第四章【華燭の輪舞曲】

(3)

 魔法の扉で入室し、パッフィーの自由は再び、この見慣れ始めていた室内だけに限られてしまった。次に外出が許されるのがいつになるのか、それは定かではない。全てはこれから寄り添う男の心一つだ。
 入室したカリウスが、この日、名実共に手に入れた小柄な身体を強く抱き締めた。
「今日だけは特別だ。一生の記憶に残る一夜を刻んでやろう」
 それが結婚した日の特別に、カリウスなりの彼女への配慮なのだろう。まだ身も心も完全に捧げる事ができなかったパッフィーだが、カリウスに公言してしまった建前、男の身体を抱き締める。
「それを時間かけて、教えてやる・・・」
「うん・・・」
 カリウスの腕の中で頷くと、お互いに見詰め合った末に熱い口付けを交わし合う。彼女の口内を舌で犯しながら、パッフィーの真紅のロングドレスに手をかけ、彼女もまたカリウスの端正な正装に手をかけた。
 互いに一糸纏わぬ姿となって、カリウスは再び、パッフィーの小柄な身体を抱き締めるとその唇を奪った。
 不意にカリウスの頬に、彼女の頬から暖かいものを感じる。
「・・・!?」
「ご、ごめんなさい・・・」
 それが結婚した事による感涙でもなければ、カリウスを思っての涙でもない事は、彼女の謝罪した事実からでも明白ではあった。だが、それでも溢れ出した涙は止まらない。
「突然、自然に・・・涙が・・・」
 自分が他人のものになる・・・しかも、それは胸に秘めてきた人物ではない、他の誰かの・・・・・・
「何度も・・・何度も、心の中ではお別れ・・・している・・・はず、なのに・・・」
「無理もないさ・・・」
 未練がましいとは思わなかった。何度も死線を潜り抜けてきた戦友であり、その過酷な戦いこそ聞いた事があるだけで、時空の魔導師と謳われたカリウスも、実際に参戦した訳ではなかった。
 パッフィーが心からカリウスに誓約したとしても、彼女には一生忘れ難い存在なのだ。そのアデュー・ウォルサムという存在は・・・・・・誓約はあくまで彼女に対する足枷でしかない。本当に心まで縛る事など、本人自身でも不可能なのだ。
 もしカリウスが彼女の身体だけを・・・忠実な奴隷を強いるとしたら、彼女の心を洗脳するか、精神を壊す以外に今のところない。もっとも、洗脳という無粋な真似をカリウスは本能的に嫌っていたし、また知らず知らず、パッフィーという個性を愛し始めていた。
 それがカリウスの趣向や主義が変わってきた証明であり、唯一にカルロスだけが気付き始めた事実である。
「今夜は特別だ・・・それでも、求めるぞ・・・」
 涙が止まる事はなかったが、パッフィーは男の胸の中で頷いた。
 優しげに彼女の身体をベッドに押し倒し、手にした二つの膨らみに触れると、頂点に君臨する突起物を舐め、今までにはない優しい手つきで乳房を揉んだ。
 カリウスは千年の歳月を生き、それまでの間にも数多の女性と関係してきている。滅亡したパフリシア王家の、半分の系譜が彼の存在によって描かれた、と言っても過言ではない。当然、女性を悦ばせる・・・感じさせる手腕とつぼを心得ている。
「くぅ・・・んっ・・・んっ!」
 今のパッフィーがそれであった。
「はぁっ・・・んんっ・・・ああぁっ・・・」
 特に今まで、カリウスの暴君よろしく乱暴な愛撫だった。性交に至っても同様で、パッフィーの身体を手に入れ、その自由を拘束してからも、まるで尚も、レイプや強姦するような荒々しい腰使いであった。それが見事に一転しているだけに、彼女の敏感だった身体は、更に快楽だけに酔わせてしまう。
 薄桃色だった乳首が充血して、更にねだるように尖り、男はその自然な彼女の身体の要求に応えた。乳首を優しく口に含んでは舐め、乳房を優しく掴んでは、乳輪をなぞるように刺激する。それに伴い、パッフィーは股間が疼くのを感じた。
