【魔少女たちの宴】
魔女とせせらぎの月28日 14:00 リドベイ川



火の精霊の力を流すリドベイ川。
そのほとりにある大きな木陰に、総計40頭ほどの馬と同数の兵士たちの姿があった。
兵士たちは年の頃20代〜40代とバラバラだが、皆同じ表情をしている。
飢えた獣のそれだ。
その黄ばんだ歯の隙間から吐き出される悪臭のする吐息が、彼らを一層人でないものに見せている。

「おい、馬の糞だ。それも、まだ冷え切ってねぇ・・」
「ああ、こりゃ近ぇな・・」
「もしかしたら明日辺り・・待ちに待ったご馳走ってわけかァ・・?」
「そうよ!他の部隊の連中には悪いが、オレたちが1番乗りってわけだ!」
「ヘッヘ・・早く乗りたいッスねぇ、お嬢様方の御躰に・・♪」
兵士たちは品のない声で笑いあうと、また各々馬に跨る。
丸太のような男の尻をドスドスと背に乗せられて少しよろめきつつも、馬たちはまたリドベイ川上流に向かって歩を進め始めた。

     ▽     ▽     ▽     ▽     ▽

緑に覆われた雄大なリドベイの流れが、爽やかな陽光をキラリキラリと照り返すその横、醜悪な兵士たちの姿がある。
侍女たちとは比べ物にならないくらい鍛えられた彼らもまた、疲れでもあるのだろうか。
行軍は静かに続けられていた。

「ああ!心安らぐ、美しいリドベイの流れ!」
「・・あん?」
ゆっくり徒歩を進める馬の上、不意に兵士の1人がそんな言葉を口にするが、周りは誰も反応しない。
見かねたのか、ややあってから、すぐ隣にいた兵士が煩そうに声を返すが、またそっぽを向いてしまっていた。

「お姫様たち、水浴びとかしてねぇかなぁ・・」
先ほどの兵士が、二言目を口にする。
だが今回は、周りの反応が最初とは明らかに違っていた。
場の全員が、無意識にリドベイを振り向いていた。
無論こんな明るい時間帯、こんな視界の開けた場所だ。
無防備で戯れるシアフェル一行などいるはずもないが、兵士たちのネトつく視線は風景全体を嘗め回すかのようにして、獲物を探している。

「畜生。女無しの生活、もう2週間だぜ・・」
「もう、年頃の女なら王女一行じゃなくても構わねぇって感じですよ・・近くにいませんかね?」
「全くだ。ああ・・ファリオン村のメス猿どもの体が恋しいぜ。もっと犯っとくんだったかなぁ・・」
「そういや、あの村どうなるのよ、これから?」
「なんでも、兵士駐屯のための慰安村になるそうだぜ?」
「うはっ!新しい大将は気が利くッスね、全く!」
「おう、まさにゲルニス様々・・」

――パシャッ。

そこで川の方から不意に響く、小さな水音。
それは『R.I.D』の面々の時と同じく、一瞬にして場の全員から言葉を奪っていた。
 ただ1つ違うのは、追われる側と追う側という精神状態の差だ。

――きゃはは・・
――くすくす・・
 どこか耳の奥に響きすぎる、あどけない笑い声。
兵士たちの視線の先には、水辺で戯れる13人の少女たちの姿があった。
年の頃は全員が10歳前後、股下まである長い髪を水面に預け、一糸纏わぬ姿でお互いに水を掛け合って遊んでいる。
それは神秘的な美しさ、そしてまた妖しげなエロティックさを持った光景だった。

――パッカパッカパッカ・・
少女たちが遊ぶ水辺を囲むように馬を止めると、兵士たちは鞍から下りる。
先ほどまでいきり立っていた割りに、妙に落ち着いているのは、無力な獲物を前にしたサディスティックさの現われでしかない。

「やあ。こんにちは、お嬢ちゃんたち。皆、可愛いねぇ」
最初に少女たちにコンタクトを試みたのは、30歳後半ほどのスキンヘッドの兵士だ。
何かドロリとしたものが滴り落ちるような笑顔を作り、少女たちのいる浅瀬に1歩近づく。

「・・・・」
対して少女たちは、しばし戯れるのをやめ、皆立ち尽くしたまま、40名からなる闖入者たちを見やっている。
危険察知能力が未発達だからだろうか、怯えている様子はまだない。

「いいなぁ、楽しそうだなぁ。おじさんたちも仲間に入れて欲しいなぁ♪」
「おじちゃんたちはと〜っても楽しい遊びを知っているから、一緒に遊ぼう♪」
スキンヘッドに続くように、兵士たちは1人また1人と歪な笑みを作って水面に近づく。
半円の包囲網が、次第にその半径を縮めてゆく。
それは、もし少女たちが不意に逃げだしても、即座に捕獲できる陣形なのだ。
だが、要らぬ心配であった。
やがて、少女の1人がこくりと首を縦に振ると、それを見た他の少女たちもあどけない顔に小さく笑みを湛え、同じように首を振ったのだ。

