第三章【螺旋の迷宮】

(3)

 そのパッフィーの身体が再び、カリウスの男の象徴を受け入れ、二人の男女が結ばれている最中、パッフィーは風の魔法を発動させる。
 その手に初めて、人を殺める・・・血に染める事に躊躇いがなかった、と言えば嘘になるが、再び犯され・・・そして、膣内に出すであろう、この男の狼藉をこれ以上許す事に比べれば、これ以上に躊躇う事はできなかった。
 だが・・・・・・
 カリウスの肉棒がパッフィーの膣内を抉り、破瓜された時ほどではなかったが、純潔を昨夜に失ったばかりの彼女には、激痛以外なにものでもなかった。そして、ペニスが締め付ける身体から引き出されては、再び、その男の象徴を受け止めた。

 ・・・・・パッフィーの魔法は、発動する事はなかった。

 (ど、どうして!!)
 その唖然としている間にも、カリウスは容赦なく、パッフィーの身体を犯し始めている。パッフィーの表情が愕然と苦痛に入り混じる。そもそも彼女の身体に対して、規格外のカリウスのペニスが出し入れされているのだ。
 (も、もう一度・・・)
 その時、自分を犯している男の表情が目に入り、パッフィーは直感する事ができた。魔法を発動できなかった理由こそ解らなかったが、恐らく、この目の前の男には・・・今、身体的に繋がっているこの男には解っていたのだ。
 その犯しているカリウスの表情が、その平静そのものの態度が、その事実を物語っている。
「へ、部屋に・・・くっ、痛・・・な、何か仕掛けが・・・」
 確かにこの部屋は、出入り口がなかったり、突然にそれまで壁だった所に出入り口が現れたり、普通の部屋とは明らかに違う。パッフィーがそう思うのも無理はなかった。
 だが・・・・・・
「ここは俺と姫が愛を睦み合うだけの場所。そんな無粋な仕掛けなど、この部屋にはない」
 白々しく愛を語る男の言葉に、苦痛に身を歪ませながら、身体を許している男の言葉に耳を傾けるしかなかった。
「抗議するのには、少し場違いな行為中だが、まぁ、いいだろう。俺も今は時間が惜しいのでな」
 カリウスは声に出さない冷笑を浮かべたまま、この素晴らしい身体の所有者に・・・・・・今、まさに自分と生態上繋がっている少女に、魔法使いの摂理を説いた。
 本来、この剣聖界アースティア世界にある魔法使いとは、自身と使役する精霊の力を借りて、それを具現化するものである。当然、精霊には人のその魔力と適正に順じて、選り好みがある。同じ魔力の才能を持つ魔法使いがいたとしても、当然、扱える魔法はそれぞれ異なるのが常識だった。パッフィーは主に水のフルム、風のヒュント、炎のホノオン、そして光のキラリンの精霊に好まれ、その才能を大きく開花させた。彼女の母、マーリアは、主に水と光を好んだが、少ないながら、土のジオン、雷のライの精霊を使役下に置く事ができた。
「話はそれたな・・・んっ」
 カリウスは抵抗が薄れた彼女の身体を抱き寄せ、互いの温もりを分かち合う。パッフィーの身体から、いよいよ汗ばみだし、昨夜から入浴していなかったせいで、いつもよりも強い彼女の匂いに、いよいよカリウスのそれは興奮し、パッフィーの膣内で更に大きさと硬度が増した。心地よい感触と暖かい温もりを抱き締め、パッフィーの身体、女性本能が官能に目覚め、初めての男として受け入れたカリウスを更に締め付けてくる。
「魔力というものは、精神力と同様、その先天的な生まれ持った才能次第だ。伸びる者は魔法使いを越え、魔術師の壁を経て、魔導師になる。伸びない者は・・・まぁ、それはこの際、関係ないな。問題は・・・魔導師は当然、人間は大きく分けて二つに分類される」