 連日の性交によって、身体が習慣に慣らされてしまったのだ。
「んっ・・・あ、ああっ・・・くふっぅ・・・くぅぅ・・・」
 甘美な喘ぎが口元から洩れる。誓約を交わしてからは、抑制する事を自らに禁じて、自分の反応を敢えて曝け出す事を心がけてきた。が、この日のカリウスの優しいまでの愛撫は、その戒めさえも忘れさせてしまう。
「もう、ここは湿らせて・・・いや、もう洪水状態か!?」
「い、いや・・・ああぁぁ、んんっ・・・い、言わないでぇ・・・」
 優しげに触れられて、パッフィーの身体に電流のような快感が走り、その全身を痺れさせる。そして、新たに敏感な股間からの優しい愛撫が施され、更に彼女の身体に拍車がかかっていった。
「フフッ、素晴らしいな、まだ美しい色合いを保ったままか・・・」
 連日のように犯し、幾度もなく膣内に射精した・・・のにも関わらず、彼女の身体は、まだ処女だった頃の身体そのままのようだ。質素抵抗。これは彼女の母であるマーリアにもなかった、パッフィーの一つの性質であり、素晴らしいばかりの素質であろう。
「くはぁぁ・・・んんっ、だ、駄目ぇっ・・・んんっ!!」
 絶える間もなく注がれる快感に、自然と腰が捻り出す。そして、いよいよ達する・・・と、いう時になって、カリウスは体勢を整えた。
「繰り返すと、飽きられるからな・・・」
 首筋に接吻を与えて、変化を与えていく。カリウスの顔がパッフィーの欲情している表情に接近すると、どちらからという訳でもなく、舌を絡ませた。時を置いて再び、カリウスの指が敏感な場所に及ぶと、もっとも敏感な部分に挿入して刺激する。≪ビクビク!!≫
 (こ、今度こそ・・・)
 だが、パッフィーの思いを見事に裏切る。彼女がいざ達しよう、という時に限って、カリウスは愛撫の手を安め、体勢を変えていく。達せない。故意に焦らされているのが、明白である。
 これまでは絶頂に追いやられてしまう身体に、僅かに罪悪感や屈辱感が確かにあった。またその後に、カリウスに達せられてしまった、という敗北感や失望が心の中に漂った。至福に登りつめた絶頂の女の悦びよりも、辛い後味の方が遥かに大きかったのだ。
 だが、逆に絶頂に達せない。焦らされ、焦らされ続けている辛さを彼女は初めて理解した。その辛さに際限はなく、それは昨日までの辛さとは、比較にできない苦しみであった。
 だが、自分から求めるような所為も今までになく、さすがにそれを口にするのは躊躇われたが、既に耐え続けているこの辛さを前に、彼女の意思が白旗を上げるのも時間の問題であった。
「お・・・御願い・・・・・・」
 故意に焦らしている男には、彼女の哀願の意味は、明白であろう。
「ん? どうした!?」
「ううっ・・・んんっ!!!」
 涙しているそれが、当初の涙そのままか、それとも現状に対しての涙なのか、それとも汗なのか、流している彼女にも、もはや理解する事は不可能だった。
「よし、お前が俺をいかせたら、その望みを叶えてやろう」
 互いに体勢を入れ替え、カリウスはパッフィーの、パッフィーはカリウスの急所を手にした。シックスナインと呼ばれる行為。知識として少しだけ理解していた彼女だが、実際にカリウスと及ぶのは初めての事だった。
 パッフィーはカリウスのそれを懸命に頬張って、知っている知識とこれまでのフェラチオの経験を総動員させた。だが、絶頂寸前にあるパッフィーは、たびたび行為の中断を余儀なくされ、それと同数の焦らされる辛さを体験しなくてはならなかった。
 (・・・ま、また・・・・・・)
 既にあれから二桁に及ぶ、絶頂寸前に追いやられたパッフィーではあったが、手にして懸命に奉仕しているカリウスのそれは、まだ一向に変化の兆しは見えなかった。確かに初めての時に比べれば、稚拙ながらも上達している兆しが見えたが・・・その絶頂寸前に追いやられるたびに行為を遮られ、中断している間に手にしたそれは、平静を取り戻してしまう。
