第四章【華燭の輪舞曲】

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 シンルピア帝国居城、ルーンパレス・・・
 総人口百万を越え、その軍事力でもロンバルディアのおよそ七倍、三十万。帝国制を敷く以前の、共和国としての居城としても機能しており、アースティア世界最大の勢力を誇る今となっては、まさに大陸最大規模の要衝の一つではあろう。
「よくぞ参られた、アースティアの若き英雄たちよ。余はそなたたちの来訪を心から歓迎する」
 その初代皇帝ジェームズ一世は、【死霊犬】とさえ蔑まれた軍事国家の皇帝とは思えぬほど、温厚で柔和な人となりの持ち主であり、初対面となったアデューたちが驚きを禁じえなかったのも、無理はない。
 そもそも、シルンピアが【死霊犬】と呼ばれる由縁となった、旧スレイヤー王国領、旧パフリシア王国領の併呑が挙げられるが、滅亡した国家の領土が放置され続ければ、無法者に荒らされる事は必定の世である。特に帝国が悪政を敷いている訳でもなく、その意味においては不当な評価を与えられた帝国と、皇帝ではあろう。
 ただ一つ。その領土を併呑する際、その国家が滅亡するまで兵力を動員しなかった事、その一点だけが、この称えられるべき功績に対して、評判を貶める結果に繋がっているのだった。
「さて、形式的な挨拶を終え、これはもういいな」
 謁見するアデューたちを賓客のように遇し、また頭上に戴く宝冠を取る辺りにも、皇帝ジェームズの人となりが表されているだろう。
 皇帝ジェームズ一世は、今年で七十二歳。およそイズミの倍以上の人生経験があり、その初老とも言うべき年齢でおいても尚、皇帝の座にあるのは、彼の後継者たる息子全てが、いずれも異なる死を迎えていたからだ。現在、残されている皇帝の肉親とは、唯一、その末子だった皇子の遺児、レンヌ皇女があるだけで、目下ジェームズ崩御の際は、レンヌ皇女の女帝誕生、ないし、レンヌ皇女の婿が次期皇帝と目されている。
「そなたたちの境遇・・・パッフィー姫の事は、余の耳にも聞き及んでいる。まだロンバルディア王国と事構える、と定まった訳ではないが、余としては、そなたたちのパッフィー姫の救出に、いかなる助力も惜しまないつもりだ」
「有難きお言葉です。ジェームズ皇帝陛下」
 まだ正式にシンルピア帝国に、皇帝ジェームズに仕える事が決まった訳ではなかったが、“様”付けではなく“皇帝陛下”と敬称付けからでも、既にアデューたちの気持ちが固まってきていた証拠でもあった。
 それだけ、皇帝ジェームズ一世の人となりは、信頼するだけに値した。
「とりあえずは、我が城下で長旅の苦労を癒し・・・詳しい話は宰相ミストラルフに聞いてくれ。大まかな方針は余が決めるのだが、細部はミストラルフに伺った方が何かと効率的であろう」
 宰相ミストラルフがアデューたちに対して一礼する。皇帝と同年齢で、ジェームズが戴冠する以前から、守役として従者として仕えてきた、シンルピア帝国の最古参にして、最重鎮であろう。また温厚温和な皇帝に対して、冷淡巧緻な人格な持ち主だが、決して冷酷という訳ではない。
 帝国が尚も大国でいられる由縁は、この男の頭脳と辣腕があってこそであろう。

