その22



 部屋に張りわたされる一本の縄。
 緋色の縄のところどころは結ばれてこぶが作られている。
 それを見てミレルは悦に入っていた。
「うふふ、楽しませてあげますわ、かあさま。そして、その躰に奴隷の悦びを教え込んであげます! あっ……」
 ミレルの太股に、愛液が滴る。
「あん、感じちゃった……」
 そんなミレルを楽しげに見つめるカイル。
「ふうん、股縄歩きかい?」
「そうですわ、にいさま」
 その瞳に邪悪な光を湛えてミレルを見つめるカイル。
「フフ、そういえばミレルも、これは大好きだったよね」
「あん、そんなぁ、にいさまがミレルを仕込んだクセに……」
 可愛くすねるミレル。
「フフフ……」
 カイルはミレルの股間に手を伸ばし、まさぐった。
「濡れてる」
「あんっ!」
 その顔に恥じらいを浮かべるミレル。
「さて、またがってもらおうか、ミレル」
「……えっ?」
 カイルの言葉に、瞬間、硬直するミレル。
「またがるんだ、ミレル」
 カイルの言葉に困惑の表情を浮かべるミレル。
「えっと、これはかあさまの為に……」
「ミレル、僕にさからうのかい?」
 威圧感を込めたカイルの言葉に、ミレルの全身が屈服していく。
「あっ、……はい、わかりました、にいさま」
 その顔に被虐の表情を浮かべ、うなずくミレル。
「アリシア義母さん、まずはミレルがお手本をしめすからね、よく見ていてください」
「あっ……」
 絶句し、呆然としているアリシア。
 そのアリシアの方にニヤリと笑いかけたあとで、ミレルの左足を持ち上げるカイル。
 そして、縄の上に左足を通すと、そのままミレルを緋色の縄の上にまたがらせた。
「ひゃうっ」
 久しぶりの感触に、思わず声を上げるミレル。
 それでもこの縄を用い、仕込まれた被虐の快楽の記憶は、すぐにミレルを陶酔の世界にいざなっていく。
「ちょっと高いかな? こんなものかな?」
 ミレルがまたがるとすぐに、縄の高さをミレル用に調整するカイル。
 その手慣れた手つきは、すでに幾度となく同じ責めがおこなわれていたことを物語っていた。
「あんっ」
 縄の上で太股をもじもじさせるミレル。
 緋色の縄に、ミレルの愛液が染み込んでいく……
 そんなミレルの両腕を背後に回し、黒い革の手枷で拘束してしまうカイル。
 そして……ミレルの前に、同じ黒革の首輪を差しだした。
「ククク、どうして欲しい?」
「あん、かけてください、ミレルの首に。ミレルがにいさまの奴隷である証を……」
「ククク……」
 馴れた仕草で首を差し出すミレル。
 その首に、カイルは首輪を装着した。
 そして、その首輪に、黒い鎖の引き手をかける。
「さて、お散歩の始まりだ!」
 カイルの言葉に、顔を赤らめうなずくミレル。
 くいっ、と、引き手がひかれると、おもわず右足を一歩、踏み出してしまう。
「あっ……」
「ククク……」
 一瞬、堕ちた表情を見せたミレルに、カイルの邪悪な笑い声が投げかけられる。
 さらに、頬を赤くするミレル。
「感じるか?」
「ああっ、はい、にいさま」
 おもわず、くちびるを舐めるミレル。
「やはり、ミレルは淫乱だよね」
「はい、ミレルは淫乱な肉奴隷です。ああんっ……」
「ククク」
 恥じらうミレルの姿を堪能したあとで、カイルは容赦なく引き手を引っ張った。
 そして、ミレルの恥辱に満ちた縄渡りが始まったのだった。