 永遠のようなエンドレスである。
「くうっ・・・んんっ、ま、まだ・・・」
「まだまだ勉強不足だな・・・」
 とうとう、パッフィーの股間から起き出してしまう。彼女には、この火照った身体をそのままに、放置されてしまうのではないか?・・・と、いう恐怖が、即座に浮かび上がっていた。
 だが・・・彼女が条件を満たさなかったのにも関わらず、カリウスは今の彼女の身体が最も欲求している・・・今まで彼女が口に含んだりして、奉仕させていたものを宛がう。
「どうだ・・・挿入れて欲しいか?」
「お、御願い・・・・・・」
 連夜の如く受け入れているそれを感知しているのか、もしくは彼女の思考が受け入れ口に伝達しているのか、そこは既に洪水状態の・・・カリウスを受け入れる準備は万全であった。
「も、もう・・・」
 それでもそれを宛がうだけで、挿入させる気配もない。
カリウスも、もうこれ以上パッフィーを嬲るつもりはなかったが、一つだけ・・・彼女には言わせておきたい言葉があった。
「俺を愛しているか? そして・・・いや、それとも、これからは愛してくれるか?」
 パッフィーには、カリウスの言っている言葉が理解できなかった。少なくても、今の彼女の状態では特に・・・
「俺を愛していると・・・これからでも愛すると言うなら、お前が望むように・・・お前の身体が欲求するこれを、好きなだけくれてやる・・・好きなだけ、いかせてやるよ!!」
 カリウスの言葉を理解できなくても、その条件は、今の彼女にとってはとても魅力的に思わずにはいられなかった。ただ愛を語るだけでいい。それだけで、この無限のような地獄から解放されるのである。だが・・・それでも、彼女は口にする事ができなかった。
「くぅ・・・・・・か、カリウス・・・」
 パッフィーは虚ろな瞳で直視し、ゆっくりと頭を振った。
 彼女が愛を語ったところで、それは紛れもなく偽りであり・・・それはカリウスが求めているそれとは、大きく異なるものであろうはずだから。
「ふふっ・・・ならば、いつか言わせて見せるぞ・・・俺を・・・俺だけを愛している、とな・・・」
 カリウスはゆっくりと、そしてその挿入するのにも、今までにはない優しさでもって、貫いていった。パッフィーの身体は・・・カリウスと繋がった下の口は、まさに涎を洪水状態にさせて受け止めていった。
 パッフィーはカリウスを・・・今、受け入れている男の背にしがみついて、抱き締めた。 常に犯されているような、その性交行為に、嫌悪感を憶えていた彼女の心も、優しげな挿入から、身体同様、溺れてしまっている事実を認識する。
 身も心も、カリウスという男を受け入れた瞬間であり、女の幸せを感じ始めた瞬間であった。
「あっ・・・あんっ・・・んんっ・・・はふぅ・・・」
「フッ、フェラはまだまだ未熟そのものだが・・・・・・身体の方はさすがに、素晴らしいな・・・」
 カリウスが彼女の身体を抱え寄せ、パッフィーは男に抱きついたまま、まさに身体と心を一つに繋げながら・・・正座位の体勢に及んだ。
 カリウスは、その素晴らしい構造の膣内を求めて・・・
 パッフィーは、未だ達しえぬ、結合の果てにある絶頂を求めて・・・
「お・・・奥に・・・あっ、当たって・・・・る・・・」
 パッフィーは知らなかった。いや、今日になって思い知らされた。性交とは、これほどまでに素晴らしい行為なのだと・・・
「すっ・・・凄く・・・す、凄い・・・くっぅ」
 彼女はいよいよ、絶頂への階段を登りつめていた。そして、登りながら受け入れている男の変化を敏感に感じ取れた。カリウスの言った言葉に、偽りがなかった証明であろう。あれだけ懸命に口で奉仕しても変化なかったそれが、この身体で受け止めている間に、刺激を与えていたのだ。
