悪夢に咲く百合の花
書類、書類、書類。
山のように詰まれた書類に埋もれ机に白衣を羽織った褐色肌の女性は腰掛け手短な書類に机に寝そべりながら手近な書類を手に取ると気だるそうに目を通していた。
「えっと・・・ああ、こんな途中経過の報告書なんていちいち回さないで欲しいわ〜ちょっとフェミラこれどれくらいあるわけ?」
そばにたつ同じ白衣を羽織った褐色肌の女性に質問をする。
「えっと・・・全部で118件1681枚ですね。」
フェミラと呼ばれた女性は眼鏡をクイクイと直しながら提出された書類の合計を伝える。
「め、面倒ね・・・・・・でも処理しないといけないわけよね?」
「はい、ベネル様。」
「ああ、もうこうなったら自棄よ自棄!!やればいいんでしょ!!」
ベネルはすごい勢いで書類を処理しはじめた。
「えっと・・・この数値は・・・ああ、これ再検査ね。はい次、こっちの案件は・・・報告書が見難いわね・・・でもデータはよくまとまってる・・・と」
1つの案件を処理するのにかかる時間はせいぜい5分。それもきちんと書類の内容を理解し次の指示まで付け加えての時間である。
「なによこれ!!ちょっとフェミラこれフリーダのところの書類よ・・・えっと・・・ああ、これは問題なしと」
書類の山が徐々に移動しその大半を処理された頃
『大変そう・・・ベネルさん』
漆黒のドレスを身に纏った少女がフリップを掲げ訊ねてきた。
「あっクロエさまいらっしゃい。今日はどのようなご用件ですか?」
「た・い・へ・ん・な・のよクロエ」
『ちょっと報告・・・すこし待ち』
クロエは忙しいベネルを尻目にのんびりとすごした。
それからしばらくして
「で?今日は何?たしかバジリスクが術を施して1週間だけどなにか問題でもおきたの?」
まるで母親が娘を気遣うような口調で話し始めた。
『いえ、そっちは順調だけど・・・バジリスクの性格とかなんとかなりません?あまりにも協調性が欠如しているし・・・』
「うぅん、それはムリね。あの宝珠は好戦的にしたり深層心理の奥に眠る闇の部分が顕著に表れるのよね。とくにバジリスクの素体のリタは自分の自身にコンプレックスが強かったからね。でも、貴方の命令には絶対服従するようにプログラムされてるから問題はないと思うわ。ああ、それとこないだの戦いではセカンドも出したのね。どうやら自己進化機能も順調ということね。やっぱり実戦はデーターが集まりやすくていいわね。これを元に新しい機能を追加しようかしら?」
さっきまでぐったりとしていたベネルの表情は今は生き生きとしその思考を飛ばしていた。
「え、えっとベネルさん・・・と、とりあえず・・・新しい宝珠を・・・」
申し訳なさそうにクロエが思わず口を開いた。
「ああ、そうだったわね。はい、この4つがそうよ。今回はヴァージョン4.1よ。儀式の展開時間がさらに短縮されてるわよ」
宝珠が入った四つの小瓶を取り出しコレクションを自慢するかのような笑みを浮かべる。
「ありがとうございます」
小瓶を受け取るとお辞儀をすると出口に向って歩き始めると
「くすっがんばりなさい。私たちの理想には貴方の働きが必要なのだからね」
その言葉に見送られクロエは部屋を後にした。
★ ★ ★
人通りの多い路地を少し入ったところ。そこは人気はなく大きな通りから高い建物が立ち並ぶため死角になっており少し入り組んでいるためその場所は見えない。
「ふぐぅ・・・うぐぅ・・・ふぁぁ」
くぐもった声と熱い吐息が微かに聞こえる。がそれも大通りを行き交う人の足音で掻き消える。
「キアーラお姉さま。感じてますのね・・・むぐぅ」
ルイーザは舌を絡ませながらキアーラの衣服に手を滑り込ませ胸をもみながらショーツの上から秘裂をかるく指でなぞる。キアーラは抵抗することなくその愛撫に身を任せ熱い吐息を漏らす。
2人がこういう関係になったのはほんの3日前。傷の手当てを終え自宅療養になりどちらからともなく求め、そしてそれに互いに答えた。それが禁忌の恋であってもそれは燃え上がる2人の恋をより一層、燃え上がらせるだけで歯止めはきかない。
「そろそろ・・・お願い・・・はぁん・・・もう・・・」
キアーラはスカートをたくし上げ壁に手をつきお尻を突き出す。
「もう、お姉さま立ったらお尻のお口がもの欲しそうにパクパクさせて涎もこんなにたらして・・・」