 謁見の間から宰相府に招かれたアデューたちは、ここでおいても賓客として、非礼一つなく遇された。
「まず・・・貴殿たちの助力。これは陛下のお言葉があったように、帝国も全力を挙げて、貴殿たちの希望に沿うように致しましょう」
「それは、ロンバルディア王国に対して、戦争を仕掛ける・・・と、いう事ですか?」
 イズミはテーブルに配されたコーヒーに口をつけて尋ねた。この質問の返答一つでも、帝国の考え、この宰相の考えが図れよう。
 だが・・・
「フフッ、貴殿が我が国に対し、警戒する心境は解らない訳でもない。が・・・そうあからさまな姿勢は、如何とも思うが、な・・・まぁ、良い」
 さすがに大国、帝国の宰相として振舞ってきた才覚と、イズミの倍に匹敵する人生経験は伊達ではなく、その洞察と深みは、大陸の英雄として称えられるアデューたちも圧巻する。
「遅かれ早かれ・・・戦乱の時代は訪れよう。そして、帝国と新興著しいロンバルディアとが覇を争うのは、時代の流れであろう。それは減速させる事ができても、決して先延ばすことは叶わぬ・・・それは貴殿たちだけに限らず、由々しき事態よ」
 それは明確に、正確に時代の流れを読み取った男の言葉であった。
 サルトビだけが冷静に、平静のまま受け取り、アデューとイズミに至っては、「やはり」と思いつつも、僅かな心の動揺を隠せなかった。
「パッフィー姫を救出するに辺り、帝国は全力を挙げる事を確約致しましょう・・・その代わりに、と言っては失礼ではありましょうが、幾つか貴殿たちに求めなければならない事がある」
 シンルピア帝国がアデューを支援するのは、慈善事業ではなく、その代償を彼らに求めるのは当然の事であった。
「まず、第一に・・・暫く貴殿たちは客将として、帝国に迎えられる事になる訳だが、ある時期を期に、正式に帝国の騎士として叙される」
「その、ある時期とは・・・?」
「無論、ロンバルディアとの戦争が、現実化した時点の事である」
 帝国宰相は顔中の皺を震わせて、微笑んだ。
 それはアデューたちを思っての措置の一端でもある。もし、帝国とロンバルディア王国の間で戦争が起きなかった場合、帝国の軍事力によって、パッフィー姫を救出する事は絶望的であり、仮に彼らが正式な帝国臣下となっていた場合、彼らの苦労損である。無論、高禄と待遇には破格なものを用意してあるが、彼らが帝国に望んでいるものではない事は明白である。
「客将として、帝都に滞在されている間にも、勿論、諜報や外交圧力。パッフィー姫の救出には尽力致しましょう。これについて、意義・異論・不明な点はございますかな?」
「いえ・・・我々への配慮、有難く思います」
 問題は第二、帝国の利益についてである。
「では、次の・・・第二について。これは戦後の後、の事になりましょうが・・・戦後、全ての権益は帝国に帰する事を確約願いたいのです」
 ミストラルフが一行を見渡して説明する。
 戦後、帝国が勝利し、仮にパッフィー姫が救出されたとして、その彼女がパフリシア王国を再興した場合、帝国としては、不当な評価を残したままの、無駄骨を折っただけの事になる。まして今は、そのパッフィー姫の名が表舞台に上がり、旧パフリシア領の民衆は反帝国意識が芽生えつつある事実もある。それらの事実を披瀝した上で、ミストラルフは要求する。
「パッフィー姫救出の暁には、旧パフリシア王国復興の権限・・・無論、実物的なものではありませんが、返上の上・・・戦後処理の全てを、我が帝国に委ねて頂きたいのです」
「そういう事なら、解りました。確約致しましょう」
 アデューもサルトビの二人も、イズミの返答に同意を示した。
 元々、パッフィーに祖国の復興の意志はなく、仕えていたイズミも同じ思いではある。またこの返答によってアデューも、生地である旧スレイヤー王国の復興を放棄した(もともと王族でもなければ、その意志もなかったが)瞬間でもあったが、その意志のないアデューが思い至る事は二度となかった。
 そして、幾つかの要求とそれに等しい確約が、帝国と一行の間に繰り返された。
 だが・・・最後に挙げられた要求・・・
 それには、さすがにそれまで確約の一色だったイズミも、そして、当人に挙げられたアデューも、暫く二の句が口から出てこなかった。


 ・・・アデュー・ウォルサムと、レンヌ・カスタネイド皇女。
 この二人の婚約、とあっては・・・・・・



 宰相府の一室、帝国宰相と勇者一行が会している一室に、久しい沈黙が長く続いていた。だが、さすがに宰相ミストラルフも即答を求めるような早急な姿勢は見せず、老獪な微笑に表情をくずした。
「まぁ、まず・・・アデュー殿が、皇女にお会いしない事には、そちらの返答も難しいでしょうからな」
 短くない沈黙を破って、ミストラルフが微笑する。
 確かにこの返答は、即答をもって答えられるようなものではなかった。まず、アデュー自身が皇女を気に入らなければ、それはレンヌ皇女だけでなく、アデューにも不幸な縁組である。またそれ以上に、アデューの個人的な心境からにおいても、彼らが返答に窮した最大の原因であろう。
 だが・・・
「解った。レンヌ皇女が、何処で俺を見たのか・・・何処を気に入ったのかは解らないけど・・・それでパッフィーが助けられるなら、俺はレンヌ皇女と・・・婚約でも、結婚でも・・・するよ」
「ア、アデュー!!」
 思わず、サルトビとイズミが諌めようとしたが、アデューの意志はもはや固まっていた。
「パッフィーは・・・俺が必ず救い出す、って、誓ったんだ!!」
 そのアデューの発した言葉は、サルトビ、イズミが共通する意志でもある。その為になら確かに、骨身を削る事さえ厭わぬ思い出はある。
 だが・・・
「だ、だが・・・それで仮に、パッフィーを救い出せた、としても、肝心のお前が・・・」
「サルトビ、そんな事、解っている!!」
 アデューとて何も、自暴自棄になって皇女との婚約、結婚を承諾した訳ではなかった。
「パッフィーだって、カリウスと結婚した・・・が、それは迫られたものだって事ぐらい、俺たちなら解るだろう」
 その迫られた詳しい事情こそ定かではないが、間違いなく自分たちが要因であろう事は、これまで彼女と供に旅してきた彼らだからこそ、彼女の考えそうな事、性格は理解できていた。


 だが、この瞬間・・・
 アデュー・ウォルサムとパッフィー・パフリシア
 半年前までは想い合っていたはずのこの二人が、それぞれの別々の人間と結婚を決まった瞬間であり、奇しくもそれは、パッフィーがカリウスの求婚を受け入れた日から、ちょうど五ヶ月後の事であった。


