信じたい偽りと偽りの真実



 チェルシー・フィリスを加えた元・聖天十字近衛隊、別機動特務隊『グレイプニル―魔獣を封じる鎖―』の面々は修道服ではなく黒い軍服に着替え林道を歩いていた。グレイブニルの構成員は隊長格であるアルトを除き、その大半が半人半魔や人型の魔物などでありそれ以外の者の脛に傷がある訳ありの集まりである。もっともその能力に関していうのならラルデリカ最強の部隊といっていいだろう。その証拠は彼らが聖天十字近衛隊という役職についているのがなによりの証拠である。
 だが、彼らの功績は記されること無く通常部隊の功績と処理されるいわば汚れる役目である。
「あの、お兄様・・・どこに向かってるんですか?」
「調和の街『ラムルテッド』だ」
「えっ・・・あの街ですか?」
 少女はあまりにも意外な名前を聞き驚きを隠せずにいた。ラムルテッドを治めるリチャード・ギルメード卿は、グレイブニルを快く思っていない人物と記憶している。実際、チェルシーがラムルテッド在学中にもその娘であるフェルナにずいぶんと嫌がらせをされた記憶がある。もっとも剣術の授業のさい、こてんぱんにしてからは恐れて何も仕掛けてこなくなった。チェルシーはけして弱くはない。ただアルトがずば抜けて強すぎるだけなのである。
「アルト。表現が正しくないぞ。」
 2人の会話に口を挟んだのは少女はリーゼロッテ。姿は幼いが御年500歳(端数切捨て)の正真正銘の真祖の吸血鬼である。その魔力は小国の軍隊にも匹敵する。
「現在は我が軍『魔女』フリーダ・ブリシテンが統治する魔道国家『ラムルテッド』であろう?」
「えっ・・・リーゼロッテさん、確かブリシテンは魔道の力で人々を支配していたですよね?でも・・・10年前の聖伐によりラムルテッドは解放されんたじゃ」
「やれやれ、お主は純だな。」
「だれかと違ってな。」
 リーゼのとなりを歩いていた恋人の青年クルツ・アークライトは意地悪な笑みを浮かべて話し掛けていた。いつもだらけきった服装にとぼけた表情だがその能力はリーゼロッテを上回る最強の吸血鬼『真紅の月』を父に持っており実力ならアルトと互角かそれ以上の実力者である。
「ええい黙れ!!まったく、たまにはビシッとした格好をしたらどうだ!!」
「面倒臭いからパス。」
「くっ己は!!貴様はその・・・あれだ・・・わらわの・・・・・・なんだぞ!!そのわらわの立場がないでは・・・・・・ないか・・・」
 途中から赤面しながら口喧嘩を始めてしまった。後ろに続く隊員達の間からは
「また始まったな・・・」
「見てて飽きませんね。」
「がんばれ。リーゼ」
 暗い過去を持つ面々ではあるが意外と前向きで明るい性格の部隊である。
「あのリーゼロッテさん・・・その話の続きを・・・」
「ああ、すまない。お主が習った歴史はラルデリカの歴史であろう?はっきり言っておくそれは信じるに値しない物だ。」
「信じるに値しない物ですか・・・?」
「そうだ、世の中真実だけが書かれた書物などはそうそうあるものではない。情報操作をおこない自分達の行いは正しいとするのは過去幾度と様々な国で行われた行為だ。」
「でも!!」
 チェルシーが反論しようとするがリーゼはチェルシーの唇に人差し指をあて話を続けた。
「ラルデリカだけが例外だというなら過ちだな。そもそもラムルテッドは比較的、温和で豊かな国だったぞ。つまり、それは政治がきちんと行われており民が豊かな証拠だ。民が貧しい国はどんなに豪華に見せようとしてもボロが出る。民をないがしろにして滅んだ国は山ほどあるしな。思い出してみろ、お主がラムルテッドに留学していたさい街はどうだった?」
「それは・・・・・・」
 少女が留学したさい寮からの外出は原則として禁止であり必要な者があれば使いの者に買いに行ってもらっていたので街の様子を知る術はなかった。
「人間とは都合のいいように情報を加工するものだ・・・まったくおかげでわらわたち吸血鬼一族もずいぶんと苦労しているのだぞ!!そもそもなぜ我らがゾンビどもと同じ系統に置かれなければいかん!!さらにだレッサーヴァンパイアだと?あれは昔の魔術師が我らの因子から作り出した粗悪品ではないか!!確かに奴らには感染能力があり増殖はする!!我ら一族は確かに血を飲むがそれは儀式の一貫であり常に飲む必要などないし我らに血を吸われても吸血鬼になどならん!!くっこれも太古の物書きが書いた怪奇小説のせいだ!!」
 興奮し始めたリーゼは本題とはかなりずれた話を始めた。
「えっそうだったんですか?」
「そうだ!!」
 2人の会話は傍から見ると友人同士の会話にも聞える。
「チェルにもいい友達ができたな」
「リーゼにもいい友達ができたな」
 アルトとクルツは娘を見るような微笑を浮かべていた。一応、それぞれの恋人ではあるのだが保護者感覚である。
「隊長。ラムルテッドが見えてきましたよ」
 偵察に先行していた数名が戻って報告に来るとアルトは
「よし、わかった」
 キリリとした表情で告げたが、後ろにいた隊員達から苦笑がもれた。