そういうとルイーザはアナルに口をつけ腸液をわざと音を立てて吸い出す。2人の性交渉は処女膜に手をださずにはアナルとクリトリスを中心だったが数日の性交とはいえ絶え間なく続けたため互いに体は充分に開発されていた。
「はぁぁん・・・そんな激しくしたら・・・」
「そうですね。」
ルイーザはあっさりとやめるとキアーラはどこかさびしげな表情を浮かべると今度は自らのロングスカートに手を入れると臀部に両手を伸ばし
「ふぅぅん・・・はぁん・・・」
と、力を入れる手を引き抜くとその手にはヌラヌラと光る黒く張形が手に握られていた。
「はぁはぁ・・・さあ、お姉さまこれを今から入れますね」
ルイーザはキアーラのアナルに張形を押し当てると―ずぶぅぅぐにゅぅぅ―ゆっくりとしかし確実にを押し広げながら奥へと押し込んだ。
「ひぐぅぅ太いのが・・・あぅぅん・・・はぁはぁ」
口をパクパクと動かし言葉がでなかったが秘裂から溢れた愛液が太股をつたう。
「お姉さまぁぁ・・・こんどは私を気持ちよくしてくださいね?」
ルイーザがスカートをたくし上げると愛液でショーツがぴったりと張り付き陰毛が透けて見えた。
「あぁ・・・ルイーザ」
キアーラはショーツに口を押し当てると必死にしゃぶりつきながら自らのクリトリスを必死に弄りながら張形を動かした。
「お姉さまぁぁそんな激しくしたらあぅあぁぁぁ」
ルイーザは勢いよく放尿してしまうがキアーラはそれに構うことなく犬のように舐めつづけその聖水も一緒に飲み込んだ。
「はぁはぁ・・・キアーラお姉さま・・・」
「はぁはぁ・・・ルイーザ・・・」
恍惚の表情を浮かべたまま2人は手や顔にかかった淫水や聖水を舐め取り唇を互いの口内の味を長く長く味わった。
その淫らな行為に耽る2人を監視する者がいた。
「2人とも意外と激しいですね。思わず私も濡れてしまいました。」
監視者はそう呟く。だが、2人が監視者に気づいた様子はない。なぜなら監視者がいるのは二人のいる上方、高い建物と建物の間に立っているためである。
「おや、どうやら移動するみたいですね。」
監視者は2人のあとに続いた。
ルイーザとキアーラは仲良さそうな友人という感じで街を歩く、普通なら美少女2人が歩いていれば声をかける不埒者がいるはずなのだが誰も声をかけてくる気配はない。実は以前、2人が街で休日を謳歌していたとき2人が一角獣近衛隊のメンバーとは知らずに声をかけた不埒者がいたのだが、相手にされないことに腹を立てさりぎわに、よせばいいのに暴言を吐き2人の怒りを買った為に地獄をみたのである。その不埒者は後日、治療を受けたが二度と女性に近づかなくなったそうな。
そんな経緯もあるが、もう一つは蔑みや怒りの目で見る者たちのほうが多かった。もっとも聖都を守れずただいたずらに街を破壊する彼女たちに対して当然の反応ともいえる。だが、彼女達がそういう者たちのほうを向けばその手の類の人間はけっして目を合わそうとせずただ俯いたりそっぽ向くだけ、直接文句をいえるような人間など誰もいない。
だが、それだけではなかった。明らかに人が避けている。2人の一定の領域に入らないのだ。まるで誰かが2人に近づけないように不可視の壁を作り出しているのように、そして壁に囲まれた二人もまた徐々に人が少なくなるほうへと足をむける。その瞳はどこか虚ろでまるで誘蛾灯にでも誘われるかのようであった。
「ここはいったい?」
「ルイーザ、なにかおかしいです。」
2人が気がついた場所は瓦礫が一面に広がる廃墟だった。
「お2人とも仲が良いんですね。くすくす」
「だれです!?」
「姿を見せろ!!」
緊張が走る。
「見せろといわれればきちんと見せます」
ストン―音どころか土煙もあげずに1人の少女が2人の目の前に舞い降りた。
「お久しぶり。蝿と蜥蜴にやられた傷はもう大丈夫?かなり手ひどく痛めつけたと自慢するものだからうっとうしかったの」
少女の笑みはその年齢に相応しく無邪気で屈託のない笑顔だったが、その出で立ちは黒の腰に申し訳なさそうについたレース地の短いスカートのついたレオタードを身につけてはいるが布地は限りなくすくなく白い陶磁器のような肌がより一層際立ち、へそは丸見えで下着は身につけていないのだろうボディーラインは綺麗に浮き上がりその足には黒い編み上げのピンヒールのブーツを履いていた。
