なめたらあかんよ




 青い空に青い海――
 ここはリゾート地、ハレルバレーそのレストランで
「なぜ、私がこのような格好をしなければならん!」
 バンッと力強くテーブルをたたく少女がいた。いや、少女といっても年齢は18歳なのだが見た目が14歳前後、おまけに今の服装があまりにも装飾過多な少女服。
「…お金ない…我が侭…駄目」
「そうそう、それになかなか似合ってかわ…ぐのぉ…なにしやがるエレス!」
 一緒の席にすわる白い衣服に身を包んだ棺おけをもった少女が全身黒でまとめた男を殴る。
「…少し不快…」
「くそっ…」
「貴様らな〜私にこんな格好させる意味を答えろ」
 無視されていた少女のイライラのゲージが上がる。
「ああ、それは面白そうだから。ここまで、はまるともう最高?」
 黒衣の男――ジュウゾウのあっさりと怒れる少女――アーシャに言い放った。
「面白そうだと…貴様!!そこになおれ今日こそ、その沸いた頭に正義の鉄槌を打ち込んでやる!」
「はいはい、そういってこないだも、負けたのはどこの誰だっけ?それともまたお仕置きされたいわけ?」
「ぐっ…」
 ジュウゾウと付け狙ってから1週間、アーシャはことある事にジュウゾウに挑んでいた。それも正々堂々と生粋の武人のためか不意打ちは性に合わないらしい。そして、戦跡は全戦全敗おまけにその後に待ってるのは恥辱の行為。それでも軍人の誇りは失われてはいないらしく任務であるジュウゾウの捕獲を完遂しようとしているのだから感心させられる。
「…静粛…店内…荒事禁止…」
「そういうこと、大人しくそれでも食ってろ。残すのはもったいないぞ」
「食べ物には罪は無いか…」
 目の前のベリータルトを口にすると頬が緩んでいる。
「くっくっくっ」
「笑うな!それで、なぜこの地に滞在している。理由くらい教えて貰おうか?」
「…情報提供者…来訪予定…」
「そういうことだ。アイツと会うのは久しぶりだから…小言くらいは聞いてやるかな」
「さよか。そいつはごっつううれしいわ」
 柴色の髪をみつあみに結い、すこしのそばかす、大きめな丸メガネをかけタイトなドレスを着た女性がジュウゾウの背後に立っていた。
「ぬおっ…」
「…不認…」
「なっ…いつの間に」
 三人もの人間に気づかれず女性は悠然とたち笑みを浮かべていた。
「驚いてくれたんは、うれしいでジュウゾウ…それとおまけ」
 明らかに悪意をある目でエレスを見ながらエレスには足りないものをジュウゾウの頭に押し当てる
「…不快…その塊…」
「なんや?嫉妬しとるん。まぁ〜あんたにはぜんぜんあらへらんもな…」
 蔑むような、哀れむような眼差しでその足りない部分を見下す。
「それでもう一人の貧相なのが増えとるな…ということはこっちが噂のスゥールドの娘かいな」
「ぐっ…なんだかすごい屈辱だ…」
 やはり乙女として小さいと言われるのはなんとも耐え難い。感度はいいとジュウゾウにほめられるのは悪くないが、いや、だがと別の悩みを脳内で繰り広げ始めた。
「ふーん」
 その反応を見て
「のぐぅっ…なに…」
 とりあえずジュウゾウを一発なぐっておいた。
「なにやあらへんわ!あんたこの子にも手だして連れまわしてるんか!おんどれは何人、女に手だしとるねん。いく先々で手つけおってからに…まったく、あっ、お姉はん酒とてきとうに肴をなんでもいいからもってきてんか」
 ある程度どなりまわしてからケロッと表情を変え適当に注文をすませる。
「まあえぇぇは、そこらへんのワビはきっちり入れさせてもらうさかい覚悟しとき」
「へいへい…で、頼んどいた情報はどうだ?」
「網にかかったんは今のところなしや。ただ、ここからそう遠くないところに『大戦』期の軍事工場が発見されたらしいんよ」
「なるほど…そいつはちょうどいい。路銀も稼げるしGEAの情報も手に入る可能性もある。ミン道案内と鑑定のほう頼むぜ」
「任しとき、けど詳しいことは二人っきりでゆっくりとベットの中でな?」
「そういうわけだ。エレス、明日向かうから準備よろしく」
「……了解……」
「ほなな」
 ジュウゾウとミンが離れ二人だけが取り残される形になってしまった。
「なんだ、あの女は」
 アーシャも今まで味わったことのない不快感を感じながらベリータルトを口に運ぶがなんだか美味しくない。
「ミン・アール…情報屋兼GEA博士…今は準備開始する…助力要請…衣服変更…困難不適用」
「了解した」
 アーシャはモヤモヤした気持ちを抱えながら準備の手伝いにレストランを出た。ホテルの部屋。内装からするとかなり上等の分類にはいるだろうか?
 シャワーでかるく汗を流しジュウゾウとミンはタオル一枚でベッドに腰を下ろし肩を並べていた。
「しかし、お前もあそこまで露骨に挑発しなくてよかったんじゃないのか?」
「うーん少し大人げあらへんかったかな。せやけど、相変わらずやなもう少し感情の起伏あってもええやけど…まあ、それはそれ。これから女抱こういうのにそんな会話を相手に言うのは野暮やろ。するときはうちが一番や」
 いたずらぽく微笑む。
「へいへい、我が侭なお姫様だな」
「いややわ、お姫様やなくてお后のほうがうちはええわ。むぐぅ」
 ジュウゾウは唇を重ね口内に舌をいれるミンも舌を絡み合わせ、そのままベッドに押し倒す。
「もう、せっかちなんやから、あっダメや、そんな…うち胸弱いんかやら…そな…はぁん…はげしく…されたら…あぁぁ…」
「軽くイッたか?」
「むぅ…意地悪せんといてねぇな…ひさしぶりなんやから」
 ミンは体位を入れ替えその自慢の胸でジュウゾウのモノを挟む。
「どや?あの子らやこんなことできひんもんな?」
「ああ、いいぜ」
「せやろ?このままだしてえな」
「そうだな…ださしてもらうか」
 胸の谷間に大量のザーメンをぶちまける。
「はぁ…相変わらずすごい量や…ほな、そろそろ」
「ああ、そうだな」
「今日は安全日やから抜かずにしてほしいわ」
 その後は激しかった。正常位はもちろんバック、騎乗位とありとあらゆる体位で5時間
「あかん…うちもさすがに限界や…というか際限なさすぎやで…ほんも安全日でも妊娠してまうやないの」
「俺になま言う元気はあるんならもう一回くらいは大丈夫」
「ちょっ…あかん…堪忍…ああ、後生やから…はぁぁぁん」
 結局、一回といわずに五度ほど逝かされてしまったミンであった。

