ゼクロ軍VS従属国連合軍『WAR』
夜も明けようとするなか、ベッドには気持ち良さそうに眠るゼクロ達がいた。
ザクザクザク――
無数のナイフがベッドに突き刺さる。部屋にはいつ現れたのか黒い衣服をきた男たちが無言のままベッドを無感情に見つめていた。
「任務完了。撤収」
隊長格であろう男が部下達に撤収の合図をだすが・・・
「気持ち良く寝ていたのにずいぶん無粋な真似をしてくれる」
キルデが3人ほど首を刎ねていた。
『最悪』
いつの間にか普段の衣裳に身を包んだクロエがフリップを掲げるその背後には矢衾で矢を射られたかのような死体が転がっている。
「朝方に仕掛けてくるのは兵法の基本だがさすがに無粋というものだね」
ゼクロも若干、不機嫌そうに侵入者を切り捨てていた。
「ば、ばかな・・・・・・」
「ふん。貴様らが侵入してきたことなどすでに判っていた。」
さげすむようにキルデが呟き、ゼクロが
「さようなら」
と、いった次の一瞬、姿が消えたかと思うと次の瞬間、最後の生き残りだった侵入者は肉塊へと姿を変えた。
「クロエ。後片付けを」
「はい、影門転位」
影が死体や血液すらも飲み込むと何処とも無く送った。
「いつも疑問に思ってのだが・・・その技『影牢送々』どう違いがある?」
キルデにそんな質問を投げかけられ一瞬、クロエの動きが止まった。
『影門転位は別の場所に転送させる技。影牢送々は捕獲することを前提にした技。普段、私が移動しているのは転位のほう』
一応、律義に説明をした。
「さてと朝食のあとはいよいよ出陣だよ」
ゼクロは朝日をバックに2人の少女に微笑みかけた。
★ ★ ★
キィィィィィィィン
金属の弾ける音が戦場に響く
「はははは、やるな。流石は『戦乙女』ロス・ヴァイセ。この国にいたにわか女剣士とは腕が違う。実戦で鍛えられたいい技だ。大技は無く一見すると地味だが、その動き流麗。まるで舞だな」
キルデは賞賛を送りながら嵐のような連撃を捌いていた。
「貴公もな。オーガの武術。敵ながら見事・・・だが!!」
ロスは連撃のリズムを変える。むろんそれに対してキルデも反応したが、次の瞬間ロスは後ろへと飛んだ。
「こういうことも私はできる。『星々の煌きよ。地に振り落ちよ。スター・レイン』」
ロスの周りに天空に輝く星の数ほどの光の球が浮かぶと一気にキルデへと襲い掛かった。
「くっこれは・・・」
キルデはとっさに横に飛ぶが完全に避けられるわけも無く外れた光が土煙をあげながらも光の矢はキルデの体を確実に捉えた。
「やったか?」
ロスはキルデがいた場所に目をむけ様子をうかがった。
「ふっ・・・まさか魔術の心得があるとはな・・・ではこちらも奥の手を使わせてもらう。『オン・ヤ・マー・キーリイ・ホン・ラーマ・ウン・ハツ』来たれ!!」
さすがのキルデも無傷とはいないまでもキルデの唱えた呪文に誘われるように死霊が集う。
「戦乙女よ。我が名はキルデ!!『屍鬼姫(しきひめ)キルデ』いくぞ!!」
キルデは死霊を纏わせた斬馬刀を振り回す。ロスはなんとかそれを避けるが近くで戦っていた兵士が巻き込まれ新たな死霊に加わる。キルデの使った力。それは鬼族だけが使うことのできる死霊を操る鬼門法術であった。
戦いは激化をます。数では従属国連合軍がまさってはいる。だがオーガは城壁を巧に利用し戦うオーガに苦戦を強いられる。なにより本来の身体能力がちがう、オーガ1人に兵士が10人で戦って互角。しかもそれは下級クラスのオーガに対してであり中級クラスとなれば法術もつかいさらに冷静に戦いを運ぶ。つまり、劣勢なのは連合軍のほうなのである。
もっとも原因はそれだけではない。
「ふむ、まだ決着が着かんのかの?」
今回の進軍の総指揮官であるバースメト・バリアンは戦場から3キロ離れた丘から望遠鏡で戦いを眺めながら優雅にステーキを食していた。この男のこの態度により士気は低下し、さらに命令系統をしっかりと定めていなかったために中には独立先行し返り討ちにあうものが多数出ている。
対して、士気が高く命令系統がしっかりしているゼクロ軍は深追いする者も無く順調に敵の数を減らしていた。
「だれか、早く片付けるように伝えてまいれ。まったく・・・・・・あのような下等なものどもに苦戦するなど、これは審問にかける必要があるかの?」
取り巻きたちに訊ねた。
「ええ、そうですとも。まったく、これだから田舎モノは」
取り巻きたちは必死に媚びをうりそれに気をよくして下品な笑みを浮かべながらバーメスと嬉しそうに頷いた。
戦場では・・・
「我こそは金剛鬼!!ゲルガ!!恐れ無き者かかってくるがいい!!」
巨漢のオーガが棍棒を小枝をふるうような勢いで振り回し
「水蓮鬼・・・タージュナ」
オーガの少女が扇子を手に舞を舞うと兵達の首が中を舞い
「木蓮鬼、オルズです。」
オーガの青年はそう名乗ると地面に手をつくと草が一気に成長し兵たちを絞め殺す
「煉獄鬼。バズゥー様だ。おまえら燃え尽きちまえ!!」
炎を操る粗暴のオーガは楽しそうに人を焼き殺す
「ガハハハハ、オレ、土轟鬼のべべ。敵、倒すド」
のろまなオーガは力任せに人を引き裂く、この五人の進撃は止まらずにいたがそれでも全軍は本陣から大きく離れるほど異常な進軍を行っていた。
その様子を見下ろしていたゼクロは笑みを浮かべ
「なるほど、それが答えか・・・いいだろう。ではこちらも始めるか・・・」
城壁にたちゼクロは右手を肩の高さまで水平に上げると手を敵本陣にかまえ
『喰らえ・・・喰らえ・・・冥府に眠る龍王よ。全てを喰らいて虚無へと送れ。』
ゼクロの右腕に竜のような痣が広がる。大気が絶望の悲鳴をあげ、大地は恐怖に震えるかのように鳴動した。
「消えてなくなるがいい俗物よ。貴様らの欲望で死んでいったものの苦しみ龍王の腹の中で味わえ!!『我、解放する』」
ゼクロの唱えていた魔術を締めくくる一言ともに世界から一瞬光が消えると次の瞬間にはバーネストがいた本陣は跡形も無く消え去っていた・・・
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