 その翌々日、ルーンパレスの一室で滞在して、暇を持て余していた一行は、その一人の生涯の妻となる、レンヌ皇女と会する事ができた。正確には帝国宰相ミストラルフの計らいによる出会いではあったが・・・ミストラルフは、この初対面を見定めてからでも遅くはないだろうと、まだアデューの即答を、皇帝ウェームズ一世にも、当のレンヌ皇女にも奏上していなかった。
「初めまして、と言うべきかしらね。カスタネイド・レンヌと申します。アデュー・ウォルサム様」
「えっ!?」
 その麗しく可憐な少女が、形式的にアデューの伴侶になる女性なのだと、サルトビでなくても唖然とする。
 レンヌ皇女は今年で十六歳。アデューやパッフィーと同年代に当たり、可憐さと儚げな印象は、パッフィーとは、また異なる美しい容姿の少女であろう。まさに深窓の令嬢といった感じである。
「で、では、君が・・・レンヌ皇女様!?」
「はい。でも・・・皇女様と呼ばれるのは気恥ずかしいです。是非、レンヌ、と名前でお呼び下さいね」
 爽やかな笑顔で一行を見渡す。
「今日は、宰相様がお客様・・・アデュー様たちに挨拶を、と言われましたので、伺った次第なのですが・・・お邪魔でしたでしょうか?」
「いや、全然、とっても・・・」
 その言動からでも、アデューの動揺が明白であった。
 本来、アデューの好みとは、深窓の少女のような、護ってあげたい、自分が護ってあげなければならない、といったものである。それはパッフィーにも通じる共通項ではあったが、彼女は生まれながらにして大陸屈指の魔導師でもあっただけに、ほんの僅かにアデューの完璧な理想像からそれていた。
「あら、それは残念です・・・ですが、今日は遂にお会いする事ができましたし・・・・・・」
 爽やかな微笑を残したまま、彼女はチラッとこの後、生涯の伴侶となる彼を一瞥して頬を紅潮させる。
「・・・恐らく、もう、あの話は・・・」
「ええ、伺っております・・・が・・・?」
 イズミは返答しつつ、その件のアデューの返答が、彼女にはまだ届いていない事実を明確に察した。恐らくではあるが、宰相のミストラルフが保留のまま、こちらのリアクションを待っているのだろう。
 そのミストラルフの配慮に感謝しつつ、石化硬直しているようなアデューを他所に、イズミは問いかけてみた。
「失礼ですが、一体、アデューの何処を?」
 確かにアデュー本人を前にして、また言葉どおり双方にも失礼な言動ではあったが、当のアデューは動揺しており、会話が成り立つような状況ではとてもなかった。
代わって、イズミが助け舟を出した形ではある。
「私・・・生来から身体が病弱な方でして・・・城外に出る事もままなりませんでした」
 皇族・・・そして皇帝唯一の血縁となっては、城外に出る事など許可なしには有り得なかったが、それ以上にレンヌの場合、身体の方がそれを許さなかったのである。
 それだけに皇帝ジェームズも、孫娘のレンヌを溺愛し、良き御祖父、良き為政者として、レンヌを悲しませるような事がないように心がけたものであったという。
 特に・・・レンヌにとっても、忌まわしい限りとなった、十五歳の誕生日。あの日以降は・・・
「その私と同じ年で・・・このアースティアを救った英雄・・・私は、ずっと、ずぅと・・・アデュー様を・・・お慕いしていました・・・」
 イズミの質問に赤面しつつ、恥じらいながら答えるその姿にも、アデューの心を奪っていた。

 こうして、アデューとレンヌ皇女の婚約が国内外に報じられ、皇帝ジェームズは孫娘婿となる彼に、涙して万一の後事を託した。また宰相ミストラルフは、先の大戦、アースティアの英雄である事を、プロパガンダとして最大限に利用した事はいうまでもない。
 この一つの婚約によって、それまでの帝国の不評全てが覆された訳ではなかったが、それでも確かな効果が、それからの帝国への印象を物語っている。