 ★ ★ ★

 商店街の一角では――
「あん?お嬢ちゃんたち喧嘩うってんのか?」
 二人の少女に十人ほどの男が絡んでいた。さすがに助けに入るものもはいない。
「だまれ下郎。先ほど貴様は何をしたかわかってるのか?」
「なんだと」
「貴様は老人を突き飛ばした。その所業見過ごすわけにはいかん!この場で先ほど突き飛ばしたご老人に詫びよ。さすれば今日は見逃してやる」
 目の前で虐げられた弱者を見てなにも見過ごせないそれがアーシャという少女である。
「なめてんのか?嬢ちゃんひん剥いて大通りをあるかせてやろうか」
「どうやら口でいってもわからないやからのようだ」
「ハンっお前みたいに小娘に…ぐのっ」
 大口をあげていた男の顎をかちあげる。
「力ずくでその考えを正させて貰う」
「このっ」
「はっ!」
 重心の低いタックルを飛び上がり躱すとそのままその男の背を蹴り再度跳躍そのまま近くの男のこめかみに蹴りを叩き込む。
「なめる…ぐのぉ」
 突然、とんできた棺おけに吹き飛ばされる。
「エレス、加勢は不要だ」
「…違う…憂さ晴らし…」
「なるほどな…私も若干、別の不快感がある。丁度いいかもしれん」
 二人の少女から黒いオーラがあふれる。
「お、おい…まて…ぎゃー」
「のぐぉぅ…」
 アーシャの回し蹴りが男たちを襲う。その様子に野次馬は増える
「ひぃ、お助けぇぇ」
 一人の男が耐え切れずに逃げ出そうとするが、
「逃走不可」
「げっ」
 鎖を投げつけ絡めとると一気に引き寄せそのまま投げ飛ばす。
「くそっ!ぶっ殺してやる」
 ナイフを取り出し男は腰溜めに構える。
「こい」
「しゃらくせぇぇぇぇぇ」
「はっ!」
 そのまま突進してくる男の足を払いで態勢を崩すとそのままナイフを流れる動きで蹴り落とす。
「ふむ…やはり私は弱くない」
 実際、頭一つ以上大きい相手数人を一人で相手してるのだから弱いはずはない。
「なんだよ。こいつら」
「ぐぼっ…」
「油断大敵…隙だらけ…」
 棺おけで次々になぎ倒すエレスもまた常人離れしており、流石にチンピラのほうが可愛そうになってくるほどである。
 結局、治安維持部隊が到着するころには男たちは打撲と裂傷に見舞われ多分二度とでかい顔をして街を歩けないほどにプライドも体もずたずたにされ。それを実行した少女二人は忽然と姿を消していた。

