第十一話【 降雨 】
降り頻る無限のような雨。
無数の数滴が車のフロントウインドを叩いていく。
ワイパーを作動させて透明のアーチを描いても、すぐにその跡は降り続く降雨によって意味を成さず、ただその遣り取りだけを繰り返す。
一ドライバーとして、正直、雨が嫌いだった。
愛車のボディが白ということもあって、汚れは目立つし、何より深夜の運転中は非常に視界が悪くなる。ライトを点けている感覚さえも曖昧になり、過去に事故を(と、いっても自爆だが)起こしたときも、天気は必ず雨だった。
だが、今夜の俺はハンドルを軽快に握り、気分も上々であった。
今回はつい先ほどまで助手席に座り、自宅まで送り届けた柴田くんにも膣内出しすることができ、また妊娠もすれば出産までも考慮してくれるというのだ。
時計を見れば、もう今日が終わろうとしていたが、思わぬ展開によって孕ませ願望を成就させることができた俺は、まさに雨の憂鬱にも負けず、有頂天のまま降雨の帰路を踏破していった。
だが、マンションの駐車場に到着したとき、俺は思いもよらぬ人物の姿を見つけ出す。
「こ、琴乃・・・・!?」
一瞬、俺の見間違いか・・・・?
とも思ったものだが、駐車場に車を止めて、再び駐車場の出入り口に戻ったとき、それが俺の勘違いではなかったことを再確認する。
「こ、琴乃くん。傘も差さずに・・・・」
「・・・・」
彼女は傘も差さず、まさにびしょ濡れであった。恐らく・・・・いや、間違いなく長時間、ここで立ち尽くしていたのであろうことは、容易に予測がつく。
だが、何故・・・・?
琴乃に施された催眠術は、出産を義務付ける長期的なものを除けば、昨夜の間に解けているはずであった。実際に彼女は、彼氏である田中と結ばれる決意を俺に表明し、約一カ月に及んだ同棲関係の決別として、マンションのセキュリティカードを返還したばかりのことである。
「・・・・課長・・・・」
「でも確か、今日は田中とデートのはずじゃ・・・・?」
「・・・・」
琴乃は次第に顔を歪ませると俺の体に飛び込んできた。
雨に打たれ過ぎていたせいもあって、彼女の身体は非常に冷たく、酷く震えてもいた。
「琴乃くん、急にどうしたんだい?」
俺は彼女の身体を抱き留めながら、なるべく優しげに問い掛ける。
「・・・・違う人の・・・・香水・・・・」
「えっ?」
「これは・・・・柴田さんの?」
途端に俺は、彼女から視線を逸らした。
「・・・・」
彼女はそれ以上の追及を控えたようで、俺はとりあえず大きなため息を吐いて心の底から安堵したものである。だが、よくよく考えてみれば、俺は浮気をしたわけでもなければ、不倫をしてきたわけでもない。琴乃に対して後ろめたく思う必要はなかったはずであった。
・・・・だが、恐ろしいまでの嗅覚だ。
その視線を彼女へ戻す前に、琴乃は俺の首筋を抱き締め・・・・
「んっ・・・・」
唐突に唇を重ねられて、俺はただ呆然とする。
彼女が催眠期間中、周囲の人目を気にせずに、野外でキスをしたことはこれまでにもあったが、それはあくまでも旅行中だけに限定され、さすがにマンション付近での行為はなかった。
だが、琴乃は俺の戸惑いなどに関わりなく、尚も唇の接触に、お互いの舌を絡ませてくる。
「・・・・」
ようやく唇が離れ、琴乃は手のひらを口元に当てて瞳を閉じた。
「課長、急に・・・・その、ごめんなさい・・・・」
「い、いや・・・・」
もう触れることも叶わないだろう、と思っていたそれだけに、再び彼女とキスをできたことは喜ばしい限りのことであった。
「でも、さすがにここじゃ・・・・」
俺はゆっくりと周囲を見渡す。
傍目から見れば時間も時間だし、誰の目にも援助交際をしているようにしか見えなくもないだろう。だが、相手は未成年者なのである。下手をすればマンションの住人から訴えられる可能性も有り得なくはないだろう。
「・・・・とりあえず、中に入るか?」
俺のその誘いに、彼女はゆっくりと頷いた。
俺はまず帰宅をすると、濡れた琴乃のために風呂を沸かした。
幸い、近日まで彼女が滞在していたこともあって、彼女の着替えも最低限に残っている。
俺はその間にコーヒーを淹れて、見たくもないTVを点けた。
考えごと・・・・そう、琴乃のことで考えていた。
琴乃が彼氏・・・・田中と結ばれることを決意したその段階で、天野の催眠術は(出産限定を除き)解かれている状態のはずである。つまり、今の俺と琴乃は、会社の上司とその学生アルバイトの関係でしかない。
《 催眠が解けてから迫るなよ・・・・ 》
《 無理強いして、犯罪者になんかなるなよぉ〜 》
俺は別れ際の天野の忠告を思い出す。
そう、過日まで俺が琴乃とSEXだけの甘い日々を送れたのは、天野の催眠術による、その恩恵でしかないのだ。
では、今の状態は・・・・?