「んっ・・・んっ・・・・・・」
 身体を貫かれるたびに、パッフィーの意識は苦痛だけを感じ、身体だけは女の喜びを感じていた。カリウスの挿入に合わせて、僅かに吐息が洩れ始めている。
 カリウスは犯す腰を休ませる事はなく、当然にして、パッフィーに苦痛を強要させる。ただ昨夜と違って、特に演出する必要ないように、昨夜ほどの激しい腰使いではなかった。
 だが、例え苦悶の声であれ、喘ぎであれ、決して聞かれたくない相手である。先ほどまで犯す男を殺すつもりで突き出した掌は、いつしか自分の口を塞ぐ役割になっていた。
「ククッ、感じているのか?」
「なっ! か、感じてなんか・・・くっ!!」
 突然、カリウスが体位を変えた。貫いたままの彼女の身体を抱きかかるような体勢から彼女の身体を起こす、正座位である。互いに正対しながらも、カリウスは小柄な身体を抱き締めながら、心地よい膣内を抉った。
「その二つの違いが、姫には解るか?」
「んっ・・・んっ・・・くっ・・・ううっ・・・・・・」
 パッフィーは身体を上下に揺さぶられ、とても回答できるような状態ではなかった。
「姫が今、俺を抱き締めたように、人間は当然・・・・・・魔導師にも、男と女の二種類しかない」
 カリウスの言葉に抵抗を覚えたが、反論する事はできなかった。確かにパッフィーの両手は、カリウスの肩にある。だが、それは抱き締めたのではなく、この上下に揺さぶられる震動よって、不安定な体勢を支えているだけである。
 その彼女の無言の抗議に関わりなく、カリウスは言葉を紡いだ。
「魔力の才能ってやつは・・・男女を比較すると、若干、女性の方が高い傾向がある。だが・・・お前は王家生まれの、特異な生い立ちの結果、知る事はなかったようだな・・・・・・」
 カリウスの腰使いが少しずつ荒くなる。密着しているパッフィーにも、犯す男の熱い吐息が次第に耳につく。
 カリウスが指摘したようにパッフィーは、特定の師匠から教えを乞い、魔法や術、知識を得た魔導師とは異なり、彼女は生まれながらにして、封印の魔女として、魔導師としての運命を余儀なくされた経緯がある。
 それだけに彼女が知らなかった、としても無理はなかったが・・・・・・カリウスは淡々とした姿勢のまま、冷酷な現実を彼女に突きつけた。
「女魔導師は・・・特に、処女の身で魔力を宿した女魔導師は、初めての性交を試みる際に、その前日から魔力を最低限に調節しなければ・・・その魔力は激減する」
 パッフィーは犯されながら、犯す男の言葉によって、次第に顔色を失っていく。
「姫、貴女は昨夜、俺に純潔を捧げたが・・・・・・その準備を怠ったようだな・・・・・・しかも、激しい戦闘で魔力を最大まで放出している」
 昨夜、彼女は愛機マジドーラを駆り、多くのソリッドを駆逐している。また前線から下がった際にも、彼女に群がろうとした男たちに、魔法力が底尽きるまで、全開で魔力を振り絞っている。
 そんな彼女に・・・まして性交中に唱えた詠唱などに、何の力があろう?
「魔法が使えない?」
 抜けぬけと語り、反論さえできない彼女の状態に微笑が洩れた。押さえ込んでいる射精感も、これ以上ないほど高まってきてもいる。
「魔法が使えなくて、当然だあぁ!!!」
 そして次第に、微笑が嘲笑に変わり・・・小さな双肩を抑え付け、深く突き刺した肉棒を爆発させた。


