イーネスト村の戦い・前編



 ここはイーネスト村、本来ならのどかな農村であるはずのだが…
 アンリ、メイ、フェイリンは高台から村を見下ろしていた。
「困ったことになったな・・・」
 村には聖都から人獣討伐の一個大隊1000人近くがが駐屯していた。
「そうねぇ村の人たち大丈夫かしら?」
 実はアンリ達は密かに村人と密約を結び奪った食料の半分を村人達にこっそりと渡していたそのため運搬ルートなどは人獣たちに筒抜けであったのである。
「無事じゃないわよ。近隣の村からも徴兵されてるみたいだし、食料もかなり強引にかき集められてる。女の人も一ヶ所に集められてるみたい。それからそれとは別の場所に老人や子供を集めてあるからたぶんそっちは人質ね」
 フェイリンは駐屯部隊の陣の張り方からことこまかく分析して見せた。普段は能天気に見えるが実はフェイリンは軍略に関して三人の中で長けており作戦の立案などはほとんどフェイリンがとりおこなっていたのである。
「人質?我らにたいしての人質か?」
「ううん、違うよ。村人に対しての人質だね。そうしないと村人達が逃げる恐れがあるんだろね。それは別にしてもこの規模の駐屯が長引くと本当に大変だよ。なにせ今は夏だから秋の収穫に向けていろいろと準備とかしないといけないのに人手を取られてる。そのこと判ってるのかな?」
「なら、早く追い出してあげましょ〜」
「だな。弱者を盾に使うような輩許してはおけん。なによりラルデリカの連中とは雌雄を決するわけだしな」
「ねえさんたちちょっとまって。この数はちょっと大変だよ。村人のとの混合部隊だけどそれでも数が私達の約三倍以上は少なくともいるわけだからかなり無茶だよ」
 アンリは少し考え
「そうねぇ〜ならぁ村の人たちに協力をしてもらうってはダメ?」
 そんな案を提案したがフェイリンはあっさりと
「それも考えたけどダメだと思うよ。人質をとられてるし中には私達の情報を売って取り入ろうとする人やスパイの人がいるかもしれないからリスクだけが高くなる。それに腐っても職業軍人の人と村人では練度が違うからまず数的な状況に変化は無いかな。」
「ならば奇襲をかけて敵の大将の首をとるというのはどうだ?」
 今度はメイが意見をだすも
「それも考えたよ。でも、奇襲を駆け様にも大きな陣が3つあるからどれが総大将かわからない。それに奇襲もリスクが高すぎるよ。」
 あっさりと切って捨てられた。
 妹分の的確な指摘に2人とも頭を抱え込んでしまった。
「でも、大丈夫。作戦はちゃ〜んと立てて陛下にも相談してるよ。陛下のほうからもその作戦が妥当だって。」
 フェイリンはいつもの能天気な声で2人にそんなことを言い放った。
「ならさっさと言わんか!!」
「判ったでももうちょっと待ってね。増援が来る手はずになってるから」
「増援ってぇ?」
 そうこうしていると背後の森から一組の男女の声が聞えてきた。
「ちょっと馬鹿犬こっちでいいわけ?」
「うるせぇ猿女!!俺の嗅覚が信用できないって言うのか?」
「別にただ敵がつかってた香水に惑わされていいように遣われてたような奴に信用もないと思うわよ」
「なっ・・・手前だって猿のくせに木から落ちて敵に囲まれたくせに!!」
 怒鳴りあいながらアンリ達の方に近づいてきた。
「2人とも〜こっちだよ〜」
「おっいたいた。ようフェイリン久しぶり」
 最初に声をかけてきたのは黒髪のぼさぼ頭で犬のような尖った耳と尻尾をもつ犬族の頭の少年―フェイロン
「久しぶりです。アンリさんメイさん」
 次に声をかけてきたのは赤い髪をショートカットで猿の尻尾をもった猿族の少女―シンシア。2人ともまだ幼く見えるがそれでも二人ともそれぞれの部族の一個小隊30人を任せられている少年少女である。ちなみにアンリは牛族の総長で手元の部下は80人、メイは馬族の総長で手元の部下は75人、フェイリンは兎族の総長で77人をそれぞれ仕切っている。むろんそれが人獣たちの人口ではなくあくまで戦闘員としての数である。そして、手元にいない部下はそれぞれ別の場所で同様に山賊行為を行っている。