「まさか・・・ジャクリーヌなの!?今まで貴方はどこに?いえ、その姿はいったい?」
「あら、ずいぶんと毅然ね。キアーラ、お尻にこんなもの入れてたのにくすくす」
笑うジャクリーヌのその手にはヌラリと光る張形が握られており、その張形には薄い糸が伸びていた。
「えっ・・・あっ・・・」
顔を赤くし地面にぺたんと座り込んでしまった。
「ど、どう言うつもりか知らないですが、ジャクリーヌ。すこしお痛たがすぎるみたいですね。『アース・ブレード』」
地面が隆起し大地の刃がジャクリーヌに迫るがジャクリーヌは微動だにせず笑みを浮かべるだけ、寸前へと近づくと大地の刃は見えない壁に阻まれジャクリーヌに触れることはなかった。
「ずいぶん過激なお仕置きね。恋人がいたぶられて激昂したからってあんまりじゃない?でも、手加減を忘れて居ないところは甘いわね。全力で放っていれば毛先程度のかすり傷はくらいならつけられたかもよ?」
「なっ・・・」
あまりの出来事にルイーザの動きが止まる。
「何を驚いてるの?なに自分の技があっさりと破れたことにそんなにショック?でもね・・・これが現実。そのことにクロエ様が気づかせてくれたわ。」
「クロエさまってあなた・・・いったいなにをされたの?」
「何をって・・・何度も見てるはずよ?それとも頭の悪い貴方達は想像もしなかったの?この姿を」
見る見るジャクリーヌの姿は変わり、蜘蛛の化身、アラクネへと姿を変えた。
「どう?もう正体がわかってるのだから声は変える必要はないわね。あまりの出来事に声も出ないかしら?」
「ぐっどう言う理由でそうなったのかは知らないけど・・・悪魔に魂を売ったのね・・・なら神の名にかけて貴方を成敗します。悪く思わないでね」
ルイーザが構えをとるとキアーラも立ち上がり構えた。その様をみたアラクネは狂ったように笑い
「ははははは、バカもここまでくると笑えるわね。神に名にかけて?同性愛者のアナル狂の腐れレズアマカップルがずいぶんな言い方ね。それに私を成敗する?貴方達だれに負けたと思ってるの?蝿と蜥蜴よ?私があの2人よりも弱いと思ってるわけ?だれがアマーリエの全身の骨を砕いたと思ってるの?しかもあの鎧を身に着けていて勝てなかったのでしょ?2対1なら勝てるとでもいうの?言っておくけど、私たちはあの時ですら半分も力を出してないのよ?」
いっきにまくし立てると手で顔を覆う。
「それにもう手遅れよ・・・」
「えっ」
2人はそのとき初めて自身の体がいうことを効かない。
「バカね。話してる間になにもしないとでも思ってたの?甘い甘すぎるわ。すでに私の領域の中に居るのよ。そもそもここにどうやってきたか覚えてる?覚えたないわよね?だって貴方達にかけた暗示の効果でここまできたんですもの。全てが計画のとおりに貴方達は動いていたのよ。2人が愛し合うようになったのも・・・淫らな夢を見るようになったのも、そして、野外でのプレイをしたのも全ては私たちの計画とおりにね。まーそれも貴方達2人が心のそこで望んでいたことだけどね。」
ジャクリーヌが姿を現したのはなにも2人とただ会話をするだけではない。注意を自身に集めることが本来の目的であり、そのために挑発を繰り返し会話を長引かせ時間も稼ぎ罠にはめたのである。まさにその手腕は巣を餌が通るところに張る蜘蛛そのものであった。
そして、ルイーザとキアーラの心の中が砕かれそして絶望の闇に心が飲まれていく
「いい顔よ。絶望に満ちて。貴方達もすぐに私と同じようにしてあげるわ。そうすれば甘美な世界がまっているわ。」
微笑を浮かべながら近づいていく。
「ぐっ一体なにを・・・・・・」
「ふふふ、痛みはないわ。」
2人の体にグニョり宝玉がめり込み2人の口からは甲高い悲鳴が上がる。
「「イヤァァァァァァァ」」
黒い靄が宝珠から溢れ二人の体を包む。
「今がお昼をすぎた頃ね・・・ふふふ、他のところは上手くやってるかしら?失敗してなければいいけど・・・まーそこまでは無能ではないわよね」
変わり行く二人を見つめながらジャクリーヌは笑みを浮かべていた。
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