催眠が解けたことによって俺を糾弾しにきた、というのなら、まだ解かる。だが、それでは何故、彼女は催眠が解けた今となっても、俺とキスをしたのだろうか?
「天野に電話してみるか・・・・」
俺は時計を見て、その考えを断念する。
催眠術をかけた張本人に相談したいのも山々だったが、時間が時間である。いくら中学時代の親友だったからとはいえ、平日の深夜ということもあって常識を逸する時間ではあろう。
「まぁ、相談なら明日にでもできるだろうさ・・・・」
そしてバスルームから出てきた彼女を見て、俺は思わずドキッとする。
正直、天野の忠告を思い出していなければ・・・・
いかん、いかん。性犯罪者まっしぐらなんて!!
「はい、コーヒー・・・・」
「あ、ありがとうございます・・・・」
俺は淹れたてのコーヒーの入ったカップを彼女に手渡し、彼女はそれを受け取ると沈痛の表情で向かいのソファに座った。
深夜番組のBGMが静かに室内へと漂う。
「田中と・・・・何か、あった?」
「・・・・」
「もしかして・・・・彼にバレちゃったのか?」
十分に有り得ることであった。
田中はまだ琴乃が処女であると、信じて疑っていなかった様子だった。そして彼女に処女を捧げて貰えると聞かされて、彼女に誓約を求めていたほどである。
だが、実際は天野の催眠術に掛かり、俺の毒牙に掛かってしまったのだが・・・・
もし、田中の奴が俺と琴乃の関係を知ったら・・・・
そのときは俺が田中の立場でも、彼女に激怒したことだろう。
「・・・・」
琴乃はコーヒーのカップを手にしながら、ゆっくりと頭を振った。
「その・・・・ひーくんとは・・・・しなかった・・・・」
彼女の話を聞く限りでは・・・・
琴乃は今日の退社をした後、田中とデートして、俺に告げたようにラブホテルに(田中の奴、琴乃の年齢を考えれば、度胸あるなぁ〜)入ったらしい。だが、キスまで済ませて、いざ・・・・と、いうときに彼女は、恐れて逃げ出してしまった・・・・らしい。
「ふむ・・・・」
話を聞いて、田中の、そして琴乃の落胆が理解できなくもなかった。
誰もが認めるであろう可憐な少女と初めて結ばれる、ましてその彼女の処女を捧げて貰えるのだと思ってしまえば、田中は相当に有頂天を極めていたことであろう。
そのまさに寸前で逃げ出されてしまったのだから、田中には同情するしかない。もっとも、既に琴乃の処女を奪ってしまった俺に、彼を同情する資格はない、のかも知れなかったが・・・・さぞ田中は豪快な空振りに終わってしまったこの事態を悔い悩むことだろう。
また琴乃に至っても、同様のことが言えた。
俺に決意を告げたように、彼女も相当な覚悟を持って臨んだことは間違いなかったのだから。その彼女の処女を奪ってしまった俺に言えた義理ではないが、その逃げ出してしまったショックで、降雨に晒されていたのだとしたら、その責任は俺が負うべきものであろう。
「やっぱり・・・・恐くて・・・・」
「処女を喪失していたことを? それとも・・・・身体の具合が?」
「その・・・・両方です・・・・」
俺は少し冷めてしまったコーヒーを啜った。
「だとしたら、その後者の心配は無用だな」
それほど多いってわけでもなかったが、俺がこれまでに関係をしてきた女性陣の中でも、とりわけ柴田くんと琴乃の身体は名器だと確信している。そしてその柴田くんと琴乃との二人の間にも、また大きな開きの差があるのだが・・・・
つい先ほどまでに、柴田くんと生挿入によるSEXをすることができたそれだけに、俺は絶対的な確信を得ていた。
「変な話だろうけど・・・・俺が保証する」
「・・・・本当、ですか?」
「だから、俺は・・・・君が田中と・・・・彼のもとへ戻ると告げられたときに、未練を口にしたんだよ・・・・」
そう、実際に手放したくはなかった。
実際に催眠術の期間延長だって考えた。
許されるのなら、もっと琴乃を抱き続けていたかったのだ。
それだけに、俺にとって琴乃の存在は・・・・
「で、でも・・・・課長は優しいから・・・・」
「あのなぁ! 琴乃くん!」
