追憶はほろ苦くそして切ない



 ラムルテッドが戦いの口火を切ったころオーガ達の支配下にある元『剣の国』アルグレ。
 その城に設けられてゼクロ専用の執務室ではゼクロが椅子に深く座り込み物思いにふけっていた。
「そろそろ・・・・・・フリーダたちの方で戦いが始まったころか・・・」
 ゼクロはそう呟くと過去へと意識を向けた・・・

 父は強い剣士だった・・・数々の試練をその剣の腕で乗り切り祖父に認められ一国の王となった。

 母は―――の姫だった。旅の剣士だった父に囚われているところを救われ一目ぼれしたそうだ。

 ―――の国で俺は父に剣の手ほどきを受け、母から――魔術の手ほどきを受けた。

 だが、それも俺が12の時に終わりを告げた・・・ラルデリカの進攻を受け戦火は城を焼き払った。

 強固な力で守られていた俺の国が滅んだのは奴のせいだ・・・逆臣―――・・・俺は奴を許さない。

 その戦いで生き残ったのは俺を含めてもほんの僅か・・・・・・俺はあのときほど力を求めたことなど無かった・・・姉も妹も救えずにいた己の無力さを呪った。

 国が滅んだ後に向かった先は父の旧友だったラムルテッド国ガーネスト王の元の庇護下に入った。

 そういえばフリーダにあったときはすごかったな「あんた誰?」てファイアーボールで吹っ飛ばしておいてそう言い放ったときは流石にどうしていいのか困った・・・

 ガーネスト王からはいろいろな大切なことを学んだ国を治めるには・・・王とは・・・その教えは忘れはしない。

 だが結局、ラムルテッドも滅んだ・・・・・・

 そういえばあのときからだったな・・・無力を嘆くのを止めたのは・・・

 その後は・・・先ずはエルフの隠れ里に向かった。フリーダは毎日泣いていたな・・・もっとも1ヶ月後には自身に呪いをかけ国を取り戻すって言い切った。

 そして修行を始めて・・・俺の計画をティファニーに話してそれで・・・けっこう色々言われて、協力する条件に他の種族を説得してくることだったからな・・・

 ドワーフ。地下を掘り進む巨大ミミズの退治は最悪だった・・・フリーダと俺とで初めて戦ったのがこのときだったな。あんな狭い場所でフリーダが爆炎系の魔法を使ったおかげで生き埋めになるところだった。その後、掘り起こされた後はミミズ退治を祝って始まった大宴会・・・地獄を見た・・・もっともそのおかげでいい剣を貰ったな。

 リザードマン。こっちはまだ楽だった。バネルと一対一の戦い。魔法無しで剣と剣とでの戦い。勝つには勝ったがまだまだ未熟な腕を鍛えられた。

 オーガ。まさかオーガの長が女でしかも俺よりも年下と知ったときは驚いた。キルデと一緒に凶竜「ティラノレクス」との戦い。まーなんとか倒したはいいがこの後・・・協力する条件としてまさかキルデを抱く・・・つまり嫁にすることだからな・・・参った。フリーダのやつと一悶着・・・結局抱くことになったら・・・フリーダも混ざって・・・ああ、思い出すと恥ずかしいな・・・

 そのあと、山賊まがいのことをしてるときに偶然、奴隷商人の馬車から人獣たちが出てきたのは幸運だった。おかげで獅子王「レオン」に会うことができ人獣たちの協力を得られるようになった。もっとも実力を認めるために人獣達の武闘際で優勝。アンリ、メイ、フェイリン、ゼロス。全員強かったな。

 人獣たちも加わって本格的な拠点をと思っていろいろと探したな。それでやっとで見つけた遺跡はラルデリカの極秘研究施設。そこで丁度、妹を探していたベネルが加わって襲撃。兵士の数とか少なかったからわりとあっさり奪い取れた。けど中で見たあれは酷かったな・・・・・・ベネルが泣きながらヴェルフラウに抱きついて・・・そのあとベネルがダークエルフの族長だって知らされてダークエルフたちが加わった。

