第二章【聖女散華】

(7)

 マーリアが三年前・・・・・・神官ムラサの推挙によって、勇者ラーサーの一行に加わった時、その誰もがカリウスの反対を予期していた。彼にとってすれば、マーリアは次世代への・・・・・・パフリシア・カリウスの血脈を受け継ぐ、唯一の器である。そんな彼女を手放すとは、到底思えなかったのも無理はないだろう。
「確かに妹は魔導師として未熟なれど、その秘める才能は末恐ろしいものがある」
 決して無理はしないこと。また、必ずパフリシアに凱旋すること。この二つの条件をムラサに確約させて、カリウスは妹の帯同を認めた。
 実はカリウスと、その弟カルロスにも、勇者一行の誘いを受けたが、この二人の出立には、当時のパフリシア国王セラナンが、本国の防衛力から難色を示したため、この兄弟の出立は見送られる結果になった。
 当時、マーリアは十五歳。カリウスが評したように、魔導師としての才能は未完成だが、パフリシア・カリウスの純血な血統に裏打ちされているように、いずれはカリウスをも凌ぐかも知れない魔導師に、成長する可能性を秘めているだろう。
 だが、その近親交配を続けてきた影響からか、彼女の身体は、小柄な身体以上に、線が細く、なにかと病弱であった。
(もうそろそろ、子供を設けさせてもいい年頃なのだが・・・・・・果たして、妹の身体に耐えられるかな?)
 パフリシア・カリウスの唯一の器であるだけに、慎重になっていた頃、この勇者一行の話があり、カリウスとしては、この旅に妹の身体的な成長と、肉体的な生命力が養われる事を期待して、送り出したのである。


 それから三年・・・・・・
 カリウスの意図は見事に的中した、といえるだろう。この三年間の旅によって、マーリアは心身ともに鍛えられ、十八歳の女性に相応しい、美しい女性に成長を遂げたのである。
「暫く見ないうちに、一段と女性らしくなったじゃないか」
 久しく見る妹の肢体を一瞥して、ゆっくりとその瑞々しい身体を寝台に押し倒した。
 既に兄に犯される覚悟を決めていたマーリアは、あくまで無言を貫いたが、さすがに全身を強張らせずにいられなかった。
「フッ・・・・・・身体は許しても、心は許さずか」
 そんなマーリアの素っ気無い態度は、何も今に始まったことではない。物心がついた時から、そうであった。三兄弟の中でも、長兄だけを避けるようになっていたのは、本能的に気付いていたのだろう。
「まぁ、いい。その分、身体の方で愉しませてもらうだけだ」
 そんな彼女の意図を意に解する事なく、張りのある膨らみを手にする。その弾力性と申し分ないボリューム感に、三年以上の歳月の長さを実感させずにはいられない、豊満な充実ぶりであった。
 その膨らみをまさぐりながら、覆い被さるような体勢になって、彼女の首筋から攻める。
 このカリウスの肉体となってからは、マーリアが初めての性経験となるが、実際には、これまでに数え切れないほどの女性を手にしてきたカリウスである。当然、女性への攻めは熟知していたし、その手腕も精巧であった。無表情の沈黙を守り続けているマーリアも、さすがに全身を駆け巡った違和感(快感)に戸惑わずにはいられなかった。