 ★ ★ ★

「それであんたらチンピラのしてきたんか?」
 ホテルに帰りついたは街に出てから10時間、なんとか買い物をすませたが余計に疲れているところをミンに問いつられていた。
「くっくっくっ、まぁいいじゃねぇか。いやよくねえか。そんな楽しそうなことがあるなら街に出てけばよかったぜ」
「アホ、この街のチンピラいうことはハヌーマ一家の息がかかってるちゅうこっちゃ…マフィアとやりあうなんて勘弁してほしいでほんま」
 ミンは頭を抱え込んでしまう。
「陳謝…」
「それは…すまなかった」
「もう、ええわ…とりあえず街をでよか?トラブルは避けときたいしな。もめても何の得にならへん」
「確かにな…めんどくせぇし…準備もできてるんだいくぞ」
 その判断は正しかったが
「貴様らか、ウチのもんをかわいがってくれたのは」
 街の出入り口で待ち伏せさられていては意味はなかった。数は50、その先頭に立っているのはタキシードをきたゴリラみたいな大男。その背後にたつ男たちもなんだか猿っぽいのだが…
「はぁ〜…めんどくせぇ…」
「不備…陳謝」
「敵ならば倒すまでだ」
「一人頭ノルマ約12人てとこやな」
 意外と余裕綽々のめんめんである。
「なかなか威勢がいいじゃないか。だがこいつを見てそんな軽口たたけるかな。ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお」
 変なマッチョポーズでタキシードが破け筋肉が肥大化したような生々しい機械がうごめく
「どうだ俺の『GEA』マシラを見ても軽口たたけるかな?よっはっせい」
「うぉぉボス最高ッス」
「アニキ〜〜〜〜〜〜〜」
 雄たけびとともにポージングをとる。
「すげぇ馬鹿だ」
「不快物体…」
「あかん、めまいがしてきた」
 ジュウゾウ、エレス、ミンの反応はあきらかに嫌そうなのだが…
「なにをいう、敵ながらなかなか猛々しいではないか。軍に戻った際は採用するように陳情してみるか…」
 アーシャは本気で言っていた。 
「止めとけ」
「不採用」
「止めときアホがうつる」
 全員が同時につっこみをいれた。
「貴様ら…これを見ての感想はないのか」
 無視されたボスゴリラは激昂し顔があかくなる。
「『GEA』使いか、ならば『GEA』ゴヴァノンモード・スピア。これで互角だな。」
 アーシャは槍を構える。様々な武器の形状をとることができる。それがアーシャの所有するゴヴァノンの能力である。
「ふん、そんな貧弱な槍で勝てるつもりでいるなら俺をなめるな。大体、男が一人に女が三人でしかも二人がガキでじゃねえか」
「やってみなければわかるまい」
「ちょいまち、なに二人で話を進めてんねん。それにうちはなめられんが一番すかんねん。
あんたら十分あばれてるやから雑魚で我慢しときぃ。ジュウゾウはかまへんよな」
「めんどくせぇからいいぜ」
「ほな決定やな」
「お前らなぁ〜俺たちを馬鹿にしくさってぇぇぇ」
「ほな、はじめよか。うちの『GEA』天河珍鉄があいてや」
 藍色の棍を構える。
「野郎ども、かかれ」
「うぉぉぉぉ」
 戦いは始まった。