 クロエ。背中に重症をおって川を流れていたときは驚いた。助けたはいいけど、いろいろと問題があったな。なにせベネルは身なりがよかったからラルデリカ貴族の娘だと思って最初殺そうとしたもんな・・・でも、あいつも信じていた者に裏切られて、死のうとした・・・それを止めたのがベネルだったのも意外だったな。たしか「何、死のうとしてるの?ここで死んだら貴方を何のためにゼクロが助けたかかわらないじゃない!!それに貴方を殺そうとした人間に一矢報いてから死になさい!!」だったかな?それから代わりの名前を付けてやって武術の稽古を全員でつけてやったりあとはベネルなんか実の妹のように可愛がり始めるし・・・おかげでクロエ、性格が・・・まーいいや。でもクロエにベネルが変なこと吹き込んで・・・はぁーまさかフリーダとしてる時を覗かせなくても・・・・・・結局、そのあと押し切られて・・・ベネルに、はめられた・・・いやクロエに、はめたけど・・・

 アルト。あいつとは最初は敵同士まーそりゃそうだな。これだけ大規模になったのなら軍が派遣されてくるのは当たり前だけど・・・そういえば初めて俺と互角に戦える奴だったな。それにクルツにリーゼロッテや他のグレイブニルの連中もかなり強くて、けど俺の計画を話したらクルツ達はこっち側にそのクルツ達に説得されてアルトも加わった・・・

 けど、まだまだ準備不足てことでいろいろと準備してから・・・もー3年かいやまだ3年?クルツの実家を拠点に使えるようになったり・・・しかしクルツの親父さんすごかった。さすが伝説までになる人だな。それよりもすごいのがおばさん、その親父さんが頭上がらないのだからな・・・しかも、元村娘とは思えない戦闘能力・・・さすがアルトの剣の師匠だけあるよな・・・

 それからラルデリカ中の小さな村や町の人間と交流とって反乱の土壌を作ったり軍事力を割くために地方で極秘軍事拠点破壊したり・・・思い返してみるとかなり無茶やったな・・・フリーダ1人に任せたら軍事拠点がクレータになるし・・・キルデはキルデで正面から正々堂々と戦いを挑みに行くし・・・ベネルは捕まえた人間で人体実験・・・クロエにはいい実戦経験になったけど・・・偽の指令書を送り込んだり、偽の発注書とかいろんな偽情報を大都市に撒き散らしたり

 思い返すと本当に俺らってろくでもないな・・・

 それでも俺は・・・俺の夢をかなえてみせる。

 ★ ★ ★

「・・・いか。・・・陛・・・・・・。陛下起きてください。」
 キルデはゼクロの肩をゆすりながら声をかけていた。
「ああ、キルデか・・・」
「キルデかでは在りません。連合軍がメズライ高原に陣を用意を始めました。」
 メズライ高原はアルグレ城のあるこの都市ドレイクの西に1キロほどにある高原でドレイクの町並みが見渡せる場所である。
「予想通りの位置だね。とはいえ長旅の強行軍・・・おまけに足手まとい付だからさぞお疲れだろうね。とりあえずキルデは兵たちが勝手に出陣しないように、うかつに戦うと痛手を被る。敵の攻める先はここだし、今は住民の避難を・・・」
「それならすでに西の門を開き兵たちには素通りさせろと逃げ出す意志のあるものは逃げ始めています。ただ・・・陛下のお考えに賛同する者は町に残ると・・・そのような者たちはいかように?」
 ゼクロは一瞬、思案するように目を閉じると落ち着いた声で
「そうだね。捕虜にしていた兵たちは・・・」
「家畜小屋にもっとももはや人の意志などありませんが。」
「なら、地下牢に。万が一にもここが落城したとしても『囚われの一般人』としてならなんら危害は加えられないだろうからね」
「かしこまりました。ですが・・・その心配は無いのでは?我らが敗れるとは・・・」
「常に敗北も視野に入れて作戦を立案する。それに慢心は死を招く油断はするな」
「はっ・・・申し訳在りません。」
「けどまーとりあえず食事にしようか?」
 ゼクロの戦いはまもなく始まろうとしていた。


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