第三章【螺旋の迷宮】

(4)

 赤面しつつも身だしなみを整え、身構える。
「警戒はしなくていい」
 そう澄まして語る男の顔をパッフィーは覚えている。市長からの使者として、そして、あの忌まわしき出来事の直前、彼女の意識を奪い去った男である。
「信じられませんわ!!」
 彼女にしてみれば、これは市長への裏切り・・・そして、その為に彼女は、掛け替えのないものを奪われて、失ってしまったのだ。
 乙女の純潔と魔導師としての自分と、を・・・・・・
「まぁ、ごもっとも・・・・・・だが、邪な気持ちがあれば、あれだけの無防備を晒していた貴女に、もう、していますよ」
 正論だった。
 パッフィーはカリウスから解放されてからも、数刻もの間、放心していた状態で、一晩かけて大量に膣内出しされた股間を晒している。もし彼にその気があれば、既に魔導師として終焉を遂げ、ただの少女の身に過ぎないパッフィーには、もはや抵抗できるはずがなかっただろう。
 あられもない姿を観察されていた、とあって、さすがにパッフィーは赤面の至りであったが、尚も警戒の色を薄める気配はなかった。
「そ、それでも・・・市長を裏切った」
「それは違いますね。俺は市長の・・・マードックの部下じゃない。故に誰も裏切ってなどいない」
「えっ?」
 男は静かにパッフィーの寝台を通り過ぎて、小さな小柄なテーブルに向かう。五つの銘柄の中から一つを選び、見事なまでに鮮やかな手並みで紅茶を点てる。
 たちまち部屋に、香ばしい匂いが満たされていく。
「姫の口に合うか、どうか・・・・・・」
 二つのカップの一つを、彼女に差し出す。
 余談ではあるが、ロンバルディア幹部の大半がコーヒー派である。兄であり、当主のカリウスは無論、ガンドルフやファリスでさえ、ティーよりコーヒーを好んでいる傾向がある。
「苦味を薄めてあるから、飲み易いはずだが・・・・・・」
 彼女がカップを受け取ると、彼は少し離れたソファーに身を下ろした。確かに害意はないらしい。
「・・・今更だが、あの時はすまなかった。部下が手荒な真似をし、俺も針だけで良かったものを、勢いに任せて姫を殴った・・・」
「ゆ、許せるものですか! わたくしはあの後・・・」
 この男によって、パッフィーは視界と身体の自由、そして、意識を奪われた。彼女が再び意識を取り戻した時には、仲間たちの前で、犯される運命を余儀なくされたのだ。
 男はパッフィーの怒気を、口答え一つせず、また聞き流す事もなく、静かに受け止めた。
「姫の言い分はもっとも。だが、俺にも立場、というものがある。その辺は理解して欲しい。カリウス様の命令には逆らえない」
「カ、カリウス?」
 その名がロンバルディアの当主に該当する事は知っていたが、パッフィーは未だ、知らなかったのだ。自分を破瓜した男の名を・・・・・・
「姫の身体を欲した、このロンバルディアの当主の名前です。偽名かも知れませんが、本名は俺にも知らされておりません」
 これはある意味、嘘ではなかった。【カリウス】という名前は、元々、千年前から意識と身体を受け継いだ男の名前である。当然、今のカリウスにも意識と身体を奪われる前まで、名前があったはずである。だが、カルロスの意識が形成された時には、カリウスは既に父であり、兄であり、主君であったのだ。


