6.■姉弟同時絶頂地獄■


「……姉さんっ! ……ペギー姉さんっ!!」
 意識の闇の彼方から、懐かしい声が自分を呼んでいた。
「……姉さんっ! しっかりしてっ!!」
 ペギー松山は、意識が甦るのと同時に湧き起こる激しい頭痛と、全身の鋭い痛みに声を上げそうになるのを唇を噛んで耐えた。
 眩しさに薄く眼を開けると、弟のジョージ松山が、3日前の姿のままで眼の前に拘束されている。おそろしく焦燥し消耗した様子な事意外は外傷も無いようだった。
 ……ただ、これでヤツらがジョージの存在を「切り札」と捉えている事がハッキリとした。ペギーは唇を噛んだ。
「……大丈夫なのかい? ペギー姉さん?」
「……え、ええ」
 頭を被っていた重たいヘッドフォンやゴーグル、息苦しいエアマスクが外されていた。中世の鉄仮面のように、頭部デバイスを付けられてから何年も経っていた気がしていた。全身の拘束や電極類のデバイスなどはそのままだし、股間からは自分の胎内を深々と貫く双頭ディルドのペニスバンドが突き立っていた。固定バンドを反転して、ペギーの腰に装着されているのだ。ペギーが紅子に犯されたとき、紅子の胎内にあった側が、今はペギーの逸物として隆々と股間から生えている。
 それでも眼でモノを見て、耳で聴き、空気を吸えるのはありがたかった。
  *    *  
「お目覚めね。モモレ○ジャーさん」
 ペギーは声を掛けられるより先に、そのパフューム(香水)の匂いで紅子が傍に居ることを察していた。
「72時間セックスマシン耐久レース完走おめでとう。どう、ご感想は?」
 紅子は、身動きできないペギーの傍らに歩み寄ると、茶化して聞いてくる。
「……ふん、ちょっとは楽しめたってトコかしら」
 ペギーは強がって答える。
 ……危うく色情狂へ「調教」されるところだった。あと1回でも同じコトをヤラれて耐え切る自信はない。
「最新のセックス拷問マシンなのに、開発部のヤツらが泣くわよ」
 紅子は楽しんでいる様子でペギーに話しかけるが、決してそれは親しみの現われではなかった。「次の手」そして「切り札」を使うデモンストレーションに過ぎなかったのである。
「ホント、最後の手段を残しておいて良かったわ。それほどまでにモモレ○ジャー・ペギー松山の意思は固かった」
 紅子は踵を返すと、拘束されたジョージ松山に向きなおった。
「お姉ちゃんの色っぽく悶えるトコロ、かぶりつきで観ててどうだった、ボク?」
 ジョージとペギーの頬が同時に赤く染まる。弟は眼の前で姉が無残にのたうち回るところを見せ付けられ、姉は弟に「オンナの性」を嬲られる一部始終を目撃されていたのだ。それは、紅子の仕掛けた残酷な趣向だった。
「あっ、あんなのっ! ペギー姉さんはオマエらの拷問に耐えたんだっ!」
 虚勢を張るジョージを紅子はからかう。
「お姉ちゃんのアヘアヘ姿を観ながら、ボク、ギンギンに勃起してたでしょ?」
 紅子はジョージの股間に手を伸ばす。かろうじて男性器を覆い隠すマイクロビキニの黒皮部分は真ん丸に膨らみきっている。
「ひゃっ! さっ、さわるなっ!!」
 紅子の指が、ジョージの股間をまさぐり、からかうように揉み立てた後、そのマイクロビキニを引き千切った。
「……ジョージに、……弟に手を出したら、……許さない」
 剥き出しにされたジョージ松山の、陰茎と陰嚢がダラリと股間から垂れ下がる。やはり陰毛は剃り上げられ、男性器のすべてが剥き出しになっている。
「アラ、お姉ちゃんったら、何か言った♪」
 ジョージの股間を検分しながら、紅子はペギーにとぼけて言う。
「あ、やっ、やめろ……」
 紅子が、ジョージの陰嚢を下から掬い上げると、持ち主の「脅え」に反応して、睾丸が別の生き物のようにスルスルと縮み上がっていった。
「やっ、やめろぉ!!」
「……弟に手を出したら、……絶対、許さないわよ」
 唇を噛み締めたまま、ペギー松山は地獄の底から響くような「呻き」を上げていた。
「……絶対、許さない」
 ペギーの白い歯が、その唇を噛み破り、口元から鮮血が滴り落ちた。
「ホ〜ント。図星、本命、取って置きってワケね♪」
 ペギーの方に向きなおった紅子は、ニッコリと笑いかけた。
  *    *  
「次は、ボクがお姉ちゃんに見せる番よ♪」
 その後ろから見覚えのある女たちが姿を現す。
「わたし、ムラサキレンジャー・紫(ゆかり)子。タマタマやオチンチン担当よン♪」
「……ヤミレンジャー・闇(やみ)子。……機器オペレーターだ」
「そして、ベニレンジャー・紅(べに)子。このオペレーションの総指揮をとります」
 三人は「特務戦隊デスレンジャー」を名乗った。黒十字軍内に組織された対イーグル特殊殲滅部隊である。
「ボクのチェリーは、赤玉までいただくわよン♪」
 男好きを隠さない紫子を先頭に、デスレンジャーたちが無防備なジョージの身体に取り付いた。
「やっ、やめてくれっ!」
カチリ、カチリっ!
