カーツがニヤニヤと笑っているのが癪にさわるが、目の前の男は侮れない強敵だ。やむをえない。エミリーは数度にわたって男の攻撃をガードし続け、かさにかかった男が大ぶりな攻撃をしかけてくるのを捕え、肩に乗せるようにして投げた。
「ぐあっ!」
 かろうじて受身はとれたようだが、倉庫の床が相手ではダメージは深刻なはずだ。カーツに視線を移すと、そこまで、と合図をして見せた。
「まず、一人目ね」
 エミリーはゆったりしていた部屋着の裾をしばり、胸を押さえられるようにした。裾があがってしまい、ショーツもお臍も見えてしまうが、背に腹は変えられない。カーツがニタニタといやらしい笑いを浮かべる。
「本気になったかい、刑事さんよ──次は誰だ? こんな色っぽい格好の女と組み手できるなんて、なかなかないぞ!」
 あらためて自分の格好を見ると、羞恥心が刺激される。部屋着を固めに裾を結んでいるので、豊かな胸のラインが明らかになってしまっている。しかも薄い布地のせいで双乳の先端の突起までもはっきりとわかってしまうのだ。
 ──ち、乳首までわかっちゃうっ──、こんなくっきり──。
 下をみれば健康的な、鍛えられた素足が優美な曲線を描き、魅惑的なふくらみをもつ尻へと続いていく。しかも、下半身はショーツ一枚きりなのだ。
 しなやかな筋肉をその内に宿しながらもほっそりとした腕。すらりと長い足は猫科の動物のようなしなやかさと精悍さを秘めていた。だが、その剥き出しの肌にまとわりつく男たちの視線。敏感な肌はわずかな空気の動きにも反応し、うぶ毛を逆立ててしまう。
 ──は、裸とかわらないじゃない、これじゃあ──、
 その場にちぢこまってしまいたいような頼りない姿だ。でも、しかたないんだから、気にしちゃいけないと自分に語りかけるエミリーの前に進み出たのは、小柄な男だった。最初の男にも劣らぬ技量の持ち主だろう。
 だが、追いつめられた女刑事とは気迫がまるで違う。筋力ではともかくスピードと技量では男たちと大きな差はないのだ。窮鼠となった警察官は自分でも思わぬほどの力を発揮していた。
「はあ、はあ──これで、二人──」
 女刑事は息をあらげ、玉のような汗を肌に浮かべながら小柄な男を倒し、さらには三人目の若者をも床に這わせていた、膝に手をつきながらも、その瞳の光はなおも強く輝いている。
「はあっはあっ──あと、二人ね──次は、誰? 」
 荒い呼吸音。喘ぎながらも不敵な言葉が赤い唇から発せられる。男たちは賛嘆と、憎悪のいりまじった視線でエミリーを囲んでいる。二人目、三人目となんとかくだした女刑事の身体は汗に濡れ、白い肌のつややかさを引き立たせていた。
 かすかに湯気を立ち上らせるその身体は激しい運動に熱く燃えあがり、上気した肌は透明感のある肌を内側から染めているようだ。
「まあ、ちょっと待て。そんなに息があがっていては勝負にならねえ。少し休んだらどうだ? エミリーよ」
 カーツが合図すると、男たちの中から飲み物が回されてくる。水分を失った体が補給を求めているが、女刑事は首を振った。
「何が入っているかわからないから、いらないわ」
 苦笑した巨漢が未開封の容器を示した。二本同じものを手に取る。意外なことに、それはミネラルウオーターだった。
「さすがに用心深いな。それなら選ばせてやる。これならいいだろう?」
 これならクスリを使われていることもないだろう。受取ったエミリーはコクコクと音をたててそれを飲み干す。喉を流れ落ちていく冷たい感触が甘露のように感じられた。水分の補給を知った汗腺が身体の熱気を放散させるべく、その活動を活発化させる。
「はははははっ──いい格好じゃないか、エミリー!」
 男たちの視線が集中する中、どっと吹き出る汗が薄い部屋着を透けさせていた。じっとりと濡れて肌にはり付いた布地は微妙な凹凸までもリアルに浮きあがらせ、むしろ裸でいるよりも扇情的な眺めだったのだ。
 胸をおさえるためにきつめに縛った丈の短い部屋着が、今にもはじけそうに張り詰め、乳首までもがくっきりとその桜色までも露わにしている。男たちの野卑な視線を浴びながら、エミリーの顔がそれとわかるほどに赤くなった。
 男たちの視線がダイレクトに肌に突き刺さるような気がする。一度意識してしまった肌はライトの光の中で羞恥に燃えあがり、灼熱感を呼び起こす。
「う……うるさいわねっ! 早く次の人、出てらっしゃい!」
 くっくっといやらしい笑い声をあげる男たちの中から、四人目の男が現れる。中肉中背、どこにでもいるような、平凡な印象の男だった。
 この男は、これまでの男たちよりも強かった。いや、集中力を欠いたエミリーの動きが悪くなっていたのだ。焦る身体に疲労がたまり、みるみるうちに追い込まれていく。


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