「くうんっ、ああん、あはんっ……」
 引き手をひかれる度に、よろよろと歩みを進めるミレル。
 それは、えもいわれぬ淫らさを醸し出していた。
 縄の結び目にかかる度に、ミレルの股間がえぐられ、
 その刺激によって、ミレルの腰が次第に砕けていく。
 歩くというみずからの行為が、自分自身を貶めていくという恥辱の蟻地獄に、ミレルは完全にとらわれてしまっていた。
 歩けば歩くほど、淫らに堕ちていくミレル。
 先ほどまで強気で自分を調教していた娘の、肉奴隷へとかわりゆく姿に、思わず驚きの表情を浮かべるアリシア。
「ほら、もっとしっかりと歩け! まだ半分も来てないじゃないかっ!!」
「はいっ、……にいさま」
 カイルから浴びせかけられる罵声に、従順にうなずくミレル。
 ふらつく躰を、前へ、前へとつきだしていく。
 その度に股間が縄でこすられ、その刺激でミレルの躰は妖しくうねり、淫らな喘ぎ声が部屋に響き渡る。
「はうっ、あっ、くうっ……」
「どうした? 僕のモノが欲しいのだろう? もっと気合いを入れて歩かないかっ!」
「だ、だって……」
 恨めしそうな、媚びと恭順に満ちあふれた瞳をカイルに向けるミレル。
「か、感じすぎちゃって、その、にいさま……」
「僕にくちごたえするのか? ミレル、僕のいうことに逆らうつもりなのかっ?!」
「ああっ、決してそんなつもりはっ、……ああっ!!」
 引き手を思いっきり引っ張るカイル。
 それにつられて、ミレルの躰が大きく前に移動した。
「ふんっ、ミレルがあまりにグズだから、手伝ってやったぞ」
「そ、そんなぁ……」
 歩みを止め、思わず縄によりかかるミレル。
 しかしそれは、縄が股間にきつく食い込むことに他ならない。
 しかもカイルは、ちょうど結び目のこぶのところにミレルの躰を持ってきていた。
「ひいっ、ああんっ! ダメっ、にいさま、だめぇ……」
 グラリ、と傾くミレルの躰。それをカイルは、引き手を思いっきり上にひっぱり上げることで防ぐ。
「ひぐっ……」
「誰が倒れていいっていった? さあ、歩くんだミレル。ご主人さまを待たせるなんて、本当にグズな牝奴隷だなっ!」
「は、……はひっ、もうしわけ、……ありません……」
 息も絶え絶えにそうつぶやくと、ミレルは再び歩き始めた。
 そしてそれは当然の事ながら、縄の端に来るまで終わることはなかった……


 緋色の縄に、ミレルの愛液の跡が残っている。
 その側では、股縄歩きによって完全に腰砕けになったミレルを、カイルが堪能していた。
 ミレルの首輪から伸びた引き手の鎖をみずからの躰にからめ、再びミレルの首輪にとめるカイル。
 そうすることで、ミレルを完全に自分に繋ぎ止めている。
 こんどは向き合うかたちで座りあい、座位でセックスを楽しむ二人。
 カイルのたくましいイチモツは、ミレルの下のお口をしっかりと貫いていた。
 腰を振るミレル、突き上げるカイル……
 さかんに乱れる二人の姿に、あきれた視線を投げかけるガリウス。
「……ワシのことを忘れて二人で楽しみよって。まったく、あきれた息子どもだ。だが……」
 その視線が今度はアリシアに向けられる。
「なかなか楽しそうな責めじゃの。確かに、効果がありそうじゃ」
 ニヤリと笑うガリウス。
「や、やめて……」
 かすれた声で懇願するアリシア。
 ミレルの示したあまりに淫らな痴態に、アリシアは恐怖にも近い感情を感じていた。
「ククク、ローザよ」
「は、はい、ガリウス様」
 ガリウスの傍らに近づいてくるローザ。
「ワシのかわりに準備を整えてくれるか?」
「……仰せのままに」
 軽く頭を下げるローザ。
 その口元には、いつしか妖しい笑みが浮かんでいた。
「弟子であるミレルがここまで見せたのじゃ。今度は師であるお前の腕を見せてもらおうか」
「さて? ご期待に添えるかどうか。ミレルさまは弟子とはいえ、わたしよりも才能があります。わたしがお見せできるのは、ありきたりのつたない芸のみ」
 口ではそう言いながらも、瞳に情熱の炎を燃やすローザ。
 それは明らかに、ミレルに対する対抗意識の表れであった。
「ククク……」
 それを見て、楽しげに笑うガリウス。
「さて、アリシア王妃様、つたない芸ではありますが、ローザ、精一杯つとめさせていただきますわ」
 しおらしい口調とは裏腹に、予想外の獲物が手に入った猟師の喜悦の表情を浮かべ、ローザは妖しく微笑んだのだった。