 そのマーリアの娘、パッフィーがそうであったように、これまでにも、二、三度、カリウスの攻めに反応を示したように、その彼女の感度も敏感な部類に分類されるだろう。だが、それでもマーリアは、あくまで無表情と無言を貫き、まるで人形のように振舞い続けた。
 当初、その彼女の態度にも意を解しなかったカリウスであったが、やはり、その妹の態度には一人の男として癪に障った。
「なるべく濡らしてやって、少しでも痛みを和らげてやろうと、思ったが・・・・・・気が変わった」
 細長い両脚を抱え上げ、露となった下着を剥ぎ取る。曝け出されたそこは明らかに濡れ具合が不足している。
「どこまで、その不遜な態度でいられるか、楽しみだな」
 黒衣のズボンから、他者を圧倒するペニスを曝け出し、未だに穢れを知らないヴァギナに宛がう。
「・・・?・・・!」
 長兄の心変わりから僅か、さすがのマーリアにも唖然とする暇さえも与えられなかった。
  ≪ ズブッ・・・・・・ ≫
 先端がマーリアの膣内に侵入を果たし・・・・・・未だに誰にも許した事がない未通のそこは、兄のものでなくても、ギチギチと締め付けたが、カリウスはお構いなしに全身の体重をかけた。兄妹の結合を遮る僅かな抵抗をマーリアの身体で感じたが、それさえも一気に粉砕する。
「!!!」
 愛撫の前座もおざなりに純潔を喪失したマーリアは、瞳を大きく見開き、言葉に表せない激痛に、言葉一つ口にする事さえ叶わなかった。
 ペニスは根元まで深々と突き刺さり、激痛への生理的な反応で、縮み上がった膣は、ガッチリと強烈に締め上げた。
(こっ・・・これは・・・・・・)
 後に、娘のパッフィーという、極上の名器を犯す事になるカリウスであったが、現時点においては、千年の時の紐を解いても、マーリアの名器に勝る身体は皆無であった。
 ひくっ、ひくっ、とマーリアの身体が痙攣する。まるで濡れてない膣がそれに合わせて、ひくひくと蠢動し、擦れ合う粘膜が結合による摩擦によって、次第に熱を帯びていく。
 その間もマーリアは、悲鳴一つ上げる事はなかった。いや、正確には、できなかったというべきか・・・・・・。全身を引き裂くような激痛に意識が薄れては、再び打ち込まれてくる激痛が意識を覚醒させる。そのエンドレスが続いても尚、彼女は兄を拒む事も、抵抗する事さえもなかった。
 マーリアにとって、まさに悪夢のような、地獄の初体験ではあったが・・・・・・


 カリウスは妹の膣内に幾度となく、熱い情熱を放ち続け、破瓜した証明が真っ赤な薔薇の花弁が四散したように、乾いた鮮血の跡として広がっていた。
 その寝台の上で、カリウスはマーリアの股から溢れ出しては滴ってくる白濁色に、この上ない満足感と後悔を憶えずにはいられなかった。
 (・・・惜しい事をしたな)
 これほどの名器の処女だったのである。もっと丹念に味わって、たっぷりと楽しむべきではなかっただろうか?
 これまでのカリウスにとってSEXとは、あくまで次世代に繋げるためだけの、単なる繁殖行為だけでしかなかったが、マーリアと交わってからは明らかに、その価値観が反転していた。
「それにしても、我が妹なれど、見上げた性根よ」
 マーリアは長兄に犯されながら、破瓜された痛みを堪え、結局は最後まで、苦痛も悲鳴を上げる事はなかった。無論、喘ぎ一つさえもゥゥゥ
 マーリアとパッフィー・・・・・・
 同じ男に・・・・・・長兄と実父という立場の差はあったものの、カリウスに犯され、純潔を失った事実は共通している。だが、その犯されている姿勢は、まさに雲泥の差があった。
 別にマーリアの方がパッフィーより、精神力で勝っていた訳ではない。一つの理由として、前者は長兄に犯される事を覚悟する時間があり、後者にはその時間さえも与えられず、犯された事が挙げられよう。また、ラーサー世代の第一次魔王戦争に比較して、第二次魔王戦争の方が、覇王ギルツの介入もあって、極めて困難な戦いを勝ち抜いた背景もあろう。
 また何よりも、パッフィーは、アデューの・・・・・・最愛の人物の眼前で犯されたのである。長兄に犯されながら、膣内出しされても、尚、まるで人形のように振舞ったマーリアも、ラーサーの前で犯されていれば、平静を装う事などできなかっただろう。
 だが、平静を装ってその姿勢を貫き通した彼女にも、一つの点において、娘より苦心していた事実はある。パッフィーは不幸中の幸いか、後日に語られるまで、犯した男が実父という事実を知り得なかった。それに対し、マーリアは最初から長兄との、近親交配という現実を事実として知っていた点である。


 マーリアは以後、長兄の望むままに呼び出され、求められるままに身体を許した。あらゆる体位によって犯され、時と場所に関わらず、膣内出しされ続けた。
 ・・・・・・当然、彼女の妊娠は時間の問題であった。
 妊娠した事実を長兄に打ち明けたその日、カリウスは珍しく登城して、国王セラナンに拝謁を願い出た。
 パフリシア王家の直系ではないが、カリウスも、またマーリアも王族には違いなく、王宮において近親交配などは常識化されていたが、さすがに兄と妹による第一級近親交配は、世間的にも、他国への評判に対しても、些か問題があろう。彼は国王がまだ妻帯しておらず、王妃の座が空席である事に目をつけたのである。
 セラナンとマーリアも遠い縁戚には違いないが、何世代も遡らないと、カリウスの名に到達する事はなく、セラナンがマーリアを娶った、としても世間が不審に思う事はないだろう。
 だが、カリウスの要求した提案は、遥かに常軌を逸していた。
「つまり、余には、娶った妻を抱く事は許さない、と?」
 当たり前だ! といった表情をカリウスは浮かべた。ただし、この場合、非常識な提案を口走っているのは、彼なのだが・・・・・・
 一国の王が妻帯しないのには、外交にとって非常に有益な利益で、カリウスの提案・・・・・・形式だけの王妃・・・・・・を耳にした宰相は猛反対したが、国王はその提案を受け入れた。受け入れざるを得なかった。
 まだ国政と他国と不安定な中、パフリシアの軍事力は、あくまでカリウスの絶大な魔力が、極めて大きく占められていたのだから。
 マーリアは王妃として王城に上がりながら、実際は、それまでの長兄に犯されている日常と、大きな差はなかった。
 さすがに連日、頻繁に王妃と密会している事に、近衛が目をむき、国王の頭を悩ませたが・・・・・・