 部屋の全体を見渡して説明する。
 窓は大小合わせて四つあり、その何れもが超硬質製ガラスと、庭園の景色を覗く事には不自由しないが、構造上、開放する事ができない。唯一に許された小さな窓も、外気に触れる程度の幅しかなく、ここから出入りする事は不可能だろう。
 また出入り口に関しては、扉を具現化する魔力と特殊なキーワードが必要不可欠であり、そのどちらに関しても、今のパッフィーには持ち合わせていない。ましてや、この部屋に至る通路には、例の強固な結界が存在する。外部からの侵入者を許さないシステムと、パッフィーが独力で部屋から出られない以上、それは完璧な監禁状態だろう。
「とりあえずこの部屋には、衣類や日常品など、生活に必要なものが全て取り揃えてあるが、他に何か入用な物や要望があれば、遠慮なく俺に言ってくれ。なるべく取り計らえるようにしよう」
 掌サイズの呼び鈴を手にして、パッフィーに差し出す。
「また、何かある時はこれを鳴らすといい」
「これは・・・?」
「この呼び鈴は、寝台の側、それぞれのテーブル、三箇所に備えられてあるが、この特殊な音色は、俺とカリウス様の魔力だけに呼びかける。何があっても、すぐに駆けつけるだろう」
 パッフィーとしては、身体を求める事しかないあの男よりも、今は紳士として接し、一切の害意の意思を見せない男の方に駆けつけて欲しい、と思ってしまうのは、致し方のない事であろう。
「室内から出られない不自由さはあるが・・・・・・そこは我慢して欲しい」
 確かに室内の設備に限れば、パッフィーには何の不満もなかった。あの男との忌まわしい関係さえなければ、客人として丁重に扱われている、とさえ言えるだろう。

「し、質問、よろしいですか・・・?」
「自分の答えられる範囲内で宜しければ」
 男は礼儀と立場を考慮しつつ、彼女に振り返った。
「ア・・・わたくしの仲間の安否は・・・本当に無事なのですか?」
「本当です。貴女同様、監禁されてはいますが、部下にも一切の手出しを厳命されています」
 その証言を得られて、パッフィーは安堵の溜息を漏らした。
「ただし・・・・・・カリウス様も時々、その場の感情によって動かれる人です」
 彼にとって主君批判ギリギリの発言であったが、それが正しい人物評価だと、パッフィーも思わざるを得なかった。
「これからの、貴女の態度次第で、カリウス様がどう転ぶか・・・」
 暗に全ては、パッフィーの・・・あの男との情事に掛かっている、と、その発言にはあった。パッフィーがカリウスの求めに応じ、身体を許し続けている間は、アデューたちの生命も保証されているだろう、と。
「・・・・・・」
 小柄な双肩に重圧を感じずにはいられなかった。忌まわしい限りの男だが、確かにあの男がアデューたちの、いや、パッフィーをも命運を握っているのだ。
「あの、カリウスという人は、何故、わたくしを・・・・・・」
「・・・・・・」
 男は形良い顎に手を抑えて、小首を傾げた。そして慎重に、明らかに口調を弱めた。
「人の趣味、好みをどうこう言うのも何ですが・・・・・・」
 (真相を語る訳にはいかないな・・・少なくても、今は)
 男にとってカリウスは、主君であり、兄であり、父であるのだが、それはパッフィーにとっても決して無関係ではない。彼女にとってカリウスは、叔父であり、父でもあるのである。ただでさえ、愛し合う者の前で犯された、排卵期の最も危険な状態に膣内出しされた、事に絶望している彼女である。その所業が実の父親であったと知れば・・・
 パッフィーの精神的衝撃を考慮して、男は真相を敢えて伏せた。
「やはり、男と女・・・・・・カリウス様の横恋慕でしょうか?」
 確かに真相を知らない人物から見れば、三十代前半にしか見えないはず(実際は三十七歳)のカリウスが、まだ十五歳のパッフィーに恋心を抱くには不自然である。彼が語るように、カリウスが幼女趣向主義でもない限り・・・・・・
「ですが、貴女はアースティアの英雄であり、その勇者一行の中で唯一の紅一点。例えカリウス様でなくても、貴女に邪な思いを抱いた・・・力ずくで手に入れようとしても、不思議では・・・・・・」
 語り継げる男の発言を、パッフィーはお腹の虫で遮ってしまった。
彼女は赤面するが、それも無理はなかっただろう。思い返してみれば、一昨日の戦闘から、彼女は何も口にしてはいないはずなのだ。
「これは申し訳ありませんでした。早急に食事の手配するように申し伝えますが、何かご希望はございますか?」
 男はあくまでも紳士のまま、深刻な表情で応対を続けてくれた。
 カルロスとしては当然の対応である。既にパッフィー姫の妊娠は、ほぼ確定しており、それでなくても決定事項である。既に彼女の身体には、兄の夢が託されているのだ。その彼女を、空腹で飢えさせてしまった、と知れたら、如何に血を分けた実の弟であり、また大切なスペアであり、思考が繋がり、ロンバルディアに欠かせない存在であろうと、決して容赦はしないだろう。処刑される事はさすがにないだろうが、厳罰ぐらいは覚悟しなくてはならない。
 彼女の要望をメモ書きし、男は一礼してから壁に手をかける。
「あ、貴方のお名前は?」
 彼女と正対するのは実に三度目。一度目は市長の使者として赴いた時、二度目は市長の邸宅で、三度目は唐突な一撃で彼女の意識を奪い去っており、兄のカリウス同様、未だに名乗っていなかった事に思い至った。
「どうぞ、カルロスとお呼びください」
 そのカルロスの退出と共に、再び扉は壁に戻っていった。
魔力で扉を具現化し、特殊なキーワードを口にする事によって出入り可能になる扉・・・・・・
カリウスを殺めようとした時は、性交の最中であり、魔法が発動する事はなかった。また扉を具現化できたとして、特殊なキーワードを手に入れない限り、開閉する事が不可能だが・・・・・・
 パッフィーは試しに扉のあった壁に触れて、魔力を振り絞ってみた。