 ジュウゾウの戦い――
 取り囲まれていた。そして相手は殺気立っている。本気で殺気立っているのだが…
「ねみぃ……ああ、めんどくせぇ…なぁ寝ていいか?」
 全然、危機感がない。
「ああ、お望みどおり永眠させてやる」
 挑発と受け取ったのか全員がナイフを構え襲い掛かってくる。
「そこまではいいか」
 ナイフの一撃をかるく横に躱しながら顔面に右フックを顎に叩き込み意識を数秒とばしそのまま延髄に廻し蹴りを叩き込み地面に伏せる。
「野郎っがっ」
 掌底で顎をかち上げて二人目が宙に舞い
「あらよっと」
「げふっ…」
 三人目のわき腹を蹴りでなぎ払うとその勢いでそばに居た二人を巻き込み昏倒しその上に吹き飛ばされた二人目が落ち計五人が行動不能になった。この間わずか3秒
「悪いなぁ、今日は眠くていまいちテンションがあがらねぇから…楽しむ気がねえんだ」
「くそっがぁ」
 大口を開けた男の顔面をつかむとそのまま地面に叩きつける。
「えっとこれで…六人となんだまだ半分もあるのかよたりぃ」
 そう口にしながら背後から迫っていた男の鳩尾に蹴りを叩き込んでいたりする。
「すこし体があったまってきたなっと!」
 いま蹴り倒した男の足をつかむと目の前で暴れる黒衣の悪魔に浮き足立つ連中に投げ飛ばしそのまま間合いをつめて呵責のない打撃を叩き込み追加で二名の意識を闇に沈める。あまりの事態に逃げ出そうとする3名に男たちのうち一人の後頭部に跳び蹴りをくらわしトンボをきりながら残る二名の後頭部をつかむとそのまま地面にキスをさせた。
「あぁ…やっぱ雑魚相手だと燃えねえは…寝よ」
 本当に寝てしまうジュウゾウであった。
 ちなみに戦いにかかった時間は13秒である。

 エレスの戦い――
 容赦ない嵐。
 そう後に語ったのは足をあらったリドという青年だった。
 まず、信じられない質量の棺おけ。それがものすごい勢いで振り回されている。手加減もなにもあったものではない。自分だって腕っ節一つでこの道に入ったとそのときは思った。思ってはいたが、それは怖かった。とても怖かった。単純で凶悪な暴力。逃げ出そうにも恐怖で体が動かなかった。
 だが、本当に怖かったのは目前の少女である。
 無表情で棺おけを振り回して誰かが吹き飛んでも表情を変えない。
 無表情で棺おけを振り回して誰かの骨を砕いても表情を変えない。
 無表情で棺おけを振り回してゆっくりと近づきながら一人一人とまるで作業のように棺おけで吹き飛ばし歩く。
 ああ、これは悪い夢で目を覚ましたら俺はベッドの上だ。そうだといいなと希望をもってはいたがわき腹にあたり肋骨を砕いた痛みで夢でないことは証明された。
 ただし、ベッドの上では目を覚ますことができた。
 リドは今はまっとうな配達業についておりこんど結婚も決まっている。そして今は真っ当な道に戻るきっかけをくれたあの少女に感謝している。ただ、それだけの話。