 一方、マーリアと供にパフリシアに帰国したイズミは、ムラサの戦死によって、新たに深刻な問題を抱えていた。
 あの先の大戦がトラウマとなって、戦えない状態に陥ったのである。それは王国に仕える者にとって、致命傷以外なにものでもない。
「そう・・・貴方も大変なのね・・・・・・」
 深い溜息をついたマーリアの心情を理解できるほど、イズミにはまだ心に余裕がなかった。確かに王妃とその長兄の、如何わしい噂を耳にした事はあるが、今は自分の事だけで手一杯であった。
「あの人も、今頃は、何処で何をしているかしらゥゥゥ」
 最後に別れて、既に半年以上の歳月が流れている。
 さすがに後の覇王ギルツと邂逅し、その妹メルを娶り、マーリア同様に一つの命を育もうとしていた現実など、彼女には知る由もなかった。
 現状の自分を省みて、ラーサーの存在を思い浮かべた事実は、マーリアの胸が痛んだが・・・・・・今の彼女には心を許せる人間は、イズミと彼だけである。それはきっと、イズミも同様であろう。
 そこでマーリアは気付いた。
 いや、きっとイズミは誰にも、心を許せないだろう。あの大戦で多くの惨劇、犠牲によって傷つき残った三人。だが、その引き金を引いたイズミには・・・・・・
「イズミ、最悪の場合、ナジー様を頼りにしなさい」
 そこにマーリアの長兄の声が聞こえ、一瞬、彼女の表情が翳る。話しているうちに、定例の時刻が迫っていたのだろう。既に長兄から封印継承の秘術を聞きだし、もうこれ以上の情事を重ねる苦痛から逃れられなくない彼女だったが、一度交わした約束を反故できない生真面目な性格が災いして、マーリアはこの後も、これからも長兄の要求をその身体で受けていく事になる。


 イズミは深刻なトラウマから逃れられないまま、戦友の一人だったマーリアの訃報を耳にする。パッフィー姫出産の後に、不治の病による病死とされたが、王宮に住む一部の人間には、それが偽りである事は明白だった。
「マ、マーリア様が・・・・・・」
 苦楽を共にしてきた戦友でもあった彼女の突然の訃報に、イズミが受けた衝撃は相当なものであった。また、彼には知る由もなかったが・・・・・・この時、もう一人の戦友に当たるラーサー・ウォルサムもまた、この世の人ではなくなっていた。
 一人残されていく心苦しさと心細さに、ただ途方に暮れていた。
 またイズミ以上に、マーリアの訃報に落胆した人物こそ、その彼女の長兄カリウスであっただろう。特に彼女を死に至らしめた原因が、出産して間もない彼女を求めた行為にあるとすれば、尚更であった。

 そんな時である・・・・・・パフリシア王国に魔族の残党の手が伸びたのは・・・・・・
 本来、この国の最大の護り手だったカリウスが不在とあって、城兵だけでは不甲斐なく、王城は呆気なく落城。
 魔族の残党、ヒュントとイクサズの襲撃を受けた際、その彼の腕に突如託された、小さな命・・・・・・王宮の侍女と侍女長から受け取った、マーリアの忘れ形見、パッフィー姫である。
「この子を御願いしますね・・・イズミ」
 そんな彼女の遺言めいた声が、聞こえたようなした。



 託された小さな命を腕に、イズミは【大賢者】ナジーの下に向かい、この囚われたトラウマから逃れるため、記憶抹消を願い出る。

 この託された少女を護る力を取り戻すため・・・・・・
 新たに生きる糧を与えてくれた、この姫の幸せだけを願って・・・・・・・


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