【魔法が使えなくて、当然だあぁ!!!】

 忌まわしい男の叫びが脳裏を過ぎり、彼女は静かに嗚咽した。
 壁は無情にも・・・・・・壁のままだった。



 冷たい地下室の中、男の説明を最後に、深刻なまでの雰囲気と沈黙だけが降りたった。
 真相を・・・・・・少なくても、パフリシア王国に仕えていた経緯のあるイズミの話を聞き終えて、アデューもサルトビも二の句が告げず、さすがに愕然とせずにはいられなかった。
「・・・ここに勇者一行が囚われている、って事はさ・・・」
 地下牢が静粛な空気に包まれたからだろう。幾重にも張り巡らされた格子の向こう側から、警備兵の声が耳に付く。
「この映像・・・って、本物!?」
「ああ、本物の本物、あのパッフィー・パフリシアさ。まぁ、その時の俺は憲兵だったんだけどな」
 新兵同士の会話であったが、この港倉庫地帯で繰り広げられた・・・特に急速に広まった、噂のパッフィー・パフリシアへの陵辱の真偽に関しては、特に会話の禁制を禁じられていない。ロンバルディアの組織が急速に拡大した原因が、このパッフィー姫のレイプにあり、その現場に居合わせた者が真偽を打ち明ける事は、ロンバルディアにとって益するものであるからだ。
 そして、ロンバルディアはこのパッフィー姫の陵辱現場をプリントアウトした一方、その現場を撮影した映像を少数ほど流出させ、更なる利益を上げてもいるのだが、その数少ない映像の大半をロンバルディアの組織が所有したのは語るまでもない。
 流出した一本の映像にかけられた金額は2000万ゴルゴル(およそ二千万円)と、破格な価格には違いないが、主演女優の名前と流出した希少数を考慮すると、まず妥当な値であっただろう。
 組織内では、まだ比較的容易に手に入れる事が可能だったその一本が、この幸運な新兵の手に渡り、またその現場に居合わせる事ができなかった新兵が、その映像の公開を希望するのは当然であった。
「ふむ。まぁ、仕方がないな。ただし警備の職務は忘れるなよ!」
 その場に居合わせた上官は、部下からの視線に負けて許可を下す。警備の本分を忘れなければ、咎められる事もないだろう。
 そして彼は付け加える。
「彼らも途中まで意識がなかったようだし、牢内のスクリーンにも映し出してやろうじゃないか!」
 その上官の配慮は、勇者一行を徹底的に貶めた。
 特にアデューとサルトビは、パッフィーを犯している男が、パッフィーの実の父親カリウスだと知って、現場で昏倒したイズミの気持ちを理解せずにはいられなかった。
≪この締り具合、最高だ・・・・・・フフッ・・・・・・この小さな身体・・・・・・とはいえ・・・・・・極上の肉襞を備え・・・・・・いいぞ・・・・・・この構造といい・・・・・・この肉質といい・・・・・・締り具合といい・・・・・・≫
「これが・・・・・本当に・・・・・・実の父親のすることか!!」
 クールを心情に心がけているサルトビでさえも、口調に動揺と怒りを隠し切れない。
「あくまでも、王宮で聞いた噂と、私の推測が正しければ、だがな」