「増援とはこやつらか?」
「そうだよ。森の中での戦闘を考慮してるからメイねえやアンリねえだと力半減しちゃうからね。その点、私や犬族、猿族なら狭い場所での戦闘、しかも集団戦闘なら得意分野だからね。で、基本方針だけど敵を分断して戦うってのがやっぱり基本。いちおう私たちが囮になって目撃される。それを追って来た兵をやっつけちゃうという作戦。手間はかかるけどそれでもリスクは一番小さく済むよ」
 単純だが実に効果的な作戦である。ある程度の軍規などがあるとたとえ将軍クラスを討ち取ったとしても混乱は一時的なもの。混乱が収まればすぐに部隊を再編することも容易である。
「この作戦の最大のメリットは村人への被害が最小で済むということかな?たぶん向こうの作戦は物量作戦だろうから小隊単位で行動するとおもうの。それで指揮をしている人を倒して村人達は逃がして報告してもらう。」
「たしかに、その策ならなんとかなりそうだが・・・あの2人は大丈夫なのか?あんなにいがみ合っていては作戦に支障がでると思うのだが」
 メイはフェイリンが作戦説明する間に口論を続ける二人に目を向けた。
「ああ、それなら大丈夫だよ。ちょっとまっててね。」
 そういうと2人間に割り込み。
「そうだよね。フェイロンて単細胞で馬鹿だからちょっと作戦に使えるか心配だよ。う〜ん、足手まといの面倒をみるのは大変だよ〜」
 と、突然フェイロンの悪口を並べ立てた。
「なっ・・ちょっと!!確かにフェイロンは単純だけどそこまで馬鹿じゃないわよ。それに実力だってあるんだから足手まといじゃないわよ!!あとそれから仲間思いのとことかもあるんだから!!」
 半べそでシンシアがすごい勢いでもう反発をした。
「ふ〜ん。そう、いつも喧嘩してるのに見るところ見てるんだね。シ・ン・シ・アちゃん♪」
「あっ・・・もしかして・・・フェイリン・・・あんたわざと!!」
 顔を真っ赤にしながらシンシアはフェイリンに掴みかかろうとしたがひらりとかわし
「ねっ?大丈夫そうでしょ?メイねえ。あの2人はただじゃれてるだけなんだから♪」
「そうだったのか!!しかし、よく気がついたな。私はまったく気がつかなかったが・・・」
「それはぁメイちゃんだけよぉ・・・・・・」
 アンリは何処となく哀れそうな眼差しでメイを見つめ、フェイロンとシンシアは顔を真っ赤にしながらもじもじとしてしまった。
「そうそう、作戦の締めだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねっ?」
「さすがはぁフェイリンちゃん。おねえちゃん嬉しいわぁ」
「アンリねえ・・・く、くるしい」
 姉の激しい抱擁におまわず窒息しかけるがこの日から作戦は開始された。

 ★ ★ ★

 鬱蒼と茂る森の中、兵士達は歩いていた。前を歩く兵士の5人は胴当てのみと貧相な防具に身を包み、その後ろからゆっくりときちんとした甲冑に身を包んだ兵3人が続いていた。
「おら、お前達。しっかり探せよ。」
 身なりの良い兵士が上官なのは明らかであるが部下である兵士達はおびえと憎悪を含んだ瞳でちらちらと後ろの兵たちを見ながら前に進んでいた。
 カサカサ―風もないのに木々がゆれる音がしたがそれに気がついた兵は無く、次の瞬間には一番後ろを歩いていた兵の首が音も無く宙をまった。
「ひぃ・・・なんだ!あぐっ・・・」
「うわぁぁ・・・」
 そして次の瞬間には残る二人の兵も1人は顔面が潰され、もう1人は鋼鉄の鎧ごと貫かれていた。
「よわっちいな」
 胴を貫いたフェイロンは腕を抜くとそんな呟きをもらした。
「たいした訓練をしてなかったんでしょ?足の運びとかぜんぜんダメだったもの」
 と、棍で顔面を潰したシンシアが付け加え。
「楽勝だったね」
 最後に、一番最初にナイフで首を跳ねたフェイリンがあらわれた。
「さてと、貴方達はどうする?戦うならいいけど、オススメは逃げることだよ?」
 フェイリンは背後でおびえどうしていいのかわからない兵に声をかけた。