 正式に婚約者として冊立されたアデューは、その日の夜、レンヌの招きに応じて、彼女の部屋を伺った。
 夜の私室に男を連れ込む。レンヌ自身も思い切った事をしたな、と思わない訳でもない。また、その際に多くの廷臣たちが、二人の姿を確認したが、本日の事とはいえ、正式に婚約者として公表された以上、誰もそれ以上、口に挟むような事はなかった。
 つまり、レンヌは既に・・・夜の私室にアデューを連れ込んだ時点で、当然、そうあるべきものを認識していた。
「本当は・・・これって、婚前交渉って言うのですよね?」
「えっ、あっ・・・さぁ?」
 そんな彼女の決死の思いも知れず、歯切れの悪い彼はレンヌの思い切った言動に驚きを禁じえなかった。無論、童貞であるが、それも当然ではあった。
 父を初代勇者ラーサー、母を生涯の師父ギルツの妹メル。アデューが家族と暮らした時間は非常に短く、彼が生まれた直後に、祖国を魔族の襲撃によって滅ぼされ、両親は共にその業火の中にあった。母の飛空船によって一難を事なきえたアデューではあったが、その九歳まで孤児としての運命を余儀なくされた。
 またアデューの父、ラーサーの手によって窮地を救われたギルツは、その残酷な運命の仕打ちに、破壊神として己の力を振るう中、アデューと再会する。
「大きくなったら、僕、強い騎士になるんだ。そしたら、みんな、幸せに暮らせるよね?」
 無邪気に微笑む甥の顔、その背後に見えたような、義弟と妹の姿が限りなく眩しいばかりの存在に、暖かい家族に見えた。それからギルツとアデューは師弟として供に流浪の旅を続け、先の大戦までに至る。
 当然、アデューはパッフィーを除いて、女性に対する免疫が全くなく、それによって、性行為、性経験、性知識いずれも興味は薄かった。

 カリウスがパッフィーをレイプする、あの日までは・・・・・・


 アデューとレンヌが唇を重ねる。唇と唇を当てるだけの、児戯にも等しい口づけであったが、アデューもレンヌもそれだけで十分であった。互いに赤面しつつも、互いの身体を抱き締めた。
 そして、恥じらいながら躊躇いつつも、レンヌは自らの着衣に手をかけていき・・・だが、途端にその着衣にかけた指が止まった。
 【激しい豪雨】【暗黒のような暗闇】【眼前の両親の亡骸】
 レンヌの過去にあるそれが、身体を萎縮させ・・・大粒の涙が頬を伝って落ちた。忘れたくても忘れられない、忌まわしくも、彼女にとって記念すべき日。
 その悪夢の一日が、レンヌの動きの全てを奪った。
「ご、ごめんなさい・・・」
 慌ててふためくアデューに対し、レンヌは突然に詫びた。そして、その謝罪された事が更に拍車をかけ、アデューの混乱は深まるばかりである。
「わ、私・・・だ、黙っていましたけど・・・も、もう・・・もう」
 打ち明ける事によって、婚約解消を恐れていた事もあったが、それ以上に、彼女はあの忌まわしき出来事を少しでも思い出したくはなかったのである。また、それを憧れていた異性に知られる事も、打ち明けられなかった要因の一つであろう。
「もう・・・し、処女では・・・私・・・ないんです・・・」
 例え黙っていても、性知識の乏しいアデューが気付くような事ではなかっただろう。それでも打ち明けて、謝罪せずにはいられなかったのは、確かにあの忌まわしい出来事で身体が萎縮した事もあったが、それ以上に、アデューに対して、明確な感情が急速に芽生えさせていたからであろう。
 レンヌは大粒の涙を流しつつ、崩れるようにして膝を抱えた。
「わ、私・・・以前に、レ・・・イプ、されたんです!!」
「!!」
 可憐な少女の衝撃的な告白に、アデューは思わず絶句した。
 レイプ、強姦、陵辱・・・それは今のアデューにとって最も憎むべき行為であり、カリウスという男の名前と並んで、最も許し難い言葉であった。


 それは今から、約一年と少し前の事であった。
 魔族の脅威から解放されたアースティアは、急速に平穏な日常を取り戻しつつあり、それはこのシンルピア帝国においても例外ではなかった。
 また、日照り続きであった帝国領に、久しい恵みの雨と言わんばかりの小雨が帝国領の大地に降り注ぎ、その夜には天候も回復されるだろう、と予想された。
 その日、レンヌは十五歳の誕生日を迎え、彼女の好きだった山荘で誕生会が催されようとしていた。この時、彼女にとって不運だったのは、まだ両親以外に、父には二人の兄(数ヵ月後に急死と謀殺)が健在であり、彼女の立場も政治的な重要性もなく、警護に連れてきた兵も王族としては極めて少なかった。もっとも、魔族の襲撃される脅威がなくなった現在、その気の緩みも致し方がなかったのかも知れない。
 だが、その気の緩みこそ、彼らにとって好都合以外、なにものでもなかったのだ。また、計測された雨が次第に強く、その予想に反して豪雨になった事も、まるで天候が彼らの行為を後押ししているようでもあった。