 闇子がジョージの左右の乳首に電極をセットしていた。まだ鍛えられておらず、少年のような薄い胸の乳首に電極クリップが喰らい付く。
「……オトコでも、乳首はスゴイ性感帯なのさ」
チュイ〜ン!
 鋭いモーター音を立て、ジョージの陰嚢を上下から挟み付けた2枚の合金板がその隙間を狭めていった。……睾丸圧搾器である。体内に逃げようとする睾丸を抉り出すように陰嚢の根元を小さなベルトがきつく締め付けていた。
「うぉっ! そんなところよせっ! 潰れるっ、やめてくれっ!!」
 この段階で睾丸を潰してしまわないように、駆動モーターを微調整しているのは紫子だった。
「……オンナには解からない痛みだっていうけど、解からなくて良かったわン。そう思わない?」
 ジョージ松山の全身に、粘っこい脂汗が浮かんでいた。
「く、くそうっ。姉さんだって耐えたんだ! 負けるものか!」
 蒼ざめた肌、震える身体、ジョージが精一杯の虚勢を張っているのは一目瞭然だった。「……ジョージ」
 ペギーには、弟ジョージから眼を逸らせているのが精一杯の抵抗だった。
 紅子は、ダラリとぶら下がったままのジョージの陰茎をすくい上げるように手にするとこぼした。
「お姉ちゃんに興奮したときみたいに、ビンビンにオッ勃ててくれないと、ヤリにくいわね」
 その紅子の言葉に、紫子はジョージの肛門に自分でしゃぶった指を突き入れる。
「まかせてン♪」
「うっ! ぐあっ!!」
 突然の肛門への異物挿入にジョージが声を上げた。
グニっ! グニっ!
「やっ、やめっ! うぉぉーっ!!」
 前立腺の神経嚢に指を突き込まれたジョージの反応は顕著だった。元来、女性よりも脳によるコントロールが強いはずの男性が抗いきれない快楽スポットなのだ。たちまちジョージの陰茎に血が通い、紅子の手の中でムクリと勃ち上がった。
「ほら、ほうらあ〜ン♪」
グニっ!! グニっ!!
 紫子が中指の腹で直腸の、その神経の集まった部位を責め立てると、紫子の指先の一往復ごとに、ジョージの陰茎の角度がビクンビクンとのたうつように増していく。はちきれそうに勃起した陰茎が、ズキズキと痛いほどだった。
「……やめ、て、やめてくれ!」
 ブルブルと震えるほど怒り立った陰茎に何本も催淫電極リングが嵌め込まれ、ジョージの陰茎を亀頭部と根元まで、次々と締め付けた。
「さて、どうする? お姉ちゃんったら?」
 紅子が横を向いて表情を固くしているペギー松山に呼びかけた。
「肉親の情っていうの? 弟クンの「苦しむ」ところは見たくないでしょ?」
 弟ジョージの蒼ざめた色が移ったように、ペギー本人も蒼ざめていた。
「なにも話すワケにはいかない……」
 仲間や肉親の生死を確かめるために黒十字軍の罠にはまり、その弟をエサにここまで追い詰められた。確かに紅子の言うとおり、仲間や肉親への情がペギーにとって最大のウィークポイントなのだった。
 しかし国際防衛機構イーグルの情報を渡すわけには行かない。そのことが原因になり、第2、第3の悲劇が繰り返されるのだけは、何としても避けなければならない。
 ……たとえ、自分や弟の生命と引き換えにしても。
 ペギー松山の悲壮な決意が固まった。しかし……。
  *    *  
「……男の子だけじゃ面白くないわン。ふたりに同じ「刺激」を与えましょう♪」
 紫子の提案にデスレンジャーたちが乗った。ペギーとジョージの鼻と口に簡易型のエアマスクがあてがわれる。
「じゃあ、ピンクガスを吸引させるわよン」
シュシューッ! プシュウウウ〜ッ!!