 ★ ★ ★

 ――ラムルテッド南門
 カツッ。アルトたちの横に生えてる木に一本の弓が刺さり声が響いた。
「止まれ!!・・・おっと、これはアルト殿よくぞお越しくださいました。」
 チェルシーはあまりにも出来事に驚いた。それは矢が飛んできたことでなく出迎えがダークエルフということであり、しかも対応が紳士的であったことだ。
「いや、かまわん。通っていい構わないか?」
「ええ、構いませんよ。」
 彼女の驚きはそれだけでは納まらなかった。街の中に入るとエルフ、ドワーフ、フェアリーだけでなくリザードマンなどとあまり人と交流の無いはずの種族ですら街を普通にあるきさらに普通に会話などを行っている。それは彼女にとってあまりにもショッキングな出来事だった。異種族は人間に対して敵対的な行動をとる危険で下等な野蛮な生き物と教わっていたからだ。それが人と仲良く会話をしエルフとダークエルフがにこやかに挨拶をしている。
「驚いたか?」
「は、はい・・・」
「だが、これは現実だ。異種族は確かに思想などは相容れないが付き合ってみると王国が教えるようにけして人間に対して敵対的な行動をとったりましてや危険で下等な野蛮な生き物ではない」
 さらに違和感は続く、それは街の活気だ。以前の馬車から同じ道を通ったがそのときはこれほどの人通りも無かった。そして案内するダークエルフに連れられ城内へと一行は向かった。
 城に着くと隊員達は各自散開し現在城主となっているフリーダに挨拶するべく、アルト、クルツ、リーゼロッテ、チェルシーは執務室へと向かうと1人の老人が出迎えた。
「これは・・・これはアルト様、クルツ様、リーゼロッテ様にえっと・・・」
「私の恋人のチェルシーだ」
 恋人ということばに思わずチェルシーは赤面した。
「ああ、クロエさまから伺っております。義理の妹殿ですな。」
「うっ・・・」
 その一言にアルトはおもわず言葉がつまりそれを見たクルツは大笑いをしながら
「はははは爺さんさらりきつい事いうな」
 あっさり言い放った。
「ということは・・・たぶん、軍内全てに伝わってるな。」
 リーゼの止めの一言にアルトはかるく頭痛を覚えた。
「それで爺さん。フリーダは?」
「そ、それが・・・・・・その陛下の所に・・・・・・」
「ああ、なるほど」
 その言葉に復活したアルトは納得し老人は申し訳なさそうに話を続けた。
「申し訳ありません。一応、計画は予定通りにと。それとそのチェルシーさまにはきちんと説明をしたほうがいいだろうと陛下が」 
「あの説明って・・・」
「それは私がさせてもらうわ」
 部屋の入り口には妖艶な雰囲気の女性―ベネルが立っていた。
「ひ、久しぶりだなベネル」
 最初に挨拶をしたのはリーゼだったが顔が引きつっていた。
「本当に久しぶり。相変わらず可愛いわねリーゼ。それでまた血の提供・・・」
「断わる!!」
「あらつれないわね。それじゃーアルト地下の私の研究所に案内するわ。それとそこのあなた、何をみても驚かないことね。はっきりいうけど人道的とかいうものからかなり外れてるモノをみることになるわよ」
 ベネルは微笑を浮かべてはいたがその体からは凄みが感じられた。
 そして、アルトたちはベネルに案内されるまま地下へと続く階段を降りていった。
「この先に一体・・・」
 その問いに答えたのはチェルシーにとって意外な人物であった。
「禁忌の研究。本来ならお前には教えたくなかったがいずれは知ることになることだからな・・・この城や修道院にいた人間を利用した生物兵器の研究や人体実験。それらが繰り広げられている。」
「そ、そんな捕虜虐待はメズライ協定に抵触する行為です。ましてや人体実験なんて・・・」
 兄の口から聞いた一言がどうしても信じられなかった。がそれを制するようにベネルが歩きながら話を始めた。