 事態は唐突に、そして、何の前触れもなく襲い掛かってきた。
この山荘一帯そのものが皇族直轄占用地として、皇族とその警備に認められた者以外、全ての立ち入りを許されていなかったのだが、その全身が黒尽くめという不穏な男たちは、その山荘付近に足を忍ばせていた。
 瞬く間に次々と、外に配備された警備兵全員が斬り殺された。恐ろしいまでの熟練した集団であり、殺された警備兵は一人として、断末魔を上げることさえ許されなかった。また発する者がいた、としても・・・この周囲を叩きつける様な豪雨が遮断したであろう事は疑いない。
 かくして、その不穏な男たちは、誰に気付かれる事もなく、容易に目的の建物に取り付く事ができていた。
 窓から覗ける眼光鋭い視線が、あどけない表情を浮かべている少女を捕らえる。
 (あれがレンヌ皇女だな・・・)
 今日で十五歳を迎えたばかりの少女ではあるが、光り輝くようなブロンドの髪から覗ける容姿、室内でもストールを羽織った、成熟しつつある身体つき。その身体全てが、男の欲望をそそった。
 (残った室内の警備兵は・・・2、3・・・全部で四名か)
 指先だけで指示を送り、それだけで完璧に伝達がされた。
 侵入者にとって真っ先に狙ったものが、室内の明かりである。ランプ、キャンドルの明かりが途絶え、豪雨の中の山荘であるだけに真っ暗闇である。暗闇の中に身を置いて、目を慣らしていた者以外にとって、それは致命傷であろう。
 内部への侵入・・・そして、下された指示を的確に遂行する男たち。
 暗闇に目を慣らしていた、しかも全身が黒ずくめという異例な侵入者の奇襲を前に、視界を完全に奪われた警備兵たちには成す術はない。一人、また一人と、斬り殺されていった。
「キャァァァ!!」
 殺伐とした殺戮が繰り広げられる中、若い少女の悲鳴が響いた。
「レ、レンヌぅぅ!!」
「煩せぇ、ババァ・・・殺されたくなかったら、黙ってやがれぇ!」
「ハハハッ、皇女様は、殺しはしねぇよ!!」
 レンヌの父と母もまた男たちに捕らわれ、彼女自身も一人の男に押し倒されては、馬乗りされていた。その男たちが愛娘に対して、何をしようとしているのか、その言動からでも両親には明白ではあったが、この暗闇の中、首に添えられた刀身を前には成す術さえもない。
「い、いや・・・な、何をするの!」
 細身の身体で、しかも病弱な身体でもあるレンヌに、男の手から逃れる術はなく、それでも懸命に抵抗する。当然ではあろう。だが・・・
 ≪ パァアァァァン !! ≫
 ただ派手な音だけの平手打ちであったが、当のレンヌはその痛みよりも叩かれた方に衝撃を憶えていた。御祖父には溺愛され、病弱なだけに誰にも優しくされてきた少女だっただけに、その衝撃はかなりのものであったのだろう。
「フフッ、大人しくなったじゃないか」
 暗闇の中、レンヌに跨る男が嘯く。
 尚も荒れ狂う野外の豪雨に、衣服を引き裂かれる音が協奏する。
「それでは・・・戴くとするかな?」
 余りにも残酷で、無慈悲な言葉が両親の血の気を奪った。これより約半年後、遠く離れた地で、彼女と同世代の少女がまた、レイプさせる運命にあるのだが、レンヌの場合、全くの愛撫もなし・・・その上での処女喪失による運命を余儀なくされたのである。
 レンヌの初めての男となるペニスが、全く濡れていないレンヌの固く閉じている花弁に宛がわれる。そして・・・
「!!!!!!!」
 余りの襲い掛かる激痛、股先から貫かれるような苦痛に、皇女は悲鳴を一つ上げる事さえ叶わなかった。息も絶え絶えに、真っ暗闇の中で顔を見えぬ男に犯される・・・犯されようとしている現実のみだった。
 挿入されてくる異物が、途端にその侵入を止めた。正確には、彼女が純潔、未だ男を知らない証明が、その挿入を阻んだのである。
「「!」」
 犯そうとしている男の、不敵な笑みが聞こえたような気がしたが、間違いなく、この男も理解しているのだろう。
「御両親前で折角のバージンブレイクだ!」
 豪雨の暗闇の中、男が今直面している結合の状況を嘲弄する。
 そして、別の男がレンヌに語りかける。
「これで一人前の女になるんだ。御両親にも見届けてもらえて良かったじゃないか」
 暗闇の中、嘲弄が渦巻く。
「ほら、成長を遂げる愛娘に一言、手向けてやったらどうだぁ?」
「き、貴様!!!!」
 レンヌを犯す男を鋭く睨みつける。今のそれが父親にとって最大にできる、せめてもの抵抗であった。
 野外が一瞬、光り輝く。
「では、おりゃぁ!!!」≪ ゴロゴロ・・・カ――ッ!! ≫
 雷光と男が気合一閃、その途端、皇女の身体の膣内で≪ ブチプチ ≫と繊維が千切れるような、心地よい感触が男のペニスに伝わる。
 その雷撃が轟き途絶える前に、その男とレンヌの身体は一つになった。
「フフッ・・・余りにも脆い、処女膜だったなぁ・・・」
「・・・あっ・・・くぁ・・・いっ・・・い・・・」
 レンヌは余りの激痛に、現実とは思え難い出来事、そして叩かれたショックで、言葉にならない呻きだけしかない。
 だが、更に彼女に追い討ちをかけるような出来事を、男たちは顔色一つ変える事もなく、やってのける。
「そら、娘のバージンブレイクに立ち会えたんだ。もう思い残す事はないだろう、クソババァ!」
「ほぉら、お前も・・・だよ!!」
 暗闇の雷雨の中、室内に生々しい音が響く。レンヌの頬に生暖かい液体が叩き、短くも小さい断末魔が耳に残った。
 (お・・・お父様!! お、母様!!!)
 レンヌ皇女が十五歳の誕生日・・・その日は両親の命日でもあり、そしてまた、レンヌがレイプされた忌まわしき記念日に激変を余儀なくした。
 (こ、こいつは・・・)
 その陰惨な間にも、両親殺害の眼前でレンヌを破瓜した男は、思わずその彼女の身体に、その彼女の膣内に、舌鼓を打たずにはいられなかった。
(こ、こいつは・・・極上の、名器だ・・・)
 胸もとの衣服を引き裂き、薄水色のブラジャーを掴み取って、乱暴な手つきで乳房を揉んでは・・・その乳首を掴み挙げた。
 自身十五回目の誕生日。両親が殺され、その死体の前で犯され、その両親の眼前で破瓜された。その僅か一時間前までの、幸せの余韻さえ残る室内に、レンヌの神経は既にズタズタであった。