 記憶を取り戻したイズミも、全知全能ではない。そして証拠もなく、揺るぎない確証もなかったが、あのマーリアの翳った笑顔と、想い合うはずのラーサーに見せた別離の表情・・・・・・様々なフラグがイズミを確信させる。
 パッフィー姫の実の父こそ、あの男である・・・・・・と。
「し、しかも・・・娘に・・・・・・その実の父親の子供を・・・・・・し、信じられないぜ!」
「だが、奴は・・・・・・実の妹を・・・マーリア様を既に犯している。妹を犯して、子供を産ませるような男だ。実の娘であるパッフィー姫を犯したとしても、不思議はない・・・・・・」
 正論であった。
 彼らにすればカリウスの行為は常軌に逸した話である。だが、既に常軌に逸している男にとって、常軌に逸している行動の方が、その男にとって常識なのかも知れない。
 サルトビとイズミが口論している最中、アデューは痛切した表情を禁じえなかった。彼にすれば、愛する者を目の前で踏み躙られ、眼前で破瓜され、尚且つ膣内出しを決行されたのである。三人中、もっとも流れている映像に衝撃を受けたのは、彼であろう。
 流れている映像は、娘のパッフィーの膣内に、実の父親であるカリウスが膣内射精を果たした場面を迎えていた。
≪最高の処女マンコだったぜ、勇者さんよ・・・・・・≫
 透明色の男が、勝ち誇ったように、嘲笑している姿が目に浮かぶ。
 だが、アデューから滑り出た言葉は、自分にではなく、あくまで彼女の事であった。
「当然、パッフィーは・・・そんな事、知らないんだよな」
 アデューの言葉に、他の二人も押し黙った。
 一昨日の出来事で傷心したのは間違いなく、彼女であろう。良くも悪くも一生に一度の思い出になるはずのそれが、多くの苦難を供にしてきた仲間と愛する者の前で破瓜され、公然の場で犯されながら、誰かも助けられる事はなかったのだ。しかも、排卵期中、もっとも危険と思われたその日に膣内出しされたパッフィーの衝撃は、彼女にもっとも親しい彼らでも、計り知れないものがある。
 それだけでも同世代の少女には、残酷に過ぎる出来事であろうが、その犯した男が実の父親であっては・・・・・・パッフィーの母親であるマーリアを犯して、その間に生まれたパッフィーを犯すという、螺旋の悠久な事実を、彼女はまだ知らないのだ。
 牢内の映像は繰り返し再生されていく。パッフィーの破瓜されるシーンを、膣内出しされるシーンをアデューたちに見せ付けるように繰り返された。
「今は口論している場合ではない」
 アデューが二人を見渡す。硬く握り締められた拳から血が滴る。掌に爪が喰い込ませながら・・・とにかく機会を見てここから脱し、パッフィーをあの男から救出しなければならない。
 確かにカリウスという男によって、もはや取り返しのつかない事態ではある。例えここから脱し、パッフィーを救出できた・・・としても、彼女が破瓜され、犯された事実が消える事はない。いや、陵辱されてしまった紛れもない証が、パッフィーの胎内に宿らせられた可能性が極めて高い。
 アースティアの世界の医学に堕胎技術はなく、受胎したアースティアの女性は、唯一の例外を除いて、新たな生命を産み落とさなければならない現実が待っている。