「ああ、にげ、逃げるだよ・・・だども・・・」
「大丈夫、ちょっと痛いけど傷を作ってあげる。そしたら必死で逃げたって証拠になるでしょ?ごめんね。私達のせいで村がめちゃくちゃになっちゃって・・・」
「いんやぁあんたらは悪くねぇ。悪いのは軍の連中だぁよ。あんたらに酷いことをしてんのに、あんたらはワシらのために・・・」
 人獣たちの地道な交流のおかげで一般的なイメージは徐々に軟化していることの現れである。フェイリンは軽い傷をつけ終えると再び森へと潜り始めた。
 なんども遭遇報告がされるたびに導入される人数が増えた。だが、こんどは人獣たちはまったく見つからずムダに終わるという日が数日も続いき、兵たちの士気はさがり疲労も蓄積されていった。これもフェイリンの立てた作戦のうちの一つである。感覚が鋭い兎族と犬族が人から逃げようと思えばそれは容易なことであるために見つからないのは当然であり、村に拠点を置いているために行動範囲にも自然と抑制がかかる。加えて遭地点を数箇所に分けていたために人員もかなり分散していた。
 なかには功を焦って突出する若い正規兵もいたがそれらは帰らぬ人になっていった。
 だが、そんななか村の本陣では――
「いやはや困ったものですな」
「まったくまったく」
 将軍クラスは現実の状況を楽観視しており村から集めた美しい娘たちと戯れていた。
「兵の損失がかなりのもですが」
「なに、ワシらが無事なら軍の再編など容易であろう?」
「それもそうですな」
 なんの根拠もない話しを続けてる。彼らのいっている再編というのはあくまで財源的なことであって人員的なことは含まれていない。兵がきちんとした形で運用されるまでにはかなりの訓練期間が必要とされる上に能力にばらつきも存在する。それらのことに思慮がまわらぬほどに堕落している。
「ほらしっかり舐めないか!!」
「はい・・・」
 裸にされた村娘達は将軍達のものを舐めさせれていた。むろん処女だったものは奪われなかにはつい先ごろ結婚したばかりのものさえいた。だが、そのようなことを考慮することなく女たちは無理やり犯されつづけ夜毎に嬌声を上げつづけていた。
「ほれほれ、もっと腰を動かさんかい」
 あぐらをかいた1人の将軍の上にまだ幼い子供と言ってもいい少女が涙を流しながら無理やり腰を動かされていた。
 そして、その少女を見つめる先には妙齢の女性が犬のように四つん這いになりながら涙を流し
「メーナ・・・メーナ」
 と、娘の名を呟いていた。そう、目の前で犯されている少女の母親である。
「おら、娘もがんばってるんだ。お前もしっかり奉仕するんだ。我らは神の名のもとにお前達を救いに着てやったのだからな、体をはって奉仕するのが当然なのだ」
 貴族たちに逆らうことは許されない。そう教え込まれてきた村人にとって貴族に抗うこともできずただひたすらに陵辱に耐えるしか術を知らなかった。
「はい・・・奉仕させていただき幸せです・・・」
「よし、褒美だ。娘の蜜を舐めてやれ」
 女は舌を伸ばし犯される娘の陰部を舌で舐め始めた。
「ひゃうっ・・・お母さん・・・ヤメテ・・・そんなところなめないでぇぇぇ」
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
 母は謝りながらも舌を動かすことを止めず娘は苦痛と快楽を味わうことになった。だがこのような光景などここでは当たり前だった。複数の男たちの相手をさせれているもの。縛られた上に三角形の木馬にまたがされているもの。男根を模した木細工でなんどもなんども絶頂を迎えさせられたもの、逆に寸止めでいけない苦しみにのたうつものがいた。だか、男たちはそれをみて楽しそうに笑い、酒を飲み、豪華な食事を食い散らかしていた。
 これほどまでに安心しているのも本陣の周りを屈強な近衛兵によって警備しいるためである。


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