 不思議な光景ではあった。
 真っ暗闇の中にある事だけは変わらないが、先ほどまで耳に付いた豪雨の音も途絶え、手足の感覚も曖昧・・・そして、暗闇の中で、自分の痛ましい身体だけが見えた。
 今、その暗闇の場で男にレイプされているのは、紛れもなくレンヌ皇女であったが、それを冷静に暗闇の中で、犯されている自分の身体を見つめている彼女もまた、レンヌ皇女であり・・・正確には、彼女の意識そのものであった。
 男の姿は暗闇で見えない。が、男の身体で覆われているはずの自分の身体も、透けているように明白に見て取れた。
(ああやって・・・男の人は、女の人を・・・)
 夢のような感覚の中にあって、その中でもレンヌは自身の姿を見て涙を流さずにいられなかった。両股を抱え上げられ、その股間に遺物が抽送される。その男のものは解らないが・・・それに破瓜された鮮血が纏わりつくようにして、滴り流れては落ちていく。
(わ、わたしは・・・犯され・・・レイプされた、のね・・・)
 今しがた、その直前に惨殺された母親の言葉が蘇る。
【レンヌ、王族、特に皇族の女性はね・・・一生を捧げる運命の人にだけ、自分の大切な、初めてを捧げるのよ・・・】
 王族としての性的な責務は、彼女も当然、幼い頃から教育されてきた。それは王族として生を受けた者には当然の事であり、彼女もまた、年頃の女の子ではある。
【それが、私と同じ歳で、アースティアを救った勇者様だったら・・・】
 病弱な彼女が、同世代のアデューを慕ったのは自然の事であったろう。それだけに、聞いたことだけしかないアデューに、初めてを捧げる夢想を幾度もなくしてきた。政略結婚が常の皇族・王族の世界では、それは叶えられない、途方の夢だと笑われるかも知れないが・・・レンヌはいつか、彼が自分を娶って、運命の人になってくれる事を常に願っていたのだった。
 だが、その少女の夢みる願望は、残酷な現実が打ち砕いてしまった!
 意識が混濁していても、残された身体だけは男との性交に敏感である。また破瓜した鮮血が愛液代わりに、男の出し入れを限りなく助力し、レンヌは激痛も、快感さえもない、本当の暗闇の中で、男に余されるところなく犯されていった。
「くぁ。そろそろ・・・な、膣内に・・・ぶちまけてやるぜ!!」
 (!!)
 その瞬間、彼女の意識は明確に拒絶した。男女の営みの最終地点に何があるのか、彼女もまた王族の・・・皇族の皇女である。当然、知識として幼少の頃から学ばされていた。
 男の悪魔的なラストスパートが繰り返される。そして、レンヌの身体は男の欲望をそのままに、身体何一つ抵抗する気配もなかった。
 レンヌと男の身体が激しく密着する。
「ぐぁぁぁ!!」
「・・・・・・あっ・・・あっ・・・」
   ≪ ドクッ ドクッ! ドクドクッ ≫
 絶え間なく、無意識のように流れるレンヌの鼓動のような喘ぎ。その囁きごとに最初の男に吐き出された大量のスペルマが、彼女の子宮を波打つ。
 レンヌ皇女、十五回目の誕生日祝いに、初めての男にされた、その運命の男から贈られる、大量のスペルマである。
 (あ、あんなに・・・だ、出された・・・ぬ、抜いて・・・このままだと、このままだと・・・に、妊娠・・・しちゃう!!!)
 男はその最後の一滴までも、初めての受精を強要させた幼い子宮へ、送り込むように、腰を断続的に振り続けた。
「ふぅーーー」
 逆流に溢れ出してくるそれを、まるで蓋するように塞いだまま、男は大きな息を吐いた。そして、レンヌ皇女を破瓜した余韻に・・・その名器の身体をレイプした満足感に、男が大量放出したペニスを抜き出すまで、僅かな時間があった。
「さすがは由緒ある皇族の姫君。その名に恥じない極上の名器だったな。わざわざ遥々来た甲斐があった、っていうものさ」