「それは貴方達、人間の間だけでしょ?アルトはね。囚われた異種族がどういう目に会うのか良く知ってるのよ。アルトはラルデリカの闇の部分をよく知った数少ない人間でしょうね。なにせその実力があるためにグレイブニルなんて組織を束ねる役職に就くことになったわけだし。知ってる?グレイブニルにいるほとんどは貴族どもが遊び半分で異種族の女を犯して産ませた子どもとか人体実験に利用された人たちとかだって?」
「そんな・・・そんなウソよ!!」
「ウソではないぞ」
 今度口を挟んだのはリーゼだった。
「真実とは常に自身に都合の良いものではない。むしろ悪いことばかりだ。お前はこれからいろいろなことを見ることになるだろう・・・それが正しいかどうかはお前が決めればいい」
「リーゼさん・・・」
 2人の会話を遮るようにベネルは歩みをとめ話し掛けてきた。
「話は終わったかしら?とりあえずは・・・そうね。これから見てもらいましょうか?」
 チェルシーは様々な場所へと案内された。人体解剖や拘束され苦悶の声を上げる人々、血と薬や他の匂いが混じりあいむせ返るような醜悪な匂いが漂っていた。
「げほっげほっ・・・こんな狂ってます!!こんなこと・・・おかしいですお兄様!!止めさせてください!!」
 その地獄絵図を見せ付けられ少女は泣きながら訴えた。その窮状をみつつも他のものは止めることなく普段明るいクルツですから無言で真剣な面持ちでベネルの後に続いた。
「つぎで最後よ。」
 最後の場所はいままでとは大きく違い日の光が取り入れられ柔らかく清潔な印象をうける広く多くの扉がある廊下だった。ベネルはその一つの扉の前で足をとめスライド式の扉を開けた。なかは植物が飾られとても穏やかな雰囲気のなか部屋の中央にカーテンがかかっていた。にチェルシーは戸惑いを受けた。
「ベネルさま。」
「ヴェルフラウの様子はどう?」
 こちらに気づいたのかなかから白い服と白い帽子をかぶったダークエルフの女性が顔を出した。
「はい、特に変化は・・・」
「そう・・・」
 ベネルはその答えに安心ながらもどこか落胆した感じをチェルシーは覚えた。ベネルはアルトたちのほうを振り返ると手間抜きをした。そこでチェルシーが見た者は意外な者だった。そこにはベッドが置かれベッドの上には1人のダークエルフの少女が虚ろな瞳を浮かべ鼻孔に透明なチューブがつけられ横の何らかの装置と繋がっている。口は半開きでもはや正常な意識ではないことは明らかである。よく少女を見ると腕には縫合の跡があったりと痛々しい姿であった。
「このこは?」
 チェルシーはベネルに問い掛けた。
「この子はね・・・私の妹よ。昔は、植物が好きでよく野原を散策してたわ。でもね・・・・・・」
「でも?」
「捕まったのよ!!ラルデリカの連中に!!」
「えっ・・・」
「この子を助けたときどうなってか判る?手足を切り落とされ子宮までも取り除かれて・・・投与された薬物で肉体も精神もボロボロ・・・・・・やっとでここまで回復したわ・・・貴方達がした事と私のしてることに何が違うというの?ここの棟にはね。この子のようにラルデリカで実験材料に使われたエルフ、ドワーフ、リザードマン、ダークエルフ、いえそれだけじゃなく人間だっているわ」
「そんな・・・・・・ウソですよね・・・」
 周りを見ると全員、目を伏せていた。長い沈黙が続く。しかし沈黙が破ったのはアルトだった。
「チェル・・・真実なんだよ。そして、チェルには黙っていたが彼らに協力するきっかけでもあるんだ。むろん以前、話したこともあるけどね」
「アルトたちには感謝してるはおかげでこの子を助けることができたのだから・・・とりあえず貴方は自身で答えを出せばいいわ。」
 このあと重い気持ちのままチェルシーは割り当てられた部屋に向かった。

