て、唖然とさせられる。これまでに催眠術に掛かった者は決して少なくはないが、どんなに過酷な要求を突きつけられようと、初音ちゃんのように涙を見せたものは皆無であった。
 彼女の固定観念の強さ、というものを垣間見た気がする。


「では、内藤課長に処女を捧げます、と、改めて誓いを口にしてください」
「・・・・はい・・・・内藤課長に・・・・処女を、捧げます・・・・」
 それは琴乃初音という、この美少女の純潔が内藤のものとなった、その決定的瞬間であっただろう。無論、それはあくまでも彼女自身の誓いであって、時には強引に奪われてしまう(たとえば、レイプの)可能性もあるのだが・・・・
「つまり、彼氏の他には抱かれてもいい男性は居ない、ということでしたが、貴女が処女を捧げると誓約した内藤課長だけは、貴女を抱く権利がありますね」
「・・・・はい・・・・」
「もう一度、尋ねます。貴女の身体を抱いて良い男性は、彼以外に居ますか?」
「・・・・はい・・・・」
「その男性は誰ですか?」
「・・・・内藤・・・・課長・・・・」
 よろしい。
 俺はゆっくりと頷いた。
「貴女は自分の身体に自信がありますか?」
「・・・・いいえ・・・・」
「そうですよね。貴女の身体はまだ処女なのですからね」
 無論、処女ではなかろうと、初音ちゃんの身体は十分に魅力的なのではあったが・・・・
「ならば、SEXをすればSEXをするほど、女の子の身体は気持ち良い身体になれる、そう思っていますか?」
「・・・・少し、は・・・・」
「なら、考えを改めて、そうもっと強く認識するようにしなさい。SEXをすればするほど、気持ち良い身体になれる、とね・・・・」
「・・・・はい・・・・」
「それでは・・・・」
 誘導催眠の暗示とあって、俺は慎重に彼女の脳裏に囁きかけた。
「貴女に排卵計を渡しておきます。そして意識が戻っても、排卵計を持っていることに違和感を覚えてはいけません」
「・・・・はい・・・・」
 俺は鞄から排卵計を取り出し、彼女の掌に手渡す。
 これは体温計のように口に咥えるだけで、手軽にかつ正確に、女性本人の排卵日当日を教えてくれるものである。
「これで毎朝、必ずチェックしてください。ああ、勿論、検査後は、その日はもう検査したことも、その検査結果も貴女は思い出せません」
「・・・・はい・・・・」
 これによって初音ちゃんは、自身の排卵日を無意識に割り当てる。
「また検査の結果、当日、と判明した場合、高校を休んで、今日の服装で会社に出社をしなさい。そうですね、一応事前に会社に連絡をしておき、課長に連絡をしましょう。もし公休日の場合には、課長の自宅に連絡を入れて、落ち合えるようにします。また、その日以降、排卵計は不要なものとなりますので、内藤課長に差し上げましょう」
「・・・・はい・・・・」

 そしていよいよ、内藤の願望を叶える暗示である。

「貴女の身体がしっかり、SEXに対応できる身体になっているのか、まず内藤課長には貴女の膣内を確かめて貰う必要がありますね?」
「・・・・はい・・・・」
「ですから、検査結果で当日と判明したら、課長に抱いて貰えるように、SEXをして貰えるようにお願いしましょう」
「・・・・はい・・・・」
「勿論、課長とのSEXに避妊ゴムなんて不要です。貴女の要望に付き合って貰うのですから、課長にはせめて生で、膣内出しして貰うぐらいのことは当然のことです」
「・・・・はい・・・・」
 催眠状態の無機質な返答に変わりはなかったが、俺は微笑を抑えられなかった。この暗示の成功によって、処女の初音ちゃんは排卵日のその当日に、内藤に生挿入、膣内出しのSEXを求めることになるだろう。
「妊娠なんて考えても、恐れてもいけません。いや、貴女はまだ十五歳なのですから、膣内出しされても妊娠はしない・・・・むしろ、彼氏との今後のことを踏まえて、膣内出しされることに慣れておく、それぐらいの意気込みが必要ですよ」
「・・・・はい・・・・」
「処女を喪失した際、貴女は無意識のまま膣内に意識を向け、挿入された異物を強く認識します。破瓜の痛みに苦痛を漏らしても構いませんが、意識は挿入された異物だけを認識して、きっちり膣内射精されることまでを認識できるように努めましましょう」
「・・・・はい・・・・」
「また処女喪失から膣内射精されるまでの間、内心で彼に詫びることぐらいのことは許されます。表情に浮かべることも、涙することぐらいも許されるでしょう・・・・ですが、身体だけは相手との結合から逃れようとしてはいけません。貴女自身が認めた正統な権利で、貴女は抱いて貰ったのですからね」
「・・・・はい・・・・」
「ですが、処女を失ったことで課長を責めるのは筋違いです。嘆いてもいけません。貴女が抱いて貰えるように頼んだことですから、その現実を受け入れていくことしかないのです」
 もっともそれは彼女が誓いを守った、その結果ではあるのだが、それが元で自殺などをされてしまっては、元の子もない。
「ではここまで、理解できましたら、ゆっくり頷いてください」
 俺は一旦言葉を区切り、暗示が浸透していく時間を作る。
 彼女はゆっくりと頷いた。
 暗示が彼女の深層心理に届き、全てを理解した証明である。
 無論、初音ちゃんはそれがどんな事態を招くことになるのか、解かって頷いたわけではない。いや、妊娠の仕組みは知っていても、彼女の常識から強制的、潜在的に欠落させたのである。
 十五歳の自分はまだ妊娠しない、のだと、偽りの教義を信じて。
 実際は排卵している際に膣内出しされれば、妊娠はたとえ十五歳の少女であろうが、妊娠するものは妊娠するのだが・・・・
 果たしてこの可憐な美少女が、どうこの現実を受け止めるのだろうか。
 妊娠が発覚したときの・・・・愕然とする初音ちゃんの表情を見届けることができないのが非常に残念ではあった。