「じゃあ、おじさんたちも水に入るんだから、まず服を脱がなくちゃな、服を!」
そんなスキンヘッドのわざとらしいセリフを皮切りに、兵士たちは川辺で次々と服を脱ぎ始める。
上着を脱ぎ、ズボンを下ろすと、全員が全員はちきれんばかりの勃起ぶり。
兵士たちはお互いに小さくニタついた顔を交わしあうと、少女たちのいる水辺に向かった。

「じゃあ、そこのお嬢ちゃん。ちょっとこっちにおいで・・」
膝立ちになり、リドベイのぬるま湯に下半身を隠したスキンヘッドが手招きすると、最初にうなづいた少女がそれに従った。
川の流れを太腿で切るようにして、スキンヘッドの前までやってくると、そのまま次の言葉を待つかのようにそこに立つ。
顔には変わらぬ笑みを浮かべ、無防備に立ち尽くす少女は、近くで見ると一層美しい。
そして何より、細やかな両の太腿と水面とが作り出す小さな股下の空間が、男たちの視線を集める。
口の中にたまっていた大量の唾液をゴクリと飲み込むと、スキンヘッドは思わず手を伸ばしていた。
瑞々しく張りのある少女の肌。
その頭に、頬に、うなじに、胸に・・
スキンヘッドは言葉も忘れたかのように神経を掌に集中し、ゆっくりとなぞり下ろしてゆく。
それは静寂のエロティシズム。
スキンヘッドだけではない。
その場にいる兵士たち誰もが、その光景にしばし魅入り、陶酔していた。

「・・あ」
静寂の中に1つ、そんな少女の声が小さく響く。
彼女の肌を這い下りていた指先は、既に毛の生えそろわない股間に達していたのだ。
掌で恥丘を掴むようにして下に向けられた中指が、小さな割れ目をなぞり、分け入るように小刻みに動くと、少女は両腕で自らの身体を抱き込むようにして小さく身震いする。
やがて、中指の先が子宮口を叩く頃には、愛らしい頬はすっかり上気していた。
そして、少女は大きな掌の張り付いた下半身をそのままに、ぐったりとした上半身をスキンヘッドに預ける。

「ず・・随分と、感度がいいんだねぇ・・お嬢ちゃん・・?」
予想・・いや理想を遥かに上回る少女の反応に、一時呆け気味だったスキンヘッドだったが、すぐに我に戻る。

「じゃあ、お尻の方にも指を入れてみようかぁ・・」
「・・う・・んぅ」
再び欲望の底に沈み始めるスキンヘッド。
すると彼につられるかのように、他の兵士たちもやっと行動を開始する。
各々数人で1人の少女を囲んでは、戯れの言葉をかけながらその肉体をまさぐり出す。
少女たちには、誰1人としてその行為を拒む者はいなかった。
体中を這いまわる兵士たちの指先から、純粋に快楽だけを受け取るかのように、身悶えを繰り返す。

「ヘヘ・・お、おじさんたち・・と〜っても楽しいぞぉ・・?」
「じゃあ、今度はおじさんのここを触ってみようかぁ」
穴と見れば犯すいつもとは違う。
今日の兵士たちは美しい幼女たちとの淫靡な戯れを楽しみながら、各々ゆっくりと行為をエスカレートさせてゆく。
ある者は、小さく愛らしい指先を自らの男根に導く。
ある者は、膨らみ始めたばかりの乳房をひたすら吸いまわす。
ある者は、リドベイの湯に清められた不浄の穴の中で舌先を遊ばせる。
ある者は、そんな少女たちの顔を耳元に寄せ、愛らしい喘ぎ声のコーラスを楽しむ。
やがて、少女たちをしゃぶり尽くすようなその行為が最終到達点に達する頃には、既に太陽は傾き始めていた。

「じゃあ、そろそろ1番気持ちいい事をしようか・・」

場の誰かがその言葉を口にする。
瞬間、兵士たちがざわりと色めいた。
兵士たち誰もが、この言葉を待っていたのだ。
誰かがこの言葉を口にするのを。

「これからする遊びはセックスっていうんだ」
「これはな、大人たちは大好きな遊びなんだぜ?」
まるで、水面に波紋が広がるよう。
兵士たちは、各々同じ意味の言葉を口にする。
そして、少女たちはそれを拒まない。
黄金色に染まりつつあるリドベイ川の浅瀬で、最後の行為は静かに開始された。

「オラ、動かすぜぇお嬢ちゃん・・ンアッアッアッアッ・・」
「あ、あ、あ、あっ・・」
「じゃあ、おじさんのオチンチンはお口の中でナメナメしてくれるかなぁ?」
「・・ん」
――チュッポチュッポチュッポ・・
「オオッ!こっれは・・そこらのお姉ちゃんたちのフェラなんか相手じゃねぇ良さだッ・・よ〜しよし、偉いぞぉ♪」
兵士たちはまるで巨大な蚊のように、無抵抗な少女たちの肉体にたかり続ける。
肉の針を刺しては、瑞々しいエキスを楽しむのだ。