 男にはこれまでにも数多く関係してきた女性があり、その多くの王族の中でも、レンヌのような極上の名器に出会える事はなかった。
 それだけに溜まった性欲を大量に吐き出した事で、男は満足げに規格外のペニスをしまい込んだ。
 (・・・妊娠したかも、知れないな・・・これは・・・)
 自分の血を受け継ぐ子供ができるのは、正直、喜ばしい事ばかりではない。むしろ、時には足枷にも、厄介な事にもなりかねないだろう。
「生憎、俺は皇女様との間の子供には、興味がなくてね・・・」
 強引にレイプし、大量に膣内出ししておいて、男はぬけぬけと言う。
「まぁ、皇女の処女は戴いた訳だし、皇女の折角の誕生日祝いだしな。たとえ記念に妊娠した、としても、父親が誰の子供かも解らないぐらい、一晩かけて、俺たちが祝ってやるさ!!」
 破瓜し終えた身体を突き放し、男は静観していた部下に振り返った。
「今夜は皇女の誕生祝。亡くなったご両親に代わって俺たちが、輪姦パーティーで祝ってやろうじゃないか!」
 荒れ狂う雷雨の中、男たちの一気に喝采が上がった。その数、二十人は下らない。
「よーし、カリウス様の有難い許可が下りたぞ!!」
「次にレンヌ皇女の相手をしてやる、二番槍は誰かいるか!?」
 誰とも言わず、瞬く間にレンヌの身体に男が群がってくる。破瓜した男の手によって引き裂かれた着衣は、瞬く間にただの布切れと化し、レンヌは再び、名も顔も知らぬ男を受け入れた。
「す、すげー・・・こ、こりゃ・・・」
「ああ、俺の知る限り、極上の名器だぞ」
 既に皇女の処女を奪い、その穢れなかった膣内に、溜まった自らの欲望一色に染めた事で満足したのか、男はその後の輪姦劇を近くから静観するだけに留めた。部下に犯されたような女に興味はないし、何より、待たせていた部下の手前もある。反感を募らせるような愚をごめんだ。
 男は散乱したテーブルの上に、辛うじて留まった豪勢なケーキを一瞥すると、それを手掴みで口に運んだ。
「フフッ・・・ハッピー・バースディ・トュー・ユー・・・」
 一度大量に膣内出しされたスペルマ、破瓜された鮮血が入り混じり、そして防衛本能からか、僅かに捻出されてきた愛液が、既に二人目の男の挿入を容易にさせていた。
 再び受け入れた、最初のペニスに比べ、スケールも硬さも遠く及ばないそれでも、意識を飛ばしているレンヌの膣内は、キリキリと締め付ける。
「よーし、俺は後ろのバージンをもらってやるぜ!」
 騎乗位の体勢から、別の男が彼女の菊座に宛がう。
「それならば、俺はその口でしてもらおうか。おい、その口をこっちに向けさせろ!!」
 意識のレンヌは、その自らの身体に群がり、貪り続けられていく自分の姿を涙をなくして見る事は叶わなかった。
 両親の前で純潔を穢され、破瓜された瞬間にその両親は殺された。
 レンヌ皇女、十五回目の誕生日。それはまさに彼女にとって、忘れ難き悪夢のような一日であった。その陰惨さは、後の半年後に犯される同世代の少女よりも、勝るとも劣らないだろう。
「ハッピー・バースディ・トュー・ユー」
「ハッピー・バースディ・レンヌゥ・・・」
 そのレンヌにとっては運命の、最初の男の口にした言葉を、順番待ちしている男たちが、犯し終わって順番待ちする男たちが復唱する。その復唱される暗闇の中で、陵辱・・・輪姦されているレンヌの身体。それを静観しなければならない彼女の意識・・・膣内出しされ、菊座に射精され、口内も犯されていく。
 皇女としての誇りも、帝国の威厳という言葉も・・・その地獄のような陰惨な場には、一欠けらとしてなく、レンヌ皇女の輪姦地獄は、その一晩中に渡って繰り広げられた。
 そう、その十五歳の誕生日、一晩だけに渡って・・・