 ★ ★ ★

 一方――
 聖王国ラルデリカでは多大な権力をもっていたアーネスト老が死亡したことで議会では醜い権力争いが繰り広げられておりさらにターニャ・ゼラニウムが行方不明になったことにより議会の紛糾は留まることを知らなかった。
 そんな夜、会議に疲れた一角獣近衛隊『ラツィエル―智の天使』の称号をもつジャクリーヌ・ナスタチウムはベッドの上に横たわった。ジャクリーヌは現在の一角獣近衛隊の最年少者で12歳の少女では在るがその知力と結界法術に関してなら隊一といって過言ではない。性格は冷静であり感情を表に出すことは少なく、口数も少ない。オレンジ色掛かった赤色の髪を腰まで伸ばし、目がつりあがっておりきつい印象をうけるがその容姿は愛らしく最近ようやく胸が膨らみ始た美少女だ。
 そんな少女は現在の状況に頭を痛めていた。まわりの無能で己の利益しか見ない貴族たちと違い今がどのようなときか理解している。
 まず、問題は地方での人獣たちの動き、これは明らかに誰か裏で戦略的に動かしている。現に、この人獣の動きが原因で食料の調達がうまくいかずにラムルテッド進軍が1週間も遅れたこと、さらにその動きに便乗して各地で反乱が起き始めている。それらの治安状況の悪化は王都でも徐々に影響を受け始めている。
 次の問題はそのラムルテッドだ。ラムルテッドには貴族の子女がおおく留学している。距離的には多少遠いがそれでも道は整備されているので困難な道のりではない。そんな都市が占領され軍事拠点に使われているとしたら脅威になりかねない。加えてラムルテッドは森で囲まれた地形は守るという点においてはかなり有利な地形なため篭城されると(通常、篭城する相手と戦う場合は三倍以上の兵力が必要と一般的にいわれている)攻略には兵力を莫大に必要になる。そのために主力部隊はすべて投入された。これによって王都には最低限の兵力しかないのも問題だ。
 さらにアルグレ進攻のための従属国の調整にも手間取りまだしばらくの間は進攻には時間は掛かるであろう。
 そんななかでのターニャが何ものかの戦闘で行方不明。可能性は二つ、敵に拉致されたか敵の密偵だったか・・・・・・もっとも考えられるのは拉致。密偵なら兵を引かせるようなことはせず兵を残し目の前で死を偽装するなりわざと敗北し連れ去られるところを確認さるほうが効率がいい。もっとも内部撹乱を狙うなら理には叶っているが、出身が重視される一角獣騎士団にスパイが入るこむことは不可能である。また、死亡の考慮が無いのはそれを前提に死体がないことが生きている証拠になる。なにせ死体を持ち帰る必要性は低いからである。
「厳しい・・・」
 少女はぽつり呟いた。ジャクリーヌは顔に出さないが内心、苛立ちながらも、その手は自然と下半身へと伸びていた。
「はぁん・・・・・・こんなときに・・・」
 押し殺した甘え声が一人しかいない部屋に響く少女の下半身に伸びた手はアナルを軽くなで始めた。普段、無表情で無口な少女の顔は感情豊かで艶やかな声をだしていた。
 ジャクリーヌはストレスがたまるとついアナルオナニーをしてしまうことだ。
 修行時代、さまざまな書物を読みふけっているとき誰かがイタズラでジャクリーヌが積み上げた本の山の中に性行為について掛かれた本を混ぜられていたのである。ついうっかりその本を読んでしまい勉強熱心なジャクリーヌはついオナニーを実践してしまった。だが、処女性を尊ぶ王国の風土からつい秘裂へのオナニーに踏み切れずついアナルへと指を伸ばし軽くなでることから始まった。
 最初の頃は興味本位で始めたことで快感もなにもなかったが、徐々になれ撫でるだけの刺激になれ自然と指を挿入していった。そのころからもともと勤勉であったジャクリーヌは性的行為の勉強も密かにしかし熱心に行っていた。だが、その題材にしていたのが女性が虐げられるというかなりアブノーマルなものが中心になっていたのだが…それらの行為を記された書物をみながら一本の指を入れたときはまだ苦痛でしかなったが、それでも習慣性が身についてきたアナルオナニーをやめることができず指を入れる行為を続けその行為にもなれたころ初めて絶頂を迎えた。そして、アナルオナニーは日に日に激しくなり今では両手首をくわえるまでに自身で拡張をしてしまった。もっともゆっくりとした拡張したために普段はぴたりととじられている。
「はぁぁん・・・・・・」
 その激しい行為とは裏腹にジャクリーヌは恍惚の表情を浮かべ快感に浸っていた。アナルに咥えこんだ指で腸壁をなで始める。普段少女をしるものが見ればその姿をみたらどんな反応をするだろうか?少女はそう考えながら自慰を続ける。