「・・や・・っ」
だが、見渡すと1人だけ他とは違う行動を取っている少女がいた。
最初に兵士たちの誘いに頷き返した、あの少女だ。
今まではスキンヘッドとは違う2人の兵士に体をいじられていたが、最後の行為を行おうとしたとたん、その兵士たちを振り払う行動に出たのだ。

「お、おいっ・・!」
ここに来て逃げられるなど予想もしていなかった2人の兵士の不意をついてそこを抜け出すと、少女はすかさず水面を切ってスキンヘッドに歩み寄り、その腕にしがみついた。

「・・おっ?」
「・・・・」
今まで何もかも言いなりだった少女たちの中で、これは異質な行動だった。
しばし素っ頓狂な顔をするスキンヘッドを、腕にしがみついたまま、少女が覗き込む。
少女は相変わらず笑みを浮かべているが、それもどこか、これまでとは異質なものだ。
あどけなさの奥に垣間見える妖艶さ。
先ほどまでの無垢な妖精のイメージはどこへやら、今の彼女は淫乱な小悪魔という表現の方が近い。
そして、その行動までもが変貌していた。

「・・アタシ・ヲ・・犯シテ・・」

少女は腰に片手を当てると、背筋を反らして尻を突き出す。
手を後ろの腰にやった側の肩口から覗く横顔に、挑発的に吊り上がった大きな瞳がスキンヘッドを見据える。
少女はその瞳を妖しく細めると、腰をくねらせ、愛らしい尻を振って見せた。

「よ、よ、よ、よっし・・い、今ァ、ぶ〜ち込んでやるからなァ・・♪」
――クスクス
「・・嬉シイ・・」
スキンヘッドはそのイチモツを早々に少女の膣に静めると、彼女の両腕を掴んだ体制で容赦ない抽送を開始する。
後ろから、尻・太腿全体に叩きつけられるようなピストンは、少女の肉体、小さな乳房をもガクガクと揺らし、その濡れた長髪を派手に舞わせ続ける。


「ウオォォォォ・・ッッ!!」
「・・・・」
嬌声の叫びを上げながら激しく腰を前後させているスキンヘッドを、少女は時折振り向いては、快楽に歪んだ瞳で見つめる。
その行動は、『その瞬間』に向かって上り詰めていくスキンヘッドの表情を観察しているようにも見えた。
そして、その行動を他の少女たちも同様に行っていることに、兵士たちは誰1人として気付いていなかったのだ。
――そして、最後の瞬間が訪れた。
「・・行くぞォ・・2週間分のザーメン、可愛いマ○コの中にたっぷりと注ぎ込んでやるっ・・ン・ンアアァッ!!」

――バシャン!!

スキンヘッドが少女に精液を注いだ瞬間。
2人の姿はそこから消えうせていた。

     ▽     ▽     ▽     ▽     ▽

リドベイ川のほとり。
上流に向かって歩を進める2頭の白馬と4人の乙女たちの姿がある。
山の端に沈む太陽は血のように赤い。
もうすぐ、夜がやってくる。

「兵士たちが追ってくる様子がない。うまくいったのかもしれないわね」
ソネッタの馬の後ろに乗るダノンが、ふとそう呟く。
彼女たちは昼過ぎ頃、予想以上に接近を許していた兵士たちの行軍の音で目を覚まし、危なく難を逃れていた。
今朝、川でであった謎の少女らがいなければ、完全に追いつかれていただろう。

「ふん。自らの欲望のために平然と他人を殺せるような人たちなんか、ヨーグの餌がお似合いだよ」
「でも、ヨーグにとってはあの兵士たち、本当に絶好の餌だったのでしょうね」
「うん。誘惑する必要すらないからね・・あの可愛らしい『舌先』で簡単に絡め取れる。そして、相手が最も無防備になった瞬間、水中に引きずり込んでガブリ・・」

ヨーグ。
全長は最大で雄が7m、雌は15mにもなる巨大淡水魚。
ゼーペストリアでは南端、水温の高いわずかな川にのみ生息する。
雄は草食だが、雌は肉食。
雌は産卵期が近づくと食欲を増し、集団で獲物を狙うようになる。
雌の持つ全長よりも長い舌の先は、人間の雌種そっくりの姿をしており、川の浅瀬に舌先を出しては人間の雄種を誘惑し、獲物がもっとも無防備になった瞬間、水中深みに引きずり込んで、これを捕食する。

「まさかあの人たちも、少女が人食い巨大魚の舌先だなんて思ってなかっただろうね。いい気味だよ」
遠くで断続的に響きわたる、激しい水音と何かの叫び声。
それは乙女たちの耳に入る事なく、やがておさまったのだった。


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