「とにかく、今は、ここから脱する機会を待つ」
 だが・・・・・・、いや、だからこそ。それ以降の事は、またそれから考えればいい。
 どれだけの長い時間、いや、日数か月日となるかも知れない。この間にもパッフィーはあの男に犯される事は間違いなく、彼らには途方もない覚悟を強いられたような気がした事だろう。
 だが、彼らがこの地下牢から脱出できる機会が訪れるのに、そう長い日数を必要とはしなかった。
 彼らにとっても、思いにも寄らなかった人物の手によって・・・・・・



 突然、それまでとは異なる別方向から魔法の扉が出現し、カルロスが荷車を押しながら現れたのは、彼が退出してから、さほど時間か過ぎていなかった。
「お待たせ致しました」
 途端に室内に漂い出した空気が、パッフィーの食欲を刺激する。
「とりあえず、早急に用意できたものをお持ちしました。手のかかるものも順次、運び込める手筈になっております」
 と、大きめのテーブルの前に着席した彼女の前に、次々と様々な料理が並べられていく。要望した注文のうち、半分もまだ載せられていない。
 彼女一人の食事にしては、並べられた料理の量は多すぎる。カルロスも同伴するのかな、とも思われたが、彼はパッフィーの近くに控えて、給仕役をこなしていく。
 ・・・やはり、自分一人に割り当てられた食事らしい。
 確かにカルロスの運んできた料理量は、彼女の小柄な外見からも明らかに多い、と彼も思わずにはいられない。だが、彼女の身体はこれから、カリウスの相手を務め、その新たな生命を宿す事になる苗床である。それだけに体力と栄養をつけてもらわなければ困るのだ。
「・・・」
 空腹の欲求を満たしながら、パッフィーは戸惑いの色を禁じえなかった。
「あ、あの・・・」
「なんでしょうか?」
 パフリシア王宮に仕えていた経緯もあるカルロスには、彼女への給仕役を含めた対応は、王族への当然の応対であっただろう。だが、同じパフリシアの王女として生を受けたパッフィーとはいえ、彼女がまだ乳飲み子だった時に、魔族の襲撃に晒され、パフリシア王国は崩壊している。
「カルロスさんも、座りませんか?」
「姫がお望みなら・・・・・・」
 微笑して、先ほど点てたティーポットから紅茶を注ぎ、正面の席についた。・・・が、その途端、外部からの連絡でパッフィーの要望した料理の第二派、第三派の波状攻勢が続く。
 パッフィーの要求はかえって彼の労力を増加させたみたいであったが・・・・・・

 大きな窓から眺められる庭園も、もう夕焼けに赤く染まり、もうすぐ日が落ちようとしている。それはつまり、彼女にとって忌まわしき時間の始まりが、刻々と迫っている事を肌で感じさせた。
 パッフィーは食欲を満たしながら、今後の事を考える。現状は、先ほどカルロスが語ってくれたように、アデューたちの命運を握られている以上は、あの男の求めるように身体を許し続けるしかないだろう。破瓜されてから、もはや数え切れないほど、膣内で果てられており、自分の妊娠も覚悟しなくてはならないだろう。
 もし、アデューたちが監禁状態から脱し、パッフィーも運良くこの監禁状態から逃れられたとして・・・・・・彼らは、汚された自分を受け入れてくれるだろうか?
 特に、あの男の子供を身篭った自分を、再びアデューは・・・・・・