 少女の夢想

「お尻で感じるなんて変態」
 仲間にそう罵られることを想像すると体が熱くなる。

「お尻を犯しなさい」
 兵士達の前でお尻を突き出しながらそう命令したらどうなるかを考えるとより興奮する。

「うんちまみれのショーツは自分であらってください」
 メイドにそういわれたらと思うと余計に疼く。

 犬のように四つん這いで路地を歩いたら・・・

 男の人の足を入れられたら・・・

 公衆の面前で排泄行為をしたら・・・

 自分をいたぶる事に興奮している。

 自分がいたぶられる事に興奮する。

 誰にも知られていけない秘密

 誰かに知られたい秘密

 卑しい自分。

 人前ではしたなく扱われたいと思う自分

 快楽に溺れそうになる。

 そんな自分を戒めるようにきつい刺激を与えるがそれは快楽にしかならない。

 (こんなこといけない・・・神様・・・どうか・・・淫らな・・・・・・ジャクリーヌ・ナスタチウムに・・・厳しい罰を・・・)

 少女の意識は激しい絶頂とともに白くなっていった。

 ★ ★ ★

 ラムルテッド城の一室――
 チェルシーはベッドの上で膝を抱えて塞ぎこんでいた。いままで自分の信じてきた物が打ち砕かれ、これからどうしていいのかわからないでいた。
「チェル。」
「お兄様・・・・・・」
 アルトは少女の後ろにまわると優しく抱きしめ語り始めた。
「チェル・・・良いんだ。たしかにこの正しいとはいえない。でもね。守りたい人は種族は違ってもいる。それはわかるね?」
「はい・・・」
「焦らないでいいよ。ゆっくり考えて答えを出せばいい色々なものを見て色々な事を聞いて神の教えではなく自分で考え感じ答えを出すんだ。それは苦しいことかもしれない・・・でもとっても大切なことなんだよ」
「はい・・・」
 兄の言葉を受け少女はこれから何をするべきかを考え始めた・・・・・・


→進む

→戻る

アルセリア戦記のトップへ