 一昨夜からの予想外の豪雨と連絡の不通によって、不安を感じた皇帝ジェームズ一世自らが、手勢を連れて足を運んで見たものは、息子夫婦の無残な亡骸と・・・ボロボロに輪姦された後の・・・無残な孫娘であった。




 パッフィー・パフリシア、と、レンヌ・カスタネイド
 この同世代の少女は、お互いが王族として(一人は生まれながらに亡国の王女として、一人は皇族として)生まれながら、奇遇にも数万、数十万人に一人いるか、いないかの極上の名器と、可憐な美しさをも持ち合わせて、アースティアに生を受けてきた。
 この最高とも、極上とも評された名器を持つ、二人の美少女をレイプする事が叶った唯一の男が、ある後日にこのように語った上で、こう記したとされる。
「まず、この極上の名器の身体を持つ少女たちと関係する事ができた事に、アースティアの神々に感謝するとしよう・・・」
 だが、その発言を終えて後、その言葉を撤回する記述がある。
 確かにこのレンヌ・カスタネイド、パッフィー・パフリシアと関係できた事に神々に感謝する気持ちに偽りはない。が、この最高かつ極上の身体と交える事になったのは、既に定められた運命であり、この名器を生まれ持った彼女たちの義務付けられた宿命でもあったのだ。
 故にこのアースティアで数多に存在するはずの男たちの中で、唯一、この少女たちと結ばれた由縁であろう。
「その、極上の名器を持つ二人の少女・・・レンヌ皇女は完成された外見、そのプロポーションからでも解るように、典型的な早熟型の名器であった。また一方のパッフィーは、幼く小柄な身体であった事からも、持続完成型・・・つまり、男を受け入れていく事によって、より身体を完成させていく、極めて異例な成長する名器であった」
 そのアースティア史上最高の・・・極上の名器を持ち、それがまた、異なる可憐さを持つ絶世の美少女とあっては、その二人と交える事が許された男の尊大な言動も、多くの人を納得させるものであっただろう。
「最初に、レンヌ・カスタネイドについて語っておくべきだろう・・・」
 彼がレンヌ皇女に目を付けた、その極上の名器をレイプするに至ったのは、ただの偶然の産物である。たまたま部下の報告から、シンルピア帝国皇帝ジェームズの孫娘、特にその容姿や性格などの情報が耳に入ったからであった。
 これまでにも多くの王族、令嬢とも交わってきた彼だからこそ、今回も外れ気分であったのは間違いない。ただ女性を犯す・・・たまたま溜まっていた欲望を吐き出し、その一時的な快楽だけを求めて、レンヌ皇女の破瓜し、レイプしたのである。
 だが、男の予想は見事に裏切られた。
 膣の幾十にも、百にも到達しような襞が、初めての男のペニスに絡みついては、物凄い締め付け(タコツボ、三段締め)そしてキンチャク型。その全ての名器とされる全ての特性を持ち合わせた、まさに極上の、アースティア最高の名器であると思わされた。
 少なくても・・・その後に交わる事になる、パッフィー・パフリシアをレイプする、その日までは・・・
「パッフィー・パフリシアは・・・その名器の素質において、レンヌと同等のものを等しく、持ち合わせて生まれた、極上の名器であった」
 彼はレンヌ皇女と交わった後、パッフィー・バフリシアを、レンヌ皇女と同様、膣内出し付きのレイプを敢行した。
「パッフィー・パフリシア、そして、レンヌ・カスタネイド。二人はアースティア史上、稀に見る由緒正しき血筋、その王族の中でも最高の、極上の名器を持つ身体であった事に疑う余地はない。だが・・・」
 男は微笑を称えたまま、次のように断言した。
「だが・・・どちらが最高の名器、身体の所有者だったか? と、言うならば・・・紛れもなく、後日に犯した、パッフィー・パフリシアの身体であっただろう」
 レンヌ皇女とパッフィー姫。共にレイプした事がある、その唯一の男の発言だけに、その信憑性は非常に高い。
「確かに生まれ持った性器の性質は同じ、生まれながらの名器としては、そのどちらも甲乙付ける事は困難であっただろう」
 だが・・・レンヌとパッフィー、明確な差は歴然としてある。
 レンヌ・カスタネイドは、幼少から病弱の身体であり、深窓の令嬢としての外見は、異なる可憐さを持つパッフィー・パフリシアにも引けを取るものではない。だが、男を受け入れる器・・・として言うなら、明らかに彼女に劣っていた。
 パッフィー・パフリシアは、そう、魔王ウォームガルデスの旅によって心身ともに鍛えられ、それに伴い膣肉は締まり、性感をより高める良い下地を育んだのである。そして、先天的な名器の素質、それに更なる身体の具合の良さによって、受け入れる男に麻薬的な、素晴らしい感触だけを男に提供させる。
「過酷な旅、苦難な戦い、その中で育まれてきた全てが、小柄な身体の膣内に搭載されてあった」
 そういう意味では・・・レンヌ皇女の身体は、極上の名器の粗悪品と呼べたであろう。
 互いにレイプされる事によって、バージンブレイクを果たした二人なのにも関わらず・・・パッフィー・パフリシア、という非の打ち所のない名器の発現によって、レンヌ・カスタネイドは、アースティア史上、最高の座から引き摺り下ろされたのだから・・・


[ パッフィーとレンヌ、二人の名器 より抜粋 ]


 レンヌ・カスタネイド、パッフィー・パフリシア
 この二つの名器をレイプした、唯一の男は最後に、こう締め括った。

「レンヌ皇女は、この時代・・・パッフィー・パフリシアと同年代に生を受けた、その時点で・・・最大の不幸であったのだろう・・・それでも、先のレンヌ・カスタネイド! 後のパッフィー・パフリシア! この二人の、この二つの極上の名器。それらと交えた唯一無二の男から、その批評に挙げられる二人は、まさに最高の栄誉であり、その意味においては、共にレイプされた幸福な二人であっただろう!」
 ―と。


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