「あっ・・・んんんっ・・・か、カリウス・・・」
「んっ・・・くっ・・・」
 苦悶な声が耳についた。
 カリウスは自分の身体を素晴らしい、と言った。彼女にとっても彼は、初めて受け入れた男であり、今のところ、唯一の男でもある。その男に称賛され、絶賛され・・・ここまで執着してくれる事に、悪い気はしない。
 パッフィーも、カリウスも全身に汗を、だが、その二人の動きはどちらに示し合わす訳でもなく、次第に早まり・・・そして高まっていく。
「か、カリウス・・・いっ・・・一緒に・・・」
 カリウスの両の手を掴み、指を絡ませて、彼女は言った。初めての事である。今までの性交上、カリウスはその全てに膣内出しを決行している。当然、彼女も、今回の終焉も膣内出しによって終わるだろう事を理解している。その彼女が膣内出しを求めたのだ。
 確かにカリウスの子を宿し、そして、出産する事も誓約したが・・・それだけではない、何かが、彼女の中で変わり始めていた。

 そして、二人の男女は同時に・・・・・・



 パッフィーが目を覚ましたのは、翌日のお昼過ぎだった。
「ぐっすり、お休みになられたようですね・・・」
 昨夜熱く睦み合ったベッドの隣にも、見渡せる視界の中に、既にカリウスの姿はなく、室内にいるのは彼の腹心であるカルロスだけであった。今も淡々と小さなテーブルで、恐らく自分のために、であろう、紅茶を注いでいる。
「あ、おはようございます・・・ありがとうございます」
「もう、既にお昼過ぎですよ」
 カップを受け取って口につける。やはり、彼の入れた紅茶(妊娠一ヶ月のため、実際はハーブティー)は、味も香りも一級品だと思わずにはいられない。が、そのカルロスの仕草が気になって、パッフィーは怪訝そうな表情で小首を傾げた。
「その・・・・・・その前に、何か着て戴けませんか?」
 目のやり場に困る、といった感じで、彼が背中を向ける。当然だった。今のパッフィーは一糸纏わぬ姿そのままなのである。
 慌ててパッフィーは、用意されてある衣服を手にとって、昨晩の・・・結婚初夜となった昨夜を彷彿させる。
 これまでの性交行為に対する彼女の印象を一変させるだけの・・・彼女にとって、衝撃的な運命の一夜であった、と言っても、決して過言ではなかっただろう。
 あらゆる体位からカリウスを受け入れ、男を七度果たさせては、彼女はその倍以上に匹敵する絶頂に達した。心も身体も・・・である。脳裏が痺れるような快感を、女である喜びに満たされた一夜だった。
 パッフィーはその日初めて、ぐったりと疲弊した身体をカリウスに預けて、幾度もなく達した幸せの余韻を噛み締めて、眠った。さすがに連続射精で萎えていたが、二人の身体を一つに繋げたまま・・・彼女から、そう求めたのである。
 受動性である女性にとって、体内に男を受け入れている事に安心感を憶えるものらしいが・・・だが、パッフィーとカリウス、これまでの経緯を考えれば、それ以上に大きな変化が、カリウスと同様、彼女の心の中でも起きていたのだろう。

 朝食を寝過ごして、抜いてしまったせいか、もしくは、昨夜の激しく燃えた結婚初夜のせいか・・・パッフィーの食欲は目覚しく旺盛であった。
「もう、豚さんになっちゃいそう・・・な、気分・・・」
「食欲がある。それはいいことですよ」
 カルロスは優しく微笑む。
 まだ彼女の妊娠が食欲に影響してくる時期ではなかったはずだが、食欲があるという事は、その後の傾向も順調という結果であろう。
「ぶー!」
 まだ小柄な身体で、決して太る事がない体質であったらしい彼女だったが、やはり年頃の女の子である。体格には常に気を使うのだ。
 (・・・宜しいですか?)