 意識を回復させたのが夕刻という事もあって、カリウスとパッフィーの性交は、その次の朝になるまで続けられた。つまり、彼女はあれから一晩中、カリウスに抱かれ続けたのである。
「くっ・・・・・・」
 これが幾度目の膣内射精か既に定かではなかったが、十六年の歳月に萎える事を知らないカリウスのペニスから、夥しい濁流が放たれた。その最後の一滴まで注ぎ込もうと、絶えず腰を打ち出す。
 パッフィーの妊娠(受胎)を、より確実なものにするために、カリウスは排卵期の彼女を一晩中、犯し続け、その全てに膣内射精を決行した。
 カルロスの見立てでは、昨夜から彼女の排卵は始まっている、と断定しており、それはカリウスの魔法でも確認がされている。故にカリウスがパッフィーの処女を奪った際に放った種と、既に結ばれている可能性が、極めて高い確率を示している。だが・・・受精が受胎に、受胎が妊娠へと、必ずしもそう連鎖するとは限らないのも、また事実である。
 無論、彼女が今回、例え妊娠する事がなかった、としても、その機会はこの後にいくらでもある。そう、確かにパッフィーの妊娠は、もはや確定などではなく、既に決定事項だったのだといえる。

 (フフッ、さすがは母親譲りだな)
 着衣を身に纏いながら、ベッドの上で放心状態の少女を一瞥する。
 心身ともに、というにはさすがに無理であったものの、それでも、彼女の身体に手応えはあった。母親のマーリアも、カリウスに気取られないよう、懸命に抗っていたようだが、肉体的に結合する男女の性交である。その膣内の締り具合、唸り具合、締め付けなどからでも、外見の年齢以上に場数を踏んでいる男には、隠せようがないものを・・・・・・
 カリウスの手が壁に触れて、瞬く間に扉が出現した。彼はまだ立ち直れないでいる、一晩に渡って犯し続けた少女の身体に振り返った。
「今夜もその身体に、たっぷり、注いでやる・・・・・・休めるうちに休んでおくんだな」
 一晩に渡って犯され、だらしなく広げられた股底から、まさにたっぷりと注がれた、カリウスの残滓を滴らせている。
 (魔導師失格の烙印が、よほど衝撃的だったようだな)


 濃蒼色の瞳を見開いた無表情のまま、何の反応も示さす事はなかった。
 カリウスの言葉が脳裏に響く。魔導師として終焉を告げられた、あの男の言葉が・・・・・・
【魔法が使えない? 魔法が使えなくて、当然だあぁ!!!】
 魔導師として致命的となった、あの残酷な展開。
 確かに女魔導として、自分の認識が甘かったかも知れない。事に性行為と魔力に関して、無知であった事にも禁じえない。だが、身体の自由を奪い、魔導師としての自分と、幸せであった自分を踏み躙り、貞操を強引に奪われ、愛する者の前で蹂躙された事とは無関係なはずだ。
【姫、貴女は昨夜、俺に純潔を捧げたが・・・・・・その準備を怠ったようだな・・・・・・】
 パッフィーは心から湧き出てくる憎しみを抑える術を知らなかった。
 生誕してから十五年・・・・・・十五歳にして初めて彼女は、一人の男だけに憎しみを心に満たした。
 パフリシア王家の王女として生を受け、それだけで、彼女は十四歳まで封印との二人三脚を余儀なくされた。年頃の女の子のように、遊ぶ事も恋する事もできず、命がけで護衛するイズミに伴われて、旅を続ける日々だけであった。この封印のせいで、多くの街や村が魔族に襲われて壊滅していく。当然、友達一人できるはずがなかった。
 時には魔族の残党の二人組、イクサズとヒュントに狙われ、生命の危機に陥ったのも一度や、二度ではない。
 そんな彼女が一度だけ、自身の生い立ちを・・・・・・母親から受け継いだ封印の宿命を呪った事がある。この自分の宿命に付き合わせ、それが原因で初めての友達であり、戦友であり、初めて意識した異性であるアデューの、その生命が危ぶまれた時だ。
 パッフィーは自分の特異な生い立ちを呪い、生きる気力を失った。そして受け継いだ封印を・・・・・・魔王ウォームガルデスを解放したのである。

 戦後、アデューへの想いは深まる一方だった。彼はお調子者で、無鉄砲のようなところ、そして極端に頑固な欠点を持ち合わせていたが、誰にも屈しない勇気、絶対に譲らない正義感をも持ち合わせ、パッフィーは、その長所だけでなく彼の欠点、その両方に惹かれていったのである。
 アデューが、かつて母のマーリアが愛し、そして、王女としての立場が故に結ばれなかった勇者ラーサーの一子と知った。運命的な出会いを感じないわけにはいかなかったが、それでも彼に惹かれていったのは、紛れもなく彼がアデューであったからだろう。


 そのアデューたちの前で、視界と身体の自由を奪われたまま・・・犯されてしまった。まるで見せ付けるかのように、蹂躙されてしまったのだ。
 そして、その結果が、魔導師として失格の烙印・・・・・・

 湧き出る憎しみに囚われていたパッフィーは、ようやく自分の晒している痴態に気付いて、散乱している着衣を手にした時だ。
「だ、誰!!」
 パッフィーはまだこの部屋の仕組みと、この部屋に至る通路の結界を知らない。この二つの難関をクリアして、この部屋に出入りできる者など、カリウスを除けば一人だけに限定される。
 そして、その男はいつの間にか、その場の壁に寄りかかっていた。


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