 紫子がエアボンベを開いていき、姉弟のエアマスク内に催淫ガスが流れ込む。
「あ、……はんっ!」
 最初の一嗅ぎで、ペギーは催淫ガスのフラッシュバックを起こしてしまう。何日間も催淫ガス漬けにされていたのだ。すでに脳内には催淫ガスで発情する回路が構築されてしまっている。
……ジュン!
 ペギーは、自分の下腹に「熱い感覚」が滲むのを感じた。
 ……多分、すぐに双頭ディルドを伝わって股間から滴り落ちるほど「濡れて」しまうだろう。
ジュンっ! ジュジュンっ!
 ヘソの裏側から膣を辿り膣口へと「熱い感覚」が這い進んでいくのをペギーは絶望的な気持ちで感じていた。
「うおっ、うぐううっ!!」
 催淫ガスに耐性のないジョージの反応もまた顕著だった。全身がピンク色に染まっていき、勃起した陰茎がビリビリと細かく痙攣しはじめたのだ。
「まだ勃起するのねン。このボクのチンポ♪」
 その紫子の言葉通り、青黒い静脈流で膨れ上がったジョージの陰茎は、長く太く、そして青黒く、その「怒り」を増して育っていく。
「ううっ、ぐおおおっ!」
 ジョージの凄まじい苦悶の声に、ペギーは思わず弟へ視線を向けてしまった。
ビクンっ! ビックンっ!!
 勃起したジョージの陰茎は、幾重もの催淫電極リングに縊られて、巨大な芋虫のように節くれだっていた。陰茎のそこここに、太い血管が緑色に浮かび上がって脈動している。紫子が雁首の笠を指先で嬲って「遊んで」いた。
「……さっ、さわるなぁ〜っ」
 笠の裏側を紫子の爪が掻くたびに、ジョージの陰茎はドクドクと脈動を繰り返した。
  *    *  
 紫子の「焦らし」に痺れを切らした闇子がコンソールの前で無愛想に告げる。
「さっさとヤりましょう。……ふたりの乳首に通電開始します」
カチカチっ! ブゥイン! ブブビビビビッブィ!!
「あっくぅ!」
「うぉんっ!」
 ペギーとジョージの両乳首の電極に、同時に催淫電流が流し込まれる。
びびびびいッびィん!
 ペギーの乳首が、ムクムクと電極の下で勃起していった。
「はっはっはっぁ〜んっ! ダメっダメっ、またヤられたらぁ!!」
「うぉぉぉぉんっ! なんだっ、乳首に、……くるっ!?」
 淫らで逆らいがたく甘美な感覚の再来と、未知の感覚の来訪に対する、姉弟の悲鳴が響き渡った。それは快感地獄のスタートだった。
「ジワジワいくわよン♪」
チュチュイ〜ン! ミミミっ! ミシっ!!
 闇子がコントローラーを操作して、ジョージの陰嚢に嵌め込まれた睾丸圧搾器が作動した。
「うぐぉっ! タ、タマがっ!!」
 上下から二枚の合金板に挟まれた睾丸が見る見るうちに潰れていく。
「……ふたりの股間に通電開始」
カチっパチンっカチカチっ!! ブイィィィン! ビビビビビッビキッ〜ン!!
「ひいいっんっ! ひくっひいっくううっ!!」
「ぐぎゃああっ! ぎゃあっうぉくぅうっ!!」
 姉弟の性感帯を催淫電流が駆け巡り、喰らい付き、揺さぶり立てた。
「うう〜っ、チンポがっ! 姉さんっ、チンポが破裂するっ!!」
 何重にも催淫電極リングを嵌め込まれたジョージの陰茎は、流入する動脈流を静脈で処理できなくなっていた。海綿体は許容量を超えて充血勃起し、陰茎全体が赤黒く、そして紫色に染まっていった。
「ジョージ!!」
 自分のクリトリスにも同様の「刺激」を与えられているにも関わらず、弟の脹れ上がった陰茎のあまりの痛々しさに、ペギーはそのことを忘れ、拘束に逆らい身を乗り出す。
「お願いっ! やめてちょうだい!!」
 いつの間にか涙を流し懇願しているペギー松山に、紅子は言う。
「じゃあ、話す気になったのね?」
「くっ! ……わたしは、……な、何も話さないわ」
 答えるペギーの声は震えていた。


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