 アーシャの戦い――
 少女は
 華麗であった。
 流麗であった。
 秀麗であった。
 艶麗であった。
 その戦う姿は麗しかった。凛とした空気。その真っ直ぐなまでの戦う姿に挑むものの心になにかを訴えかける。
 最初は集団で襲いかかった。そして、簡単にいなされ地に伏された。だか、立てないほどはなかったが槍を振るう少女は何もせずただ見下すだけ。
 最初に立ち上がった一人が気合を込めてナイフを一閃。それよりも早く石突で殴る。
「脇が甘い」
「くそっ…槍なんて使いやがって卑怯だぞ!」
 集団で囲んで女一人に襲い掛かっているのに卑怯と少女をののしる男。だが、少女は揺るがない。
「なるほど一理ある。では、こうしようゴヴァノンモード・ソードブレイカー」
 槍をナイフに変えると左手に握る。
「これで対等であろう?こい、気が済むまで私は何度でも相手になってやる」
 凛と構え威風堂々とやはり見下す。
「くそっ」
 男たちは何度も挑む。そのたびに立てるだけの力を残して倒される。
「どうした貴様らはその程度か?」
 数は勝ってる。だがそれだけだ。それ以外はこの少女が勝っている。この少女は強い誰もがそう思った。
 真っ直ぐで決して折れない剣それがアーシャという少女なのである。
「さーどうした?」
 男たちは満足のいく敗北というものを始めて味わうことができた。

 ミンの戦い――
「伸びいや天河珍鉄!」
 その言葉に反応して棍が伸びる。伸縮自在の棍それが天河珍鉄の能力である。そして遠心力を利用して一気になぎ払う。
「くっ!」
 ボス猿だけがなんとか飛び躱す。
「あかん、やっぱり伸ばすと軌道やまれやすいな。縮みいや天河珍鉄」
「そうはさせるかぁぁぁ」
 縮むよりも早くマフィアのボスは間合いを詰める。
「もらった!」 
「そうはいくかいな。『GEA』韋駄天脚、起動や」
「なに!?」
 目の前に居た女が突然消え。ボスは驚きを隠せない。
「どや?瞬足移動ちゅうやつや」
 ミンの足に青く輝く具足が装着されていた。
「馬鹿な。GEAの同時に二つも起動させるだと」
「うちをなめたらあかんよ」
 GEAの同時起動。ボスが驚いたのは目前で消えた移動よりもGEAの同時起動のほうであった。GEAは一つを起動させる分にはさほど難しくはないが、二つ以上となると話は変わる。GEAはその性質上、複雑な制御を必要としその処理を人の脳の無意識の領域で行われているため二つを同時に起動させた場合の複雑さは右と左で同時に三角と四角を高速かつ連続で書くようなものであり下手をすれば機能不全に陥るなどリスクは非常に高い。
「あんさんのGEAは見さしてもろうた。なんや身体能力を強化するだけかいな」
「だからなんだ!」
 ボスの拳戟がミンに降り注がれるが棍で攻撃の軌道を変えるとそのまま蹴りを叩き込む。瞬足移動を可能とする脚力で蹴り飛ばされボスは立て回転で三回転半しながら吹き飛ぶなんとか体勢を立て直しながら着地する。
「こ、このくそ。なめるな!これでも喰らいやがれ必殺!双猿戟」
 二つの腕を最大限の力で大きくふり生み出した衝撃波が襲い掛かる。
「こういときはこれやな『GEA』金剛瀑布」
 金色に輝く布でその衝撃波を難なく受け止める。
「ふぅ、あかんあかん遊びすぎてまさか3つ目まで使ってもうた」
「ば、ばかな3つ同時だと?」
「なんやびびっんかいな?せやけど、うちはGEAを同時に5つまで使えるでどやすごいやろ」
 そこまでくるともう化け物である。その情報量の多さで並みの人間なら3つ、訓練に訓練を重ねても実戦レベルとなると精々4つ起動させただけで真っ当な精神で居られるはずもないのに
「まあ、本当は仕掛けがあるんやけど、それは企業秘密やから教えてやらんけどな。そろそろこちらからいかせてもらう番やいくでうちの必殺!螺旋空穿、うけてみいや」
 それは韋駄天脚による瞬足の移動と天河珍鉄を回転させ相手を穿つミンにとって必殺必中の一撃である。
「ぐはっあがぁぁぁぁぁぁぁぁぎ、GEAがぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「命だけではとらんといてやるわ。せやけどGEAは機能を破壊させてもろうたでまだやるかいな?」
 のど元に天河珍鉄を突きつける。
「俺たちの負けだ。力に従うそれが俺たちのおきて…」
「さよか、せやったら今日で組を解体してまっとうな道にもどりぃ、ああ、それと乗り物そやなジープが欲しいんやけど」
 こうして、ジュウゾウたちは移動手段も手に居れ旅立っていった。


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