説得しつつも頭を片手で掻き毟った。
今も目の前にある快楽の宝庫のような身体を前にして、懸命に抑制するので精一杯の自分である。その欲情している一割でも、彼女が自覚できたとしたら、彼女の不安の半分は即座に解消されることであろう。
「今も、俺は・・・・君に襲い掛かりたい。ぐらいに、欲情している」
「・・・・あっ・・・・」
途端に赤面して恥らう琴乃。
そのたった一つ一つの仕草が、更に俺の嗜虐心を擽るのだが・・・・
襲い掛けようという手を懸命に抑制し、俯く彼女の頭を撫でる。
「まぁ、今夜はもう遅いし、今夜は泊まって・・・・」
「でしたら・・・・襲ってください・・・・」
「えっ?」
琴乃のその要望には、俺も意表を突かれた。
「か、課長に襲われる・・・・それぐらいの自信を私にください!」
「い・・・・本当に、いいのかい?」
俺の確認に黙って頷く琴乃。
その瞳にある眼差しは、明らかにこれまでの彼女とは違っていた。
俺は琴乃の身体を抱え上げると、隣の寝室へと運び込む。これまでにも何度も彼女を抱いたこともある部屋ではあったが、今夜だけは何処か今までと異なっていると思えた。
何処か違うなど、と俺には解からない・・・・
が、琴乃は初めて催眠術によってではなく、彼女自身の意思で俺に抱かれたいと願ったのではないだろうか・・・・?
無論、何かの根拠があって、そう思ったのではない。
証拠があるわけでもなく、全てが霧のように謎ではあった。
ベッドの上で覆い被さりながら、もう琴乃は抱けない、と思っていた。
いや、明日から抱けるとも限らないだろう。
そもそも彼女の催眠術が解けた今となっても、琴乃を抱いていることが一つの奇跡であるかのようだ。
故に俺は最後の晩餐、という意味も理解して、彼女の身体を一晩に渡って貪り続けていった。
激しく彼女の膣内だけを求め、自らの欲望を吐き出す。
柴田くんのような美女の名器を堪能し、まだその余韻も醒めぬ間に、今度は琴乃の可憐な美少女のような・・・・極上の名器を味わい尽くしていく。
恐らく俺は、一生この日を忘れることはできないだろう。
たった一晩の間で、二つの異なる名器と結合できた人生最良の日を。
「くっ・・・・」
熱い蜜に満ちる彼女へ、俺は狂ったように腰を突き上げた。
柴田くんとのSEXとは異なり・・・・もう琴乃の膣内に挿入したら、もはや歯止めは利かない。理性では彼女の心境を労わって、懸命に抑制を試みても・・・・本能と体はただ純粋に、更なる快楽の供与を彼女へ求めてしまっていく。
「くっ・・・・んっ・・・・」
「あっ・・・・んっ・・・・か、課長・・・・んっ・・・・」
柴田くんを抱いてから間もない、ということもあって、改めて琴乃の膣内の素晴らしさが思い知らされるようであった。俺はがむしゃらに腰を突き上げて、俺の体に跨る琴乃は・・・・泣きながら、俺を受け止めていく。涙しつつも、SEXによる絶頂への高みを、お互いにひたすら目指していくのであった。
「か、課長・・・・も、もう・・・・わ、私・・・・んっ・・・・」
「くっ・・・・こ、琴乃くん・・・・お、俺も・・・・」
お互いが口にするまでもなく、お互いの限界を理解していた。
だが、それでも律動する動きを抑制することはできない。
それこそお互いに、限界に達するそのときまで・・・・
俺は琴乃の身体を強く掴み、腰を懸命に突き上げて膣内に放出する。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
やはり琴乃の身体は最高だった。
彼女は自分の身体に自信が持てないようであったが、これほどの名器を持ちながら、ましてや容姿に至っても申し分がなく、俺には彼女の不安が全く理解できないでいる。
だからこそ俺は琴乃を抱き寄せ、胸を弄り、再び彼女の身体の膣内を求めていった。
その彼女の流した涙の真意を、その最後まで理解できずに。
俺はただひたすら、彼女の膣内を・・・・存在を求めて・・・・
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