 (ああ、お前がついているのなら、構わんさ)
 兄との思考での会話で区切りをつけて、その解消法とばかりに提案する。
「それでは食後に少し、散歩にいきませんか?」
「えっ!?」
 ナプキンで口を拭っている彼女が驚いた。このカリウスの私邸で、この部屋で囲われてから、昨日の結婚式・結婚披露宴を除いて、退出する事が許されていなかったのだから、彼女が驚くのも当然ではある。
「カリウス様の外出許可も戴いております」
 パッフィーの表情に喜びが浮かび、そして同時に、昨夜の居並ぶ警備兵たちの視線を思い返して、急激に消沈してしまう。
「如何なさいましたか?」
 彼女の急激な変化に気付いたカルロスに、パッフィーは思い切って尋ねてみた。
「カルロスさん、わたくしの事・・・軽蔑なさいますか?」
「・・・・・・」
 明晰な彼だからこそ、彼女の言わんとしている事が・・・その心境が即座に理解できた。サトー・マクスウェイルの罵倒。いざ私邸へ戻る時の、部下たちの視線・・・捕らわれ、破瓜され、囚われ、犯され、孕まされ、そんな男と結婚した、今日までの彼女の状況。
 同時にそれは、彼女の心がカリウスに傾き始めた証拠であった。
 カルロスだけは、彼女がカリウスとの結婚を受諾するまでの経緯、その全ての背景を唯一に知る事ができた人間である。その彼に尋ねてくる時点で、彼女はカリウスに愛情を芽生えさせてきている証明であった。
 彼女もまだ、自分の感情に気付いてはいないようだが・・・
「私にとって、カリウス様は・・・確かに欠点を持ち合わせていますが、畏敬と尊敬に値する主君です。それてそれは、部下たちにとっても同様の思いでしょう・・・」
 言葉を選ぶように、慎重に紡ぐ。
「確かに兄は・・・カリウス様は、姫に対して、非道な・・・暴行を、乱暴をしました。ですが、それはカリウス様なりの、姫への求愛だった、のだと・・・」
 現実に、カリウスはパッフィー姫を欲していたのは事実である。たとえその発端が、彼女の人格にではなく、その身体に流れている血脈に・・・父親が次世代へ繋げる唯一の娘、として・・・だったしても、今、尚もその身体に執着しているのも、また事実である。
 一人の娘・・・と、してではなく、一人の女として・・・である。
「そんな姫の境遇に、私は、同情を禁じえません・・・」
「あ、ありがとう・・・」
 パッフィーはカルロスの返答に救われる思いであった。
 (やはり、勇者一行が去ったのは、大きかったようですね)
 実のところ、パッフィーの不幸は今も変わっていない。実の父親にレイプされて、その子供を身篭った以上、純血100%の出産を余儀なくされた、過酷な運命しか残されていない。
 確かにこの苦境に慣れてきた、順応してきた事もあるだろうが、それ以上に、勇者一行が彼女を残してこの地を去った事によって、彼女は自らの幸せを切り捨てたのである。
 仮に彼女が想い合っていたアデューと結ばれた、として、その幸せを10として・・・現実に結ばれたカリウスとの結果を1だったとしても、勇者一行がモンゴックを去ったの期に、彼女の幸せの水準が3か、2・・・いや、1にでも、幸せを見出せる水準に下がってしまったのである。

 昨夜の今日では、やはり部下の、彼女へ向けられる視線は厳しい。
(だが、それで・・・いい)
 パッフィー・パフリシアは完全に堕落した。
 彼女の世界は、カリウスとカルロスの二人だけであり、それ以外の周囲からは隔離させる。心と身体を休められるのが、カルロスだけであり、心と身体を繋げるのが、カリウスだけなのだと・・・一種の刷り込みではあるが、彼女の心境の変化も相まって、今後も絶大な効果を相乗させていくだろう・・・・・・
 (残る問題は・・・)
 この時、カルロスの抱いた懸念も、手に取った少女の、その幸せそうな表情を前にして・・・砕け散った。


 いつかは明かさなければならない、肉親の事実・・・を・・・・・・


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