「また今日より催眠期間中、課長の許可なしに、貴女にはSEXをすることが許されません。何といっても内藤課長は、貴女の職場の上司なのですから・・・・また例え許可が得られたとしても、処女のうちは内藤課長以外、誰ともSEXをしてはいけませんよ・・・・」
「・・・・はい・・・・」
 相手の深層心理に呼びかける声調のため、咽喉の渇きが酷い。
「内藤課長とSEXをした後も、極力、内藤課長とSEXをできるように心掛けましょう。SEXをすればSEXをするほど、貴女の膣内は気持ちが良い身体になると思います。彼氏との初SEXで彼を気持ち良くさせたい、もっと快感を与えられる身体になりたい・・・・と思うのであれば、可能な限り、課長とSEXをして膣内出しして貰えるように。課長とSEXの特訓に励むことこそ、彼氏との関係を進展させる、最大の近道だと思いなさい・・・・」
「・・・・はい・・・・」
「また相手の課長は貴女よりも経験豊富ですから、どんな不自然な行動にも違和感を覚えてはいけません」
「・・・・はい・・・・」

 そしていよいよ、催眠術の仕上げとなる。

「どんな生物にしろ、生命は大切ですよね?」
「・・・・はい・・・・」
「ですから、もし妊娠が発覚したら、堕胎を考えてはいけません。自分の過失で身籠ってしまった生命なのですから、当然、出産することだけを考えましょう」
「・・・・はい・・・・」
 この出産に限っては幾度もなく、彼女の深層心理に繰り返し、何度も刷り込ませていく。これによって彼女は、催眠期間が過ぎ去った後に妊娠を自覚しても、堕胎を選択することはないことだろう。
 果たしてこの美少女が選ぶ未来は、どんな未来なのであろうか?
 たとえ彼女がどんな未来を選んだとしても、彼女が内藤の子を出産することに変わりはないのだが・・・・
「貴女の意識が覚醒しても、私から暗示を受けた内容も、貴女が誓約した誓いも思い出せません。思い出せませんが、決して無くなったわけでもありません・・・・全て理解できましたら、誓います、と口にしてください」
「・・・・誓います・・・・」

 催眠術に用いた導引性香料の僅かな残量を見て、悪戯心に火をつける。
「貴女は十分後に目を覚まします。ですが、目を覚ました後、私の姿も存在も認識できません。今、この職場にいるのは、内藤課長だけです」
 その内藤は職場の片隅でコーヒーを啜りながら、今もこちらを心配そうに窺っている。
「そして再び二人きりになったことで、内藤課長を一人の男性として、強く意識してください。そう、次第に強く・・・・です」
「・・・・はい・・・・」
「次第に貴女の胸の鼓動が高鳴り、課長の顔を見て極度の緊張状態に達します。緊張状態に我慢できなくなったら、課長室から離れても構いません。もっとも職場には、課長と貴女だけ・・・・二人だけしかいませんから、言葉にはせず、課長にキスを催促してみましょう・・・・」
「・・・・はい・・・・」
 果たして内藤は、無言のまま唇を突き立てる初音ちゃんにキスをしてやれるのだろうか・・・・
 そのときの内藤の困惑した表情が、今から非常に楽しみではあった。
「キスをされたら、今度は初音ちゃんのほうから、課長の唇を奪いましょう。舌を課長の唇の中に入れて、絡めてみたくなります・・・・そう、定時の時刻まで、初めてのキスに蕩ける気分だけしか考えられなくなります」
「・・・・はい・・・・」

 俺は最後の暗示を終えて、小坪の蓋を閉じる。
 残量の少なさから、近いうちに馴染みの闇商人から補充させておく必要がある。もっとも二百万の返済もあるから、今すぐに、とはいかないだろうが・・・・
 俺はゆっくりと立ち上がり、本当に昏睡しだした初音ちゃんの寝顔を一瞥する。

 さて、この眠れる可憐な美姫は、どんなキスシーンを演じてくれるのだろうか・・・・?
 そして、内藤の胤を宿して、どんな未来を選択するのであろうか?

 俺は内藤の課長室を後にして、ゆっくりとその当事者の一人となろう友人に微笑した。


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