「・・・・・・」
 食欲を満たして、心身ともに落ち着いてきたからであろう。濃緑色の瞳から大粒の雫が零れては落ちていく。
「姫!?」
「あ、す、すいません・・・きゅ、急に・・・突然・・・」
 カルロスは無言のまま、一度だけ視線を伏せて、綺麗に折り畳まれたハンカチを彼女に差し出した。
 正直、彼女の境遇には同情する。いや、彼女だけではない。彼にとって妹であり、彼女にとって母であるマーリアにも、同情を寄せていたカルロスではある。だが、同時にカリウスの求める行為もまた、当然の要求である事を彼は知っている。全ては我らの祖先、初代パフリシア王の浅はかさが、全ての元凶なのだから・・・



 そして、パッフィーが認識している中では初めて、彼女の大きい部屋に三人目が魔法の扉を介して入室してきた。
「まだ食事中だったか・・・」
 カリウスは上着を脱ぎ捨て、黙々とテーブルに歩み寄ると、カルロスの襟首を掴み上げては、頬から殴り飛ばした。
「誰が同席を許したか! 職務を弁えろ!!」
「はっ!!」
 (すまぬな・・・)
 (気になさいますな、兄上)
 激しく叱責されながら、繋がった二人の思考の内は、それと全くの別物であった。無論、それを知る由もないパッフィーが、慌しく弁護する。
「わたくしが席を奨めたの。カルロスさん・・・ごめんなさい」
 そのカルロスへの様子からでも、弟が巧く彼女の心に取り入った事実を容易に察する事ができた。順調な思惑であったが、表面上はあくまで腹立たしさだけを表し、その内心を微塵さえも感じさせなかった。
「姫に巧く取り入ったようだが・・・これだから、血を分けた弟とはいえ、二枚目は油断できんのだ」
(お、弟!?)
 カリウスが故意に流した単語に、彼女は驚愕した表情を隠せなかった。
 確かに外見上、カリウスとカルロスには通じるものがある。双子なのだから当然なのだろうが、その人格は特異な関係もあって、似ても似つかない兄弟であろう。
「これからは俺と姫だけの時間だ!!」
 暗にカルロスの退出を求めた発言ではあったが、カリウスの態度からは、まさに追放といった手厳しさを感じずにはいられなかった。
「・・・それでは失礼致します・・・」
 (兄上、ご存分に・・・)