 娘であるミレルがまたがった縄、そこに親であるアリシアがまたがっていた。
 すでに高さはアリシア用に調整されている。
 股間から伝わる縄の感触に戦慄を覚えるアリシア。
 それは確かに、ある種の快感をともなっていた。
 前も、後ろも開発された身にとって、股間への刺激は淫らな欲望をかきたてる素となっている。
 おもわず身じろぎするアリシア。
「ああっ……」
「うふふ、初めての股縄はいかがですか、アリシア王妃? きっと、すぐに気に入ってもらえると思いますわ」
 アリシアを縄で後ろ手に縛りながら囁くローザ。
「その為に、たっぷりと媚薬を縄にからませておきましたから、うふふ」
 ローザの言葉に、アリシアの視線が揺らぐ。
 ローザの言葉通りに、縄には媚薬がたっぷりと、滴り落ちるほどに塗られていた。
 それがどんな効果をもたらすのか?
 すでに一度、媚薬の効果に屈してしまったアリシアは、想像し、思わず恐怖を感じていた。
「い、いや……」
「ふふ、いい表情……、思わず虐めたくなりますわ」
 喜悦の表情を浮かべるローザ。
「さて、これだけでは芸がありませんから、まずはこれを身につけてもらいますわ」
 鈴のついた首飾りをアリシアの首に取り付けるローザ。
「そして、これ」
 ローザが取り出したのは、いびつな形をした、ゼリービーンズを大きくしたようなものだった。
 その特異な形状と大きさに、あるものを連想してしまうアリシア。
「まっ、まさかっ?!」
「ふふっ、さあ、下のお口で食べましょうね!」
 縄を引き下げ、股間を露わにすると、容赦なくアリシアの体内にそれを押し込んでいくローザ。
「いやーっ、いやっ、いやっ、なんなの、これぇ?!」
 アリシアの絶叫が部屋に響き渡る。
 アリシアの体内でプルプルと振動するゼリービーンズ。
 そのおぞましい感触に、アリシアの瞳から涙がこぼれ出る。
「うふふ、もう一つ、……サービス」
 今度は小ぶりのゼリービーンズを取り出すローザ。
 それは、アリシアの後ろの穴へと消えていった。
「ひぎっ?!」
 いまだかつてないおぞましい感触に戦慄し、躰を震わせるアリシア。
「いかがかしら? 美味しいでしょう? ふふっ、うふふふふ」
 引き下げた縄を、弾くように手放すローザ。
「あああっ?!」
「ふふ、これはゼラチンに特殊な加工をほどこして作り上げたアイテムですわ。作るのにけっこう手間がかかるんですのよ、この手のアイテムは。しかも、一回限りの使い捨て。それゆえに、特別な相手にしか使わないことにしてますの」
 楽しげな表情で語るローザ。
 しかしアリシアは、ほとんど聞いていなかった。
 躰の中でプルプルと振動するゼリービーンズの感触に、おぞましさと嫌悪感と、そして、淫らな快感を感じていたのだ。
 前後で跳ね上がるゼリービーンズ。
 アリシアの腰は自然に動き出し、さらに、その躰はエビのように跳ね上がる。
 そしてそれによって、……股間に通された縄が跳ねるたびに、きつく、きつく、アリシアの股間に食い込んでいった。
「ああっ、堪忍、かんにんしてぇ!」
 思わず上がる、アリシアの悲鳴。
 それはもはや王妃としてのプライドが欠片もない、それどころか、人としての誇りすらない、奴隷の、家畜の、悲しき悲鳴であった。
「あらあら? これからが本番だというのに、ずいぶん気分をだしちゃって、まあ」
 あきれた口調でつぶやくローザ。
「アリシア様は、本当に淫乱でいらっしゃること」
 アリシアの耳元でささやくローザ。
 アリシアはただ、首を横に振ることしかできなかった。
「うふっ、ではそろそろ歩いていただきましょうか。言い忘れましたけど、このアイテム、『ラブリージェム』はあなたの淫らな液を啜って、次第に大きくなっていきますの。早く歩き終わらないと、そのうちあそこに食い込んではなれなくなり、さらにはそのまま引き裂かれることになりますわ」
 ローザの言葉に、恐怖で瞳を見開いてしまうアリシア。
「あ、あ、あ、あ、あ……」
「ふふっ、聞こえたようですわね、わたしの言葉。そうならないためにも、しっかりと歩いてくださいね、王妃様。うふふ、ふふ、あはははは……」
 ローザの笑い声を聞きながら、アリシアは絶望をその表情に浮かべつつ、
 みずからの意志で腰を前に突き出し、ふらつく躰にむち打って、懸命に足を踏み出したのだった。


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