 二人だけの密室になり、パッフィーは忌まわしい限りの男と対峙した。
「実の弟なのに、なんて酷い・・・」
「それはつまり、カルロスだったら犯されても構わない、って事か?」
 その男の最低な返答に、パッフィーの心は激情せずにはいられなかった。
 確かにカルロスに犯されたい、とまでは思わないが、少なくても、目の前にいる男に犯される事と比べれば・・・
【カリウス様も時々、その場の感情によって動かれる人です】
 紳士に接してくれた男の忠告が、パッフィーの感情を辛うじて抑えた。
 ロンバルディアの当主はこのカリウスであり、アデューたちの命運がこの男に握られている以上、パッフィーも迂闊な、不用意な発言はできなかった。
 込み上げてきた怒りを抑えて、パッフィーはこの不快な男に宣言する。
「例えわたくしの身体が穢されても、わたくしの心は決して、貴方に屈したりしません!」
 本来の彼女らしい、気丈な気品溢れる姿だった。カリウスに破瓜され、犯されて、ただ泣き散らす。カリウスの思うがまま犯され続けた、憐れな少女の面影がそこにはもはやなかった。
 (マ、マーリア!!)
 かつてカリウスに対して同じような姿勢を貫いた、実の娘であり、妹の姿を彷彿させた。彼の錯覚も当然ではある。そもそもパッフィーは、まさに母親の彼女の生き写しである。
 表面上、平静を装って、内心の動揺を見せる事はなく、彼女に正面から相対する。
「ほぉー・・・とりあえず、俺に抱かれるだけの覚悟は出来たようだな」
 小憎らしげに睨んだパッフィーの頬を、片手で掴み上げると、カリウスは不敵な笑みを浮かべる。今はそれだけで十分だった。もっとも、彼女の覚悟・・・意思に関係なく、その身体を犯すであろう事は、既に決定事項であったのだ。
「脱げ!」
 小柄な身体をベッドに突き倒して、威厳に満ちた恫喝で命じる。自身はソファーに身を預け、その光景に静観を決め込んだ。
 パッフィーはそれだけでも愕然とせずにはいられなかった。
 同じ犯されるにしても、自ら衣服を脱ぐ事は、彼女が受ける心境には大きな違いがある。これまでは犯される中で、常にカリウスが主導しており、パッフィーは無理矢理に犯された、と、あくまでも受動的な立場にあり続けられたのだから・・・・・・
「くっ・・・・・・」
【これからの、貴女の態度次第で、カリウス様がどう転ぶか・・・】
 抵抗したい意思も、カリロスの言葉を蜂起する事で、辛うじて推し留める。今、目の前の男に逆らう事はできないのだ。だが、そう思っても、衣服にかける彼女の手つきは重たかった。
「話にならんな」
 冷酷なまでに残酷な物言いだった。
「俺は少女の着替えが見たいのではなくて、これから犯してやるお前の肢体を拝みたいのだ。勘違いするな!」
 そして自らパッフィーの衣服に手をかけると、力任せに引き裂いた。意図も簡単に、最も手っ取り早く・・・パッフィーはまさに一糸纏わぬ、生まれた時の姿、そのままにされていく。
「フフッ・・・・・・」
 ベッドの上で小さく蹲った、小さな小動物のような彼女の身体に冷笑する。昨夜一晩かけて犯し尽くした、その傷跡・・・証明が身体の至るところで目に付く。
「いずれは、もっと・・・俺なしでは生きていけない身体にしてやるさ」
 小気味よく震える彼女を前に、カリウスもまた、自らの着衣を脱ぎ捨てた。大抵の男なら、自身と比較して自信をなくし、大抵の女なら余りにも凶悪な大きさに蒼顔する事だろう。
カリウスの怒張したペニスが反り返っている。
「ひっ・・・・・」
 パッフィーはカリウスのそれを・・・男の象徴を見て、思わず視線を逸らさせずにはいられなかった。
 ライトグリーンの一房を掴み上げ、彼女にとっては忌まわしい限りの象徴を、その眼前に突き立てた。
「まずは、その愛らしい口でしてもらうとするか・・・・・・」
「いっ、嫌ッ!!」
「これは姫にとって記念すべき、姫が受け入れた唯一の肉棒だぞ」
 その忌まわしいばかりのグロテスクなものが、パッフィーの純潔を突き破り、小柄な身体を幾たびも貫かせている。既に幾度もなく受け入れてきているはずのペニスである。だが、パッフィーは頭を振って、カリウスの求めを拒絶した。
 どのように言われても、彼女には嫌悪感しかない。ここで勇者一行の命運を強いても良かったが、それではペニスを咥える事ができても、奉仕させる事までおぼつかないだろう。これ以上の無理強いは時間の無駄と観念したか、カリウスはそれ以上、追及してくる事はなかった。
「まぁ、上の口は次の機会を待とう・・・だが、その代わりその分、下の口で愉しませてもらうぞ!!」

 パッフィーは頑なに抵抗した。
 もはや魔法も使えず、腕力においても男のカリウスには到底及ばない。だが、無駄な抵抗だと理解しても、感情は納得しない。
 カリウスはこの彼女のささやかな抵抗を歓迎した。少なくても、昨夜のように無抵抗のまま、犯されるだけに委ねていた彼女よりも、遥かに男の嗜虐心を刺激する。
 カリウスは昨夜に続き、その一晩中パッフィーを犯し続け、それに等しい回数の膣内出しを、当然の如く膣内で果てた。執拗な交配行為で彼女の意識が途絶えるまで、五回を数えたが・・・実際はそれ以上に及んでいたであろう事は間違いない。

 だが、男の絶倫の前に意識を失ったが・・・
 パッフィーは男に公言したように、その最後までカリウスに屈する事はなかった。


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